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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第38話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 01:02:14
 

スーパーロボット大戦OG'S DESTINY
第38話 SRX降臨!

 
 

 太平洋上のとある無人島付近では断続的に戦闘による爆発音が鳴り響いていた。だがそこで繰り広げられていたのは互角の戦いなどではない。
 一方が他方を殺さないように手加減をしながら相手をなぶる様は、さながら公開リンチと言っても大きく間違っているとは言い難い。
 戦場後方に控えている覇王の居城、天空に聳える魔城エターナルからは、ゲイムシステムへのほぼ完全な適応を遂げたキラ・ヤマトの駆る、トリコロールカラーを基調として赤青でバランスよく塗装されたラピエサージュと、彼ほどの適応こそできてはいないものの早くからゲイムシステムへの適合調整措置を受けてきたスクール出身のオウカ・ナギサの駆るエルアインスが、単機でハガネを飛び出してきたマイ・コバヤシの乗る量産型ヒュッケバインに次から次へと襲いかかっていく。
 そして、度重なる攻撃を受けた末に、既にヒュッケバインは右足と左腕を失い、十分な回避運動をするのは不可能となっていた。
 そんなヒュッケバインに右腕の巨大な爪、マグナムビークを構えたラピエサージュとビームソードを構えたエルアインスが残された手足と頭部を破壊すべく迫っていく。

 

「ッ!!」

 

 もはや抵抗することすらほとんど敵わなくなったヒュッケバインの中でマイが目を閉じた。己の中にいるレビ・トーラーに奪われた意識を取り戻した彼女の閉じた瞼の裏に映ったのは、今の彼女にとって最も大切な仲間達―ライやヴィレッタそしてリュウセイや姉でもあるアヤらの顔。
 そして、さらなる攻撃による衝撃を覚悟していたマイであったが、予想していたような衝撃がいつまで経っても伝わってこない。マイがおそるおそる閉じられた目を開いていくと、彼女のヒュッケバインに迫ってきていたラピエサージュとエルアインスの前には、見覚えのある2つの機体が行く手を阻むべく立ちはだかっていた。
 マントをなびかせて蒼い甲冑を纏う西洋の騎士が如き姿をした特機ヴァイサーガの腕から伸びたカギ爪「水流双牙」が、ラピエサージュの腕から伸びたマグナムビークを遮り、パイロットの念動力を媒介にして発生させた緑色に輝くエネルギーを拳に纏わせたR-1のT-Linkナックルがエルアインスのビームソードを受け止めている。

 

「その機体…!君は…!」
「アンタの好きなようにはさせない!」

 

 キラは苦虫を潰したような表情を浮かべる一方で、それを遮ったシン・アスカの瞳には既に闘志の炎が燃え上がり始めている。その意思に応えるかのようにヴァイサーガは力任せにマグナムビークを受け止めている右腕でラピエサージュを振り払い、続けてヴァイサーガは追撃を加えるべくラピエサージュへ迫ろうとする。
 だが、相手は仮にもCE世界において最高の能力を与えられたスーパーコーディネーターのキラである。後方へ吹き飛ばされながらもすぐに体勢を整え直したラピエサージュはヴァイサーガから振り下ろされるカギ爪を軽やかに回避する。
 そして、その脇ではビームソードを防がれたエルアインスが、パイロットであるオウカが本来乗るはずであったラピエサージュのように備え付けられた腕部マシンキャノンをばら撒きながらひとまずR-1との距離をとるべくマイのヒュッケバインから離れていった。そして、ちょうどそこへシン達の後に続けて出撃してきたアラド・バランガのビルトビルガー、アヤ・コバヤシのR-3、ラトゥーニ・スポゥータのフェアリオンが到着した。

 

「リュ、リュウセイ…!ど、どうして私を…? 私はお前達の『敵』だったのに…」
「今はそうじゃねえだろ。今は…そうじゃねえ。俺達の仲間だ」
「で、でも私は…もうみんなと一緒にいられない…お前やアヤとも…私は存在してはいけない人間…死んで当然の…」
「馬鹿なことを言わないで!お父様や私達は、あなたを死なせるつもりで目覚めさせたんじゃない……!」
「だけど、私は……!」
「いい加減にしろ!妹が大事じゃない兄弟なんているもんか!」
「えっ?」
「詳しい事情は知らないが、大尉は妹のお前を誰よりも大事に思ってるはずだ!」

 

 リュウセイ・ダテやアヤ、マイらSRXチームの事情をほとんど知らないシンには、今ひとつ事情を理解しかねていたのだが、確かなものとしてわかることが1つあった。
 それは、マイの姉であるアヤが妹であるマイのことをとても大事に思っているのだということ。
 同じく妹を持つ身であったシンにはコバヤシ姉妹の間にある細かい事情こそわからないものの、アヤの、姉として妹を想う気持ちはよくわかる。
 だからこそマイにも、自分の姉妹を悲しませるようなことはしてほしくないのである。
 とはいえ、そんな事情も知らないキラにとってはシンやコバヤシ姉妹の事情、つまりマイの過去など関係はなく、覇王に言われた通りに、捕獲を命じられていたマイをターゲットとしてラピエサージュがヒュッケバインへと向かっていく。
 だが再びその進行方向に、両腕で水流双牙を構えた光刃のダークナイト、ヴァイサーガが立ちはだかった。
 そして再び入った邪魔と異世界に来てまでも憎しみにとらわれ、不遜にも覇王に弓を引続けるシンに対してキラが、異世界に来ても理解が困難な理由に基づいて、自由に武力と破壊を撒き散らし続けるキラに対してシンがそれぞれ相手に対して苛立ちを抱く。

 

「どうしていつも君は…!僕たちの邪魔をっ…!違う世界に来てまで!」
「ノイエDCの連中とつるんでるお前らのやってることを野放しにできるかよ!!」
「そんな…!スクールの人達を利用してるのは君達じゃないか!それにもうこれ以上ラクスの邪魔は…!」

 

 そう言うとキラは意識を静かに集中させ始める。脳内に薄紫色の種子が弾け飛ぶようなイメージを想い描くと、その瞳は鈍い光のみを放ち始め、自分の中の能力を開放する。
 そして、それと同時にラピエサージュに搭載された最凶の戦闘システムの1つであるゲイムシステムを起動させ、機体がパイロットであるキラの脳内に、予測した情報をダイレクトに伝達し始めた。

 

「水流…爪牙ッ!」

 

 そこへ斬りかかっていくヴァイサーガが赤熱化した鋭いカギ爪を振り下ろすが、ラピエサージュはマグナムビークで軽やかにそれを受け止めた。
 そして攻撃の勢いに抗うことなく、むしろヴァイサーガの力を利用して後方へと下がりながら、腕部のマシンキャノンをばら撒きつつ、背部に装備された強襲用飛行砲台ソードブレイカーを射出していく。

 

「ソリッドソードブレイカー、当たれぇッ!!」

 

 開いた距離を詰めるべく、スピードを上げつつ機体を左右に振り、マシンキャノンの弾幕を潜りながらヴァイサーガはラピエサージュへと向かうのだが、その途中でヴァイサーガのコックピットではけたたましい音の警告音が鳴り響く。

 

(くそっ!)

 

 口に出す暇もなく、ただ心の中で毒づいただけでシンは回避行動に移るのだが、既にラピエサージュとゲイムシステムへの順応をほぼ完全に遂げているキラの放つソリッドソードブレイカーを振り切ることは容易ではなかった。
 音声入力システムで起動し、キラが思ったように動いて戦場を駆け巡る飛行砲台の1つからの光弾をかわしても、さらにヴァイサーガの回避運動の移動先をカバーするかのように別の砲台が回り込み、ターゲットとなったヴァイサーガの追跡を続ける。
 そしてその砲台は光弾を放つのみならず、直接ヴァイサーガへと突撃してくるものもあり、シンはかわしきれないものは水流双牙で辛うじて弾き飛ばすのだが、回避行動を続けるうちに徐々にラピエサージュとの距離は離れていく。
 基本的にソウルゲインと同様、近接戦闘用の武装しか持たないヴァイサーガにとって、ミドルレンジからロングレンジはお世辞にも得意な距離とは言い難い。
 そんなヴァイサーガの泣き所をさらに突くかのように、ラピエサージュはマシンキャノンとソードブレイカーで弾幕を張りつつ、マシンキャノンを使用していない右腕で腰部にマウントしてあったガンレイピアを手に取って引鉄を引いた。
 弾速に優れたビームの一発一発が正確にヴァイサーガのいた場所へと降り注ぎ、それを回避すべくシンはヴァイサーガを急いで後退させる結果、さらに両機の距離は開いてしまう。
 オウカが乗るはずであったラピエサージュには、その元となったアシュセイバーにあったガンレイピアは携行されない予定だった。
 だが、マシンナリーチルドレンを遥かに凌駕するゲイムシステムとのリンクを可能にしたキラにとっては、手持ちの武装は多ければ多いほど、フリーダム、ストライクフリーダムという多くの武装を持つ機体で戦ってきた経験とその能力を発揮できる。
 そう判断した覇王は、ノイエDCから提供された技術と武器でラピエサージュをさらにカスタマイズさせたのである。
 結果として、現在のトリコロールカラーと黒・青・赤で塗られたラピエサージュは、近接戦用のマグナムビーク、中距離用にマシンキャノンとガンレイピア、ソリッドソードブレイカー、遠距離戦用にオーバーオクスタンランチャーを持つ、バランスのいい機体へと仕上がっていた。
 おまけに元が高い機動性を持つアシュセイバーであるため機体の運動性・機動性は文句なく高い。
 結果として、現在のシンとヴァイサーガでは、近付きたくても近づけないという状況が徐々に完成し始めていた。
 カタログ上のスペックとしては、パワーやスピードではヴァイサーガの方が上であることは、ほぼ間違いない。
 しかし、ゲイムシステムと、キラの発現している真の能力とバランス・相性のいい武装がほぼ完全にヴァイサーガの接近を阻んでいた。
 アスラン・ザラと異なり、キラは生身での戦闘では雑魚といっても差し支えない程度だが、パイロットとしての能力ではやはり頭1つ抜きん出ていることは否定できない。

 

「くそっ!これじゃ近づけない…!」

 

 苦々しい表情を浮かべながらシンが毒づいた。だが文句を言っていて状況が改善するようなことは当然ながらない。
 そこで、ヴァイサーガは列火刃を手に取り、数本をラピエサージュに向けて投げ付ける。それをラピエサージュは機体を上昇させることでかわすが、それはシンにとっては予想済みであった。既にヴァイサーガは腰の鞘に納まった五大剣の柄に手をかけて次の攻撃の手筈を整えている。

 

「地斬疾空刀!!」

 

 掛け声とともにヴァイサーガが一気に鞘から剣を引き抜くと、刀身に纏わせた斬撃のエネルギーが真っ直ぐにラピエサージュの回避行動先へと向かっていった。
 風を切り裂きながら射出された斬撃は回避不可能なタイミングでラピエサージュとの距離を詰めていく。
 ここまでは苦しめられたが、シンも内心ではこれで相手に対してそれなりのダメージは与えられると思っていた。

 

「エネルギー計算…到達速度…!」

 

 しかし、迫り来る斬撃を見ながらキラ・ヤマトは表情を全く変えることなく、ラピエサージュを下がらせながらもガンレイピアの照準を合わせ、トリガーを引く。
 連続して放たれるビームの突きはその1つ1つが向かってくる斬撃に正確に突き刺さって、威力と勢いを確実に殺していく。
 そしてとうとう最終的には放たれた斬撃はラピエサージュの元へ到達する前に完全に相殺されてしまっていた。

 

「じ、冗談だろ…」

 

 これまで何度かキラと戦ってきたシンであったが、これほどまでにキラの能力の高さに言葉を奪われたことはなかった。
 向かってくる斬撃を連続したビームで少しずつ削り、ついには消滅させる、などといった芸当は、C.E.世界におけるオーブでの戦いでストライクフリーダムが行った、アロンダイトの白羽取りとも比べ物にならない。
 そしてあまりの出来事に集中力を欠いてしまったシンを強い衝撃が襲った。射出されていたソードブレイカーの1つがヴァイサーガを強く打ちつけたのである。

 

「ぐあっ!」

 

 態勢を整えなおせなかったヴァイサーガはそのまま地面に叩きつけられて地面に大きな土ぼこりが舞う。
 その時すぐ近くではマイのヒュッケバインをフォローしながら迫り来るDCの部隊をR-1とフェアリオンが辛うじて凌いでいる。

 

「大丈夫か、シン!?」
「あ…あぁ、なんとか。それよりマイは?」
「こっちもなんとか…くそッ!」

 

 リュウセイの顔が苦々しい表情を浮かべる。ブレイクフィールドを展開して突っ込んできたガーリオンをR-1が念動フィールドを展開させて弾き飛ばすのだが、その勢いを殺しきれずに機体は後方へと弾き飛ばされてしまう。戦闘が開始してから、ヒュッケバインへ向かってくるガーリオンや量産型ヒュッケバインMK-ⅡをG・リボルバーで牽制しながら、放たれる攻撃を念動フィールドとEフィールドで防いでいる、というものであるが、身も蓋もない言い方をしてしまえば増援が来るまでの時間を稼ぎに過ぎない。シンはキラのラピエサージュの相手をしているし、アラドはゼオラ・シュバイツァーのビルトファルケンの相手で手一杯であり、状況的には均衡状態というべきであろう。
 そして、その時後方に控えていたエターナルから各機体に通信が入ってきた。

 

『フェフェフェ……久しぶりじゃのう、ラトゥーニ11』
「……!」
「ラトゥーニ…イレブン…!?」
『それが奴の本当の名じゃ』
「本当の名前だと!?」
『ラトゥーニクラスの11号……すなわち、ラトゥーニ11』
「な……に!?どういうことなんだ!?何で番号なんかを!?」
『サンプルに名前などいらぬ。クエルボ・セロやケンゾウ・コバヤシが与えたような名はな』
「! ケンゾウ・コバヤシだと!?」
「お、お父様が!?」

 

 十分な事情と情報を知らないシンであったが、ここまでのやり取りを聞く限りでは、アヤやマイの父親が、ラトゥーニをサンプルだと断言した、禁忌の領域の研究に良心を痛めている気配などまるでない老婆と全く関係のない人間ではない、ということは容易く想像できる。
 そして、その老婆アギラ・セトメが口にしたことはリュウセイやアヤ、マイ達だけでなくシンにも衝撃を与えるに十分過ぎるものであった。
 アヤやマイ、その父であるケンゾウの知られざる過去、ケンゾウが自らの娘に施した措置、アギラやケンゾウの研究内容と目的。
 そして、彼女達の持つ「記憶」が全て作り物であったこと、アヤに課せられた枷、リュウセイの母親の過去がアギラの口から一切の躊躇いもなく、むしろ真実を知った人間が驚き、衝撃を受ける様を見て楽しみながら秘められていた事実を紡ぎ出した。

 

「て、てめえ……! アヤやマイを……ラトゥーニを……アラドを……!人間を何だと思ってやがるんだっ!?」
『……決まっておる。ただのサンプルじゃ。そして、記憶やトラウマ、精神の操作は、サンプル達に力を発揮させるための手段に過ぎん』
「ふざっけるなぁぁっ!お前、それでも人間かぁぁっ!!」
「ゆ、許せねえ……!てめえみたいな奴は…!人の記憶や感情を弄ぶてめえみたいな奴だけは!!」

 

 シンとリュウセイの怒りがアギラの非道の所業に対して爆発した。特にエクステンデットの悲劇を目の前で見てきたシンの怒りは激しいものがある。
 だが激しく燃え上がる怒りの対象は、リュウセイとは異なり、アギラだけにとどまらなかった。
 アギラが現在いる、桃色の戦艦エターナルの主、つまりCE世界から不慮の事故で現れた覇王ラクス・クラインに対して、怒りを宿した真紅の瞳が向けられる。
 C.E.世界では、互いの言葉や論をただの一度も戦わせたことはなかった。
 確かに、多くのコーディネーターからほぼ無条件に崇められ、自由と正義の名において自らに刃を向ける相手を惑わせ、傷付け、討ち滅ぼしてきたC.E.世界の因果律を意のままに弄んできた、邪神の写し身と言っても過言ではない覇王と、その意のままに動く最強の人形によって両親や妹、何人もの戦友に守ると約束した相手をことごとく殺害されてきたたかが一人の兵士とでは、置かれている立場や状況も、周囲から期待されるものも、何もかもが異なる。
 もしかしたら、C.E.世界では一兵士ごときが邪とはいえ神に意見することすらおこがましいと考えられたからなのかもしれない。
 だが、2つの世界において闘い続けてきた末、とうとう一兵士に過ぎないシンは覇王と直接に対峙した。

 

「これが人間のやることか、ラクス・クライン!人をサンプルだなんて言う奴と一緒にいるアンタがよくも人類のためだとか言ってデスティニープランを否定できたな!」
『あれは人の自由を奪うもの、人が人でなくなるもの、それを放置することなどできません』
「じゃあ、あのババアがやってることはどうなんだ!?あいつとロゴスやブルーコスモスの連中がやってたことの、一体何が違う!?」

 

 身体的な能力においては先天的に優越するコーディネイターに対抗するため、地球連合は「ブーステッドマン」と呼ばれる生体CPUを開発した。
 そのブーステッドマンの後に実戦投入されたエクステンデットの一人とシンは出会ってしまった。
 そして知ってしまった。薬物や強化手術などによる肉体強化を。ゆりかごと呼ばれる機械による精神制御を。
 それらはアギラらがスクールにおいて行ってきたものとさほど変わるものではない。だからこそ怒りが溢れてきた。
 シンにとってのこれまでのラクシズは「奇麗事」の名の下に世界を股にかけて暴れまわり、オーブに紛れ込んだテロ集団に過ぎなかった。
 だが今、シンの中で新しい「属性」が加わった。ブルーコスモスやロゴスと似たような連中とつるむような集団、というものである。

 

 他方の覇王はアギラの言葉を聞いて内心では激しく苛立っていた。だがそれはアギラたちのやってきたことに対してではない。
 戦いを忌む平和の歌姫、コーディネイターの救世主などという自分のカリスマ性を基礎付けるイメージを脅かしかねない行動を、覇王と行動を共にするアギラが自ら認めたからである。
 覇王の私的軍勢であるラクシズの構成員の多くは、専ら覇王の持つカリスマによって統率されているといっても過言ではない。
 戦いに心を痛めながらも人々のためにやむを得ず立ち上がる平和の歌姫、という外側から見た姿に惹きつけられているのである。
 それ故に平和の歌姫という外観の維持はラクシズの根底をなすものとなっている。だがアギラのやってきたようなことが、デュランダルが全世界に知らしめたロゴスの所業と大して変わらないということは誰の目にも明らかである。
 オーブにおいては結果としてロゴスの首魁ロード・ジブリールの逃走を手助けすることになり、また、彼によるレクイエム発射を妨げる行動を取らなかった。
 だが、そこからラクシズとロゴスとの結びつきを主張したり、オーブにおけるラクシズ介入により結果としてプラントがレクイエムによる攻撃を受けたのだと言う者はいなかった。
 しかし今回はそうはいかなかった。自らに牙を向けている愚か者は怒りに身を任せることによって、公然と覇王を批判している。
 これを放置していては覇王を支える基盤が揺らぎ、ラクシズそのものが瓦解するおそれすらある。
 そのため覇王も黙っているわけにはいかず、いかに自分のイメージを守りつつこの場を乗り切るかを考えつつ、静かにその口を開いた。

 

「実際にそちらの方々を洗脳してたのは連邦ではありませんか」

 

 覇王にとっては、何よりも相手のイメージを悪化させることが必要なのである。自らの非を指摘されてもそれを認めてはならない。
 己の非は棚に上げて、とにかく非のある相手を問い詰めて「絶対的正義」を実現しなければならない。
 実現さえできれば愚鈍な大衆の頭には自分の非の記憶は残らない、残っても間もなく時の経過と共に消えていくのだから。

 

「異なる世界でまで戦いを続けるのですか。それで一体何が生まれるのですか」

 

 そして話題を逸らす。これでラクシズ構成員の目には、連邦こそがロゴスと同じようなものと映り、続けて自分達の世界で続いてきた戦いの拡大に心を痛める平和の歌姫の姿をアピールすることができる。
 アピールすることができる……………………はずであった。少なくとも覇王が考えた限りの中においては。

 

 だがシンは覇王が想定するような「普通の」コーディネイターではない。頭が悪いということではないが、良くも悪くも単純であるし、そもそもラクス・クラインという存在を特別に崇高な存在だとは考えていない。
 自分達のしたことを全て棚に上げて置かれた状況を強引に先に進める覇王の言葉は、シン・アスカという1兵士にとっては、開き直りにすら聞こえてきて彼の怒りのボルテージを上げていく。

 

「ふざけるなよ…」

 

 最初に出てきた言葉は、腹の奥から辛うじて引き出した、蚊の泣くような小さな声だった。

 

「アンタ…いやお前達があの世界で暴れまわってどれだけの人間が死んだと思ってる!」

 

 次に出てきた言葉の大きさは普段の喋り声の大きさと変わらないものであった。
 だが、言葉を紡ぎながらシンはあることを少しではあるがようやく理解できた。
 アスランやキラとは不本意ではあるものの戦う中で幾度も言葉は交わしてきた。そして、それを通じてわかったこともある。
 アスランの言ったことは、「キラは正しい」という一言で要約することができた。
 そのキラが言ったことは、これまた要約すれば「覇王が言ったから正しい」との一言につきる。
 そして、これらのように、まるで停止しているかのようにも思える彼らの思考パターンの源を、シンは初めて目の当たりにしたのである。
 まだ明快な考えが構築されてはいない。とはいえ、シンが本能的にではあるものの、戦いと混乱の元凶の1つが何であるのかを知るには十分であった。
 デュランダルによってブルーコスモス、そしてロゴスは自らの経済的利益のために戦いを生み出す存在とされた。ある一面から見ればそれが間違いであると断言することは難しい。
 だがこの一面は、戦争に巻き込まれて家族を失い、戦いによって関係のない人々が傷付くことを忌むようになったシンという二十歳にも満たない少年に、戦士になることを決意させるには十分であった。
 そして、デスティニープランの内容から、オーブとともに武装蜂起した覇王らラクシズと戦う前に迷いがなかったわけではない。
 だが戦いによって傷付く1人1人の人間のことを考えたシンは、それ以上戦いが続くこと自体をよしとせず、ギルバート・デュランダルの下で戦うことを決意した。

 

「たしかに俺は議長が正しかったのかはまだわからない。これは本当だ。もしかしたら正しくないのかもしれないし、正しいことなんてないのかもしれない。
 でも俺は戦いで関係ない人が巻き込まれたりするのが嫌だったからザフトで戦った。連合と戦った。アスランと、キラ・ヤマトと戦ったんだ……」
『そうやって相容れぬものを力任せに傷つけて一体何が残るというのですか?』
「いくら奇麗事並べたってやっぱり俺は関係のない人達が傷付くことを認めることはできない……だから!」
『……』
「だから!実際に生きている人達が傷付くことを認めるお前を俺は絶対に認めない!!」
『そうやって異世界に来てまで戦って傷つけるのは矛盾しないのですか?それでは憎しみの連鎖が……』

 

 この切り返しは、C.E.世界では何もかもを成功させてきた覇王が戦場で犯した初めての誤りだったのかもしれない。
 覇王の理屈は、多くのコーディネイターに遺伝子レベルで働きかけをする能力とこれまでの輝かしい功績、高い知能に基づく巧みな口述に裏づけされて、コーディネイターの「圧倒的多数」を丸め込む力を持っている。
 だが、全てのコーディネイターを丸め込むことはできないのは、ギルバート・デュランダルやパトリック・ザラを見れば理解可能ではある。
 そしてシン・アスカは、本来であればこうした丸め込まれない人間の1人であった。

 

「憎しみの連鎖……?」
『そうです。このまま憎しみを持ったまま戦い続けていては世界は……』
「ふざっけるなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
『!?』
「お前らが言えたことかあぁぁぁっ!何が憎しみの連鎖だ!!憎しみを撒いたのはお前達だ!!!
 俺は…俺は…俺はお前達を絶対に認めない!認めてたまるかぁああああ!!!」

 

 シンの中で何かが怒りとともに弾け、思考がクリアになっていく。かつてオーブ領海付近でMAザムザザーに追い詰められた時に初めて発動し、シンの怒りをトリガーにする力が発動したのである。
 肺の中の空気は全て吐き出され、あまりの怒りのおかげでほんのわずかではあるが呼吸にも乱れが生じていた。そして、バイザーの内側は吐き出した空気の熱でわずかに曇っている。
 この世界に来てから久しく、シンは怒りを爆発させることはしていなかった。だが今日この時は、怒りが躊躇なく、そして大爆発を起こしたのだった。

 
 

 覇王はプラント議長の娘として統治者としての素養もあったし、教育も受けてきた。つまり根本にある思考の出発点はやはり統治者のものとなっている。
 他方、ただの一兵士に過ぎず、統べる者たる素養もないシンには覇王の言葉、自分達のしてきたことを棚に上げ、省みることをまるでしないように見える振る舞いを許すことは断じてできなかった。
 両者の思考の出発点はそもそもが異なっているのだし、これまで両者が積み重ねてきたものを踏まえるのであれば、因果律への介入でも生じない限り相容れることは困難であろう。
 また、おそらくはどちらかが絶対的に正しいということはできない。また、立場も視点も背負ったものも違うのだから、違いがあってもおかしいことはない。違いがあって当たり前である。
 とはいえ、覇王に対する対決姿勢を初めて鮮明に示したシンであったが、当然ながらこれを良しとしない者がこの戦場にはいる。

 

「どうして君はラクスの言葉を聞かないんだっ!」

 

 キラが叫ぶとともにマシンキャノンをばら撒きながらラピエサージュがヴァイサーガへと接近してきたのである。
 それを両腕の水流爪牙で防ぎながら後退するヴァイサーガであったが、ラピエサージュは続けて射程距離内に入ったソリッド・ソードブレイカーを射出する。
 ラピエサージュの背部から切り離された飛行砲台は、キラ・ヤマトの意思を受け、敵機を取り囲むように広がりながらも、ヴァイサーガへと迫っていく。
 ヴァイサーガは砲台の幾つかから放たれた数発の光弾を機体を反らすことで回避すると、即座にシンは機体を後退させてソードブレイカーとの距離を引き離す。
 それを逃がすまいとするキラからの指示を受けてソードブレイカーがヴァイサーガの後を追っていくが、ほぼ一直線に後退していく敵機を追尾するソードブレイカーのそれぞれの距離は少しずつ、ほんの少しずつ縮まっていった。
 そして、キラがシンの狙いを察知したのと、赤熱化した両腕の鉤爪を広げたヴァイサーガが突然後ろを振り向いてソードブレイカーに斬りかかっていったのはほぼ同時だった。

 

「水流爪牙っ!!」

 

 シンの思考をダイレクト・フィード・バックシステムが読み取り、振り下ろされた両腕の鉤爪によって飛行砲台は回避する暇もなく次々と切り裂かれ、爆散していく。
 辛うじて散開しようとしたものもあるにはあったが、飛行砲台は人型機動兵器などとは異なって、細かい動きをすることはできず、覚醒状態のシンとヴァイサーガから逃れるには役不足であった。
 四方に散らばることで全滅を免れさせようとするキラであったが、手の届く範囲のものは鉤爪の餌食となり、手が届かない所にまで逃げることができた砲台も投げ付けられた列火刃に貫かれて爆発へと姿を変えていく。

 

「はああぁぁぁぁっ!!」

 

 気合を込めた掛け声とともに最後のソードブレイカーが爆炎の中へと姿を消したとき、キラの目に映ったのは赤黒い爆発と、パイロットのものと同じように紅く輝くヴァイサーガのツインアイであった。

 

「くっ…!」

 

 まさかドラグーン以上の性能を持つソリッド・ソードブレイカーが1つ残らずに撃破されるとは思っていなかったキラ・ヤマトはここから先の戦術を必死に考えていた。
 まだ手元にはガン・レイピアとマグナム・ビーク、O・Oランチャーは残っているが、近接戦闘になったときにそのトリッキーな動きで相手を混乱させ、的確に相手を攻撃するソードブレイカーはもう残っていない。
 とどのつまり、機体性能差を覆して勝つことができる要因が彼の脳内には浮かばなかった。これまでストライクでアスランら高級コーディネーターの駆る4機のGATシリーズ、フリーダムでナチュラルの身でありながらザフトの白服にまで上り詰めた天才ラウ・ル・クルーゼのプロヴィデンスと戦った「1人目」を除き、ほぼ常に格下の相手よりも高性能の機体で戦ってきたキラは機体性能に任せるままに戦うことがほとんどであった。
 そして、「2人目」以降は覇王に精神的にも依存するところが大きくなり、機体性能が通じずに追い詰められた時の精神力は強いとは言い難い。
 現在のキラも、ヴァイサーガの間合いに入らぬようラピエサージュを後退させながらゲイムシステムで相手の出方を予想して対処方法を必死に考えていたが妙案が浮かんでくることはない。
 オーブ戦のときのように相手の剣を白羽取りしてもパワーで押し切られる、想定される機体速度をガンレイピアで捕捉する事もできない、との予測がゲイムシステムによって頭の中に入り込んできて、キラの精神状態をより厳しく追い込んでいく。だが、キラがこのように追い詰められていくのが予想できていたのかは定かではないものの、彼にとって天の救いとも言うべき通信が入ってきた。

 

『キラ、後退を』
「で、でも…!」
『G・ミーティアを射出します』
「でもあれはまだ完成してないはずじゃ……」
『キラ、ドッキングを』
「…わ、わかったよ」

 

 そう言うとラピエサージュは足早に、戦場後方の上空にそびえ立つ覇王の居城エターナルに向けて後退していく。そして覇王の言ったとおりにすべく艦長のマーチン・ダコスタが艦の各部に指示を出し始める。

 
 

 覇王はただ黙って煮えくり返るはらわたを必死に押さえようとしていた。たかだか一兵士に過ぎぬ小者による不遜な言動だと自分に言い聞かせ、周辺にある物を怒りに任せて破壊して回りたくなる衝動を抑え込むために、射出を命じた兵器のスペックに目を通し、キラの勝算と万が一のときの引き際を考える事で意識を無礼な兵士から逸らそうとしていた。
 一方、地獄のマグマと化した覇王のはらわたの様子など知る由もなく、一旦はラピエサージュを追跡しようとしたシンであったが彼の下にも通信が入ってきていた。

 

「シン!手が空いたならマイ達を!ヴァイサーガのスピードならここからあいつを連れてけるはずだ!」
「で、でもお前達はどうするんだ!?」
「後退するだけなら俺達だけでもできる、だから早く!」

 

 しかし、リュウセイの思惑とは裏腹に、覇王の居城エターナルのゲストシートにいるアギラから指揮下の部隊に向けてさらなる指示が入ろうとしていた。

 

「ラトゥーニ11と共にナンバー5とナンバー7もここで回収しておくか。ケンゾウが中途半端に調整したとは言え、今まで生き残っておるのなら今後の研究に少しは役立つかも知れんからの…アウルム1、任せるぞ」
「はい、母様。アラド・バランガとR-1のパイロットを始末し…ラトと二人のサンプルを確保します」

 

 アギラからの指示を受け、先ほどまでは一定の距離を保ちながらR-1に攻撃を仕掛けてきていたオウカのエルアインスがビームソードを引き抜き、動きを止めているR-3達の下へと迫っていく。
 リュウセイはエルアインスを近づけまいとしてG・リボルバーの引鉄を引くのだが、ゲイムシステムによって予想された攻撃は相手を捕らえることはできなかった。
 エルアインスは機体を上下左右に軽々と動かしながら距離を詰めていくが、リュウセイもエルアインスだけを相手にしているわけにはいかず、自分の機体に攻撃を仕掛けてくるガーリオンや量産型ヒュッケバインに足止めを喰らっている。アラドはゼオラのビルトファルケンの相手で手一杯であるし、R-3やマイのヒュッケバインを守っているラトゥーニのフェアリオンのエネルギーも限界に近付いてきてきており、オウカのエルアインスから2機を守ることは困難であることは誰の目にも明らかである。

 

「くそっ!間に合ってくれ、ヴァイサーガ!!」

 

 そして、シンのヴァイサーガも全速力でマイ達の下へと向かってはいたが、ラピエサージュを引き離すためにリュウセイ達との距離を取り過ぎたせいで、タイミング的に間に合いそうにない。
 だがそんなことは当然ながらオウカにとっては絶好の好機に他ならない。オウカのエルアインスはまずラトゥーニの動きを止めるべくフェアリオンに向けて斬りかかっていく。
 乱射されるロールキャノンとボストークレーザーを的確に回避しながらエルアインスはフェアリオンの真上を通り過ぎ、その後ろへと舞い降りた。

 

「まずはラト、あなたです」

 

 そう言うと両腕をコックピットの前で交差させて防御姿勢を取るフェアリオンに衝撃が走ると、直後にフェアリオンが地面に倒れ込んだ。
 横薙ぎに払われたビームソードが切り裂いたのはフェアリオンの両足であったのである。そして次にオウカは阻むものがいなくなったR-3とマイのヒュッケバインに狙いを定める。
 リュウセイが、ラトゥーニが、アラドが、シンが無力感を味わいながらエルアインスを睨みつけていた。そして、とうとうビームソードの間合いにアヤ達の機体が入る。そして、オウカが剣を振り下ろそうとしたときであった。

 

「!?」

 

 エルアインスのコックピット内にロックオンされたことを告げるアラート音が鳴り響き、とっさにオウカが機体を後退させると、直前までエルアインスがいた所を数発のエネルギー弾が通過する。

 

「くっ、何者です!?」
「……私の部下を……いえ、仲間達をやらせはしない」
「た、隊長!!」
「……何とか間に合ったようだな」

 

 一安心したリュウセイの視線の先にいたのは、銃口の先から煙を上げるツインマグナライフルを携えた、ヴィレッタ・バディムのR-GUNパワード。
 そしてリュウセイが安心したのも束の間、エルアインスに続いて2機のガーリオンがR-3の下へと向かっていくのだが、レールガンを構え終える前にその胴体がビームによって貫かれて爆発する。
 リュウセイやアヤ達には見覚えのあるビームが放たれた先にいたのは、同じくSRXチームのライディース・F・ブランシュタインが駆るR-2パワード。

 

「ご無事ですか、大尉。それに……マイ」
「ライ……ディース…私を…?」
「……俺達はチームだ。例え、それぞれがどんな過去を持っていようとも…今はSRXの下に集まった…一つのチームだ。だから…俺はここへ来た。お前達を助けるために」
『フェハハハハ! 笑わせおる、笑わせおるわ!どんな過去でもだと? チームだと? フェハハハハ!お前達の絆には…ナンバー5と7には、ワシが作り上げた記憶や過去が組み込まれておる!
 お前達は、ワシらの操り人形と共に今まで戦っておったのじゃ! 所詮、仕組まれた絆なのじゃ!紛い物の絆に過ぎんのじゃ!フェハハハハ!!』
「う…あ…!」
「しっかりしろよ、マイ!大尉!」

 

 作られた偽の記憶、過去。あると思っていたはずの姉妹の繋がりの不存在。アギラの言葉によって再び苦しみを感じ始めたマイの思考を中断させたのは、己のいた世界で多くのものを失ってきた異邦人であるシンであった。

 

「たしかにあのババアが言ってることは本当かもしれない!でも今までリュウセイ達と一緒にいた記憶はアンタ達自身のものだろ!」
「でも私は本物の妹じゃ…」
「血がつながってなきゃ大尉はお前の姉さんじゃないのかよ!?そうじゃないだろ!」

 

 エクステンデットと呼ばれる強化人間のステラ・ルーシェと知り合ってしまったシンは、彼女の過去を知ってはいない。
 だが、出会ってからのことはすべて覚えていたし、ステラも消されたはずのシンと出会った記憶を思い出すことが出来た。
 また、シンが妹を亡くしてわかったこと、それはこれから亡き妹との記憶を作り上げていくことができないということであった。
 逆に言えば、血が繋がっていようがいまいが、兄弟姉妹としてお互いに生きてさえいれば兄弟姉妹としてこれからの記憶を作っていくことはできる。
 失わなければわからないことではあったが、もはやシンには叶わぬが故にマイ達には強く伝わる結果にはなった。

 

「ア、アヤ…!」
「大丈夫よ、リュウ……あの時、イングラム少佐は私にこう言ってくれたわ。過去に囚われるな、新しい道を進めと」
「あ、ああ……」
「私の昔の記憶があなたに作られ、与えられた偽物だとしても…今の私には関係がない!少なくとも、リュウやライ、隊長…みんなと出会ってからの記憶は私自身のもの!だから、私は過去を乗り越える。
 それがどのようなものであっても!そして、あなた達と同じ道を歩み、一緒に戦うわ。このR-3で…刷り込まれたからじゃない…命令だからじゃない。これは私自身の意思…私が決めたこと」
「……」
「マイ、今の私達に必要なものは過去じゃなく、未来よ…だから、あなたも自分の意思で決めなさい。これからどうするかを」
「わ、私は…私は……アヤやリュウセイ達と一緒に行く……!かつての私が犯した罪を償うために…私を必要としてくれるお前達と一緒に…自分の意思で戦う!」
『ほざきおったな! ならば、お前はここで殺してやる!アウルム1!』
「俺もいることを忘れるなぁぁっ!」

 

 再びビームソードを構えてヒュッケバインへ向かっていこうとしたエルアインスに、掛け声とともにようやくリュウセイ達のいる所へと到着したシンのヴァイサーガが組み付いた。

 

「こ、この!離しなさい!」
「そういつまでもアンタ達の好きにさせてたまるかよ!」

 

 激突の衝撃でビームソードを落としてしまったエルアインスは、上半身をバタつかせながら組み付いたヴァイサーガを振り払おうとするのだが、
 PTであるアルブレードの改良量産型たるエルアインスの機体のパワーでは、特機であるヴァイサーガには敵わない。こちらに向かってきた速度と勢いが上乗せされているのではなお更である。
 エルアインスとヴァイサーガは激突した時の勢いそのままに、エルアインスを下にして近くの地面に激突し、揉み合いながらも、木々を薙ぎ倒し、地面をえぐってゆく。

 

「リュウセイ、ライ、アヤ、今がチャンスよ!シンのアシストを無駄にしないで!」
「はいっ! 二人共、加速して合体するわよ!」
「おう!」
「了解!行くぞ、ライ、アヤ!ヴァリアブル・フォーメーション!!」

 

 ヴァイサーガがここまでSRXチームを苦しめてきたオウカのエルアインスを戦場から引き離したおかげで、合体のタイミングを得たリュウセイ達はSRXへの合体シークエンスを開始する。
 一方、地面に激突したヴァイサーガは仰向けになったエルアインスを押し倒す格好になっていたが、パイロットであるオウカをコックピットから引き摺りだすために腕を胸部へ伸ばそうとするヴァイサーガとそれを防ごうとして両腕を振り回すエルアインスが組んでは離れ、離れては組んで、を繰り返していた。
 シンとしてはエルアインスの両肩にあるツインビームカノンを至近距離から喰らうわけにはいかないので迂闊にヴァイサーガの上半身を上げることはできないし、かといってエルアインスの両腕を自由にさせていたのでは強引に振り払われてしまうおそれがある。
 結果として、ヴァイサーガは頭部をエルアインスの胸部に押し付けてエルアインスを押さえ込みながら、両腕でエルアインスの両肘部分を掴んで腕の動きを封じる、という状態が作り出されているのが現状となっている。
 そして、態勢にわずかながらに罪悪感を覚えつつ、シンはモニターの端に映る、合体シークエンス「ヴァリアブル・フォーメーション」を開始したSRXチームへと視線を向けた。
 既にR-1と2、3の本体は変形を行い上半身の形成を終えており、両腕・両足へと姿を変えたR-2、3のプラスパーツがそれぞれドッキングをしようとしている。
 R-3のプラスパーツが姿を変えた両足が、R-2のプラスパーツが姿を変えた両腕がそれぞれ念動フィールドで覆われたSRXの上半身と結合する。
 そして、R-1のシールドが巨大なサングラスのような形状へと姿を変え、ツインアンテナを持った黒いバイザーがSRXの上半身からはみだすR-1の頭部へと覆い被さると、SRXは左右の拳を前後に振るった後、右の拳を天高く突き出し、リュウセイは声高に雄叫びを上げる。

 
 

「天下無敵のスーパーロボット、満を持してここに降臨ッ!」

 
 

(つづく)

 

 

【おまけ】

 

???  「エルアインスの両肘を掴んでいたヴァイサーガであったが、次第に顔面をエルアインスの顔面に押し付けはじめる。
 コックピットの中のオウカはどういうわけかはわからないが、顔を赤らめ始めていた。
 やがてヴァイサーガの口が開き、仰向けになっても型崩れせずに天を突くエルアインスの胸部にむしゃぶりつきはじめる。(中略)硬くなった(中略)。
 そして、ヴァイサーガの右腕が一瞬の隙を突いてエルアインスの右太腿の辺りを掴むと、徐々に上部にある中央分離帯へ向けて侵攻を開始し、(中略)。

 

 『な、一体何をするつもりですか!?』
 『アンタみたいなプライドの高そうなタイプは一度芯をへし折っちまえばあとは簡単なんだよ』
 『い、いやぁっ、やめてぇっ!』
 『へへっ、堕ちるトコまで堕ちちまいなっ!』

 

 かくして、ヴァイサーガの紅いマントの下では、地球というベッドの上で男と女の攻防戦が繰り広げられていたのであった」
???  「こらあぁっ!くるあぁぁっ!ぶるあぁぁっ!全年齢板で何いかがわしい文章を朗読してるんですか、エクセレン少尉!」
エクセレン「あら、最初の予定では今回の話に出てくるはずだったブリット君じゃない」
ブリット 「しょうがないでしょ、この話の流れ作ってる間に5月1日が経過しちゃったんですから!」
エクセレン「ああ、だからディケイドが終わる前に投下するのね、ネタが古くなりすぎちゃわないように」
タスク  「なんかもう十分時期を逸して古くなった気がしなくもねえけどな。まあ何はともあれ、この後開かれるエクセ姉さんの朗読会に参加したい人はわっf」
ブリット 「開かないからね!開かれるわけがないから!っていうか開かせないよ!?」