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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第26話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:55:02

26話「龍虎覚醒・前編」

 

「わかりました。こちらとしてもアインストの件が気になることですし、ブルックリン少尉以下4名をそちらへ向かわせます」
「か、艦長!俺は!?俺だってTPLテストで当たりが出たんですけど」

 

パイロット達が集まったブリッジでタスクの異議が申し立てられていた。
超機人が眠るとされる古代遺跡で調査研究を行うエリ・アンザイから寄せられた依頼で念動力を持つパイロットを派遣することになったヒリュウ改であったのだが、
その念動力の有無を確かめるテストにおいてその力を有するとされたタスクを除外した、ブリット・クスハ・リョウト・リオの4人の派遣が艦長であるレフィーナ・エンフィールドにより承諾されていたのである。

 

「それにここに約一名まだテストやってない男の子がいるんですけど」

 

口を挟んだエクセレンがシンの頭の上に手を乗っけた。当然ながらシンはTPLテストを行ってはいない。

 

「まぁ確かにそうですけど…」
「なんか外れっぽい顔してるけどな」
「ほっとけ!」
「まあまあシン君も怒らないの。タスク君はレオナちゃんがいなくて寂しがってるだけなんだからん」
「そんなことないッスけど、それよりもビルガーはまだパーツの交換が終わってないッス」
「え!?まだ終わってないのかよ!」
「派手に頭と翼ぶっ壊されといて威張んなよ!」
「ウッ…!そ、そこを突かれると…」
「だいたいお前は機体使いが荒すぎなんだよ!アルトだってあんな特機に突っ込んでったらタダじゃすまねえってのに」
「それは…………あのほら、え~と…ビルガーはアルトの後継機だから…」
「しどろもどろになってんじゃねえか!」

 

最近、整備班から機体クラッシャーの異名を付けられつつあるシンとしては痛いところを突かれた形となる。
スレードゲルミルとの戦闘で損傷した頭部とウィング部分は、幸いなことに現在アラド・バランガが操縦することになったもう1機のビルトビルガー用に
作られていたパーツを流用することでまもなく修理は完了する運びとなっていた。
かといってシンの「前科」が帳消しになるわけでは当然ない。

 

「わかりました。ではアスカさんはビルトビルガーの修理が完了し次第タスク少尉とブルックリン少尉の後を追ってください」
「了解しました」
「了解ッス」

 
 

このような理由で、ブリット達に遅れてではあるが、伊豆基地を出発したシンとタスクは日本海を抜けて中国に入っていた。
飛行しながらではあるが時折ビルガーの動作テストを行い、作動不良などを調査しているものの、マリオン・ラドム印、略してマ印の機体故か、
それともヒリュウ改のメカニックの腕故か、ネガティブな反応は一切見当たらない。通常戦闘レベルの動作であれば何ら不満な部分は無いものといえよう。

 

「ビルガーの調子はどうだ?」
「大丈夫だ、おかしいところはない。さすがヒリュウ改の凄腕整備班」
「おだてても無駄だぞ。それよりこの前仕掛けてきた赤いPTみたいな機体ってお前の昔の仲間が乗ってたんだろ?」
「仲間…なのかはわかんないけど元上司なのは確かかな」
「1個疑問に思ったんだけどよ、前にお前が自分の世界のこと言ってたときの話を聞いてると奴らは基本的に戦場に乱入するのがパターンだったんだよな?」
「?そうだけど、それがどうかしたのか?」
「いやぁ、それなら何であの赤い奴はノイエDCにいたんだ?お前さんの話を聞く限りだとどっちかの勢力に手を貸すような連中じゃなさそうだと思ったんだけどよ。
 現にアメリカでお前とかマサキ仕掛けてきた連中はノイエDCといなかったんだろ?」
「…確かにそうだな」

 

まだラクシズ本隊もノイエDCと合流して戦力を整えなおしたことをシン達が知る由もなく、根拠の伴わない推測だけが先行していってしまう。
だがタスクとしては、否、タスクだけでなく他の者としてもそうであるが、単機でアルトとヴァイスを撃退するほどの機体性能とパイロットは到底捨て置くことなどはできないものであり、
結果としてアスラン・ザラとその愛機インフィニットジャスティスは非常に警戒すべきものであるとの認識が形成されている。
ただこの時点で不幸であったのは、シン・アスカが一兵卒であったことであった。つまり、シンはラクシズの脅威の元凶、覇王の恐ろしさをよく知らなかったが故に、
後々シンを含むハガネ・ヒリュウ改、そして連邦軍はラクシズに対する警戒をするのが遅れてしまったのである。

 

「でもあの野郎…アスラン・ザラっつーんだけど、あいつはラクシズのスパイみたいな奴だからどの勢力にいても不思議は無いかもな。
 まあフリーダムはもういないから奴らの戦力はそんなに大きくはないんじゃないかと思うけど」
「なるほどねぇ~でもまたそのアヅランってのが出てきてもPTで馬鹿みたいに突っ込むんじゃねーぞ」
「わかってるって」
「いや、俺の勘が言ってる。お前はまた突っ込んで行く、ってな……!?」
「俺だってわざと壊してるわけじゃないんだって。気を付けるからこれからも頼むぜ」
「………」
「タスク?」

 

事実上、これからも壊すかもしれない、という不吉な宣言も込められたシンの言葉に対してタスクの返答はなく、その言葉は一方通行となってしまう。

 

「おいタスク!どうしたんだよ」
「わ、悪い。…今なんか無性に嫌な予感がしたもんでよ」
「!…念動力って奴か!?」
「そうなのかはわかんねえがブリット達に何かあったのかもしれねぇ。シン!」
「ああ!ビルガーで一足先に行ってる!」

 

そう言うとシンは手早く動作チェックを切り上げてモードを切り替え始める。続けてビルガーのウイングを展開させると、一気に機体出力を上昇させる。
そして風を押し出すような轟音がするとほぼ同時にビルガーは急加速すると、タスクの視界に映るその姿は見る見るうちに小さくなっていった。

 
 

他方、シンやタスクに先行して超機人の眠る遺跡に到着したグルンガスト参式のブリット・クスハ、ヒュッケバインMK-Ⅲのリョウト・リオであったが
一足先に遺跡に到着したノイエDCのバン直轄部隊が既にエリ・アンザイを乗せた輸送機もろとも遺跡を占拠してしまっていた。
人質を取られた結果となったブリットらであったが、ブリット達にとって意外であったのは、リクセント公国陥落の挽回を狙うノイエDCの部隊を率いるアーチボルト・グリムズとしては
エリ・アンザイの確保よりも連邦軍の最新鋭の機体であるヒュッケバインとグルンガストの新型機を手に入れることが重要であったのである。
そのため、ブリットが出した結論は自分達の機体が二人乗りであることを伏せたまま機体を渡し、隙を見て奪取するという直属の上司であるキョウスケに勝るとも劣らない分の悪い賭けをするというものであった。

 

「…では君達の機体をいただきましょうか。ユウキ君、カーラ君。彼らを拘束してください」
「…了解」
「来たか…」

 

アーチボルドの指示に従い、ユウキのラーズアングリフ、カーラのランドグリーズ、さらにランドリオン3機が参式の元へと近付いてきた。
自分の心臓が脈打つ速度をどんどん高めていくのをブリットは感じていた。かつてイングラム・プリスケンの策略によってエアロゲイターの手に落ちたクスハを救出したときにも
彼は「分の悪い賭け」をしたと言えるが、その時にはキョウスケやエクセレン、それにリュウセイやアヤといったSRXチームの手助けがあった。
しかし、今回はそうした手助けを期待することは出来ない状況にあるだけでなく、目の前の敵は腹に一物も二物も隠し持っていたイングラムとは異なり、
自分の目的のためには平然と人質を取るなど、いわば正々堂々と卑怯な手段を取る元テロリストである。そのため敵がいかなる方法を取ってくるかといった推測だけがブリットの頭の中を駆け巡る。
だがブリットは全てを守りきることを諦めていない。これまで仲間そして運に恵まれた彼は最善の結果を強く信じていているのである。
これはDCのパイロットとして現実を重視し続けなければならなかったユウキや、
自分のいた世界を想像した邪神にとことん嫌われ、その邪神の凄まじいまでの加護を受けた覇王の軍勢ことラクシズに多くのものを奪われてきたシンとは大きく異なるところであった。

 

「悪いけど…あんた達の機体をもらうよ」
「アンザイ博士の命は保証してもらえるんだろうな」
「出来る限りのことはする」
「何!?」
「ごめん。こっちにも色々事情があるんだ。でもあたし…あんた達のことを見直したよ」
「え…?」
「余計なことを言うな」

 

人質を取るという卑怯な手段を平然と取るアーチボルドのやり方に憤るブリットとは対照的に、腹の中でそのやり方に強い憤りを覚えているのがカーラの口を止めさせたユウキであった。
考え方に大きな違いがあるとはいえ、ブリットと同様にユウキとしても卑劣な手段はその本意に大きく反するものである。
それ故にリクセント公国奪還のために襲撃してきたハガネを抑えるためにアーチボルドが用意していたコンテナを使用不能としたのである。
所属こそ同じノイエDCであるものの、直属の上司であるアーチボルドとは反りの合わないユウキは常々心労に悩まされているところであったが、
今回はアーチボルドが厳しく目を光らせておりリクセントの時のようにアーチボルドを出し抜くことは容易にはできそうにない。
今のユウキの中ではアーチボルドへの怒りとそれに従わざるを得ない己への怒りが湧き上がりつつも、常に冷静であることを心がけるユウキはそれら怒りを必死に抑えているのであった。
だがそれ故にカーラに対する口調がやや厳しくなってしまう。

 

「ご、ごめん…ん。人の気配が…!もしかしてあんた達の機体は!?」
「カーラ、同じことを二度言わせるな」
「ユウ!?」
「お前…!」
「お互い様ということだ。ただし、事が始まったら容赦はせん」
「フェアでいこうってことか。案外、お前も甘いんだな」
「…では機体から降りてもらおうか、ブルックリン」

 

ブリット、そしてユウキが小さく鼻で笑う。だがその笑いは侮蔑や軽蔑によるものではない。
これまでそれぞれの採る手段の違いから強く反発しあっていた2人であったが、今回はそれぞれ互いを甘いと思いつつも、心の中のどこかで互いを少しだけ認めていたのである。
ラーズアングリフの手が静かにグルンガスト参式のコックピットのすぐ傍まで伸ばされると、すでにそこから顔を出していたブリットがさらに出てくる。
そして差し出された手に飛び移ろうとした瞬間であった。
参式、ヒュッケバインMK-Ⅲそれぞれのコックピットに警報音が響き渡り、ついで遺跡周辺の空気がわずかに震え始めたのをブリットら4人、そしてユウキ、カーラは感じ取った。

 

「何だ!?」
「こ、これは転移反応!?」
「ま、まさか!?」

 

空間が歪み、紫に淡く輝く光とともに、どこからともなく20を超える物体が現れて遺跡周辺を包囲する。それらを構成するのは、全身を骨と爪のみで組上げたモノ、触手の様な蔦のようなものを
全身から伸ばす植物のような出で立ちをしたモノ、そして鎧のようなものを全身に纏いつつもその中は何一つの物体も存在しない空っぽなモノであった。
そしてそれら正体不明の物質群は迷うことなく遺跡周辺に展開していたノイエDCの部隊への攻撃を開始する。

 

「奴らの狙いも超機人か!」
「各機はアインストの迎撃を。超機人を彼らに渡してはなりません」
「連邦の新型はどうするんです?」
「最優先すべきは超機人の入手です。でなければここまで来た意味がありませんしね」
「了解…!」

 

アーチボルドから発せられた新たな指示に従いユウキは差し出されていたラーズの腕を元に戻す。この隙にブリットはコックピット内に戻って戦闘態勢に移ろうとしていたが、
彼らが集結している付近の空間がさらに歪み、数体の植物型アインスト、通称アインストグリートが姿を現した。

 

「「しまった!?」」

 

ブリットとユウキが驚きの声をほぼ同時に発するが、アインストグリートはまず近くにいたランドリオンに触手を伸ばしてそれらの機体を絡め取ってしまう。
身動きが取れなくなったランドリオンはそこから脱出しようと動き回ろうとするが、触手を振り切ろうとしているランドリオンに向けて無情にもアインストグリートの頭部と思しき部分から
高エネルギーを内在した光線が放たれてしまった。その光はランドリオンを撃ち抜くと、続けて爆発が起こり、ランドリオンは無残にも残骸へと姿を変える。
さらに別のアインストグリートが伸ばした触手は、すぐ近くにいたラーズアングリフ、グルンガスト参式の隙を突いて絡め取り、動きを奪ってしまった。

 

「!!」

 

中身の無い、ぼんやりと輝く球体が赤く光り空洞の中心でエネルギーが収束を開始する。さらにそのエネルギーは見る見るうちに高まっていく。
そのエネルギーが向けられている先には、突然の襲撃により完全に隙を突かれ身動きをほぼ完全に奪われてしまった結果となっているグルンガスト参式とラーズアングリフがある。
厚い装甲と念動フィールドを持つ参式、同じく厚い装甲とビームコートを持つラーズアングリフであれば普段ならばアインストグリートの光線で大きな損傷を受けることはないのであるが、
今回は距離があまりに近接しているために、この距離から直撃を受けてしまってはただではすまないことは容易に想像できるところであった。
そして収束を終えたエネルギーが一瞬だけ小さくなり、対象に向けて放たれようとしたその時であった。
雲の上、上空から真っ直ぐに、ただ真っ直ぐ一直線に落下してきて、大地に1本の剣が突き刺さる。剣は岩の大地を砕き、深々と突き刺さっているが、それだけではなく
参式とラーズの動きを奪っていたアインストグリートの内部にある赤い球体とそのボディを貫いている。
そして剣に続けて上空から、怒りと悲しみを秘める真紅の瞳を持つ男を乗せた、百舌の名を与えられし紫色の機体が急降下してきた。
やっていることがつい先日に激しい命の取り合いをしたウォーダン・ユミルのスレードゲルミルと似ていることは少し自身でも気になっているが、この場では適切な出現方法であったことを否めない。

 
 

「シン!」
「すまない、遅れた!大丈夫か!?」

 

言いながらシンは大地へと突き刺さったコールドメタルソードを引き抜き、さらにその刃を横に薙ぎ払ってインストグリートを切り裂いた。
成分の全く不明な緑色の汁が辺りに飛び散るのとほぼ時を同じくして、上下に真っ二つに切り裂かれたアインストグリートは、もがくようにほんの少しだけ体を震えさせる。
するとそのまま力を失って萎び、その体が砂のような灰のようなものへと変化してボロボロと崩れ落ちていく。

 

「ああ、すまない。助かった」
「今タスクもこっちに向かってる!状況は!?」
「研究チームの輸送機がノイエDCに押さえられて、アインストは超機人を包囲してる!だがDCが混乱してる今しか博士達を助けるチャンスは…」
「了解!ならビルガーで突っ込んで輸送機に取り付く!バックスを頼む!」
「よし!援護は俺達に任せろ!リョウトもそれでいいな!?」
「わかったよ!じゃあ僕が今から隙を作るからその間に輸送機に近付いて!」

 

今まさにタスクの予感が的中していた。もっとも高い機動性が高度に要請されているこの状況下では突撃することはある意味やむを得ないのであるが。
参式とヒュッケバインMK-Ⅲガンナーではやや小回りに難があるのは事実であるし、かといっMK-Ⅲを分離させたのでは各個撃破のおそれがある。
この場でシンの頭の中ではタスクに言われたことが完全にどこかに追いやられていたことは間違いない。
だがそんなことを議論している場合でないことも間違いなく、一時的に前面に出て来たヒュッケバインMK-Ⅲガンナーの道を開けるようにビルトビルガーは脇に移動する。
するとビルガーのコックピットにある意味聞きなれつつあったあまり好ましくない声の主から通信が入ってきた。

 

「久しぶりだな、シン・アスカ。機体の色が変わったから別人かと思ったぞ」
「!アンタ…たしかユウキ・ジェグナン…!」
「まさか貴様に助けられるとは思わなかったがな」
「…別にアンタを助けた訳じゃない。参式のついでだ」
「そうか。…アインストと交戦する限りで貴様らと銃を向け合う必要性はない。邪魔をしないならば攻撃はせん」
「アンタらしくないな」
「…状況を見て最善の判断をしただけだ。カーラ、俺達は超機人周辺のアインストを叩く。突いて来い」

 

そう言うとユウキのラーズアングリフはランドグリーズを連れてシン達の下から離れていく。
既に超機人周辺のDCの部隊はアインストとの激しい戦闘を開始し始めており、そちらへの援護に向かうことは間違いではないが、
ここでシンは、どこかに甘さがあるような彼の行動にほんの少しだけ好感を持っているという不思議な感覚に気付いていた。
とはいえ感傷に浸っている暇などなく、ヒュッケバインMK-Ⅲガンナーから発射された大量のミサイルがシン達と輸送機の間に立ち塞がるアインストの集団へと降り注いでいく。
地面に着弾して次々と爆発を起していく大量のミサイルは、爆煙と土煙を大量に発生させてアインストの視界を奪い、その動きを抑制する。
そして動きが鈍ったアインストクノッヘンの目の前に分厚く舞い上がっている煙を突き抜け、ビルトビルガーが姿を現した。ビルガーは既に振りかぶったコールドメタルソードを振り下ろして
そのボディの右肩相当部分から先を切り落とすと、振り返ることなくその先にいる新たに登場した鎧型のアインスト、アインストゲミュートへ向かっていく。
当然、腕を切り落とされた程度で戦闘能力が奪われることはないにクノッヘンがビルガーを後ろから挟み込むべく振り返るのであるが、振り返ろうとしたところでクノッヘンの頭部ごと、
そのボディを巨大なドリルを先端に纏ったナックルが貫き、粉々に打ち砕く。一方、先頭に立っているシンはビルガーにグラビトンガンを構えさせると躊躇無くゲミュートの脚部目掛けて
銃の引き金を引いた。銃口から放たれた重力エネルギーの塊はそのままゲミュートに着弾してその両足を消し飛ばすのだが、お返しとばかりにゲミュートもその体を
頭部、ボディ、両手へと分離させてビルガーの前面に立ちはだかる。とはいえビルガーも動きを止めることはなかった。

 

「テスラドライブ出力上昇、クラッシャーセット!はあああぁぁっ!!」

 

ビルガーは修復の完了したウイングをまるで羽ばたかせるかのように展開して上昇しつつ、右腕のクラッシャーをセットアップさせるとそのままの速度で突っ込んでいく。
そしてそのままゲミュートの頭部をスタッグビートルクラッシャーで掴み取ってしまうと、万力で押しつぶすかのように、その得物を握り潰してしまった。
宙に浮かんでいる両腕も左腕に構えられているグラビトンガンから放たれた銃弾で破壊され、
残されたボディもクノッヘンを打ち砕いてもなお勢いと力を失わないドリルブーストナックルに貫かれ、破片は灰とも砂とも判らぬものへと姿を変えていく。
空中での近距離戦を得意とするシンとビルガーの位置を煙の中でも正確に把握した上でドリルブーストナックルを撃ち込めるのは、当然ながら参式に搭載されているT-Linkシステムと
パイロットであるブリット、クスハの念動力があってのものである。だがシンの行動を予測した上でバックから援護をできるのは、ブリットとシンがともにキョウスケ・エクセレンの後に続いて、
セットで戦闘を行うことが多かったことによるところが大きい。

 

そして爆煙を抜けたビルガー、そしてシンの目に入ってきたのは輸送機に取り付いていたノイエDCのガーリオンがアインストに取り囲まれ、撃破されていく光景であった。
既に半壊状態となった最後のガーリオンは徐々に輸送機から離れていかんとしているが、それを黙って見逃すアインストではなく、執拗にガーリオンへ攻撃を加えていき、その姿を爆発へと変える。
さらに続けてアインストらは周辺から次の標的を探し始めると、すぐに一斉に輸送機へと体を向けて移動を開始し始めた。

 

「あいつら!輸送機を!」

 

その光景を見てシンはアインストが次は輸送機に狙いを定めたのだと知ると、グラビトンガンを連結モードに移行させ、長い砲身と連結させる。

 

「グラビトンガン連結モード起動!エネルギーチャージ!」

 

シンはビルガーの両腕で固定させた連結型グラビトンランチャーの砲身の先をアインストの集まるど真中に向けさせると、その先により多くの、より高密度の重力エネルギーが収束を開始する。
一方のアインストはまだビルガーの接近を認識しておらず、徐々に輸送機との距離を詰め始めているのみで攻撃も防御も準備をしていない。

 

「チャージ完了…ぶっ飛べ!グラビトンランチャー!ワイルドショット!」

 

シンの声がビルガーのOSに瞬時に認識されてビルガーが引鉄を引いた。シルバーとパープルのシンプルな装飾が施された砲身の先から放たれたエネルギーは反動でビルガーすら
後ろに押しやるほどのものであり、黒色混じりの紫色の光は次々と輸送機に狙いを定めていたアインストの群れを飲み込み、押しつぶしていく。
しかし難を逃れていたアインストはこの攻撃によりシンとビルガーの存在に気付き、攻撃の矛先を輸送機からビルトビルガーに向け変え始めていた。
まずはアインストグリートの群れが上空のビルガーに向けて収束させたエネルギーによる砲撃であるハイストレーネを放ち、十を超える数の火線がビルガーに襲いかかる。
シンはビルガーを急降下させつつも、グラビトンガンの連結砲身を取り外し、地表付近で右腕にコールドメタルソードを、左腕にグラビトンガンを構えさせてアインストの群れに再び突撃していく。
同時にビルガーはグラビトンガンの引鉄を引いて、その動きへの対応が遅れたアインストクノッヘンとグリートに黒紫の光の玉をお見舞いしつつ、向かってきたゲミュートの腕や脚部を
コールドメタルソードでときに切り払い、ときに斬り捨てると、ちょうど目の前に立ち塞がった別のゲミュートに次の狙いを定め、
迷わずに剣の切っ先を正面に向けてひたすら真っ直ぐに突撃して行った。そしてそれは、まるでかつてシンの駆るデスティニーが、連合軍のウィンダムやダガーLを
大剣アロンダイトで次々と串刺しにしていたときのような光景であった。しかし碌な動きをしなかった連合軍のMSと異なり、アインストはダメージを受けても易々とはやられないし、良く動く。
突っ込んでいく横から一体のグリートがハイストローネでビルガーを狙っていたのである。
コックピット内に敵の攻撃を知らせる警告音が響きシンが敵の攻撃を知ると、とっさに手元のレバーを引いて機体を急上昇させ、それを回避することに成功した。
さらにそこを狙って、本体から分離したゲミュートの頭部がビルガーに迫っていくが、上昇を止めたビルガーの中のシンは瞬間的に大きく目を見開いた。

 
 

「うおおおおぉぉぉっっ!!」

 

ビルガーが再び急降下をし始め、正面から向かってくるゲミュートの頭部目掛けて真っ直ぐに突撃していく。急激に速度を上昇させていくビルガーの構えている剣の切っ先は
そのまま向かってきたゲミュートの頭部を深々と貫き、さらに棒立ち状態になって立っていたゲミュートのボディをも貫いた。
とはいえ、アインストの中でもゲミュートは耐久性に特に秀でている種であり、頭部とボディを貫かれてもまだなおわずかな動きをし続けている。
するとビルガーは内部が空洞になっているゲミュートの鎧の中にグラビトンガンの先端を突っ込み、零距離から引鉄を引く。これにより内部のコアを撃ち抜かれたゲミュートの全身は
崩れ落ち始めるが、そのタイミングを狙って腕先端の爪を握り締め巨大な拳とさせたクノッヘンがビルガーに突っ込んできた。
至近距離からの直接攻撃にビルガーの機動性を持ってしてもそれを咄嗟に回避することは叶わず、拳がスタッグビートルクラッシャーの上からビルガーを力任せに殴り飛ばした。

 

「!」

 

ガードしてダメージを幾分か軽減することはできたものの、吹き飛ばされていくビルガーは空中で態勢を整え直すが、このときシンは後ろを見やり、また機体を上昇させ始める。
テスラドライブの放つ輝きを翼から振り撒きながら、足元のクノッヘン、グリートの攻撃を機体を左右させてかわしていくシンはこの時、
その翼を羽ばたかせながら百舌という鳥を意味する機体と一体となり、まさに鳥の人となって大空高く舞い上がっていっていた。
シャドウミラー製の特機やマシンセルによるパワーアップをした機体との戦闘におけるビルガーのパワー不足を嘆いていたシンであったが、
逆に言えばそれら以外の相手をする場合においては、ビルガーは多少の無茶にも耐え切るほどの頑丈さとパワーを秘めている高性能の機体であるとの認識も持っている。
そして、それ故にアインストの群れに突っ込んでの近接戦闘を挑んでも大丈夫だと判断しているのである。

 

一方でアインストの群れがビルガーに釘付けとなっている中、やや薄れ始めた先ほどの爆煙をビルガーに続けて突き抜けてきた機体があった。
ヒュッケバインガンナー。第三の凶鳥ヒュッケバインMK-ⅢがAMガンナーとドッキングしたその機体はMK-Ⅲ単機では実現し得なかった高機動・大火力を備えており、
月面におけるマオインダストリー防衛戦においてインスペクター四天王の一角、メキボスをも退けるほどの力を持つことが実証されている。

 

「G・テリトリー収束!フルインパクト・キャノン!!」

 

フルインパクトキャノンは量産試作型ヒュッケバインMK-ⅡのGインパクトキャノンを計4門搭載したAMガンナーと、ヒュッケバインMK-ⅢのT-Linkシステムにより
制御されたEOT応用エンジンであるトロニウムエンジンが生み出すエネルギーが合わさることにより初めて実現されたヒュッケバインガンナーの最強兵装である。
1門のみでも高い攻撃力を有していたGインパクトキャノンを4つ、単純に考えて4倍の威力を持つ高密度の重力エネルギーが上空のビルトビルガーを狙っていた
アインストの群れを飲み込んで消し飛ばしていく。そしてビルガーは親指を突きたてながら拳を振り上げると、一気に輸送機へと向かって飛んでいった。
身動きが取れなくなっていた輸送機にビルガーが取り付くと、シンはそのコックピットに接触回線を繋ぐ。

 

「輸送機、ここは俺達が引き受けます。早くここから離脱してください!」
「り、了解した」

 

輸送機のパイロットは短く返答をすると、さらなる追撃が始まる前に離脱すべく機首を脱出ルートの方へ向け変えた。

 

「よし、あとは…くうっ!!」
「!!」
「こ、この感じは!?」
「また…呼んでる?」
「いや、それだけじゃない!
「え!?」
「どうした!機体トラブルか!?」

 

一方遺跡に眠る超機人、そしてさらに別の者の念をブリット達4人は感じ取っていた。
プレッシャー、息苦しさ、何かが腹の底に響いてくる感覚をそれぞれが感じたものの、やはり念動力を持っていたわけではなかったシンは状況が飲み込めず、
わずかに動きを止めたグルンガスト参式とヒュッケバインガンナーに目をやる。

 

「奴が来る!シン、お前も気を付けろ!」
「来る?何が来るってんだよ!?」

 

シンの質問に答えが発せられる前に遺跡周辺の空間が再び歪み、遺跡の周辺に再びアインストの機体が転移してきた。
だが先ほどまでと決定的に異なるのは、他のアインストと出で立ちがやや異なる赤い夜叉のような機体が現れたことであった。

 

「何だあの機体…いや、あれはまさか!?」
「そうだ、コードネームレッドオーガ。アインストの指揮官機と思しき機体だ」

 

シン達の目の前に現れたペルゼイン・リヒカイト。ブリットはシンがエルザム達と一時的に行動を共にしている間に一度交戦したことのある機体であったが、シンにとってもその姿には見覚えがある。
厳密に言えば一瞬その姿らしきものを見ただけであるが、その姿は先日アスラン・ザラがインフィニットジャスティスでヒリュウ改に襲撃を仕掛けてきたときにシンのビルガーを救った、
日本童話・桃太郎に出てくる赤鬼のような機体がその形態となる前に一瞬だけ見せたものと同じであったのである。

 

「…あのときみたいに変化しない?どういうことだよ、ブリット。あのアカオニとは別の奴なのか?」
「この念…あれはこの前のアカオニじゃない。やっぱりあのアインストか!」

 

伝わって来る、自分を押しつぶしそうな念に対して、歯を食いしばって抗いながらブリットが自分なりの結論を出す。

 

「ふふ、あたりですの。でもあなた達の言ってる機体もまたペルゼインですのよ」
「お、女の子の声?アインストに人間は乗ってないはずだろ!?」

 

突然聞こえてきた幼女の声に驚きを隠しえないシンがさらにブリットに問い掛けた。

 

「いや、あいつはアインストだ。多分、人間じゃない!」
「今はまだ…ですのよ」
「何!?どういうことだ!」
「答える必要はございませんの。それに…あなた達にはここで眠っていただきますので。永遠に」

 

ペルゼイン・リヒカイトに乗るアルフィミィという少女が喋り終えると、ペルゼインを始めとしたアインストが活動を開始し始める。
そしてそんな中、参式のもう1つのコックピットの中でクスハは他の者が感じ取っていなかったものをただ1人感じ取っていた。

 
 

「ブリット君…あの子、こっちを狙ってくる」
「何!?」
「あの子は私達を…!」
「リョウト、リオ、シン!お前達は輸送機を!あいつは俺達で食い止める!」
「な、何言ってるんだよ!」
「いいから、早く博士達を!時間はこっちで稼ぐ!」
「…こっちの答えは聞いてないってことかよ、わかった…でも…死ぬなよ?答えは聞かないけどな!」

 

シンに予知能力の類はなかったが、代わりにここである既視感に彼は見舞われていた。
奇しくも要塞メサイア・レクイエム攻防戦でフリーダムとキラ・ヤマトを自分が相手をすると言って1人立ち向かって行ったレイ・ザ・バレルの姿がブリットと被ったのである。
そしてあの時も、自分は自分のすべきことのみに追われ仲間を助けることができなかったのであり、根拠のない嫌な予感がシンの中を駆け巡っていた。

 

だが、そんな思考をする十分な暇をアインストは与えてはくれなかった。

 

「いいえ、ここからはどなたも逃しませんのよ?」
「何!?」

 

アルフィミィが冷たく微笑むと離脱を開始していた輸送機の進行方向の側面に長距離砲撃能力に長けたアインストグリートの群れが転移してきたのである。

 

「しまった!輸送機が!」

 

輸送機の後詰めをする形となっていたビルトビルガー、ヒュッケバインガンナーのいる位置からはすぐさまアインストグリートの群れに攻撃を仕掛けることは困難な位置状況にあった。
そのため無情にも収束を終えたハイストレーネが一斉に輸送機に向かって放たれてしまう。

 

「くっそおおおおぉぉぉ!」

 

何ができるかはわからないが体が先に動いていた。ビルガーは最大出力で輸送機に向かって荒々しく翼を羽ばたかせる。
そして、決定的に間に合わないタイミングと状況はシンの脳裏に、自分のいた世界における、「守りきれなった」瞬間の映像を克明に映し出す。
頭では間に合わないだろうと認識しつつ、それをどうしようにもできない絶望感がシンの心を蝕み始めていく。

 

また目の前で…そうシンが思ったときであった。

 

輸送機に向かって伸びていく幾条もの光線と輸送機の間に巨大な遮蔽物、否、血塗られつつも新たに蘇った地球圏最強の盾が猛スピードで現れて輸送機の正面に立ちはだかると
全てのハイストレーネはどれも輸送機に到達することは叶わず、全てが完全に弾き飛ばされてしまったのである。
そして、ビルガーの下に一本の通信が入り、聞き慣れてきた悪友の声が聞こえてきた。

 

「ほら、俺の言った通りまたお前は突っ込んで行ったろ?」
「タスク!」

 

ビルトビルガーに遅れること数分、最強の盾ジガンスクード・ドゥロ、略してガンドロが絶体絶命の状況で姿を現したのである。

 

「ほら、そんなことよりも早く周りの雑魚を何とかしろよ!」
「わかってる!リョウト!バックスを頼む!」

 

絶望的な状況をひっくり返したのは新西暦の世界で新たに出来た仲間であった。
シンに確定的な自覚はないが、彼のいた世界と大きく異なる事項の1つには、この世界においては頼れる仲間が数多くいるということである。
時にぶつかりあったりしつつも、何かの絆によりどこかで繋がっている、そんな仲間にめぐり合えたことは幸運なことだといっても差し支えはないであろう。
だが、シンに絶望を感じさせた状況はまだ終わりの幕を引いてはいなかった。

 

輸送機の防衛を巡る戦闘が行われている一方で、超機人の防衛を巡る戦闘は一段と激しさを増していた。
ペルゼイン・リヒカイトの全身、両肩の仮面から漏れ出した破壊の光ライゴウエを、グルンガスト参式は上半身をかがめ、念動フィールドを展開させつつ掻い潜る。

 

「喰らえ!オメガブラスター!」

 

そして反撃として参式の胸部から放たれたオメガブラスターであったが、ペルゼインの前に肩部の2つの鬼面が立ちはだかり攻撃を遮断した。

 

「お見事ですの…しもべが反応するだけのことはございますのね」
「くっ!クスハ、ヒリュウはまだ来ないのか!…クスハ!」
「あなたのお仲間でしたら今頃あっちの人の別働隊との戦闘中ですのよ」
「どうしてお前がそんなことを知っている!?」
「ふふ、女が秘密を聞きたいなら直球だけじゃいけませんのよ?」

 

ブリットはこのとき激しく焦りを感じていた。
得体の知れない強大な力と対峙している中、先ほどから繰り出す攻撃はどれも決定打というには程遠い程度の効果しか生み出していない。
その上、敵の指揮官はまるで自分の上官であり、いわば天敵であるエクセレン・ブロウニングのような口ぶりで自分の口撃を煙に巻く。
まだ大きなダメージを参式が負った訳ではないのだが、ブリットは物理的にも、精神的にも追い詰められていると感じられていた。

 

「ふざけたことを!クスハ!どうした!?」
「や、やっぱり呼んでる…!?」
「呼んでるって…まさか超機人か!?」
「わ、わからない…けど!!?ブリット君…来るわ!」

 

だがクスハの口が十分な言葉を紡ぎ出す前にペルゼイン・リヒカイトはグルンガスト参式目掛けて一気に距離を詰めてきた。
そのまま両肩から分離した鬼面は参式の両肩に深く喰らいついてその行動の自由を奪ってしまう。
参式は背部スラスターを噴かしたり、両腕を可能な限り強く動かして鬼面を振りほどこうとするのであるが、鬼面は参式に喰らいついたまま全く離れることはなかった。

 

「ぐうっ!!」
「人の念がなければしもべは御しやすくなるはずですの…だから…あなた達にはここで…永遠に…眠っていただきますの」
「お前の思い通りに行くと思うな!参式の力はこんなものじゃない!!」
「お若いですのね…ならば利用させていただきますの。その機体の受信機を」
「受信機!?T-LINKシステムのことか!?」

 

「こいつで…ラストオォォォ!」

 

輸送機の進行方向上に現れたアインストグリートの群れの最後の一体を、ビルガーは上段から一気に振り下ろしたコールドメタルソードで斬り伏せる。
力を失い崩れ落ちてゆく植物様の正体不明の物体を目の端で見やりながらシンは軽く一息を入れるが、次の瞬間にシンの耳に聞こえてきたのは何かの爆発音であった。

 

「シン!参式が!!」
「え!?」

 

続けて入ってきたリョウトからの通信を聞き、シンが言われたように参式が戦っている方向へ目を向けるとそこには信じられないというよりも、信じたくない光景が広がっていた。
鬼面に拘束されて身動きが取れなくなった上に、T-Linkシステムを逆に利用されて操作不能となったグルンガスト参式の腹部に突き刺されたペルゼインの刃は、
その両腕に込められた力に任せて参式のボディを抉り、削り取りながら斬り進められていく。
そして脇腹に相当する部分まで斬られた参式の腹部を中心に小さからぬ爆発が起こっていたのである。

 

「ブリット、クスハ!返事をしろ!何とか言えよ!何でもいいから答えろよ、ブリット!!」
「リョウト君!」
「わかってる!リオ、タスク、シン!二人を助けに行くよ!!」
「当たり前だ!」
「合点承知!あいつらを死なせたりなんてするかよ!」
「残念ですが…もう遅いのですのよ」
「遅いだって?…遅いもんか!アンタ、よくも…よくも参式をやったなああああああぁぁぁぁっ!!!」

 

この時ばかりはシンも、自分が激しい怒りを糧にして何らかの覚醒状態に入ったような感覚を自覚していた。
怒りを燃え上がらせた真紅の瞳が大きく開き、手早くビルガーのモードを切り替える操作を行っていく。

 

「ジャケットアーマー、パージ!高速戦闘モード移行、テスラドライブ出力最大!行くぞ、ビルガー!!」

 

いつの間にかほぼ完全に馴染みつつある音声入力システムを利用して追加装甲を切り離し、本来の姿を現したビルトビルガーは背部のウイングを展開させる。
続けて1つウイングを羽ばたかせると次の瞬間には鮮やかなエメラルドに輝く粒子を振り撒きながら一直線にペルゼイン・リヒカイトへと向かっていった。
さらにビルガーの後を追う形でヒュッケバインガンナー、輸送機の離脱を確認したタスクのガンドロがそこに続いていく。

 

他方、グルンガスト参式を戦闘不能に追い込んだペルゼイン・リヒカイトはいったんその注意を参式から遺跡に眠る超機人へと向け変えていた。
そして無言のまま、細かく鋭利な牙をむき出しにして口を開けると、再びライゴウエを放って遺跡付近の岩や石を吹き飛ばし始める。
やがて大きめの爆発が起こると、崩れた石の中から一体の巨人が静かに姿を現した。全体像としては東洋の神獣である龍をベースにした人型のものとでも言うべきものであろう。
だがその姿ははっきり言って五体満足などという言葉とは大きくかけ離れたものであり、身体の各部分が欠損していたり、石化していたり、今にも崩れ落ちそうな外観をしている部分すらある始末である。

 

「まさか…本当に…存在していたのか?」
「で、でも何であんなにボロボロなの!?」
「さっきの攻撃でダメージを受けたのか!?」
「ユウキ君、カーラ君!あれを彼らに渡してはなりませんよ!」
「了解っ!」

 

遺跡周辺に展開していた部隊の救助・援護を行っていたユウキとカーラとは対照的に、
先ほどまでは積極的に戦闘に参加していなかったアーチボルドが急に焦りの表情を浮かべ、乗機であるエルアインスが超機人へと近付いていくペルゼイン・リヒカイトに向かっていった。
だが鬼面から放たれたおびただしい数の光線の1つが運悪くエルアインスの背部テスラドライブユニットの先端を撃ち抜いてしまい、エルアインスはバランスを崩して落下を始めてしまう。

 

「くあっ!」
「少佐!」
「あれは…私達のしもべとして再生させていただきますの…そして…始まりの地に終わりを告げる使者となっていただきますのよ」

 

アルフィミィは静かにそう言うと、遺跡と参式もろともに、さらにライゴウエを浴びせかけていく。
そしてトドメをさすべく再び刀を手に取るのだが、それを遮るかの様にペルゼイン・リヒカイトの周辺に大量のミサイルが降り注ぎ始めた。

 
 

「何ですの!?」

 

連続して起こる爆発の中で、咄嗟に鬼面を展開させることによりミサイルの直撃を防いでいたアルフィミィはミサイルが放たれた方向へと目を向ける。
そして彼女の目に映ったのは、一見すれば鈍重そうな赤い機体。
だがアルフィミィにとってはこれが自分の邪魔をしたということの他にどのような意味を持っているのかを知る由はない。
他方でかつて激戦を繰り広げてきたブリットやシンにとっては全くの予想外であった。ブリットの窮地を救ったのは赤い砲撃戦用の機体、ラーズアングリフであったのだから。

 

「邪魔をするんですのね?」
「そうだな。本当であれば非常識なものには関わりたくないのだが、残念なことに超機人の防衛は命令なのでな。悪く思わないでもらおう」

 

ユウキにしてみれば超機人の防衛に大した興味はないし、またしても敵に塩を送るような結果を招くことは本意ではない。
だが、反りの合わないとはいえ上官の命令もあるわけだし、非常識極まりない正体不明の勢力の目的達成を黙ってみているほど物事に無関心というわけでもない。
ここでユウキにとって幸運であったのは、彼に念動力の素質が少なからずあるとはいえ、ラーズアングリフにT-Linkシステムが搭載されておらず、
多少のプレッシャーと原因不明の軽い頭痛があることくらいの問題点はあれども、機体の操作を奪われることがなかったということであった。

 

そして、ラーズアングリフは脚部ローラーを駆動させて移動を開始すると同時に、ペルゼインに向けてリニアミサイルランチャーの引鉄を引く。
向かっていくミサイルはこれまでの攻撃と同様に鬼面に遮られ、さらに鬼面を押しのけて刀を手にしたペルゼインがラーズアングリフに向かって斬りかかっていく。
それをラーズアングリフはシザーズナイフで受け止めると、そこで両機による鍔迫り合いが始まる。
だが超機人強奪を目論むアルフィミィとしては悠長に戦闘を行っているつもりなど毛頭無く、ペルゼインは再び口を開いて目や口、その他全身の隙間にライゴウエの光を宿し始める。
これは一気にケリをつけるという腹積もりによるあったのだが、他方のラーズアングリフのユウキもほぼ同時に肩部に搭載されているファランクスミサイルの発射ボタンに手をかけていた。

 

「零距離攻撃が貴様の専売特許だとは思わないことだな」

 

ここではエネルギーチャージが不要な分だけわずかに先立ち、ファランクスミサイルがペルゼイン・リヒカイトに直撃して機体を吹き飛ばす。
だが今度はラーズアングリフの背後からペルゼインとは別に、独自の行動が可能な2つの鬼面が襲いかかってくる。
大きく口を開けて迫る鬼面を、ユウキは鈍重そうに見える機体を左右に動かしながら回避していくが、もう1つの鬼面による体当たりがラーズアングリフを弾き飛ばすと、
ペルゼインはその隙を突くべく再び刀を手にして斬りかかっていく。しかし、それに対してラーズアングリフは再びペルゼインの足元目掛けてリニアミサイルランチャーを撃ち込んだ。
爆発と煙が上がる中、この攻撃で出鼻を挫かれたペルゼインは攻撃に移るタイミングをわずかに逃してしまったものの、パワーにおいては遥かに勝るためそのままラーズへと向かっていった。

 

「目くらましは効かないですのよ?」
「残念だったな。俺の目的は貴様の足止めだけだ」
「え?どういう…」

 

アルフィミィが言い終える前にペルゼイン・リヒカイトの顔面を凄まじい衝撃が襲い、煙の中からペルゼインが吹き飛ばされてしまっていた。

 

間もなく土煙が晴れていき、ペルゼイン・リヒカイトを襲ったものの正体が明らかになっていく。
それは高い硬度を持つ右腕のスタッグビートルクラッシャーで加速の勢いとともに渾身の力を込めてペルゼインの顔面を殴り飛ばした紫色のPT、
瞳の中で怒りを燃え上がらせたシン・アスカの乗るビルトビルガーであった。
そして、鬼面を振り切ったラーズアングリフがビルガーと背を合わせるようにビルガーの背後で動きを止め、シンはそれを確認することもなく口を開いた。

 

「ユウキ・ジェグナン、あの赤い奴は俺達がやる。参式をやらせるわけにはいかないからな。邪魔するなら…アンタも敵だ」
「フッ、俺の任務は超機人の防衛だ。そのためにあの赤い機体をなんとかしなければならんという…ちょうどいい機会だ、ここで貴様を利用させてもうぞ」
「利用?へえ、アンタらしいな。邪魔しないなら勝手にしろ」

 

地球圏を異星人から守る、という共通の目的を持ちながらもその手段と考え方を巡って激しく反目しあって命の奪い合いをした相手と共闘する、というのはシンにも不思議に思えていた。
目的に大きな違いがなくても、手段と考え方が違えば憎悪や怒り、嫌悪が生まれることはキラ・ヤマトや覇王率いるラクシズ、ラクシズとキラ・ヤマトに絶対の忠誠を誓うアスラン・ザラとの
やり取りでシンは体験済みである。それ故に共闘することになったユウキに対して、ラクシズの面々とは異なり強い嫌悪感などを抱かずに共闘を受諾できた心境が不思議でたまらなかった。

 

「奴の防御の要はあの鬼の面だ。ビルトビルガーならばあれよりも早く動けるはずだ。貴様には仮があるからな、注意は引いてやる」
「やっぱアンタは自分で思ってるより相当甘いな」
「甘いのはお喋りしてるあなた達ですの」
「…想像は貴様らの自由だ。来るぞ!」

 

ビルガーとラーズは左右に散開して、ペルゼインが振り抜いた刀の刀身から放たれた衝撃波を回避すると、それぞれがペルゼインを取り囲むように移動を始める。
そこに2つの鬼面がそれぞれビルガーとラーズを追跡し始め、ペルゼインも刀を握り締めてビルガーに向かっていく。

 

「隙だらけだぞ!」

 

鬼面にリニアミサイルランチャーのミサイルを撃ち込みながら、ラーズアングリフの両肩が展開を始め、その中から2発のマトリクスミサイルを発射した。
そして鬼面が足止めをされている状況ではマトリクスミサイルを妨げるものはなく、ミサイルの中から射出された夥しい数の小さいミサイルがペルゼイン・リヒカイトへと降り注いでいく。
これに対して残りの鬼面を盾にしつつも、ペルゼイン本体のみからライゴウエを放ってペルゼインは迎撃をするのだが、
その背後から連続して放たれた黒ずんだ紫のエネルギー弾がペルゼインの背部に命中していく。
そこでアルフィミィはミサイルの迎撃を終えた鬼面をビルガーに向けるのだが、ビルガーはそれを巧みに掻い潜って内側へと潜り込んでいった。

 

「ビクティム・ビィィィク!!」

 

そしてシンの声とともに、ビルガーの左右のウイングから漏れ出していたエメラルドの粒子は巨大な刃を形成すると、ペルゼインとのすれ違いざまにその腕やボディに無数の斬り傷を付けていく。
ペルゼインも刀を振るって応戦するが、その斬撃はトップスピードに乗ったビルガーの紙一重のタイミングの回避行動により空を斬るのみとなり、
逆にその度にウイングから放たれている粒子の刃による斬撃を受けることになってしまう。
そのためアルフィミィはたまらず2つの鬼面を呼び戻してビルガーの猛攻に対する盾とした。
シンはいったんビルガーとペルゼインの距離を取りつつ、グラビトンガンを手に取らせて鬼面に向かいトリガーを引く。

 

「そんな攻撃は通りませんのよ?」

 

とはいえこの攻撃は鬼面とペルゼインにより放たれた斬撃の衝撃波であるマブイタチにより阻まれてしまった。
しかもそのマブイタチをコールドメタルソードを盾にして受け止めるが、さらにそこに襲いかかってきた鬼面のぶちかましによりビルガーは吹き飛ばされ、大岩に叩きつけられてしまう。
だが全身を強打しながらもビルガーの中のシンは軽く笑みを浮かべていた。

 

「へっ、くたばりやがれ」

 

言葉もなく首をかしげるアルフィミィであったが、その意図するところを理解したときにはそのすぐ傍にまでラーズアングリフが接近してきていた。
ペルゼインは残った仮面からラーズアングリフ目掛けてライゴウエを放つが、ユウキはラーズアングリフの太い両腕をコックピットのある頭部とボディの前で組ませて
ダメージを軽減させながら、なおもペルゼインに向かって迫っていく。さらにこれに対してペルゼインは手にした刀で斬りつけようとするが、
刀を握っていたペルゼインの腕は、内側に潜り込んだラーズアングリフの左腕で弾き飛ばされてしまう。
そして顔面のほぼ真正面に、展開を終えたフォールデリングソリッドカノンの砲身の先端が突きつけられた。

 

「これだけ近ければターゲットのロックは不要だな」

 

ユウキは静かにそれだけ言うと躊躇うことなくトリガーを引く。
砲身から飛び出てきた巨大な弾丸は零距離からペルゼイン・リヒカイトの顔面を直撃し、メリメリと音を立てながら喰いこんでゆき、ペルゼインの機体もろとも大きく吹き飛ばした。
幾らかライゴウエが命中して高い防御力を誇るラーズアングリフも少なからぬダメージを負ってはいるものの、仰向けとなり大の字になって倒れているペルゼインを見てユウキは大きく息を吐く。
そしてそこへ、大岩から抜け出したビルガーが上空からゆっくりと舞い降りてきた。

 

「これで終わり、だよな?」
「…だといいのだがな」

 

普通に考えればここまでダメージを与えればこれ以上の戦闘は不可能だと考えてもよいものであろうが、ユウキとしてはかつて戦ったアスランのインフィニットジャスティスのことが
思い出されてしまいどうにも戦いが終わったようには思えなかった。
そして案の定、ペルゼイン・リヒカイトは機体各部の自己修復を行いながらゆっくりと立ち上がり始める。
当然、激しく損傷した頭部も徐々に原形を取り戻し始め、間もなく元の姿へと戻ってしまった。

 

「あなた達もなかなかやりますのね…ですけどまだ私も現役だったりするんですのよ?」
「チッ!これだけやってもまだ…!」
「へえ、随分早く音を上げるんだな」
「馬鹿を言うな。貴様の機体のダメージだって小さくはあるまい」
「おあいにくさま。マリオン印の機体はここからが本番なんだよ!」
「何を訳のわから…!?」

 

何かが崩れた大きな音がしてユウキの言葉が中断された。音の大きさにシンとユウキだけでなくアルフィミィも音のした方向へと目を向ける。
すると、彼らの視線の先にあったのは、ゆっくり、ゆっくりではあるものの自ら動き、すぐ近くで大破しているグルンガスト参式のもとへと
近付いていこうとする石化して既に動くことなどあろうはずがない超機人の姿であった。

 

「…これは…非常識な」
「おい…こりゃ何の冗談だよ…ブリット!クスハ!早く脱出しろ、超機人が!」

 

だが参式から返答はなく、超機人が指を立てるとその指先から光が発せられ、ボロボロの参式を包み込み、指の動きに対応して参式の巨体が軽々と浮かべられる。
そして参式を何かの呪文が書かれた札のようなものが取り囲むと、超機人の体内から飛び出した光の帯が参式を絡め取ると、そのまま一気に引きずりこんで強い光が辺りを照らし始めた。
シンだけでなく、タスク、リョウト、リオ、ユウキ、カーラ、それにDCの各機のパイロット達が目の前で起こっている信じ難い光景に絶句するが、光の中からはシン達のよく知る声が聞こえてくる。

 

「「必神火帝!天魔降伏!龍虎、合体!!!」

 

力強い掛け声とともに発せられる光はさらに輝きを増すと、一度大きい光を放った後に少しずつ中心に向かって収束を始めた。
そしてやがて光が小さくなっていくと、その中から姿を現したのは、石化状態から艶やかな光りと目には見えないものの周りにいる者すべてを圧倒するほどのプレッシャーを放つ蘇った超機人であった。

 
 

  

 

 

<次回予告>
シン「えぇぇぇ!?結局、俺はホントに囮に利用されたのかよ!?」
ユウ「人聞きの悪い言い方をするな。連携したと言え」
シン「モノは言いようだな、オイ」
タスク「まあとにかく『初代α主人公テコ入れの巻前編」お終いってところかな」
リョウト「それよりもシン・アスカ、初代α主人公と連携するの巻、のほうがよくないかな」
ブリット「でもまあ次は俺の出番だよな、やっと龍虎合体だし」
ユウ「フッ、果たしてそう上手く『虎龍王ウェイクアップ!』などと言えると思っているのか?」
タスク「っていうか鳥の人自重wwwマクロスF見たばっかりだって自白してるようなもんだろ」
シン「…あんなケバいのはお姉ちゃんなサラなんかじゃない…orz答えは聞かないけど」
ユウ「それ以前の話としてシン違いにアスカ違いだなんて古典的な真似を…」
アルフィミィ「では次回の『龍虎合体・後編』を期待せずにお待ち下さいですの…」

 

ブリット「合体じゃなくて覚醒だ!か・く・せ・い!」
タスク「こいつがクスハと合体できるのは」
ユウ「まぁ言うまでもないが当分先だろうな」
ブリット「えぇぇぇ!結局、俺の話かよ!?」
リョウト「というわけで改めまして次回『龍虎覚醒・後編』をよろしく」
シン「もうお約束だけど答えは聞かないけどな!」