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Seed-Crayon_5-660_5

Last-modified: 2012-05-14 (月) 10:14:47

さらば愛しき人よ!だゾ・その5
 
 大西洋連邦軍とオーブ軍の戦いは一進一退の攻防が続いた。
 だが、一機のMSの登場で戦局が変わった。アスラン・ザラが駆るザフトの最新型MS、ZGMF-X09Aジャスティスである。
 オルガ達はキラとアスランの共闘に手間取っている内に、例の副作用が起きて徹退。
 オーブ軍は押されながらも地の利を生かして少しずつ優位な立場で反撃しつつあった。
 ここまで戦況が連邦軍に不利になりつつあればもはや一時徹退し、補給を行って戦力を整え、再度の攻撃を図るのが得策。
 なにせ物量では連合の方がはるかに上なのだから。だが…
 
 
アズラエル「艦長…待機してある予備兵力に出撃命令を出してください」
艦長   「なっ!この戦況で我が軍が持つ、すべてのMSを投入しようと言うのですか!」
アズラエル「だってここまで来たら後にひけないじゃないですか?
      後一押しで軍本部も落ちる、ここが踏ん張りどころですよ。ねえ?」
艦長   「…分かりました。こうなったら我々が滅びるか、オーブが滅びるかの殲滅戦になりますな……」
アズラエル「あの3人も再調整してすぐに再出撃させます。頼みますよみなさん…ふふふっ」
 
 本来の歴史では、この時点でアズラエルは一時徹退を決意した。
 しかし、シン達が歴史を僅かに歪めてしまったために、アズラエルは攻撃を続行する決断をしてしまったのだ……
 
          *          *          *
 
シン  「っっ!どういう事だ?徹退するどころか敵が次々と上陸してくるぞ…どうなっているんだ!」
しん  「シン兄ちゃん!海のお船からもっとロボットが発進してきたゾ!」
シン  「まずい…このまま防衛に徹していてもいつかは押し切られる。ならば…ならば、くっ!」
しんの 「シン兄ちゃん?何で口ごもるの?!言いたい事は大声でハッキリ言えっていつも母ちゃんが言ってたゾ!」
シン  「しんちゃん…そうだな、言うよ。
     このまま守ってもジリ貧だ、ならばいっそ敵の頭を叩けばいい。つまり指揮官を!」
しん  「悪者の指揮官?シン兄ちゃん、それが分かるの?」
シン  「今の俺には分かるよ。あっちの海…たぶん軍艦に乗っている。
     自分じゃ手を下さず楽しんで観戦している、そんなヤツだ」
しん  「じゃあその悪者をやっつけに行こうよ!おらも手伝うゾ!」
シン  「だけど!その為には連合軍とオーブ軍が最前線で戦っているエリアを突っ切っていかなくちゃいけないんだ!
     さすがの俺でも単機でそんな無茶をした事は数える程しかない。
     俺だけならともかく、しんちゃんまでは……もしかしたら死んじゃうかも知れないんだよ!
     ミラージュコロイド毛布は破れちゃってもう使えないし!」
しん  「シン兄ちゃん!オラは春日部の平和を守るかすかべ防衛隊の一員だゾ!
     そんな覚悟はとっくに出来ているし、シン兄ちゃんの操縦をオラ信じているゾ!」
シン  「しんちゃん…強いな君は。俺なんかより遥かに…よし!決めた!
     敵を追い返して、マユ達も守って、俺もしんちゃんも無事に春日部に帰る!全部やりとげてみせるさ!」
しん  「シン兄ちゃん、欲張りすぎだゾ」
シン  「しんちゃん程じゃないさ。さて…行こうか!出発おしんこ~~!」
しん  「ナスのぬかずけ~~!」
 
 
 デスティニーが空に舞い上がった。狙うはムルタ・アズラエルの首ひとつ!果たして2人はシンの家族を、いやオーブを救う事が出来るのか!
 誰も知らない歴史の影を今!赤き怒りの翼が切り裂こうとしていた!
 
          *          *          *
 
連合兵 「ん?艦長!オーブから本艦に向かって1直線に向かってくる未確認物体があります!
     これは…何だ?ミサイル?戦闘機?とにかく速い、速すぎる!」
艦長  「落ち着け!我が軍の識別コードを持たない者は、何であろうと撃墜あるのみ!敵アンノウンを迎撃しろ!」
アズラエル「アンノウン…か。しかし、オーブの底力は確かに僕が思っていた以上でしたねえ……」
 
しん  「おおお~~速い速い~!」
シン  「デスティニーの最高速度を維持、可能な限り戦闘を回避してただひたすら指揮艦を目指す!…
  
    (ロックオンアラート)
 
     くっ!向こうも俺達に気付いたか!ミサイルや対空砲を撃ってきやがった!…だが!」
しん  「こんな所で立ち止まってなんかいられないゾ!」
 
 シンは猛スピードで飛びながら、デスティニーのビームライフルで前方の軍艦をことごとく狙撃する。
 デスティニーがそれらの軍艦の上を通り過ぎた一呼吸後、航行システムが爆発し、戦艦は次々に行動不能になっていった。
 連合の将兵達はデスティニーの姿さえまともに見られないまま、なす術もなくやられていく…
 後に、この場に居合わせた連合兵達は戦艦6隻を瞬く間に行動不能にした正体不明の敵をこう呼ぶ事になる…「オーブの悪夢」と。
 
          *          *          *
 
艦長   「な、なぜだ!なぜ攻撃が当たらん!なぜこちらだけが一方的にやられる?こ、このままでは…」
アズラエル「おい!ヤツはまっすぐここに向かっているんだろ?!だったら早く落とせよ!
      でないと僕達がやられちゃうだろ!」
艦長   「やっていますよ!でも敵アンノウンが異常すぎるんです!」
連合兵  「す、推定十秒後に敵アンノウン、本艦に到達する模様!ダメです!迎撃が追いつきません!」
アズラエル「い、イヤだ…死にたくない!こんな所で!こ、この僕が!何で死ななきゃいけないんだあ!」
 
シン   「見えた!あれが指揮艦…悪いが艦橋を直撃させる!これで連合軍の指揮系統はガタガタになるハズだ。
      行くよしんちゃ……?」
しん   「おお?ま、また目の前が白くな・・・・」
 
 
連合兵  「ア、アンノウン本艦に到達…うわあ!もうダメだあっ!!」
アズラエル「ヒッ……!」
 
 そのときブルーコスモスが盟主、ムルタ・アズラエルは見た。今まさに自分の命を奪おうとするMSの禍禍しい姿を。
 そしてそのMSがライフルを構えるところを見た時、アズラエルは生まれて初めて死を覚悟した。だが!
 
 
バッヒュンッッッ……
 
 
 猛スピードでつっこんで来たMSの姿が、アズラエル達が乗っている戦艦に到達する1歩手前の地点で消えた!
 後に残されしは、光のレールが2本……
 
 
艦長   「消え…た?」
連合兵  「た、助かったんですか?俺達…?」
アズラエル 「はあはあはあ……退だ……」
艦長   「は?何か言いましたか理事?」
アズラエル「全軍徹退しろと言ったんだ!あんなわけのわからない隠し玉をオーブがまだ持っているとしたら、
      危なっかしくて攻めるどころじゃないだろ!一時ひいて様子を見る!ほら、早く命令を出せよ!」
 
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
 
 かくして大西洋連邦軍主導の元に行われたオーブ攻略戦は、連合の一時徹退という形で一応の区切りをつけた。
 そして…とあるシェルター内。ここでは外の戦闘がリアルタイムで見れるスクリーンが設置されていた。シェルターでその戦闘を画面越しに見ていた一人の少年が今、その人生を大きく変える決意を固めるのだった。
 
シン  「…マユ。俺、軍人になるって決めた。
     画像が不鮮明でよく見えなかったけど、俺達を守ってくれたあの赤い翼のMSの人のように!
     みんなを、大切な人を守れるような強い男に俺はなりたい……!」
マユ  「お兄ちゃん…うん!お兄ちゃんならきっとなれるよ!きっとそう、みんなを守れる正義の味方に…」
 
          *          *          *
 
 ここは春日部。シンとしんのすけを乗せたデスティニーが消えた、5分後の…
 
ロウ  「う~ん、やっぱりジャンクパーツをまぜて修復したのがいけなかったかなあ?」
みさえ 「いけなかったかなあ?じゃないでしょ!うちの子とシン君をあんな目に合わせて!どうするつもりよ!」
ひろし 「落ち着けみさえ。ロウ君だって必死に原因を調べているんじゃないか。きっとあの2人は無事さ。きっと…」
 
 
バッシュゥゥゥン……!
 
 
ルナ  「あッ!デスティニーよ!シン達が戻ってきた!」
みさえ 「しんのすけ…シン君!良かった…無事で…!」
 
 
シン  「うっ…くっまた目の前が白くなった。はっ指揮艦を潰さないと!…あれ?」
しん  「おお~!春日部に帰ってきたみたいだゾ!
     あっ!父ちゃん、母ちゃん、ひまわり、シロ~!ルナ姉ちゃんとロウ兄ちゃんもいるゾ!」
シン  「春日部に…帰ってきた?という事は連合の指揮艦は倒せなかったんだよな…
     なあしんちゃん。俺達…守れたのかな?連合軍は徹退したのかな……?」
しん  「大丈夫。シン兄ちゃんは一生懸命にがんばったんだから、きっと!マユちゃん達は無事だと思うゾ!」
シン  「そうか…そうだよな。無事だよな…きっと」
 
 
 シンは夕焼けの空をみつめながら想う。
 
 (俺達は歴史を少しだけ変えた。その介入で俺の家族はあの戦いで死なずに済んだはずだ…
  でも、それはもう別の未来に繋がる歴史なんだろう。
  今、ここに居る俺の家族はあの時確かに死んだんだ。その事実は変わらない…
  俺のやった事はただの自己満足かもしれない。でもそれでもいい。
  俺はもう一人の俺の、もう1つの未来を切り開いたんだ。確かに…この手で!)
 
 
しん  「シン兄ちゃん、うちに帰ろうよ!今夜はハンバーグだゾ!」
シン  「ん?ああ…帰るか!俺達のうちに!」
 
 
シン  「父さん、母さん、マユ…俺はここで生きていくよ。
     みんなはもう居ないけど新しく出来た家族や友達とともに。
     たぶん俺はもう2度とオーブに、いやコズミック・イラの世界に行く事はないだろう。
     さらば俺の思い出……
     さらば俺の故郷……
     さらば俺の……愛しき人よ!」
 
 
 ―暁の春日部の空をデスティニーが往く。
  『運命』の名をもつ彼の役目もこれで終わったのかもしれない…
  シンとしんのすけは確かに切り裂いたのだ。運命という名の不幸な過去を…宿命を。
  もう2人にデスティニーは必要ない。
  彼らは今度は自分の足で、次なる運命をを必ず乗り越えるだろうから―
 
 
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