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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第39話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 01:02:54
 

スーパーロボット大戦 OG's DESTINY
第39話「SRX降臨!(後編)」

 
 

「あれがSRX…!」

 

 ついにシンの前にSRXがその姿を現した。戦場の視線がその一身に集まるとともに、その独特のフォルムの圧迫感が周囲の者の言葉を奪っていた。
 だがSRXの出現は、DCの部隊にとっては厄介な敵が現れたということ以外に意味はない。ガーリオンやバレリオン、量産型ヒュッケバインMK-ⅡらがSRXを取り囲み、携行火器の銃口を向けてその引鉄を引く。
 放たれた多くの銃弾が全長50メートルの巨体に命中する軌道を行き、そのほとんどがSRXに降り注ぐ。だが、SRXはこれらを回避しようとはしなかった。
 回避することができなかったわけではない。回避する必要がないのである。放たれた全て攻撃は、SRXに命中する前に機体の前に展開したグリーンに輝く壁―念動フィールドに阻まれ、爆煙のみが広がってゆく。
 これによりSRXの視認が不可能になったDCのAM部隊であったが、次の瞬間、その各機は爆煙の中からその煙を貫いて射出されたビームに貫かれて爆発へと姿を変えた。
 搭載されたT-Linkシステムは、相手の悪意や殺気などから敵機の位置把握を可能とし、晴れてきた煙の中から姿を現したSRXは左右の腕の各指を突き出していた。
 SRXについて詳しい者が見れば、各指から十条のビームを広範囲に発射するハイフィンガーランチャーが放たれたことはすぐにわかることである。

 

 初めて目にした、新西暦の世界の地球の秘密兵器ともいうべき特機の力の一端を目の当たりにしたシンの脳裏には、一瞬だけではあるが強大な火力を備える点で共通するデストロイの姿が浮かぶ。
 ただ、デストロイはベルリンなど幾つもの都市を滅ぼした悪魔の機動兵器であったが、SRXはシンも信頼する仲間達が乗り込む地球人類の守護者であり、とても頼もしい味方である。
 そんなことを考えたシンは、大地に組み敷いたエルアインスを押さえ込みながらコックピットの位置を探していた。
 先ほどまでの会話を聞いている限り、この機体にはラトゥーニやアラドのスクール時代の仲間が乗っていると考えて間違いない。
 ステラに施されていたような精神制御がされている可能性が高い以上、可能であればコックピットから直接引き摺り出すのが最も確実な救出方法だと考えることができる。
 しかし、そんなシンの作った筋書きを嘲笑うかのようにヴァイサーガに1機の敵機が近付いてきていた。

 

「クソッ、ファルケンか!」

 

 押し倒されたエルアインスを誤って撃ち抜かないようにビームソードを構えてビルトファルケンが迫ってくる。かつての愛機の同型機であるビルトビルガーがファルケンを追ってきているが、距離的に間に合うとは考え難い。
 やむをえずエルアインスの両腕から手を離し、その場を急速に離脱するヴァイサーガであったが、そのモニターがある1つの機動兵器を捉えていた。

 

「!あれは…いや、でも…!」

 

 銀と薄紫色の塗装が施され、両サイドに備え付けられた巨大なビーム砲、中央でドッキングしているラピエサージュは、エターナル先端に搭載された、フリーダムとジャスティスの支援ユニットであるミーティアをシンに連想させる。
 だが、連想されるのはミーティアだけではなかった。両サイドのビーム砲の上部には巨大なシールドと思しき構造物があり、記録映像で見たことがあるタスクのかつての愛機ジガンスクードを彷彿とさせる。

 

 このユニットの名称はジガン(Gigan)・ミーティア。その名の通り、シャドウミラーが彼らの世界から持ち込んだジガンスパーダ、ラクシズの持ち込んだミーティア、DCの集めたジガンスクードのデータの統合を図るとともに、防御力・重火力・機動力の全ての獲得を目指して開発された機体である。
 ただノイエDC・シャドウミラー・ラクシズとも連邦のような多数の敵との戦闘を予定していることから実質的に利害状況が重なったという事情もG・ミーティア開発の背景にはある。
 現段階では、試作段階以前のテスト機にすぎないのだが、一部の者から鋭く指摘されていたフルバースト時の棒立ち状態をグラビティ・ウォールとジガンの装甲でカバーするとともに、
 ジガンスパーダの砲門を減らす代わりにジガンスクードのようなシールドを装備することでミーティアユニットの弱みであった装甲の脆弱性をフォローしている。
 そしてミーティアやジガンスパーダと同様に多数のビーム砲門とミサイルを内蔵して多数の敵との戦闘に対しても十分な備えを図っている。

 

「気を付けろ!あのジガンみたいな機体、火力がハンパじゃない!」
「ってことはお前の世界の機体か!?」
「似たようなのは知ってる!」
「そこまでだ、リュウセイ!」

 

 ライの警告を受けてリュウセイはSRXに回避行動を取らせる。そしてSRXがいた付近を通過していった極太のビームがリュウセイ達にG・ミーティアの攻撃力の高さを知らしめ、彼らの顔を引き締めた。
 だがG・ミーティアの攻撃行動はまだ中断してはいない。続けて両サイドの巨大ビーム砲に加え、機体各部の小型ビーム砲やミサイル発射管が開放される。

 

「でっかいのが来るぞ!」

 

 シンの檄が飛ばされリュウセイがモニターに映る後退中のR-GUNやフェアリオン、マイのヒュッケバインを見やる。距離を考えれば射程距離外にまで逃れたとまでは言い難い。
 G・ミーティアは無慈悲にもほとんどの火器の展開を終わらせて、機体からは夥しい数のミサイルとビームがSRXやその周辺にいるハガネ・ヒリュウ改所属の機体へと襲いかかる。

 

「おう!ライ、アヤ!こっちもぶっぱなすぜ!」

 

 他方、リュウセイはそう言ってSRXを上昇させるとともに機体の火器のロックをすべて解除して各兵装の照準をG・ミーティアへと合わせ始める。
 背後に離脱中の仲間達を背負い、SRXのゴーグルは表面に光を収束し始める。さらに両腕は開いたまま前面に突き出され、脚部のテレキネシスミサイルコンテナが機体内部から姿を現した。
 そして、リュウセイ、アヤの機体に備え付けられているT-linkシステム、ライの天才的な機体制御に支えられ、SRXは短時間のうちにロックオンを完了した。

 

「テレキネシスミサイル!ハイフィンガーランチャー!!ガウンジェノサイダー!!!」

 

 ミサイルコンテナから飛び出していった各ミサイルがG・ミーティアから放たれたミサイルの一つ一つを追尾・撃墜するとともに、両手の各指の先端からビームのエネルギーが射出され、G・ミーティアのビームと相殺し合う。
 SRXの頭部から放たれたゴーグル型のエネルギーがG・ミーティアの両サイドから放たれた2条の大型ビームとぶつかり合い、周囲に衝突の余波を撒き散らしつつも互いに力を失って消えていく。
 撃墜され損ねた互いのミサイルも念動フィールド、G・ウォールのそれぞれに遮られてSRX、G・ミーティアともに受けたダメージはない。
 両機体の間に生じた大きな爆煙が互いの姿を隠しリュウセイ、キラともにその一瞬の間に大きく息を吸って酸素を体内へと取り入れる。
 かくして最高のコーディネーターと同等の能力と悪魔のマン・マシンインターフェースであるゲイムシステム、そして大火力と高い防御力を備えたG・ミーティア、リュウセイとアヤという二人の念動力者とT-Linkシステム、EOTであるトロニウムエンジンを含む機体制御を天才と呼ばれたパイロットであるライの力が合わさったSRX、この両者の最初の攻撃は引分けに終わった。だが戦闘はまだ始まったばかりである。

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 そして先に次の攻撃に移ったのはリュウセイであった。SRXが拳にエネルギーを纏わせてG・ミーティアへと向かっていく。放たれるビームを、機体を左右に揺らして回避しながらSRXは敵機との距離を詰めていく。
 これに対応するためにミーティアから放たれる火線の数が増加するのだが、SRXを捉えることができたビームは機体に到達する前に念動フィールドにかき消されてしまった。
 SRXが自らの間合いにG・ミーティアを捕らえると、かつてR-GUNリヴァーレの顔面も一撃で半壊させたほどの威力を持つ拳を振り下ろす。
 それに対するG・ミーティアも、SRXを迎え撃つべく機体前面に伸ばした両腕付近にバリアを集中させて、繰り出されようとしている拳に向けた。
 SRX自身のパワーと纏わせたエネルギーが展開されたG・ウォールがぶつかり合い、相殺され損なった両機のエネルギーが周囲に弾き飛ばされて2機を揺らす。
 だがキラ・ヤマトはいち早く次の行動へと移り、相手の機体の動きが止まったところを突くべくミサイル発射管を開いた。そこから放たれた数十発のミサイルは上下左右からSRXへと向かっていく。
 リュウセイは機体を後退させつつ、放たれたミサイルへとロックを合わせ、SRXの両腕が再び前方へと伸びた。

 

「ハイフィンガーランチャー!」

 

 SRXの両腕にある10本の指の先端から10条のビームが放たれると、それぞれの光条が迫ってきていたミサイルを貫き、ミサイルは爆発して姿を消していく。
 SRXからのビームを逃れたミサイルも、他のミサイルの爆発に巻き込まれて誘爆を起こすこととなり、姿を消した。だがキラ・ヤマトにとっての本命はばら撒いたミサイルではない。
 G・ミーティアは先端の大型ビームサーベルの起動を終えて、その巨大なビームの刃をSRXの頭上から振り下ろす。
 だが対するSRXも胸部内部からゾル・オリハルコニウム製の剣を取り出し終えていた。

 

「うおおおぉぉぉっ!」

 

 天上天下無敵剣というリュウセイによる独特のネーミングで呼ばれる剣がG・ミーティアのビームの剣を受け止めると、そのまま今度はSRXとG・ミーティアの力比べが始まった。
 もし仮にSRXに相対するのが何らの改良等も施されていないミーティアであればビームサーベルの出力、機体自身のパワーともに相手にならなかったであろう。
 だが現在SRXと鍔迫り合いを行っているのはシャドウミラーのやってきた世界のジガンスパーダをベースに開発された、いわば全く新しいミーティアである。
 大型ビームサーベル2本分のエネルギーを1本に集めることで長時間でなければEOTを利用した地球圏最強クラスの武器とも渡り合うことができるようになっていた。
 結局一進一退を数回繰り返した後、これ以上のビームサーベルへの負担を嫌がったキラ・ヤマトの方が機体をいったん後退させた。
 他方で、キラ・ヤマトとG・ミーティアに対峙しているリュウセイ達はG・ミーティアを想像以上に厄介なものだと感じ始めていた。

 

 なんと言ってもジガンスクードそっくりなだけあって防御力が高いし、機体のパワーも特機クラスに分類可能なほどにあるため、喰らった一撃が致命傷になる危険がつきまとう。
 しかも多数のミサイルを始め、小型・大型のビーム砲、大型ビームサーベルなどの手数も多い上に、先ほどからSRXの攻撃を予想したかのような動きをする。
 そして、対峙しているリュウセイ、ライ、アヤの3人はこのような相手に遭遇したことがある。
 それは、旧教導隊の1人テンペスト・ホーカー、リュウセイにとっては因縁の相手ともいうべきテンザン・ナカジマ、アードラー・コッホにより無理矢理戦闘を強制されたシャイン・ハウゼン王女、最近ではさきほどまでシンが押さえ込んでいたスクールの長姉オウカ・ナギサ達であることは言うまでもない。

 

「こいつ…さっきからこっちの動きを…!まさかあの機体にもゲイム・システムが!?」
「おそらくな。だがスクールの人間と違ってあのパイロットは自分の意思で戦っているはずだ。こちらからの揺さぶりはできんぞ」

 

 真実を知らないライの言葉は覇王が聞けば鼻で笑われてしまうようなものかもしれないが、真実を知らぬ者にできる推測としてはおかしいところはないであろう。
 そして、皮肉なことに自分自身の正体と存在意義について正確に知らされていないキラ・ヤマトが対峙するSRXチームに向けて口を開いた。

 

「どうして君達は戦っているんだ!?連邦軍のしてきたことを聞いたばかりじゃないか!」
「ふざけんな!わざわざ余所の世界に来てまで暴れまわりやがって!
「戦いたくもない人たちを戦わせてる連邦を放ってはおけないじゃないか!
「てめえらといるババアがさっき言ってたことはどうなんだ!?」
「でも…あの人はラクスに手を貸してくれている…だから…!」
「だから何なんだ!?テメェらは人間を一体なんだと思ってやがる!」

 

 ラトゥーニ達からスクールでの悪魔の研究とその悲劇を聞かされているリュウセイがアギラら旧スクール関係者とその協力者であるラクシズに対して持つ感情はシンがそれらに対して持つものと重なるところが多い。
 シンとリュウセイ。それぞれ異なる世界で戦い続けながらも、似たような所業と対峙し、それに対する怒りを覚えてきたことには共通する部分がある。

 

「リュウセイ!話は終わりだ。いくら話した所で態度を変える連中でもあるまい。それにさっきのような攻撃が何回も繰り返されたら隊長やマイ達も危ない。増援が来る前に一気に勝負をつけるぞ!」
「おう!アヤ、まだいけるか!?」
「ええ……!フィールドの維持は任せて!」
「ようし……!いくぜえぇぇっ!!」

 

 リュウセイの掛け声とともにその念の力を受けてゾル・オリハルコニウム製の剣の輝きが増していく。
 ライの微細な機体制御とアヤによる念動フィールドの収束によって、SRXの周囲に展開している念動フィールドはより密度の濃い、頑強なものへと変化し、剣の強度もさらに強固なものへとなる。
 刀身に集められた膨大なエネルギーはそこから漏れ出して、オーラが溢れ出ているかのような形状の剣が形成されると、SRXは機体各部のブースターを一斉に開き、剣の切っ先をまっすぐ前方に向けて、これまでにない速度でG・ミーティアへと向かっていった。

 

「天上天下念動爆砕剣っ!!!」
「そんな簡単にはいかないっ!」

 

 距離が比較的開いている所から一直線に攻め込んできたことはキラ・ヤマトにとっては到底驚くべきものではない。その行動は容易に予想できていたものであり、それに対する準備は完了していた。
 G・ミーティアの左右の砲塔から放たれた大型のビームは、距離を詰めつつあったSRXに直撃して大きな爆発が起こる。
 G・ミーティアの前方に広がっていく爆煙は放たれたビームのエネルギー量の多さを物語るものであったが、それ故に実際に相手の機体がどうなったのかを知ることを困難にさせている。

 

「やった…の…?!」

 

 G・ミーティアの武装の中でも最強クラスの攻撃が直撃したことは確実であり、手応えがなかったわけではない。
 また、これまでの経験を踏まえる限りでは撃破又は相当のダメージを与えることができたはずだと考えられる。
 だが、次の瞬間にゲイム・システムがキラ・ヤマトにあるビジョンを見せる。そして、次の瞬間には空中を漂う爆煙の動きに変化が生じた。
 その中からエメラルド色に美しく輝く刃、そして奥に鋭い二条の輝きを持つゴーグルがキラの目に映り、続けて先程以上に念動フィールドに覆われたSRXの姿が映り込んできた。
 とっさにキラはその攻撃に対処するべくG・ミーティアの前方、SRXの進行方向の先にG・ウォールを展開させる。

 

 SRXの前方に展開したG・ウォールとエメラルド色のオーラを纏ったがごとき念動爆砕剣がぶつかり合うと、これにより行き場を失ったエネルギーが八方へと飛び散って周囲のものを吹き飛ばしていく。
 リクセント公国の王女シャインの予知能力の研究により完成を迎えることが出来たゲイム・システムのおかげでSRXの攻撃をいち早く知りえたキラとしては、最大出力でG・ウォールを展開していたことが幸いした。
 リュウセイらもG・ミーティアの一撃一撃には強い警戒心を抱いているが、キラ・ヤマトも連邦軍最強とも言われるSRXの高い攻撃力には小さからぬ恐怖を感じている。
 必死にG・ウォールの出力調整をしてSRXの攻撃を防いでいるキラと、それを打ち砕くべく渾身の力と念を込めて剣を押し込もうとするリュウセイ、
 その双方の意地がぶつかり合った結果、G・ウォールの表面にわずかにヒビが入り、その表面に柄から切り離されたエメラルド色の刃が突き刺さった。
 他方、それと同時にSRXの動きの勢いも完全に殺されてしまい、キラとしては相手の攻撃は防ぎきることに成功し、まさに計画通り、という意識を少なからず抱いている。
 だがリュウセイの目は未だ死んではいなかった。むしろ刃の先端が突き刺さったときから次の行動を始めている。SRXは、手の空いた右腕に収束させた念動フィールドを再びまとわせて、その拳を振り上げる。

 

「うおおぉぉぉっ!破ぁっ!!」

 

 リュウセイの咆哮が戦場に響き渡ると、SRXがその拳を突き刺さった刃に振り下ろし、力任せにゾル・オリハルコニウムの刀身を最後の一押しとばかりにG・ウォールの奥へと押し込んだ。
 いかに強固なダムの壁であってもほんの小さな一穴さえあれば崩壊するように、初撃で一穴が開いていたG・ウォールは続く拳撃によってまず小さなヒビが走り、そのヒビはより多く、より大きくなり、間もなくG・ミーティアを守護していた防御壁は粉々に砕け散って姿を消した。
 さらに、凄まじいエネルギーが込められた拳撃により新たな運動エネルギーを得てフィールドを突き破ったエメラルド色に輝く刃は、
 そのまま一直線にミーティアの中央やや左へと突き刺さり、間もなく大小幾つもの爆発が起こり始める。

 

「念動……爆砕!!」

 

 そして、ミーティアの奥深くへと突き刺さった刃がリュウセイの叫びに呼応するかのように再び流動的なエネルギーへと形状を変化していく。
 膨張を始めたそのエネルギーは中心から機体を飲み込みだし、間もなく機体全体を飲み込み終えた。
 他方、爆砕剣の直撃を免れることができたキラ・ヤマトは、ゲイム・システムによってミーティアの限界をいち早く知らされたため、膨張するエネルギーに飲み込まれる直前にラピエサージュをG・ミーティアから切り離して脱出することに成功していた。

 

 『4人目』のキラ・ヤマトにインプットされている情報の中でここまで追い込まれたのは、先ほどまで戦っていたシン・アスカのインパルスと戦い、フリーダムを失ったとき以来である。
 また、キラ・ヤマトとしては、特機と戦ったのは初めてであり、そのパワーがここまでのものだとは思わなかったというのも原因だと考えていた。だから今、ミーティアを撃破されたことは仕方ないのである。
 そして、このまま正面から戦ったのでは勝ち目があるとは考え難く、ミーティアはもう1機あるのだから、なんとしてもエターナルの下へと逃れて再びドッキングすればいい、彼はそう考えていた。
 だがSRXから逃れ、母艦たる覇王の居城エターナルへと戻ろうと動き出したラピエサージュのモニターは突如として暗くなり、機体が鳴らす警告音はさらに大きくなり敵機の接近を告げる。

 

「!?」

 

 モニターが暗くなる、それはつまり太陽光が遮られていること、ひいては自機の上空を取られてしまったのだということを意味している。
 そして、上空を見上げたキラ・ヤマトの左右の眼に映ったのはラピエサージュへ向けて先ほど以上の勢いで突っ込んでくるSRXの姿であった。

 

「超必殺……!ブレードキィィィック!!!!」

 

 脚部に重点的に、そしてブレード状に収束させた念動フィールドを纏ってSRXは再びラピエサージュへと突っ込んでいく。
 機体全体を覆う念動フィールドと背部バーニアから噴出する推進剤がかけ合わさることによって、SRXは両翼を大きく広げる白鳥のようにも見える。
 そして、ゲイム・システムが攻撃を予知するものであったとしても、回避が不可能であれば、敵の攻撃を迎撃するほかはない。
 だがミーティアから脱出するのに精一杯でガンレイピアを失い、ソリッドソードブレイカーはヴァイサーガによって撃破され、残る武装はマグナムビークとマシンキャノンのみであるラピエサージュには、攻撃の勢いを殺す、という形での迎撃は不可能である。
 もはや打つ手なく、わずかでも激突の衝撃を緩和するべくラピエサージュは後退しながら両腕をコックピットの前でクロスさせてガード態勢を取る。
 SRXの渾身の蹴撃は、まず激突したラピエサージュの両腕を粉砕するとともに、続けて激突したコックピット部分を内側へと大きくめり込ませ、機体のフレームをも激しく歪ませた。
 キラ・ヤマトにとって唯一幸運であったことは、激突するときのエネルギーが大きすぎたせいで両腕を砕かれたときにほんのわずかに機体がずれて、コックピット部分が一撃で粉砕されずに済んだことである。

 

 衝撃で吹き飛ばされたラピエサージュはそのまま地面へと激突し、周囲には大量の土ぼこりが舞う。
 コックピット内部のキラ・ヤマトも、体がめり込んだコックピット部分によって潰されたことの激痛に加えて、機体が地面に激突したときの衝撃で意識を失っていた。

 

「トドメだ!」

 

 そう言ってリュウセイがSRX頭部のゴーグルにエネルギーをチャージさせてガウンジェノサイダーの照準をラピエサージュへと合わせた。
 しかし、ラピエサージュをロックオンし終えて手元のトリガーの引鉄を引こうとした直前に、思わぬ乱入者が現れた。

 

「ビルトファルケンが来るぞっ!」

 

 ライの警告を受けてとっさにリュウセイは機体を後退させる。そして次の瞬間にはSRXがこれまでいた所をビルトファルケンから放たれた一条のビームが通り過ぎていった。
 その隙にエルアインスと、オクスタンランチャーを手に持ったままのビルトファルケンが、ラピエサージュの両脇を抱えて後退を始めた。
 それにあわせてエターナルから撤退を命ずる信号が上がり、残ったDCの機体も一斉に戦場からの離脱を開始し始めた。
 そして、アギラの指示を受けて戦闘不能になったラピエサージュを回収するべく、リュウセイ達SRXチームの前に現れたのであった。

 

 結局、リュウセイは手元のトリガーを引くことができず、できたのはただその両腕を震わせることのみであった。
 SRXであれば照準を再び合わせて止めをさすことは容易である。だが、シンやアラドと同様に、ラトゥーニやアラドのスクールでの仲間を巻き添えにすることはできるはずもない。
 そして、リュウセイがやり場のない悔しさを何とかして抑えようとしているところに、ファルケンらを追っていたヴァイサーガとビルトビルガーが合流する。

 

「すまないリュウセイ……ファルケン達を抑えきれなかった」
「いや…しょうがねえよ。ラトゥーニの話じゃ相手はスクールの中でも手強い連中みたいだからな。それにこっちも奴を取り逃がしちまった」
「いや、アイツが生きてたんなら俺が止めをさせばいいだけだ、気にすんなよ。それより早くハガネに戻った方がいいんじゃないか?きっとマイ達が待ってる」
「ああ…そうだな」

 

 その後、ハガネに戻ったシンやリュウセイ達をまず出迎えたのは先に戦場から離脱したマイとラトゥーニであった。
 リュウセイ、アヤ、マイ、ラトゥーニが何か話を始めるとともに、その近くでライとヴィレッタも何かを話し始めている。
 特にマイとアヤにはほんの小さな溝があったのかもしれないが、お互いの気持ちがわかっている以上、特に問題はないであろう。
 過去に妹を失ったシンにとっては、姉妹が強い絆で結ばれていることを見られるだけで今回の戦闘で奮闘した甲斐はあったような気がする。
 そして、アメリカ大陸へと近付いていくハガネの中でシンはこの世界のアメリカ大陸で出会い、姿を消した、兄想いの妹のことをふと思い出していた。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 男の意識は深い闇の中にあった。裏切者のコーディネーターと言われながら友人達を守るためにストライクと呼ばれたMSに乗って古くからの友人や同胞と戦い続けた日々は彼の精神を限界まですり減らしていった。
 そして、ヤキン・ドゥーエでの最後の戦いで男は、守ろうとして傷付け、救おうとした相手を目の前で失った。
 己の出自からスーパーコーディネーターと呼ばれたその男を憎み、呪怨の言葉を浴びせたラウ・ル・クルーゼを男に残された唯一の物、最後の力で滅ぼした後、その男―キラ・ヤマトの心、精神というものは一度崩壊した。
 そして、彼に残った「力」がその意思に反して利用されぬよう、あまりにも傷付来過ぎた心がこれ以上傷付かぬよう、赤い髪の女フレイ・アルスターの本当の想い、最後の力が、キラ・ヤマトの精神を封じ込めた。
 それ故、キラ・ヤマトはその肉体が自然に朽ちるその日までもう目覚めることはない…はずであった。

 

 これをよしとしない者がいたからである。

 

 己の野望を実現するために、その者―CE世界という乱世に降誕した覇王ラクス・クラインにはどうしてもスーパーコーディネーターの力が必要であった。
 そのため、連合が開発した精神制御装置を入手し、ヤキン後にオーブに潜伏して力を蓄えつつ覇王はスーパーコーディネーターのオリジネイターであるキラ・ヤマトを目覚めさせようとしていた。
 当然のことながらそれをフレイ・アルスターは妨げようとする。しかし、彼女は戦争が再び勃発した連合・オーブとプラントとの戦いの期間中キラ・ヤマトの心を守り通すことはできたものの、とうとう限界が訪れる。

 

(ごめんなさい…もう…私の…力……は…)
(え、フレイ?それってどういう…!?)

 

 まだ事態がよくわかっていなかったキラ・ヤマトは己に生じた異変にようやく気付いた。自分の両足にピンク色の何かが纏わり付き始め、それはどんなに力を込めても振りほどくことはできなかった。
 続いてキラ・ヤマトが自分の足元から、まるで底無沼に引き込まれるが如く、ピンク色の中に沈んでいくことに気付くと、それに抗おうと残された上半身を必死にバタつかせるのだが、自分が沈んでいくことを止めることはできない。
 これとともに自分の意識がぼんやりと薄れはじめ、その部分がピンク色の何かに侵食されていくような感覚がキラ・ヤマトを襲いだす。
 そして首の下まで沈んだ彼は、残った力の限り左腕を伸ばしてフレイ・アルスターの手を掴もうとするが、その指が女の手に届く寸前に、彼の意識は呑み込まれた。

 

 その頃、覇王の居城エターナルの奥深くにある覇王の自室では、その主がプラント製の最高級のソファに深く腰掛けながら今後の対策を考えていた。
 結果としてG・ミーティアを1機失う結果にはなったが、連邦軍最強ともいわれるSRXにそれなりに対抗してみせた以上、性能テストとしては十分であるし、SRXの力を実際に見ることできた。
 あとはテストタイプではない、今回の戦闘データも踏まえた完全なモノを作ればいい。イーグレット・フェフからマシンセルの提供を受けることができれば、さらなる性能強化も期待できる。
 パイロットは『4人目』がもう使えないようであればしばらくはアスラン・ザラをメインに使うことでも十分であろう。
 あとはシャドウミラーと結んで戦力の充実を図った上で元の世界に帰還すればよい、そのように考えていたときであった。

 

 奥の部屋で何か物音がするのを覇王の耳が捉えた。その部屋にあるモノは限られており、物音から連想される自分の予想が正しければそれは覇王にとって正に福音となる。
 念のため用心しながら奥の部屋の扉を開いた覇王の目には、およそ2年ぶりに開いたゆりかご、そしてその中からゆっくりと体を起こそうとするオリジナルのスーパーコーディネーターの姿であった。
 かつてNJキャンセラーを手にしたムルタ・アズラエルが、誰の目もない自室でしたかのように、体と腹の底から湧き上がる声を用いて強大な力を手に入れた喜びを現したいという欲望を必死に抑えながら、
 普段と変わらない、CE世界の新たな人類コーディネーターを統べる者としての微笑を浮かべながら覇王はゆっくりと口を開いた。

 

「おはようございます、キラ」

 

 そして覇王は心の中で呟いた。

 
 

 これで手駒は揃った!

 
 

 ――つづく

 
 

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