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W-DESTINY_第15話1

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:58:11

相手が左のジャブを2回、打って来た。シンは掌で左右に弾くと、ローキックが飛んでくる。膝の角度を変えてダメージを低減するが、脚に意識が行った瞬間にストレートとフックのコンビネーションが来た。

「―っ!」

肘を曲げてブロックするが想像以上に威力が高く腕が痺れる。
だが、相手も大技の後で攻撃が続かない、そこでシンは相手の膝に前蹴りを放つ。スポーツ空手では反則の古流独自の攻撃。本気で蹴ったら膝の皿が砕ける可能性があるので軽く蹴った。
相手は咄嗟に膝を上げ、すねでブロックする。しかし、それこそがシンの罠だった。
シンはブロックされた脚を押さえたまま、横に重心を掛けて、相手のバランスを崩す。そして脚を下ろすと同時に左の突きを相手のコメカミに放った。

「甘い!」

相手は、そう叫ぶとシンの肘を捌いて打撃をかわすと共に肘の関節を取ってきた。シンは相手の力に逆らわずに体を預け、関節が決まる直前に逆に相手が極めている方向に力を入れて拘束を逃れる。

「あ、危なかったぁ~!」
「惜しい!……でも流石だな、シン」
「それ、こっちの台詞です。アカデミーの時、噂には聞いてましたけど、本当に強いんですね」

シンは、そう言うと、今戦っている相手、アスラン・ザラに畏敬の眼差しを向けた。

「MSと違って、こっちは多少、続けていたからな。一応は一国の代表のボディガードをしていた」

元々はディオキアへと向かうミネルバの船内で、白兵戦の訓練規定に始めようとしたルナがアスランを誘って始ったのだが、ルナでは相手にならずに、レイが代わりを務めた。だが、レイも押されっぱなしで、アスランの強さに舌を巻いていた。
そんな時、ゼクスとのMSシミュレーションを終えたシンが来て、次はシンに代わったのだが、彼等の同期では格闘戦No.1だったシンでも何とか互角、弱冠アスラン有利という状態だった。
シンたちはアカデミーでの噂を思い出す。ザフト最強のパイロットと言われたアスラン・ザラは格闘戦でも歴代最強だったと。

「でも、だからと言って、負けるわけにはいかないんですよ……立場上!」

シンはガルナハンの一件後、ゼクスにアスランの護衛任務もするように命じられていた。
これは純粋に腕の立つシンが護衛に向いている事と、思い詰めやすいシンが、アスランの護衛をする事で自分の目的を見失わないように配慮した結果だった。

そして、暫くの間、激しい攻防が続いたが……

「ちょっと……待って……息が……」
「だ、大丈夫ですか?」
「この姿、見てると訓練規定の重要さを認識できるわね」
「さすがアスランさん。身を持って俺たちに教えてくれたんですね」

アスランはスタミナ切れで、膝を付き、呼吸を荒げていた。
技のキレは健在でもスタミナは維持出来なかったらしい。

「でも運動しないと、太りますよ。将来ザフトのトップがデブでハゲなん―!」
「ん?…… 何か…言った…か?…今、耳鳴りが…してて」
「「何でもありません!」」

危うくルナが爆弾を落とすところだったが、咄嗟にシンとレイがルナの口を押さえて遮る事に成功した。
もっともアスランは息切れで酸欠状態になり、耳鳴りがしている様だから、その必要は無かったと言える。
ルナとしては、口を押さえられた際、思いっ切り2人に口を叩かれたも同じだから不満があるが、自分が爆弾を落とそうとしたとの反省も有るので、黙ってスポーツドリンクを買いに行く。
そして4人分買ってくると、全員に渡した。

「サンキュ」
「すまんな」
「あ…ありが…」
「いいから、飲んでください」

アスランはルナに言われ、スポーツドリンクに口を付ける。正直喋るのも辛かったから、ドリンクで喉を潤すと気持が良かった。
そして、水分を取った途端に大量の汗がアスランの顔から吹き出す。

「うわ! 凄い汗、どうぞタオルです」
「すまない……でもルナは?」
「もう1つ持ってきてますから遠慮せずに使ってください」

ルナは笑顔で答える。彼女は大雑把に見えるが、自分から誘った以上、それくらいは用意する気遣いは持っている女性だ。

アスランは礼を言うと汗を拭き出す。特に頭皮の汚れは髪の大敵だからしっかりと拭いておいた。

「ふぅ~、さっぱりした」

アスランは清々しい笑顔で、礼を言う。

「誘って貰って、すまなかった。お陰で気が晴れたよ」
「何だ。気付いてたんですか……でも気にしないで下さい。こちらも勉強になりました」

ルナは、アスランに腕前を見せろと、挑発する様に誘ったが、本当はアスランがガルナハンの一件以来、塞ぎ込みぎみだったので、気晴らしにでもなればと誘ったのだった。

「そう言ってくれると助かるよ」
「これからも時間が有れば、付き合ってください。私は兎も角、シンは相手が居なくて困ってましたし」
「そうさせて貰うよ。俺もたまには運動しないと体が鈍ってしまう……って、もう鈍ってるか」
「それで鈍ってるんなら俺の立場が無いんですが……」

シンは呆れた様に呟く。シンとしては、腕に自信があったし、まして現役の自分が、軍を辞め政治の道へ進んだアスランに勝てないのは情けないと思っていた。

「だから言ったろ。最近までボディガードをやってたって」
「そうですけど……そう言えば隊長は格闘戦どうなんだろ?」
「そう言えば聞いたことが無いわね……あれ?」
「どうした?」
「いや……格闘戦にしろMSにしろ凄い人って、アスランさんみたいにアカデミーで噂を残すじゃない。でも隊長の噂って聞かなかったよね」
「そう言えば……あれ?あんだけ凄い人が、何で噂にならなかったんだ?」
「でしょ! 隊長だったらMSを何台も壊したとか、それこそ伝説になりそうなのに!」

アスランは不味い状況になったと、冷や汗を掻く、だが以前のアスランでは無い。こんな状態で作り話の1つや2つ出ない様だと政治の世界では生きていけないのだ。

「彼はアカデミー出身じゃ無いからな。元々、若い時から作業用MSで働いていたんだ」
「え! そうなんですか?」

MSはザフトが軍事に転用する前は、脚付きの作業用機械として広く一般にも知られていた。
その歴史は古く、最初のコーディネーター、ジョージ・グレンの木星探査船に搭載した外骨格補助動力装備の宇宙服が起源であると言われる。

「でも、それにしては操縦が荒っぽいですね」
「合わなかったんだろ。物心付いた時には作業用のMSの操縦をしてたらしいが、結局は追い出されたらしい。
 だから、その辺の事は俺も詳しくは知らないし、君達も聞かない様にしてくれ」
「あ、分かりました」

アスランは上手く誤魔化したと安堵する。多少心苦しいが、彼等に真実を教えるわけにはいかない。

「さて、俺はシャワーを浴びて一休みするよ。ルナ、タオルは洗って返すから」
「いいですよ。他にも洗う物あるんですから、一緒に洗います」
「そうか……悪いな」

アスランは、そう言うとルナに借りていたタオルを渡した。

「その代わり、またお願いします」
「ああ、俺も今日は楽しかったし、こちらこそ頼む」
「ホント……この前、乱戦のアドバイスを聞いた時も思ったんですけど、アスランさん、戦いの事になると生き生きしますよね」
「え?……そうか?」

アスランは息を呑んだ。自分が戦いを好んでると指摘された気がしたからだ。自分は戦いを嫌い、軍から身を引いたはずなのに、実際は戦いの事になると生き生きしているらしい。
シンが悪気があって言っているのでは無いと分かるから余計にショックだった。

「どうかしたんですか?」
「いや、何でもないよ……それじゃあな」

シンたちはアスランを見送ると、元気が無くなった理由を話し合った。

「俺、変なこと言ったか?」
「いや、俺は気にならなかったが……」
「……多分、これよ」

ルナは2人に見える様に、アスランに貸したタオルを広げた。そこには大量の髪の毛が絡まっていた。

「ゲッ!」
「……随分と抜けてるな」
「きっと、これを見てショックだったのよ」

シンたち3人は、アスランの深刻な悩みを抜け毛と判断し、真実に届く事は無かった。

マハムール基地では、連合の空母が1隻、接近してきている情報を掴むと、コンディションレッドを発令し、襲撃にそなえた。
本来なら空母1隻程度では、基地が落ちる事などはあり得ないが、現在マハムール基地はガルナハンに守備隊を廻し、防御が手薄になっている上に、これまで絶大な信頼を得ていたラドルが戦死していた。
後任として選ばれた男は、自分がラドルに劣る事を理解していたし、今回の襲撃に接しても、空母1隻だからと油断する事無く、警戒を強めるなど、新しい基地指令として相応しい人物だった。
しかし、今回は相手が悪すぎた。

JPジョーンズが、マハムール基地に接近すると、部隊指揮官のネオはスティングに通信を入れる。

「そろそろだが……本気で1人で行く気か?」
「ああ、ウィンダムは残しておけ」

JPジョーンズには4体のガンダムタイプ以外にネオのを含めたウィンダムが15機収容されている。
しかし、スティングは自分1人で制空権を奪ってくると言っているのだ。

「多少は減っているが、それでも基地にはかなりの数のディンがいるぞ。それに新型のバビだってな」
「それくらい、いないと意味がねぇ。コイツの実戦テストにはな」

そうスティングが言うと、ネオはカオスの兵装ポッドを見つめた。

「分かった。だが危険だと判断したら、すぐに増援を出すぞ」
「分かってるって」

そこで2人の会話を聞いていたマユが、話しに割り込む。

「大丈夫だよ、スティングが死んでも、残りはマユが片付けるから、安心して逝ってきな」
「うるせぇ!クソガキ!」
「止めんか!アウル、水中の敵は任せる」
「任せてよ。キレイに片付けてくる」

ネオが見守る中、カオスが空に飛び立ち、アビスが海へと身を沈めた。

マハムール基地ではカオスの姿を確認すると、迎撃のMSを発進させた。
スティングは、それを見ると不敵な笑みを浮かべる。

「さあ! いくらでも来やがれ!」

カオスのバーニアを全開にし、敵に突っ込んでいく。接近するとバビがミサイルを雨の様に放ってきた。
スティングはそれを一瞥すると、兵装ポッドを操作し真横に移動させる。
兵装ポッドに引っ張られる様にカオスの本体が動き出し、急激なGがスティングを襲う。

「ぬぅぅぅぅぅぅ!!!」

スティングは、そのGに、声を上げて意識を奪われないようにし、兵装ポッドに引っ張られるカオスの姿勢を制御しながらミサイルを回避すると、続いてビームが飛んでくる。
今度は、上下左右に素早く兵装ポッドの向きを変え、ビームも全てかわしながら、なおも接近する。
その動きにザフト軍のMSパイロットは、動揺していた。

「何だ?あの動きは!」
「変な動きをしやがって!」

たった1機で突っ込んでくるMSを撃墜出来ずに、ザフトのMSパイロットは恐怖し始めた。
そして、スティングは充分に接近してからビームライフルの初弾を放つ。

「落ちやがれ!」

1機、また1機とカオスのビームライフルにザフトのMSは撃ち落されていく。

「ライフルは充分だな。次は!」

この時のスティングの考えをザフト兵が知ったら憤慨するだろう。彼はこの戦場で新たな力を得たカオスの実戦テストをしているのだ。
次にスティングはビームライフルを腰の後ろにマウントさせると、右手にビームサーベルを構える。
そして、その高機動を生かし、接近して敵を両断すると、すぐに場所を離れ、敵に的を絞らせなかった。

「……いけるぞ! これなら奴にだって!」

スティングは、これならセイバーにも負けないと確信していた。
だが、今は目の前の敵を落とすことに集中し、カオスを敵の大群に向かわせた。

ネオはスティングの戦いに驚嘆していた。

「まさか、これほどやるとはね……よし! 艦を前進させろ!」

ネオは前進の指示を出す。制空権はスティングが、ほぼ手中に収めた。海中でもアウルが圧倒している。
ザフトにはアビスに対抗出来る機体が無いのだ。
そして、基地には上陸させまいと待ち構えるザフトのMS部隊を睨みながら、次の指示を出す。

「マユ、出番だ。あの集団を蹴散らしてくれ」
「は~い、行ってきまぁす」

基地からの砲撃の射程範囲直前でカラミティを発進させる。
カラミティはホバー機能で海面を疾走し、海沿いに展開するMSに背部ビーム砲のシュラークを放つ。

「ここでバクゥを落としとこ」

ザフト軍には砲撃用MSガズウートも配置されているが、マユは無視した。ガズウートは長距離ビーム砲を放ってくるが、それを回避しバクゥにだけ砲撃を当てる。
戦術的にも長距離用のガズウートは接近戦に持ち込み、格闘戦を得意とするバクゥを遠距離射撃で落とす方が効果的だし、何よりマユはガズウートの巨体を対艦刀で両断したいと考えていた。

「さて、そろそろかな」

マユはカラミティを前進させ、中距離戦に移行する。今度はガズウートに加え、バクゥも攻撃してくるがカラミティは回避しながら、両手のガトリングガンを乱射する。
ここで、弾切れまで撃ってから接近戦に持ち込もうと考えていたが、その途中、背後から殺気を感じ、慌てて機体を水中に沈める。

「後ろから?」
「邪魔だよ!」

カラミティが水中に沈む直前に、入れ替わる様にアビスが上半身を海上に現し、背部ビーム砲、シールド裏の3連ビーム砲、そして胸部の大出力ビーム砲カリドゥスを一斉に放つ。
その劫火は水面に沈んだカラミティの頭上、先程までカラミティが居た位置を通り過ぎ、ザフトのMSを大量になぎ払った。
マユは自分ごと狙ったのを知ると、怒りに任せ、攻撃をアビスへと切り替える。

「随分と面白いマネしてくれるじゃないの!」
「ぼーっとしてるのが悪いんだよ!」

マユはカラミティを浮上させると、背部ビーム砲を放つが、アウルは逆に海中に潜り、姿をくらます。

「……不意打ちをするつもり?」

マユはコクピット内で薄笑いを浮かべる。自分には不意打ちは効かないと絶対の自信があるからだ。

「……ほら、そこ!」

アビスがカラミティの右後ろの方に浮上すると、アウルが攻撃するより早くガトリングガンを放った。

「クッ!」
「あ……そういやPS装甲だった」

マユは自分の攻撃がアビスの装甲に跳ね返されたのを見ると、ガトリングガンを捨て、対艦刀を構える。
アウルは不意打ちが効かないと判断すると、MA形態になり海中を高速で移動し始めた。
そして、背中だけを海面から現しビームを放つ。マユも攻撃は避けるが、正面にしか撃てないシュラークではアビスを捕えられずにいた。

『お前等、いい加減にしろ!』
「うるさい」

ネオが通信機で怒鳴っているが、2人とも無視して戦いに没頭する。
やがてアウルはカラミティを海中に引きずり込もうと接近してきた。

「こっちの土俵に招待してやるよ」
「近付いてきた♪」

アウルは一旦深く潜り、ほぼ真下からカラミティの足を掴むために浮上を開始した。
そして、もう少しで手が届くところで、マユはカラミティを一歩後ろに下げながらホバーを切る。
するとアビスの手は空振りして水面に近付き、入れ替わる様にマユはカラミティを沈めながら左手に持つ対艦刀で、後ろからアビスの腰に引っ掛けて持ち上げた。

「なっ!?」
「さあ!どうしようかなぁ!」

その結果、アビスは腰を対艦刀に引っ掛けられ完全に海面に姿を現し、カラミティは胸から上を海面に出していた。
つまり、アビスはカラミティに背中を見せ、カラミティは背部ビーム砲シュラークと右手に持つ対艦刀の好きな方で攻撃出来る形になった。
マユが出した結論は両方、対艦刀で両断した上にシュラークを放って粉砕する事にした。
アウルは自分の死を予感する。だが……

「じゃあね、死んじゃい…にゃあぁ!?」

……両機の上にカオスに討たれたバビが落下してきて、マユは驚きの悲鳴を上げた。
PS装甲のため、機体にダメージは無いが、目の前で爆発したため、両機とも吹き飛ばされる。

「な! 何よ今の!?」

マユは突然の事態に混乱していた。スティングはワザと2人の頭上に落とした訳では無いし、また死ぬ様な事も無いのでマユの死に対するセンサーが察知しなかったのだ。
やがて、マユは事態を察するとスティングに通信を入れ怒鳴りつける。

「ふざけんなツリ目! 降りて来い!」
「は?……知るかクソガキ」
「な!……アンタも死んじゃえ!」

スティングの冷淡な態度にキレたマユは、今度はスティングに砲撃を加えだした。
事態を分からないスティングはマユの凶行に驚きながら、攻撃を回避する。

「テメェ!何考えてやがる!正気か!?……って聞くまでも無かったな」
「何、1人で納得してんのよ!このバカ!」
「テメェは狂ってるって言ってんだよ!」

スティングはカオスを上昇させると、まだ僅かに残っているバビとディンを盾にしながら、カラミティに射撃を放つ。
一方のマユは、お構い無しに撃ち続けるので、次々とザフトのMSが落ち、やがて上空にはカオスだけになった。

「さあ、もう盾は無くなったよ」
「最初から関係無しに撃ってる奴の言う事か!そもそもアイツ等に当たっても貫通するだろバカ!」
「うるさい!鬱陶しいからイヤだったの!」
「知るか!」

マユがスティングとの口ゲンカに熱中していると再び真下から殺気を感じ、機体を動かすと、海面からアビスのスピアが姿を見せる。

「何で、当たんないんだよ!」
「またアンタか!もう邪魔!」

マユは悪態を付きながら基地に接近する。
それを見たザフト軍は砲撃を開始するが、マユは全てかわして上陸すると、ザフトのMS部隊に突っ込み対艦刀で切り裂きながら、アビスとカオスに背部ビーム砲を放った。

「当たるかよ!」
「まとめて消してやる!」

スティングがビーム砲をかわし、アウルがザフトのMSごとカラミティを消そうとカリドゥスを放つ。
マユはそれを回避しながら、同時にガズウートを切り裂くのでザフト軍は大混乱に陥った。

「チッ!……このままじゃ埒が開かねぇ!」

スティングは遠距離の攻撃では全てかわされると判断し、ビームライフルからビームサーベルに持ち替え接近戦を仕掛ける。
マユは、それを見て不敵な笑みを漏らした。彼女は撃ち合いより、斬り合いの方が得意なのだ。

「のこのこ近付いてきて……お目出度い奴だね!」
「どっちが!」

マユはカオスに背部ビーム砲を放つが、スティングはカラミティの砲撃とザフトのMSを掻い潜り、ビームサーベルで斬り付ける。

「落ちろよ!」
「そっちが!」

マユはビームサーベルをかわしながら対艦刀を振るう。突っ込んできたカオスをカウンターで切り裂くはずの一撃は、カオスが急激に横へと進行方向を変えることでかわされ、逆にサーベルで背部のビーム砲を1本、切り取られてしまった。

「チッ!大砲だけか!」
「え!?……コイツ、強い!」

スティングは横なぎに払った一撃をマユは後方に下がる事で、ビーム砲1本で済ませたが、カオスの動きの速さには驚きを隠せなかった。

「コイツが、こんなに強くなってるなんて……」

スティングもまた、マユの反射神経の良さに呆れていた。

「何で、アレを避けるんだよ。あのクソガキは……」

そして、お互いに警戒しながら、次の攻撃を開始する。相手を強敵と認めた上で……

「アハハ……楽しくなってきた!やるじゃん、ツリ目!」
「次こそ決めてやる!行くぞチビ!」

スティングはカラミティの攻撃にシールドは通じないと判断すると、シールドを捨て両手にサーベルを持ち、マユと同じく二刀流になるとカオスを接近させる。
マユは機体の腰を落とすと、接近するカオスに身構えた。

「良い覚悟だね……でもパワーはこっちが上だよ!」

マユはカオスのサーベルの斬撃を強引に振り払い、カオスの体勢を崩すが、それはスティングの罠だった。
スティングは体制を崩したと見せかけ、足先のビームクロウを展開させ蹴りを放ってきた。

「パワーが上な事くらい、分かってんだよ!」
「クッ!……そんな武器が有ったんだ。でも!」
「これも防ぐのかよ……」

マユは咄嗟に対艦刀を盾にし、ビームクロウの一撃を防いでいた。さらにマユは横に逃げられないように対艦刀で、脚を抑えたままの状態でスキュラを発射させた。

「これはかわせないはず!」
「甘いんだよ!」

マユは上に行ったら、抑えに使っている対艦刀とは別の1本で斬ろうと狙っていたが、スティングはそれを読んで、下に潜り込む様にカオスを動かし、次いでカラミティの脚を斬ろうとサーベルを振るった。

「クッ!…変な動きをする!」
「また避けただと!?……何なんだこのチビは!?」

JPジョーンズでは、モニターに2人の戦いが映し出されていた。それを見ながら感慨深げにネオが呟く。

「スティング……マユと互角に戦り合うとは……本当に強くなったな」

黙って見つめるネオにJPジョーンズの艦長が話しかける。

「あの大佐……現在はザフトと交戦中なのですが」
「うるさい!人が現実逃避してるのを邪魔するなよ!」
「しないで下さい!」
「いや、だってアイツ等、俺の言う事なんか聞かないし……」
「……それを何とかするのが大佐の役目です」

ネオは溜息を付くと、ステラに通信を入れる。

「ステラ、出られるか?」
『うん、いいよ』
「そうか、じゃあ頼みがあるんだけどな……今から全機出撃するから、ステラは誰かのウィンダムに運んでもらって上陸してくれるか?」
『うん……わかった』
「それだけじゃ無いんだ。その後、基地まで行って完全に制圧してくれないか? そこら中の武装を壊してくれれば、後はこっちで降伏勧告するから」
『うん、ステラがんばる』
「やってくれるか!……ありがとうなステラは良い子だなぁ」
『……ネオ、泣いてる?』
「心配いらないぞ!俺にはステラが付いてるから」
『ん?……わかった。行ってくる』
「頼んだぞ」

ネオは通信を切ると艦長に向き直る。

「どうだ!これで作戦は上手く行くだろ」
「……あの3人を止めようとする発想は無いんですか?」
「無理だな……まあ、一応は巻き込む形だけど、敵も落としてるし」
「そうですけど……ザフトのMS、ほとんど残ってませんが、何時まで続くんです?」
「……その内誰かがバッテリー切れ起こすだろ。そうなって攻撃する奴等じゃないさ……多分」
「はぁ……」

やがて、カオスのバッテリーが切れPS装甲が落ちる。先に大火力のビーム兵器を使いすぎたアビスに続いて戦闘不能となった。
マユはガルナハンでの教訓を生かし、消費の激しいスキュラの使用を控えたため、推進剤に多くを使用するカオスより、僅かな差で勝る事が出来たのだ。

「チッ!バッテリー切れか!スラスターに燃料を喰いすぎたか!」
「マユの勝ちだね!さ~て!……って、ところで何で戦ってたんだっけ?」
「テメェがいきなり撃ってきたんだろうが!」
「そうだっけ?……まあいいや♪楽しかったし♪」
「……あのな……」
「そんな事より、残りの敵を……あれ?」
「ん?……敵は何処に行ったんだ?」
「マユは知らないよ……あ、白旗出てる」
「ってことは、終わったのか?」
「みたいだね……」

すでにマハムール基地はネオの降伏勧告に応じ、白旗を揚げていた。基地の人間にとっては悪夢の様な光景だったろう。味方同士で争っている様に見せて、実はザフトを攻撃しているのだと思っていた。
実際は本気で争っていたのだが……
呆然としている2人にネオからの通信が入る。

『お前等!さっさと戻って来い!』
「ん?仮面のオジサン、何で怒ってるの?」
「知るか」
『判れよ!お前等が何やってたか忘れたのか!それとオジサンじゃ無い!』
「戦闘してたよオジサン」
「一応は敵も落としたぜ」
『うるさい!良いから戻って来い!』

ネオは通信を切ると、ジブリールに報告するため席を立ち上がりブリッジを出ようとする。

「俺は報告をしてくる。後は任せるぞ」
「了解です。それで、あの3人は、どうします?」
「その件も含めて話してくるよ。とりあえずアウルとステラは最適化のカプセルに行かせておけ」
「スティングとマユは?」
「あの調子だと、帰った早々にケンカする事も無いだろ。ほっとけ」

ネオはそれだけ言うとブリッジから立ち去った。