Top > SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第22話
HTML convert time to 0.013 sec.


SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第22話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:52:10

第22話「動き出したクライマックス前編」

 

意識を取り戻したレイ・ザ・バレルがいたのは宇宙ではなく地球のとある森の中であった。
だが、彼にとって重要なのはそこが宇宙か地球かなどということではない。
自分が何者なのか、どうしてそこに自分はいたのか、そこがまったくわからなかった。
レイ・ザ・バレルという自分の名前の他に覚えていたのは断片的な幾つかの単語のみにすぎない。
そこで彼は自分の倒れていた森を出て、近くの町へと足を伸ばしてみることにした。だが、その町は普通の町ではなかった。
建物の多くが崩壊し、散発的に火災が発生し、半ば廃墟とも言うべき状態であったのである。
戦争が起こったのだろうと、その時のレイは思った。
だが、情報を集めるうちに町を襲ったのは虫型の機動兵器で、連邦軍という軍組織がその虫型機動兵器を撃退し、町は全壊を免れたのだと言うことをレイは知った。
その町はエアロゲイターのバグズによる攻撃を受けたのだということを当時のレイは知る由もない。
建物の多くが崩壊し、家や財産を失った多くの人間が集まっている場所は既に町としての機能をうしない、単なる人の集まりに過ぎない。
だが人はそのような中でも生きなければならない。
連邦軍による被災者の生活支援などもあって不便はあるものの、被災者達による避難所生活が自然と始まった中に、レイもいた。
悪く言えばもぐりこんだということなのであろうが、彼もその集団の一員となった。
自分の正体は不明だが、周りも気にするなという人間が多かったため、気にすることはなくなっていった。
そのうちに周り以上に自分の素性を気にしなくなったことはいうまでもない。

 

「気にするな。俺は気にしてない」

 

周囲に発した言葉は、どこかで言った覚えのあるもののような気がして、少しレイは明るくなっていった。
その頃の連邦軍はL5戦役と呼ばれる異星人エアロゲイターとの決戦の真っ最中であり、オペレーションSRWを行なうための準備に忙殺されていた。
当然、避難所生活によるストレスなどが被災者同士のイザコザを生み出しており、本来ならばある程度の治安を連邦軍が維持しなければならないのだが、その準備のための忙しさで治安維持が不十分となっていた。
そして、連邦軍に代わり、続発するイザコザの仲裁などに入り、紛争の多くを止めていたのがレイであった。
本人の記憶には残っていないところであるが、ザフトの赤服、しかもアカデミー主席という高い能力を持つレイの腕っ節にはそんじょそこらの素人が束になってもかなうわけもない。
さらに記憶を失って右も左もわからないにも拘らず必死に生きようとするレイはいつの間にか避難所で一目置かれるようになり、彼が気付いた時には、その避難所における兄貴分的な存在となっていた。
そんな避難所の中に、たまたま、偶然にある人物がいた。
その人物は子供向け特撮ヒーロー番組の制作会社の幹部の1人であり、その男の手腕の下、トントン拍子に今度始まるシリーズものの主役にレイは抜擢された。
当然、最初はレイもそれを拒否した。
自分の居場所となっている避難所の者達を見捨てて自分がノコノコと安定した生活を得るような真似はしたくなかったからである。
だが、最終的には避難所住人達が、自分達だけでなくもっと多くの人の心の支えになってほしい、戦争の後のゴタゴタの中でもせめて未来を担う子供達に明るい夢をみさせてあげてほしいlとレイに願ったことから、
彼は避難所を旅立つことを決意した。
だが当然、本来であれば身元不明の男を主役にするなどという冒険は普通であれば出来ないのであるが、戦争のゴタゴタで製作会社に大物俳優やいわゆるイケメンアイドルを
使う資金的余裕も、時間もなかったことが幸か不幸か、レイにヒーローモノの主役を演じるきっかけとなったのである。
もっともレイを主役に抜擢したことにはもう1つの理由があった。
というのも、製作側は財政難の状況下でより多くの注目を集めなくてはならなかった。
そのために、記憶喪失という話題性ある人間を起用すると同時に、レイの美しい顔立ちであれば、それだけで割と多くの、いわゆる女性ファン層を「釣る」ことが出来るであろうという打算的配慮が少なからず存在したことは否定できない。
結果として製作スタッフたちの目論見は上手くいくこととなり、最低限のプロモーションで子供達だけでなくかなりの女性ファンを釣ることに成功することとなった。
その中で釣られた一人が、割とミーハーなSRXチームのアヤ・コバヤシであり、彼女は美しい顔立ちのレイと彼が主演を務める特撮モノを通じて徐々にリュウセイ病にかかりつつある。
話を元に戻すと、そのような状況下でレイは必死に主演を務めていた。

 

ちなみに役者の経験など言うまでもなくゼロのレイであったが、脚本及びキャラ設定の担当者が便宜を図り、避難所で生活をしていた頃のレイの「キャラ」と近い設定が作られ、台詞もそれに対応したものとなったため、大根役者の謗りを大々的に受けることなく、現在まで至っている。
その中で彼は自分の正体を確かめるべく、できるだけの調査を試みてきたが、その試みは未だ成功に至っておらず、連邦軍を通じて自分の正体について心当たりがあるという者がやってくると聞いたときは非常に驚いたのであった。

 

レイの待機している撮影所の扉をコンコン、と叩く音が聞こえたのはその心当たりがあるという者を待っている中でのことである。
開いた扉から入ってきたのは自分と背格好のほとんど変わらない青年であった。
その青年の瞳は眼球の真っ赤な色のような赤色に徐々に染まっていき、青年はやがて涙をこぼし始めた。
そのとき初めてレイは自分のために泣いてくれる人間と出会うことになった。

 

「レイ!……よかった…生きてたんだな…」
「ああ、この通り五体満足らしいぜ」
「よかった…お前が無事でホントによかったよ…」

 

レイにとっては少々複雑だった。
自分のためにここまで泣いてくれる人間がいるということは素直に嬉しかったのであるが、対する自分はその相手のことをまったく覚えていない。
それゆえ、どうやって声を掛ければいいものなのかがよくわからない。
ただ、自分のために涙して鼻水までたらす相手に対し、記憶がないこと以外は心配無用なのだ、ということを伝えたほうがいいだろうとは思った。

 

「いつまでも泣いてんな、鼻垂れ小僧。少なくとも記憶がねえこと以外は全然困ってねえ」
「え…記憶がない?」
「ああ。気付いたら森の中でぶっ倒れてた。昔のことどころか、自分の名前以外ほとんど覚えちゃいねえ。悪ぃが小僧、お前のこともな…」
「もしかして記憶喪失ってやつなのか?」
「ああ、そうらしい。まあ気にするな、俺は気にしちゃいねえ」

 

この新西暦の世界に飛ばされてきて早数ヶ月、出会った同胞はロクデナシの敵ばかりで、ようやく再会できた仲間は記憶を失っていた、という事実はシンに大きな衝撃を与えていた。
それと同時に、レイの今後のことをシンは考えてしまった。
今のレイには今の生活があるはずであり、その場所はシンとは異なり戦場ではない。
そうだとすればレイを無理矢理自分のところに連れてきて再び戦場に引きずりだすべきではないように思えた。
同時に、自分のいた世界での最終決戦直前にレイから伝えられた、彼の正体と倒すべき相手の存在は、レイ自身のいわば根源的部分に関わるものであるから教えるべきだと
思えるが、それを今の新しい人生を歩みつつあるレイに伝えるべきなのか、非常に迷うところであった。
だが、そのとき、シンはふとレイの言った、記憶がないこと以外困ってない、という言葉に違和感を覚えた。

 

「な、なあ体は大丈夫なのか?薬はちゃんと飲んでるのか?」
「薬?俺は持病持ちだったのかよ!?かぁ~情けねえぜ…ん、でも待てよ?健康診断の類じゃ別になんともなかったはずなんだが…」
「!?ホ、ホントか!?生活してて、いきなり苦しくなったりとかはしてないのか?」
「全っ然ねえな。むしろ健康すぎるくらいだ」

 

これにはシンは驚いた。ハンパじゃないくらい驚いた。
レイ自身から、自分の命はもう長くないこと、薬を飲まなければ生存すら難しいことを伝えられていたため、シンはレイの体のことが非常に気がかりになっていたのであるが、どういういうわけかはわからないが、今のレイは健康そのものらしい。
だが、シンにとってはレイの体がなんともないことだけで十分であった。
そして、彼がとある人物のクローンであることも伝えなくていいだろう、とシンは思った。
確かに知らない方がいい、と考えたのはシンの独断にすぎない。
だが、知らない方がいいこともあるはずであり、今の新しい人生と生活があるレイに対して余計な心配の種を与えるべきではないと考えたのである。
遺伝子などの詳しい知識もないシンにとっては、親友であるレイ・ザ・バレルが、記憶がないという点を除いては、何らの支障なく無事に生きていることが何よりも大事であった。
その真相が、アインストを指揮する謎の少女アルフィミィとその乗機ぺルゼイン・リヒカイトの、人智を超えた力によるものであるということはまだシンの知るところではない。
驚くシンに対して状況にいち早く適応してかなり平静を取り戻したレイがふと時計を見ると、既に時間は昼を回っていた。
そういえば腹も減ってきたような気がすると思ったレイは食事にすることを決めた。

 

「そろそろメシ時だ。そこのロケ弁余ってるから一個食っていいぞ」
「ああ、ありがとう…」

 

さっきから色々と考え続けっぱなしのシンはややレイのペースに乗せられながらも、レイに続いて、彼の楽屋に置かれていた弁当に手を伸ばした。
その中身はなんてことのない、炒飯弁当であった。
2、3口ほど炒飯を食して、シンは何かに気付く。
卵に閉じられた米の適度な柔らかさ、口に入れたときにとろけるようなまろやかさ、それでいてアクセントのある味付け…弁当の炒飯はどこか懐かしい味をしていた。

 

「お前と炒飯を食べてるとなんか昔を思い出すな…この味も懐かしい気がする…」

 

ふとこぼれたシンの言葉であったが、そこにレイは鋭く反応していた。
というのも、初めてロケ弁の炒飯弁当を口にしたとき、レイ自身も懐かしいような感覚を覚えたからである。
そしてこのことは、目の前にいる、自分のことを知っているという男は、自分と同じ、もしくは非常に酷似した経験と記憶をもっているということであり、さきほどまでレイの中にあった一抹の疑いは姿を消した。

 

「そうか。どうやらお前の言ってることは本当らしいな…」

 

ポツリとレイは呟いた。
ちなみにシンとレイがこのような感覚を覚えたのは、シン達がアカデミーにいた頃の食堂一押しのメニューこそがかつて赤服となって卒業した卒業生が作り出した炒飯であり、様々な身体的感覚をコーディネートされて鋭い味覚を持つコーディネーター達を唸らせたその炒飯は、CE72年後において、ザフト軍における極めてポピュラーでいて美味なメニューの1つとなっていたことによる。
だが、シン達が懐かしさに浸っていたとき、彼らの耳に大音量の警報が聞こえてきた。

 

「敵襲か!?」

 

ちょうど弁当を食べ終えたシンは腰掛けていたパイプ椅子から急に立ち上がった。

 

「ちょっと待っててくれ!」
「お、オウ!」

 

楽屋を飛び出して、近くの窓から外を見たシンが目にしたのは、遠くで始まった戦闘の火花、そこへ向かっていく量産型ヒュッケバインMK-Ⅱ、リオンの部隊、そしてヒリュウ改であった。
さらに、懐から携帯型の双眼鏡を取り出してよく見てみるとヒリュウ改と相対している敵部隊は飛行タイプのゲシュペンストが十数機、そして一際シンの目を引いたのは、サイズと細部はやや異なるが真っ赤な装甲に、銀色の間接、背中に背負った巨大なフライトユニット、そして特徴的な銀色の鶏冠を持ったシンにとってはフリーダム、ストライクフリーダムに続いて忌まわしき機体、インフィニットジャスティスであった。

 

「あの機体…!アスランか!!」

 

シンはそう言って歯を食いしばり、強い怒りを帯びた視線をインフィニットジャスティスに向けていた。
既にアスラン・ザラとは一回戦ったことがあるため、確信がシンにはあったのである。
そしてシンはすぐさま懐の通信機を取り出してヒリュウ改に自分の居場所を知らせ、ビルガーの射出を要請するのであった。

 

そのアスラン・ザラは、引き連れてきたゲシュペンスト、後から続いてきたランドグリーズらとともに連邦との交戦を始めていた。
そして最初に迎撃に出てきた量産機で編成された部隊を軽く蹴散らすと、続いて出て来きた部隊を見て顔を引き締めた。
アルトアイゼンを先頭に、ヴァイスリッター、ヒュッケバインMK-Ⅱ、ジガン・スクード・ドゥロ、ヒュッケバインMK-Ⅲガンナーなど普通のDC兵なら戦う前から戦意を喪失してもおかしくない戦力がインフィニットジャスティスに向かってきている。
だがアスラン・ザラの目に大きく映るのはたった今ヒリュウ改から飛び出してきた白銀の機体、背部ウィングからエメラルドに輝くプラーナの粒子を吐き出しながらこちらへ真っ直ぐに向かってくる魔装機神サイバスターである。そしてビルトシュバインの姿がないことも一応アスランは確認した。

 

「出てきたな!各機、散開してサイバスター以外を足止めしろ」

 

その命令を受け、ゲシュペンストは散りじりになり始め、他方のヒリュウ改もそれを迎え撃つべく部隊を散開させて迎撃を始めた。
そしてインフィニットジャスティスは真っ直ぐにサイバスターに向かっていく。

 

「サイバスター!キラの仇は討たせてもらうぞ!!」

 

サーベルを引き抜き、親友の憎っくき仇に向けて振り下ろした刃をサイバスターは、ディスカッターで受け止めると、続いて攻撃を仕掛けようとしたアスランに先んじて斬撃を繰り出してきた。
しかし、それをサーベルで受け止め、反撃に出ようとするとサイバスターは瞬時に距離を置き、アスランの奥に展開しているランドグリーズの部隊へと真っ直ぐに斬り込んで行った。

 

「チィッ!だが逃がさんぞ!」

 

毒づくアスランであったが、ここでアスランにとっては予想外の事態が発生した。
新たに接近してくる機体の存在を知らせるセンサーの警報音とともに一機の機体がインフィニットジャスティスに向かってきた。

 

「悪いがお前の相手は俺がさせてもらう!」
「また邪魔をするつもりか!?この旧式の改造機が!!」

 

インフィニットジャスティスと同じく真っ赤なカラーリングに身を包み、猛スピードで接近してくるのはヒリュウ改の実質的な指揮官機であり、DC内でも爆発的な突撃力が恐れられているアルトアイゼンであった。
アルトアイゼンから放たれた3連マシンキャノンを、機体を上昇させてジャスティスは回避するが、そこに数条のビームが襲い掛かってくる。

 

「はいは~い、これはいかがかしらん?」

 

そのビームはアルトアイゼンの後ろにピタリとついているヴァイスリッターから放たれたものであった。
ジャスティスは、それらを今度は機体を下げて回避するものの、そこにはさらなる攻撃が待っていた。
アルトアイゼンの右腕に搭載されたリボルビングステークである。

 

「小賢しい真似を!」
「隊長機のようだが、ここで墜とさせてもらうぞ!!」

 

コックピットに向けて一直線に向かってくるステークに対してジャスティスは、ビームサーベルを咄嗟に引き抜いてステークを受け止めようとするが、ステークは瞬間的に軌道を変えてジャスティスの左腕に突き刺さった。
ジャスティスは弾丸が打ち込まれる直前になんとか腕を引き抜いて破壊を免れるものの、そこに追撃をかけるように上空から、オクスタンランチャーの弾丸が降り注ぐ。
上空を取られただけでなく、地上からもアルトアイゼンの猛撃が続き、徐々にジャスティスは追い詰められ始めていた。
だが、キョウスケ達はまだインフィニットジャスティスに秘められた恐ろしい力を知らなかった。

 

「一発一発が特注のベアリング弾だ。抜けられると思うなよ!!!!」

 

降り注ぐ弾丸の雨を掻い潜り態勢を整えなおしたインフィニットジャスティスであったが、気付けばその正面はアルトアイゼンに取られていた。
そして両肩にあるスクエアクレイモアが、インフィニットジャスティスに向けて火を噴く。これでキョウスケもエクセレンも、終わりだ、そう思っていた。
他方、撮影所の建物の屋上から機体の運搬を待っていたシンのところにブリットのヒュッケバインMK-Ⅱが向かってきた。
もちろん、その傍らにはシンのビルトビルガーが抱えられている。

 

「すまないブリット!」
「話は後だ!火はもう入ってるから、俺達はキョウスケ中尉たちの援護に行くぞ!」
「了解だ!」

 

シンは横たわったビルガーのコックピットに乗り込んで、キャノピーを閉める。
そしてビルトビルガーをゆっくりと立ち上がらせると、一気にビルトビルガーは上空へと舞い上がる。
シンはコックピットの中で戦場の状態を確認すると、すぐにインフィニットジャスティスがキョウスケとエクセレンと戦っていることがわかった。

 

「ブリット!あの赤い機体…知り合いだ!間違いない」
「知り合い?……!ラクシズか!?」
「ああ!アルブレードモドキに乗ってた奴だ!気を付けろよ、腕はかなりたつぞ!」
「わかった」
「あと両手足にビームの刃が付いてる!アーマリオンみたいだと思えばいいから気をつけろ」
「了解だ!ならバックスはこっちに任せておけ!」

 

キョウスケ、エクセレンに続いてシン、そしてブリットが戦場の中心へと向かっていく。
彼ら以外の相手の機体性能は量産型のゲシュペンストと比べればかなり強化したものであるが、所詮その限度だということもできる。
そのため、普通であればジガンや弐式、ヒュッケバインMK-Ⅲガンナーに相手にはほとんどならずに撃墜されてしまうのであうが、今回の、ゲシュペンストの多くは回避行動を重視しており、まるで相手をひきつけておくかのような行動し終始していたのである。
結果として、これによりヒリュウの各機は部隊を散開させて戦わなければならなくなっていたのであった。

 

その頃、スクエアクレイモアを至近距離からインフィニットジャスティスにぶっ放したアルトアイゼン、そしてキョウスケ、エクセレンの目にはにわかには信じ難い事態が発生していた。
アルトアイゼンとインフィニットジャスティス、ヴァイスリッターとインフィニットジャスティスの間には、その全長を大きく延ばしたファトゥムがあった。
それは内側のジャスティスへの攻撃全てースクエアクレイモアの1発1発、ヴァイスリッターから降り注いだビームや弾丸―を遮り、それと同時に、自らの損傷を修復し始めた。

 

「再生しただと!?」
「な、何なのよこれ!?」

 

異常とも思える事態の発生に、もはや歴戦の戦士といっても過言ではないキョウスケ、エクセレンも驚きを隠しえなかった。
そしてその驚きは、一線級のエースクラスのパイロットどうしの戦闘の中では、大きな隙となり致命的なものとなるものである。

 

「驚いている暇などないぞ!!!」

 

ファトゥムの影から飛び出したインフィニットジャスティスはビームブーメランを投げ放つと同時に、アルトアイゼンに向けて回し蹴りを放った。

 

「しまった!?」

 

ヴァイスリッターの右足がビームブーメランによって切り裂かれ、アルトアイゼンは先端にビームの刃を宿した蹴撃の直撃こそ避けたものの、右上腕部のクレイモアユニットを切り裂かれてしまった。
さらに、修復を終えたファトゥムはバランスを崩したアルトアイゼンに向かって突撃していき、先端にある刃から身をそらしえたものの、側面がアルトアイゼンのボディと衝突し、機体を吹き飛ばした。
マシンセルにより飛躍的な性能向上を果たしたインフィニットジャスティスの特徴の1つとして、背部補助ユニットファトゥムの新能力があげられる。
従来まであったのは、機動性向上のためのフライトユニット機能、対艦攻撃兵装機能であったが、これらに加え、新たに自働防御機能が加わったのである。
これは機体が感知して避け得なかった攻撃の盾となり、自動的に攻撃を防ぐというものである。
ファトゥムは、その防御が物理的に間に合わない至近距離の攻撃以外の大抵のものを感知して防いでしまうので、この機能は敵対する者にとってはかなりタチの悪いものとなっていた。
そしてこの機能こそが、大量のミサイルの誘爆と必殺のタイミングで放たれたフォールデリングソリッドカノンからインフィニットジャスティスを生還させ、スクエアクレイモア、オクスタンランチャーの連続攻撃からインフィニットジャスティスとアスランを守り抜いたのである。
この自動防御機能の最も恐るべきところは、マシンセルによる機体修復能力と相まってほぼ無限に敵の攻撃を遮る、いわば絶対防御とも評しうるほどの性能を有していることにある。
そして終には、この性能がアスラン・ザラの高いパイロット能力と合わさることにより、多くは当たらない攻撃がさらに当たらなくなってしまうという事態が発生してしまっていた。

 

「チッ!ヘタを打ったか!?」

 

吹き飛ばされ、倒れ込んだ機体を起こしながらキョウスケはダメージチェックを行なうが、クレイモアユニットの喪失と併せ、機体各部に生じたダメージは小さくない。

 

「こちらアサルト3。キョウスケ中尉、エクセレン少尉、下がってください!」
「ブリットか!?」
「シンと合流しました、あとは俺達が引き受けます!」

 

上空を見上げたキョウスケの視界に、赤い百舌が駆け抜けていくのが見えた。
その機体を駆るシンの瞳には戦うのが3度目となる、無限正義の名を冠したCE世界の最強の、覇王が剣のもう一振りのみが映っている。
コールドメタルソードを引き抜き、ビルガーは真っ直ぐに、ただ真っ直ぐにインフィニットジャスティスに向かっていった。
そしてそのまま剣を振り降ろすと、それをジャスティスはビームサーベルで受け止める。

 

「久しぶりだな!アスラン!!」
「シン!お前はまだこんなことをやっているのか!?」
「当たり前だ!俺はアンタみたいな連中を野放しにするつもりはない!」
「どうして騙されていることに気が付かないんだ!?」
「スクールの人間をエクステンデットみたいにする連中に手を貸すアンタが言えたことかよ!」

 

互いの主張は相も変わらず平行線を行くのみで、唯一交わるのは両者から繰り出される斬撃だけであった。
シンはビルガーの機動性で、アスランはジャスティスのパワーと防御力でそれぞれ相手を上回っており、パイロット能力、基本的機体性能の差でビルガーが押されていることは否定できないがビルトシュバインのときほどの苦戦は強いられていない。

 

「シン!!!」

 

ビルガーのコックピットにブリットの声が響くと、しばらく続いた両機の斬撃が止み、ビルガーはその場を急速に離れていく。

 

「シン!何のつもりだ!?うぉっ!?」

 

ビルガーに追撃をかけようとしたインフィニットジャスティスを重力エネルギーが横殴りにした。
その正体はブリットのヒュッケバインMK-Ⅱが放ったG・インパクトキャノンである。
そして、そのエネルギーはインフィニットジャスティスを包んだファトゥムに遮られてしまうが、わずかに動きを止めたインフィニットジャスティスを新たな銃口が捕らえていた。

 

「グラビトンランチャーセット!これでも喰らいやがれ!ワイルド…シュート!!」

 

ビルトビルガーが腰にマウントさせた連結型グラビトンランチャーを構え、先端に収束を始めた稲光を纏った紫色の力が一瞬の輝きを発した後、第2の重力エネルギーがファトゥムごとインフィニットジャスティスを飲み込んだ。

 

「サンキュー、ブリット!助かった!」
「いやお前が奴を引き付けておいてくれたおかげさ」
「これならあの訳のわかんないバリアも…!?」

 

シンの言葉が止まった。インフィニットジャスティスを飲み込んだグラビトンランチャーの重力エネルギーが晴れてきた中、シン、ブリットの目に映ったのはなおもインフィニットジャスティスを包み守り通すファトゥムの壁であった。
ファトゥム自体には大きなダメージが加わったらしく、元のサイズに戻ってインフィニットジャスティスの背中に収まるが、その損傷は再び回復を始めている。

 

「じょ、冗談じゃないぞ。一体ありゃなんなんだよ…!」
「落ち着け、シン。ダメージはあるんだ。倒せないことはないはずだ!」
「その通りだぜ、ブリット!!」

 

圧倒的な防御力と再生能力を見たシンたちの焦りとは、平静さを取り戻したアスランは再びビームサーベルを構えさせる。
それに呼応するインフィニットジャスティスはビルガーに再び向かってきた。
そして風と一体化した刃はインフィニットジャスティスを襲い、その動きを止めてしまっている。
声とともに割って入ってきた機体の正体。それこそ、アスラン・ザラが心から憎む、至上の存在の仇、魔装機神サイバスターであった。
振りぬかれたディスカッターの白銀の刃をインフィニットジャスティスはビームサーベルで受け止めて、鍔迫り合いを始め、両機がそこを離れるとすぐに再び刃を交し合う。

 

「待っていたぞ、サイバスター!」
「ヘっ!どこのどいつかしらねえが、言い加減てめえの好きにはさせねえぜ!」
「ファトゥムの絶対防御が破れると思うなよ!キラの仇、討たせてもらう!」
「上等だぜ!やれるもんならやってみやがれ!!」

 

再びしばらく斬撃が互いに繰り出される中、ビームサーベルをその超スピードで避けたサイバスターは握ったディスカッターを振り抜いた。
その斬撃はインフィニットジャスティスの腕に大きな傷をつけたのだが、損傷の回復は本体においても行なわれており、サイバスターが与えたダメージも徐々に回復を始めている。

 

「クソ!これじゃキリがねえぜ!」

 

マサキはコックピットで毒づいた。
おそらくアカシックバスターならば敵の防御を敵の機体ごとぶち抜くことは可能であろう。
また、コスモノヴァを使えば再生をさせる暇を与えることなく敵機の存在を消し去ることが不可能ではない。
だが、今戦場となっているのは市街地に非常に近いところであり、安易にアカシックバスターを討つことは控えたいところである。
コスモノヴァなんぞを使おうものならば町に大きな被害を与えかねない。
そうだとすればディスカッターやハイファミリアで戦うべきであろうが、それでは敵機の再生速度を上回る速度でダメージを蓄積させなければならないが、それは相手の機体性能とパイロット能力を見る限り容易ではない。
少々距離を置いてサイバスターとインフィニットジャスティスは睨みあいを続け、わずかな沈黙の時が流れ始める。
だが、それを妨げたのはサイバスターを襲ったランドグリーズの砲撃であった。
キョウスケとエクセレンが後退したのを見たマサキは、敵機が尋常ならざる相手だと判断し、それまで相手をしていたランドグリーズの部隊との交戦を切り上げてシンたちの下にまさに文字通り飛んできたのである。

 

「追いついてきやがったか」

 

インフィニットジャスティスからさらに距離を取るサイバスターに対して、そうはさせじとインフィニットジャスティスが向かっていく。
だが、そのインフィニットジャスティスにそうはさせるかとビルガーが喰らいついていった。

 

「アンタの相手なんかしてらんねえってよ!」
「シン!俺の邪魔をするのはやめろ!」

 

キラ・ヤマトの仇を討つという至上命題を妨げられたアスランは、自ら自身の力を覚醒させ、迫り来るコールドメタルソードをサーベルで受け止める。
シンはこれまでどおり次の斬撃を繰り出そうとさらにビルガーの腕を動かそうとするが、そこに出来たわずかな合間を縫うように、ファトゥムに付属するビーム砲をビルガーに打ち込んだ。

 

「ぐああぁぁ!」

 

ジャケットアーマーをパージしていなかったのがこのときは幸いして、増加装甲を失うだけでダメージをとどめることができたが、アスラン・ザラはここでできた大きな隙を逃すような、ぬるいパイロットではない。
ここぞとばかりに連続した斬撃をインフィニットジャスティスはビルガーに見舞い、わずかずつその戦闘能力を奪っていく。
援護に入ろうとしたブリットであったが、それは見透かされていたのであろう。既にヒュッケバインMK-Ⅱに向かってビームブーメランが投げ放たれており、ブリットはそれをかわすが、1撃目を回避されたため戻ってきたブーメランにも注意をむけなければならないためにシンとビルガーの援護に入るタイミングを失ってしまった。
一方、こうしてインフィニットジャスティスによってじわじわと追い詰められていくシンの姿を地上から見上げている者がいた。
飛び出していったシン・アスカをずっと眺めていたレイ・ザ・バレルである。
やっと掴んだ自分を知る手掛かりであると同時に自分の仲間だというシンのビルガーの姿に、レイの心は激しく乱されていた。
何もできず、ただ知っている人間が追い詰められていく様は、見覚えがあるような気がした。
一瞬、脳内がフラッシュして、ある画が自分の中に映った。
漂い、何も出来ない彼の目の前で巨大な物体が基地のようなものを容赦なく巨大な光の剣で切り裂いていくというものであった。
これは、破れ、力を失ったレジェンドの中で、レイにとって親代わりであったデュランダルがいる移動要塞メサイアが、ミーティアを装着したストライクフリーダムの巨大なビームサーベルに切り裂かれていったときのものである。
この画が何を意味しているのかは今のレイにはわからなかったが、自分の目の前で今起こっていることと同じく、大切な何がが失われようとする様であることは想像ができた。

その時、無力感への怒りと力への渇望がレイの中に生まれた。
既に自分の立っている撮影所の近くにも流れ弾が数発着弾しており、逃げ惑うスタッフ達、つまり今のレイの仲間達が映っている。
そして、それだけでなく、自分を知っているという者が危機に陥っている。

 

どうにかしたい

 

レイはそう思った。その時、彼の頭の中をキン、という熱い感覚が駆け巡り、頭痛がし始めるとともに、聞き覚えのあるような少女の声が彼の頭の中に響いてきた。

 

「力を使えばいいんですのよ」
「力だと?」

 

レイは脳内で騙りかけてくる何者かに対して答えた。これがいかにおかしいことであるかを気にする暇はなかった。ただ、答えねばと思えていたからだ。

 

「だからサービスですのよ」
「…どうことかはわからねえが、俺のダチだっていう奴が追い詰められてやがる。それに他の連中も、このままじゃどうなるかはわからねえ。…難しいことは嫌えだが…俺には力があるのか?」
「望めばペルゼインはあなたの力になってくれるですの…」
「そうか…なら…オイ!俺の中にある力!もしホントにあるなら俺に手ぇ貸しやがれぇぇぇ!!」

 

レイは腹の底から声をひねり出すように叫んだ。次の瞬間、彼の体は徐々に淡い光に包まれ出す。

 

「くっ!」
「な、何なの?今のは」
「お前も聞こえたか?」
「え、ええ。これってあの遺跡の…」
「ああ、あのアルフィミィとかいうやつの声だ」
「力…ってどういことかしらね。またあいつらがウジャウジャでてくるのかしら…」

 

ヒリュウ改で自らの機体の応急措置が終わるのを待っていたキョウスケとエクセレンにも、彼女の声が少しながら聞こえていた。
他方、インフィニットジャスティスの蹴撃をボディに喰らったビルガーは、そのまま吹き飛ばされ、地面を抉りながらその動きを止めてしまう。
それをフォローしようとするマサキとブリットであるが、2人の機体には、残ったランドグリーズ隊による砲撃が襲い掛かり、フォローにまわろうにも回りえなかった。
そして、それを見てニタリと笑ったアスランはサーベルを構えさせ、ビルガーに向かって刃を振り下ろそうとした瞬間であった。
付近に4条の蒼いイナヅマが同時に突き刺さり、なおもイナヅマは滞留を続けている。
その中心で淡く金色に輝く光が一際強い光を放つと、その中から一機の機体らしき物体が姿を現した。

 

「レッドオーガだと!?」

 

その場にいた、アインストの指揮官機ペルゼイン・リヒカイトと交戦したことがある者は一斉に口を開く。
少女のほんのきまぐれから得られた新たな力。それは彼女が持つ力の写し身であった…ようにも思えた。
一瞬、何人かに見覚えのあるペルゼイン・リヒカイトの姿が現れたのであったが、その両肩に浮かぶ「人」を意味するとも思しき鬼の面が、ペルゼインの頭部と融合をする。
それにより生じた光はペルゼインの全身を包み、骨と空間ばかりの身体部分は、肉体的質感が伴ったものを纏いだす。両肩、小手部分、胸、外腿、両膝、脛部分には、黒色の細かな線による炎が描かれた、真紅に輝く追加装甲のようなものを纏い、ベルトのバックル部分には気のせいであろうか、桃のような意匠が施された飾りが付属している。
そして頭部は、天を衝く2本の真っ赤な角を持つ、日本の昔話に伝わる赤鬼を思わせるような形状をしていた。
レッドオーガを赤鬼と訳することは可能ではあるが、今、姿を現したペルゼインは正にアカオニのような姿をしている。

 

「これが俺の力かよ!?」
「そうですの…あなたの面は、あなたがあなた自身である証拠…私にはそれがない…」
「なんか変身してるときと似てて代わり映えしねーな」

 

ちょっと愚痴っぽいことを吐くレイであったが、自分のいるコックピット内と思しきところには不思議と見覚えがあるような気がした。
否、それだけではない。
自分に過去の記憶はないが、確かに操縦方法がなんとなくわかるのだ。彼の思考がアカオニの使い方をことこまかに教えてくれている。
そうだとすれば、レイのまずやることは1つであった。
アカオニは親指を立たせている握った右拳を顎元にやり、その手をピンと後ろに伸ばし、左腕を前に突き出した。

 

「俺、参上!!」

 

レイは迷わずこう叫んだ。
彼にとってこの台詞は、戦うときに無理矢理自分に覚悟をさせるために言う、自分へのケジメと、気合注入をするために欠かせないものであるからだ。
一方、それを見ていたシンやアスランはやや呆気に取られていたが、そんなことなど知らないレイは、自分にとって見過ごせぬ人たちを傷つけようとするアスランの駆るインフィニットジャスティスに向けて指を向ける。

 

「いいか、ニワトリ野郎!ずいぶん好き勝手やってくれやがったが、もうやらせねえ!ここからは徹底的にクライマックスだ!!いくぜいくぜいくぜぇぇぇぇ!!!!」

 

腰に下げていた大剣を手に取り、この世界に現れたもう1つの、オリジナルと異なるペルゼインという魔人が、インフィニットジャスティスに向かっていく。
時は流れゆくものである。レイの中で語りかける少女の力が引き金となり、騒ぎ出した制御できない衝動が、新たなる力となってレイの時を再び動かし出したのであった。

 

  

 

その登場と姿に驚きを隠せない者たちがいることなどまったく知らず、現れたもう一つのペルゼイン。
マシンセルの力を得て蘇ったインフィニットジャスティスとアスラン・ザラに向かっていく、アインストの力で蘇ったレイ。だが、立ち塞がるのはやはりファトゥムの絶対防御であった。
レイとペルゼインはそれをうち破ることができるのか?ペルゼインの必殺技が繰り出されたとき、新西暦の世界に新たる戦いが始まる。

次回、スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションズデスティニー
「動き出したクライマックス後編」
を期待せずにおまちください