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SRW-SEED_660氏_シン×セツコSS_03

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:16:25
 

 メールにまで爛れていると言われてしまい、しかも思い返してみるとそれを否定できないシンと自分の関係に、セツコはがっくりと肩を落としていた。
 機体越しにもしょぼんとした様子が伝わるセツコをどこか満足に見下ろしていたアサキムが、また口を開いた。優美なラインを描く顔の輪郭まで覆う黒い衣装姿の青年は、常に厭世的な雰囲気が伴う。

 

『君達ともう少しゆるりと語り合いたいものだが、あいにくとこの仕事を頼まれたのは僕と君達だけではないらしい。君達もよく知っている彼らもすぐ近くにいる』
「ひょっとして、あの変態組か!?」
『君は口が悪いな。シン・アスカ。前世からの運命か魂に打ち込まれた楔の所為なのかい?』
「知るか」

 

 アサキムに対するのと勝るとも劣らぬ嫌悪感を露わにするシンに、アサキムが妙にシリアスな顔で呟いた。まあ、シンの口が悪いのはもとからだ。そう簡単には治らない。
 歯を剥いて突っかかるシンだが、ワークスジンのセンサーが捉えた反応に気付いて視線を動かす。大型の熱源が三つとMSサイズの熱源が一つの合計四つだ。同じくカスタムレイスタのメールとランドも気付いたようだ。

 

「あ、レーダーに反応。MAにMSって事は」
「カイメラの連中か」

 

 ランドがレイスタのメインカメラを東の方向に向け、倍率を上げると、ズン、ズズンと音を立てて廃墟を倒壊させながらこちらに向かってくるモビルアーマー三機とウィンダムの姿が映し出される。
 ともに地球連合軍で正式採用されている現役の機体だ。MAとウィンダムはそれぞれカイメラと書かれたロゴが描かれている。MAには蛇と獅子、それらと羊の混合生物であるキメラ、ウィンダムは羊をデフォルメしたイラスト付きだ。
 ランドやアサキムらとも因縁の深い、非合法ぎりぎりの詐欺まがいの手法で悪名高い有限会社カイメラの所持している機体である。
 本来、エクステンデッドと言われる投薬や催眠暗示などによって強化されたパイロット三人が運用するザムザザーには、代表のエーデル・ベルナル。
 ストライクダガーの上半身を乗せた露悪的な外見のゲルズゲーには広報担当のシュラン。
 ずんぐりとした流線型のMAユークリッドには営業のレーベン。
 そして、ウィンダムには会計のツィーネが乗り込んでいる。
 全員が元は大西洋連邦所属の特務部隊出身で、特にエーデルは若くして准将の地位まで上り詰めた超エリートである。
 後方の補給線の構築などを担当し、極めて優れた手腕とその美貌と聖母の如き慈愛深い笑みと表面上は非の打ち所がない人徳者の仮面を被り、権謀術数とその地位を最大限に駆使して広大な人脈を築いていた。
 一説にはラクス・クラインの設立した秘密結社ターミナルにも匹敵するネットワークを構築していた傑物だ。
 だが、先の戦争における軍需産業連合体ロゴスやロード・ジブリールの失脚の混乱に乗じて地球連合を掌握しようと暗躍して失敗し、今はその地位を追われている。
 拘束命令が出されたその日の内に軍を脱走し、持ち出した軍の装備品や資金を元手に、こうして(有)カイメラを立ち上げて再起を狙っているのだ。狙い方を間違えているような気がしないでもないが気にしてはいけない。

 

『ほう、ビーターサービスの連中にアサキムか。私達の邪魔でもしに来たのか?』

 

 はるか高みから侮蔑を持って見下しているような、高慢極まりない声を出したのはエーデルだ。
 一見すると淡い紫の髪に金の瞳の美しい取り合わせと柔和な雰囲気から、穏やかな聖母を連想させる清廉な微笑を浮かべた妙齢の美女なのだが、その実、本性は自分以外の他人を徹底的に見下し、追従しない者には容赦のない制裁を加える暴虐の支配者だ。
 実務能力もさることながら、本来エクステンデッド三人によって運用されるザムザザーを一人で操縦し、能力を完全に引き出す超絶のパイロット能力も併せ持ち、素でデストロイなどの巨大MSの乗りこなす万能の天才である。
 薄紫の髪をまとめ、淡い色合いのルージュをひいた唇で、どんな悪人の心も現れるような慈しみに満ちた笑顔を浮かべている姿に、これまで多くの人々が騙されてえらい目にあって来た。
 初めて会った時にはその表向きの仮面と悪意の全く感じられない善意そのものである言動に騙されたシンも、今ではこの女の本性を知悉しているから、棘のある言葉で言い返した。

 

「あんたらがおれ達の邪魔をしに来た、だろう?」
『貴様あ、エーデル社長になんという口の利き方をする!?』
『落ちつけレーベン。低能な連中にわざわざ合わせる必要はないだろう』

 

 シンのワークスジンのコックピットに、金色の巻き毛の青年の怒りに染まった顔が一杯に映し出され、それを窘めるふりをしてシン達を嘲る、長く伸ばしたストレートの銀髪に眼鏡をかけた青年が続いてモニターに映った。
 カイメラ所属の、レーベン元大尉とシュラン元大尉だ。レーベンはエーデルを妄信し、シュランはエーデルの下で情報操作により人心の操作と掌握を楽しめる、という理由から直属の部下となっていた。
 エーデルの事を妄信の域を超えて狂信しているレーベンはともかく、常に冷笑的なシュランがいまだにエーデルの配下にいる事は多少、不自然ではある。軍にいた頃の彼を知る者なら、落ちぶれたエーデルと行動を共にしている事に疑惑を抱くだろう。
 部下として過ごした期間にそれなりに愛着でも湧いたのか、それとも?
 ちなみにレーベンとシュランは共に若々しい、それこそ絵に書いたような美男子なのだが、癖のありすぎる性格からか互いに浮いた話は一つもない。
 同じくカイメラ所属のツィーネとの関係も、噂はされても実物を見ればコンマ一秒で嘘だと発覚するため、囁かれる事は稀だ。
 レーベンは度を越した女性恐怖症でもはやエーデル以外の女性の存在そのものを憎悪し、シュランは露悪趣味と冷淡な性格から近寄った女性を悉く追い返している。時折レーベンを見つめる視線に熱がこもっているのがあやしい所だ。

 
 

 ハブとマングースよろしく牙を剥き出しにして牽制し合うレーベンとシンを他所に、残るウィンダムが着地して、ゆっくりとランドのカスタムレイスタに歩み寄った。
 ディスプレイには赤い巻き毛の美女が映し出される。まだ若いが、物語に語られる魔女の如く人の快楽神経そのものを揺さぶるような、危険で蟲惑的な雰囲気を香水の様に纏っている。
 近づけばそこに待つのは甘い甘い、甘すぎて近づいたものを殺してしまう危険な蜜を満々と湛えた魔花であろう。
 髪の色と反対に青い瞳は視線だけでも男を好きなだけ誘えそうなほどに美しかったが、ランドに向けた視線には害意の類は見て取れなかった。ちょうどモニターには丸々とした乳房の上半分から顔までが映し出されている。
 メールのペッタンコなおこちゃまボディと足して二で割れば、人並みになるだろうかと、ランドはツィーネが大胆に露出している胸が作る深い谷間を見る度に思う。

 

『元気そうだね、ザ・ヒート』
「おう、姐さんも変わりなさそうだな。そいつらと一緒に居んのが嫌んなったらいつでもウチに来な。美人で有能な姐さんなら大歓迎だぜ!」
「そうそう。カイメラの家事と会計を切り盛りしているツィーネさんなら、ウチも大歓迎だよ」

 

 以前仕事先で騒動を起こしたカイメラの事務所に乗り込んだ時、割烹着と三角巾を身につけて、事務所の掃除と夕飯の支度をこなしているツィーネの姿が、ばっちりとビーターサービスの面々に目撃されていた。
 どうやらレーベンやシュラン、エーデルは日常生活的な意味において戦力にならないらしく、家事の一切はツィーネが担当しているらしかった。
 チリトリと箒をもって事務所の床を掃いているツィーネは、事務所に乗り込んできたランド達に気付いて硬直し、ランド達も露出過多な服装を好む、血を吸って育った大輪の赤薔薇の様な女の、あまりにも所帯じみた姿に唖然とした。
 まあ、その時はツィーネが目の端に涙さえ浮かべて、『忘れて! 見なかった事にして!』とセツコやシンに縋ってまで口止めしてきたので、なるべく触れないようにはしている。

 

『ふふ、ありがとう。メール、ザ・ヒート。でもま、金払いはいいからね。もう少しだけ世話になるさ』
「そうかい。いつでもビーターサービスは姐さんを歓迎するからよ。それは忘れないでくれよ!」

 

 ビッと音を立てそうな位勢いよく親指を立ててのヒートスマイル。並大抵の人間どころか肝の太い人間でも『暑苦しい』としか表現し得ないランドの笑顔を、ツィーネはかくのごとく評した。

 

『相変わらずキュートなスマイルだね』

 

 しかも他意の無いウィンク付きだ。よほど感性が違うか、あくまでもランドの人柄を見ているからこその評価であろうか。

 
 

 それまでストライクノワールにディスキャリバーを握らせたままの姿勢で黙っていたアサキムがツィーネに声をかけた。人が変ったようにツィーネの瞳の纏う雰囲気が変わる。
 焦がれて焦がれて、夢にまで見た大好きなご主人様に巡り合えた女奴隷……失礼、子犬の様な雰囲気に変わる。
 エーデルほどではないにしろ他者を見下していた瞳が、たちまちに潤みを帯びて、媚びるように伏せられ、誰も踏み占めていない処女雪のような肌には恋慕の情がもたらす朱が昇る。

 

「ツィーネ」
『ああ、アサキム』
「元気そうで何よりだ。やはり君は魔界に堕ちた哀れな人間を、幻夢に誘う煉獄の花の様に麗しい」
『ありがとう、アサキム。貴方にそう言われるだけで私は全ての苦痛を忘れられる』
「可愛いツィーネ。君の前では淫夢の支配者たる夢魔達も色褪せる。頭を伏して君の足に口づけさえするだろう」
『アサキム、私の身も心も貴方のモノ。望んでくれるならこの場でこの胸を割いて鮮血に彩られた心臓を奉げてみせる』
「ふふ」
『ああ、アサキム……』

 

 周囲の目を気にせぬ二人のやり取りに、シンとセツコはう~わぁ~という顔をしていた。ランドとメールは苦笑い一つを浮かべたきりである。この反応の違いも、この二ペアとアサキム達の関係の違いを如実に表している。
 なお、ツィーネがセツコとシンに声を掛けなかったのはわざとだ。見た目も性格も、共に美女であるという点を抜かせば真逆の二人の相性はよろしくない。互いに自分にはないものを見つけてしまい、それが疎ましくもあり羨ましくも感じられるからだ。
 ツィーネはセツコに対し、純潔を失って尚純白のままの輝きと柔らかな春の光の様に透き通る様な美しさを見つけ、永遠に取り戻せないそれに嫉妬している。
 セツコはツィーネに自分が決して持ち得ない、過剰なまでに強調されながらも、決して損なわれずに主張すればするほど艶と輝きを増す、夏の日差しの様に輝く“女”を見ていた。
 こういう正反対のタイプは、何かの切っ掛けがあれば心を許し合った親友になれるものなのだが、生憎とこの二人にそう言った出来事はまだ起きていないため、お互いを軽く嫌悪する程度の関係で固まっている。
 シンも、一度ツィーネに誘惑される所をセツコに目撃され、その場で幼い子供みたいにセツコに大泣きされてしまった事がるから、どうにもツィーネは苦手だ。
 アサキムとツィーネが自分達だけの世界を作り出し、無視された事が癇に障ったエーデルが、装えば聖女として生涯を過ごせるであろう美貌を鬼女のそれに、天上の女神の如く優しい声音を夜叉の怒声に変える。

 

『いい加減にしろ、ツィーネ! お前とアサキムの馴れ合いをある程度は認めてやるとは言ったが、目に余る!』
「……」
『ツィーネ、今は彼女の言う通りにするんだ』
「アサキム……貴方がそう言うのならば」

 

 しぶしぶアサキムに諭されてツィーネがウィンダムを、エーデルの乗るザムザザーの元へと戻した。

 
 

 ビーターサービスと(有)カイメラ、そしてアサキムと三者がにらみ合う状況が再構築され、やにわに硬質の緊張感が場を満たした。話の流れ次第ではこの場で戦闘が勃発してもおかしくはない取り合わせだ。
 三組全てを知っている同業者なら、とっくに逃げ出しているレッドゾーンが作り出されていた。誰かが動けば廃墟が塵芥とかす戦闘の始まりの合図となるだろう。
 その空気を悟ってか、ランドがある提案をした。

 

「なあ、おれ達は今回正式な依頼を受けてここに来たわけだ。別に互いの邪魔をしに来たけでもねえ。そこで、だ。ここの廃墟をそれぞれ互いの邪魔をしねえ、て条件で一番多く片づけたグループが報酬の取り分を多くするって事でどうだ?」
『ほう? 私達やお前達はともかく、アサキムはずいぶんと分が悪いが?』
『ぼくは構わない。甘美な悲鳴を上げる事の無い冷たい廃墟であっても、破壊と共に奏でてくれる破砕の楽曲を聞く事は出来る。それに、混沌の獣たるカイメラと傷だらけの獅子に悲しみの乙女と刃を交えずにおくのも、たまには良いだろう』
「なら、全員文句はねえって事でいいか?」

 

 やる気を隠そうともしないランドは、すでにカスタムレイスタよりも巨大なライアット・ジェレンチを構えさせ、いつでも開始の合図を聞ける状態だ。

 

「ねえ、ダーリン、勝ち目あるの? いくらなんでもあのMA三機のカイメラが有利なんじゃない?」
「心配するな、メール。カイメラの連中は修理屋やジャンク屋としてはアマチュアだからな、知識と経験ならこっちが上だ。それに連中は金欠で弾やエネルギーを節約しているからな。MAの火器は金がかかりすぎて使えやしねえよ」
「うん。それならなんとかなるかも」

 

 エーデルら(有)カイメラも、この場では最大の戦力を誇るという単純明快な事実に、優越の笑みを浮かべている。ツィーネだけはアサキムを気遣う様子が見られたが、アサキムが諭すように目線を向けると、黙ってウィンダムの操縦に意識を移す。
 アサキムは機体越しに風を感じているかのように悠然とその場に佇んでいた。
 からりと、アサキムが先刻切崩した廃墟の破片が音を立てて落ち、それが合図となった。

 

「行け行けダーリン! カイメラに負けるなあ!!」
「おっしゃあ、行くぜ! デッカースパナだあ!!」
『レーベン、シュラン、ツィーネ、分かっているな!』
『はっ、このレーベン、エーデル社長のお役に立つ為ならば親をも殺して見せましょう!!』
『……っ!』
(シュランの奴、怖い顔しちゃって)

 

 勢い良く飛び出したランドのカスタムレイスタと(有)カイメラ保有のMA三機に、こちらを一瞥していった可愛いツィーネを見送り、アサキムは地に突き刺していたディスキャリバーを抜き放つ。
 降り注ぐ陽光を血の色に変えて反射する鮮血の魔王剣。携えるは至高天である太極に呪われし、時空の放浪者……ではなくて邪鬼眼前回の変態美青年である。
 シュロウガと名付けた漆黒の愛機ストライクノワールに、アサキムは破壊を命じた。

 

「狩れ、シュロウガ(ストライクノワール)。……?」

 

 シュロウガの名前を呟いたアサキムが、何かに気づいたように眉を顰める。彼にしては珍しい理解しがたい何かを感じたような雰囲気だ。

 

「シュロウガ(ストライクノワール)」

 

 またシュロウガ(ストライクノワール)の名前を呟き沈黙。

 

「シュロウガ(ストライクノワール)。シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)。…………………………君が僕の敵か」

 

 すう、とアサキムが大きく息を吸い込んだ。次の瞬間怒涛の勢いで紡がれるシュロウガ(ストライクノワール)の名前!

 

「シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクワノール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)シュロウガ(ストライクノワール)!!!………………シュロウガ(ストライクノワ)りたい時シュロウガ(ストライ)ればシュロウガ(スト)でシュロウガ()なんだーーー!! 
はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、……シュロウガ。……シュロウガ?  ふ、ふふふふふ、あはははは、ぼくの勝ちだ。さあ、狩れ、シュロウガ!!」

 

 何に満足したか、高らかに笑いながら、アサキムはシュロウガに廃墟の群れへの突撃を命じる。ディスキャリバーを引っさげ、シュロウガの推進力を生かして廃墟の合間を縫う様に飛びかい無造作にディスキャリバーで切り付けて行く。

 

「舞え! トラジック・ジェノサイダー!!」

 

 ノワールストライカーに装備されたウイング内側の2連装リニアガンの弾丸が超高速で飛び、着弾と同時に建物の多くを倒壊させてゆく。
 こういった弾の補給や費用を気にしない豪奢な使い方ができるアサキムの資金源は、同業の者達の間でも七不思議のひとつに数えられている。

 

「削り裂く、その命を!」

 

 廃墟に命も何もなくね? という突っ込みは無粋である故無用に願いたい。本人はいたって真面目に楽しんでいるのだから。

 

「君が何者であろうと構わない。眼魔砲!!」

 

 シュロウガ頭部のトーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器が火を噴き、トラジック・ジェノサイダーによって破砕された廃墟をさらに細かく砕いてゆく。

 

「あれって、ラスターエッジって言ってなかったっけ?」

 

 前に会った時には頭部のバルカン砲をラスターエッジと呼んでいたはずなのになあ、とシンはどこかどうでもよさそうに呟いた。展開の早さというか突拍子の無さに、若干ついていけないらしい。
 同じ気持ちらしいセツコのバクゥがちょこんと隣に座っている様は、遠めか見れば愛犬との散歩の途中で足を止めた飼い主みたいに見える。
 パイロットの関係もまあ、似たようなものである。どちらが飼い犬で飼い主かは諸兄の判断にゆだねるとしよう。

 

『どうしよっか?』

 

 とセツコ。今までどこかに帯びていた翳の代わりに、吹けば消えてしまうほどに儚い光が集まったような、輝きを纏い始めた美貌の浮かべる微苦笑に、シンは頬に血が昇るのを感じた。
 何度も何度も、それこそもはやセツコの体でシンの指と舌が堪能していない場所など無くなるほど、深く深く、心も体も交わり合ったというのに、セツコは毎日の様に新たな魅力でシンの胸を初恋を迎えた少年の様にときめかせている。
 困ったね、というように苦笑している仕草はシンの胸を否応なく高鳴らせるが、それを悟られるのがどこか恥ずかしくて、少しだけそっぽを向いて返事をした。好きな女の子を前にして素直に慣れない少年の反応。
 あれだけ肉体を貪り合い、心を通じ合わせて愛を交わしても、どうにもこの恥ずかしさを消す事が出来ない。ひょっとしたならば、恋の後に愛が芽生えたのではなく、愛の後に恋をしたのかもしれない。
 赤くなっている頬を悟られないように顔の向きをずらしながら、シンはセツコにぶつぶつと返事をする。

 

「まあ、一応、ランドさんの手伝いはするさ。なんだかんだ言って、あの連中に負けるのは悔しいし」
『ふふ、そういう負けず嫌いな所は子供だね』

 

 お姉さんぶるみたいなセツコの優しい言い方に、シンの中の子供の部分が反応する。セツコと出会う以前の、荒み始めていた頃の面影は、もうどこにも見られなかった。

 

「悪かったな」
『ううん。シン君のそう言う所、好きだから。もっと見せて欲しいかな』
「……い、いいから、ほら行かないと、負けちゃうだろ!」
『うん』

 

 なんだか最近、年の差を利用されて弟扱いされる事が増えたな、とシンはどこかこそばゆそうに、照れ臭さを隠しながらワークスジンに一歩を踏み出させた。

 
 

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