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W-SEED_赤頭巾氏_英雄の種と次世代への翼(Re)_02話

Last-modified: 2009-10-04 (日) 22:38:19
 

英雄の種と次世代への翼
第二幕「第二次マリーメイア事変」

 
 

――パーティから12日前。ピースミリオンブリーフィングルームにて

 

 マリーメイア・クシュリナーダ。
 C.E.の二度にわたったプラントと地球連合の独立闘争の前に起こされた、ナチュラルが大半を占めるコロニー群の独立と主権を奪い合う戦争の中で、象徴として大人達によって戦争の矢面に立たされ、地球へと宣戦を告げた指導者。
 その宣戦直前まで”地球”の政治と軍事の頂点に立っていた男、トレーズ・クシュリナーダの娘。
 そして、歪められた時代の中で何故か巨万の富を得てしまった運命の悪戯を受け、再び歴史の矢面に立つ事になった少女は今、午後三時のスコーンのさくさくとした歯応えと紅茶の甘い香りを堪能している。
 大きなモニターが置かれている彼女の優雅なひと時と反比例する様な無機質な戦艦の一室に一人の女性が入ってくる。

 

 レディ=アン。
 ユーラシア連邦内に存在したロームフェラ財団が牛耳る武装組織『OZ(オズ)』に身を寄せていた彼女だが、今はマリーメイアの後見人(と言うより身元引受人といった方が適切かもしれないが)兼秘書として行動を共にしていた。
 優雅さに過ごされていた音楽は止められて、レディはモニターのスイッチを操作していく。

 

「では、マリーメイア様。そろそろ、C.E.の戦役史の復習の時間です」
「あら、もうそんな時間ですか? けど、CEの戦役といっても殆どここ数年前の事じゃありませんか」
「はい。確かに主に大規模な戦闘はCE72年からの3年間に集約していますが、C.E.71年の頃には既に火星圏に着いていた私達マーシャンにとって蚊帳の外の話」
「それはそうですわね。まぁ、私達はろくに事情も知らされていませんでしたから」
「戦役の終わりと共にようやく地球圏の資料が公開されましたし、此処で真実を復習しておかないとどちらかの陣営に良い様に使われてしまいます」

 

 マリーメイアは背筋をピシッと伸ばしたまま、レディの話を聞きつつもモニターへと目を向ける。
 顔は僅かにこわばり、瞬きの回数は一気に減り始めて緊張と言う言葉を自らの姿勢と態度で体現してた。
 彼女達はあと数日立てば、この巨大な戦艦ピースミリオンは地球圏への帰還を果たす。
 およそ5年振りに地球の土を踏む事になるのだが、浮かれ気分の者は少なかった。
 特にC.E.で起こった『第一次ヤキン・ドゥーエ戦役』及びその2年後再び起こった『プラント独立戦争』という二度にわたる世界規模の戦争によって地球は大分ダメージを負っていると聞かされていたので、この艦に乗っている誰もが内心穏やかではなかったのだ。
 また、コロニーを火星から離脱させてからはろくに情報も入っておらず、今回それらの起きた出来事を復習する機会を設けた。
 外交上相手国の事を知る事は当然としてなのだが、何故か代表である彼女達3人は別々に時間を設けてその説明を受ける事になっていた。マリーメイアはそれが最後の番だった為、それだけ不安が積もっていた。

 

「まるで、冷戦……いえ、ナチスドイツ滅亡、ソ連崩壊の時の様ですわね」
「似た様なものです」
「それもそれで、酷い言い方ですわね。ところで変な似非情報は混じってませんわね? 何万人虐殺しただの、残酷な処刑をしただのグロテスクなプロパガンタには興味ありませんわ」
「そういう細かい事は触れませんのでご心配なく。何よりそれらは現地で見て周りませんと事実は解りませんから」
「わ、解りました」

 

 マリーメイアの最初の懸念事項は和らいだ。最年少である自分が最後に回されたのはとてもショッキングな出来事があった事への考慮なのだろうかと予想していたからだ。
 何やら、コロニーが地球へ落とされたり、軍隊がかなり消滅したとも聞かされてはいた。
 僅かに震えていた手を隠す様にしながらも、マリーメイアは事前にティータイムでリラックスした状態の跡で話を聞く準備を整えていた。 
 その様子を見て、レディも僅かに頷いた後、モニターから資料を見せていく。
 大まかな戦争年表と地球と更に月とプラントが映し出されている中、ポインターで年表を現在のC.E.75年からC.E.69年までさかのぼると、地球の勢力図はまるで変わっていた。
 マリーメイアもその余りの変化の様子に目を見開きたたずを飲んで見つめている。

 

「では、C.E.68~69までの出来事は実際、経験していますから大丈夫ですね?」
「勿論、解っていますわ。プラントより一足早く、私達のコロニー群は地球連合からの独立闘争を開始。といっても、殆どが僅かな特殊工作員でしたわね。それに連合のお家騒動の連鎖も加わったと」
「はい。殆どは私たちは基地を制圧出来ましたが、それにきっかけにユーラシア連邦の内ゲバが起こり、OZとコロニー側へと寝返ったホワイトファングのお家騒動と言った所でしょうか。
 正式なコロニー側の軍隊はマリーメイア様。いえ、デキム・バートンが率いた施設軍位でしたね」

 

 マリーメイアは5年前までの事を一つ一つを昔、使わなくなって閉まい込んでいたおもちゃ箱を整理するかの様に記憶を整理していく。
 それはまぶたに焼きつくほど鮮明に、そして確実に自分の身を持ってして体験した壮絶な日々であった。

 

 その当時、地球連合内でも世界は一つに纏まっては居なかった。
 西欧を中心にリーオーやエアリーズなどという名前を付けられて20年ほど前から運用を進めていた『MS(モビルスーツ)』と呼ばれる巨大な人型で核動力を用いた兵器を多数所有し、各地を武力による併合、制圧をしていたOZ(オズ)と呼ばれるユーラシア連邦の武装組織。
 宇宙での覇権を広げたままその第一勢力となり、月を丸々保有して多数の宇宙軍を持ち『ブルーコスモス』と呼ばれた思想団体とそれを支援する企業団体『ロゴス』を擁し、後にダガーシリーズなどのバッテリー型MSや宇宙用のMAなどを多く保有したと聞く大西洋連邦。
 二つの巨大勢力の中、彼らを標的にしたヒイロ=ユイをはじめとしたガンダムパイロットがテロ活動をする中、トレーズ・クシュリナーダの娘という事でバートン財団の私設軍隊を自らが代表となり、率いていたこと。

 

 全ては大西洋連邦とユーラシア連邦の諍いの中、ガンダムパイロット達が介入した事に始まり、結局、ユーラシア連邦のOZの中から反乱を起こした『ホワイトファング』がコロニー側についた事で、OZとホワイトファングは共倒れになり、結果多くの軍人が、死ぬかコロニーへと流れ着いた。
 その戦争の後、ユーラシア連邦政府へマリーメイアとデキム・バートンの軍隊が出兵し、地球にニュートロンジャマーが投下される直前に軍事的恫喝の元、ドサクサにまぎれて勝ち取った独立。
 群雄割拠か戦国時代かと問われて、ハイと頷くしかない非情な戦争の歴史であった。

 

「しかし、プラントも良くリーオーやエアリーズ相手に勝てましたわね。ジンでしたっけ? 彼らのMSは」
「それはNJ(ニュートロンジャマー)のおかげですね。あれのおかげで核を使ったエンジンのMSは機能停止。リーオーもエアリーズも動かず、大西洋連邦のダガーが出るまで彼らの独壇場でした。
 それにユーラシア連邦のMSは私達がかなり戦力を潰してしまいましたから」
「やはり、あの計画は地球にも実行されたのですか。ホワイトファングの紛争直前に私達にも打ち込まれましたが」
「バッテリー技術が進んでいたプラントは、予めそれを見込んでの開戦の様でしたからね。だが、時系列的にはそれはもっと後になります。慌てて勘違いしない様に」
「解りました。はぁ、しかしなんと愚かな事を」

 

 その出てきた単語にイスから立ち上がりテーブルを手で叩いて憤怒の形相を,見せる。
 それをレディは止める事無くじっと見つめていると、自然と握りこぶしを作ったまま、マリーメイアはその拳を自らの膝の上において、小さく震えながらもじっと次の言葉を待っていた。
 コロニーと連合の闘争が終結し掛けていた時、別宙域にいたプラントが核分裂を止める機械をばらまく計画があるという事を知らされたのだ。
 プラントはコーディネイト技術など、かなり倫理的に問題視される技術を推進していた。
 ソレに加え、プラントの武装組織『ザフト』が公表していた”ジン”と呼ばれるMSは世界から笑いものにされていた。
 何故か電気バッテリーを利用した核を持たないMSだったからだ。
 確かに安全性は良いとも言えるが、正直な話バッテリーに蓄電出来るだけの電力量では、高出力のビーム兵器など積んだら、数時間と立たないうちに動かなくなってしまう。
 ただでさえ、弾薬の量など懸念事項が覆いMSにおいて、そんな設計をするのは愚の骨頂。
 その当時、誰もがザフトのMSを見て、そう思っていた。しかしそれが、その計画全てを前提にして行われている事が解ったときは何もかもが手遅れで、笑っていた人間全てはその嘲笑を後悔する事になった。
 コロニーは内心穏やかになく、大西洋連邦、ユーラシア連邦も粛々とMSの開発計画の変更を余儀なくされていた。
 マリーメイアはそれが決め手となり、ユーラシア連邦は大きく大西洋連邦に牛耳られる様になった事を改めて聞かされた。

 

「やはり、核が止まるとなると……地球の人々のエネルギー事情は悲惨な事に」
「けど、おかげで連合において、モビルドールシステムはご破算。ニュートロンジャマーのおかげでMSも動きませんし、大規模な軍事的運用が困難になっています」
「そうですね。あれが来られていたら私の軍もコロニー独立どころか出兵すら難しかったですから」
「パイロットの多くが死んだユーラシア連邦の切り札でしたからね。
 さて、話を戻します。コロニーは一部工作員による『オペレーションメテオ』と『マリーメイア事変』でユーラシア連邦から何とか独立を勝ち取ります」
「結局は理事国に私達とプラントを二つ相手にするのは無理と判断しての譲歩でしょうけど」
「はい。資料によると、ユーラシア連邦に対して、大西洋連邦が治権の一時放棄とプラントへの対応を強要する為の口実だったそうです」
「……酷い話ですね。おまけに私達もプラントに敵視されたりと、結局ろくな事はありませんでした」

 

 マリーメイアは言葉を詰まらせながらも、その大人たちの汚い”国とコロニーの切り売り”に憤りを感じていた。
 あの時の混乱とは今では思い出しても思い出したくない。MSを無人で運用するもビルドールシステム。
 それはホワイトファング及びユーラシア連邦の開発基地となったリーブラのニュートロンジャマーによる機能停止を受け、その情報からマリーメイア軍はユーラシア連邦に宣戦を布告をしている。
 開発された高性能MS”ガンダムシリーズ”や高性能だが配備数の少ない”サーペント”でもあの物量に押しつぶされたら一たまりも無かった。何より、実はまだMDを生産している基地があるとの情報と、結果的にMSの殆どが機動不可能にするニュートロンジャマーがあるという事は大西洋連邦のMAからもプラントのMSから一方的に蹂躙されてしまうと言う事に繋がり、その結果を想像する事は恐怖でしかなかった。
 そして、いつでも潰せると言わんばかりに挑発を繰り返しながらも協力を取り付けようとするプラントの行動。
 周りの全てが敵と成り果てたあの絶望感はマリーメイアの幼い身の上にはとても応えた。
 だが、皮肉にもそれが彼女の更正もとい、自由を手に入れるきっかけとなったのは本人にとっても悪い冗談だった。
 彼女を傀儡として利用していたデキムは、その一連の動きでマリーメイアに財産と権限の全て押し付けて姿をくらましてしまったのだ。『お前ではプラントにも大西洋連邦にも勝てない。代わりを探して来る』と書かれたメッセージを残して。
 マリーメイアはあまりにも序盤から力み過ぎたのか、はぁっと大きくため息を吐いたまま肩から力を落としていく。
 流石に緊張をし続けられるほど彼女の精神はまだ、大人になり切れていなかった。

 

「立場上、生産コロニーを作る事にも私達は反対していましたからね。独立を手に入れたとはいえ、大西洋連邦は殆どの戦力を出し惜しみしていましたから」
「コロニー軍の連携は監視されても居ましたから、連携も何もありませんでしたから」
「その態度が気に入らなかったのかプラントから襲撃を受けました。そして、私達は自治権を行使して、火星圏への離脱が始まりました」
「サーペントはその間に使い潰してしまいましたわね。ガンダムの改修も含めてバッテリー化が間に合って良かったです」
「ガンダム開発者達が何とか短時間な稼動とは言え、MS用のバッテリーを開発して下さったおかげです。
 プラントは技術開示を頑なに渋っていましたし、改修されたガンダム四機はバッテリー化で出力は落ちたとは言え、前線を支えてくれましたから」
「ええ、感謝しないといけません。あのままでは、折角手に入れた自治権もプラントにとられてしまう所でしたし」
「それもあって、コーディネイターでもあった火星開拓を進めていたネイティブ・マーシャン達も同情的でしたしね。
 さて、此処からはこの資料道理、双方傷つけあっただけで最終的に元の勢力図に戻して、終戦を迎えました」

 

 レディは淡々と自らも体験しているとてつもない被害と戦場を告げたまま、さくさくとモニターの画面を切り替えていく。
 そこは自分達が火星へと旅立った時とほぼ同じ勢力図を示している地球の姿。
 マリーメイアはその事実で結局戦争は命を散らしあっただけで終わったと言う事実を罰の悪そうな顔をしたまま、再び緊張感のある顔つきになり、気持ちを切り替えていく。
 あの当時の苛烈な外交状態は酷いモノだったからか、自然と下唇をかみ締めていた。
 此方がユーラシア連邦から独立は手に入れたが、大西洋連邦に吸収されて『地球連合』という大きな勢力からにらみを効かされて動きが取れない中、戦争への参加と要請と言う名の脅迫を繰り返すプラント。 
 OZから亡命してきた多くの軍人達はコロニーの力になってくれていたが、そもそも”国”としての政治と言う機関を持たなかったコロニーにとっては自分達が立ち回るだけで手一杯であり、火星への亡命と言う行為はもはや賭けに等しかった。そんな命がけの逃亡の日々を脳裏が過ぎった中、モニターの切り替えからマリーメイアは一つの疑問へと辿りつきそれを口にした。

 

「あら、2年もあっさりと飛ばしてしまうんですか?」
「はい、ここで南米の独立など細かい紛争はあった事にはあったのですが、その休戦期間を経ている間、情報は入っていましたから。重要なのはC.E.73年です。一回目の戦争から2年後で、私達が火星へと旅立った3年後です」
「此処になって情報が殆ど入ってこなくなった時期ですわね」
「と言うより出来事が立て続けに起き過ぎて、事態が把握できなくなったのがここからの一年の戦争になります」
「ああ、ロゴスが急に連絡が途絶えたり、私やドロシーさんやリリーナさんが急にお金持ちになった辺りですね」

 

 緊張が少し解けてしまったマリーメイアを見て、軽く目配せをしながら年代と勢力図の表示を今度は半月単位へと切り替えていく。
 タイムスケールが一気に短くなった事がこれからの激動を物語っているというのは解っていたが、レディの言葉が改めてその事実を告げたが彼女らにとってこの時期は実は”よい時期”ではあった。
 マリーメイアの言葉が示す通り、マーシャンは細々と生活をしている開拓時代の中からインフラ整備なども一気に進められていった時期でもある。それは辛くも自分達と敵対したユーラシア連邦なども含めた多くの地球からの亡命希望者や資産を物資へと替えて、火星へと投資をこぞってし始めた時期でもある。
 特にその対象はマリーメイアを含め今代表として呼ばれている、ドロシー・カタロニアやリリーナ・ドーリアン達へと集中していた。

 

「はい。まず、我々が火星圏に避難した時は戦争の爪痕もあり、マリーメイア様のトレーズ様の遺産その伝、バートン財団の資産で何とか2年は持ちましたがそろそろ限界でした」
「そして、急にロゴスから私達への資産の預かりや投資の話が持ち込まれたりしましたね。あれのおかげで元から居たマーシャン以外のコロニーも自給自足の目処が立ちました」
「はい。実はこの頃デュランダル議長がロゴスに関して政治的プロパガンタを敷いており、民衆とプラントと一部の地球の軍が共謀して、”魔女狩り”が行われてた訳です」

 

 事情は詳しくは聞ける事は無かったが、その地球からの亡命者が上手く行き始めると、彼女らへとロゴスと大西洋連邦を中心とするブルーコスモスの企業団体までもが資金援助と投資、亡命を持ち掛けて来た。
 彼らの資金と物資は一気に火星へと雪崩れ込んで火星へと注がれていって、自給自足も目処が立って来た所であった。
 それは殆どその日その日を一杯一杯に生きていた火星の元から居たマーシャン(コロニー側)に多大な富と幸福を授けていってくれた。
 正に絶頂期とも言える日々を思い出している中、突然出てきた明らかな異物の様な印象を与える言葉を耳にする。
 マリーメイアがその言葉を聴いたとき、ぴくっと体を震わせた後、その言葉を反芻かの様にレディへと返していく。
 魔女狩り。それは歴史の中でしか聞いたことが無い言葉だった。
 今まで血生臭い戦争や大人達の思惑が絡んだ世界情勢の話から飛んで急にファンタジーな感覚を覚える言葉の出現に若干眉を歪めつつも、それに対して疑問と確認の言葉を返していく。
 魔女狩りとは中世で異端審問や黒魔術と呼ばれる行為をする事、または”有力な豪商から貴族が金を巻き上げる為に罪をでっち上げて”富と生命を奪う行為を指す。
 マリーメイアはそんな何世紀も前の一時的な現象が何故、この現代に蘇っているのか理由が解らなかった。

 

「ま、魔女狩りですか? えーと、あの大昔に行われていた、あの”魔女狩り”の事ですか?」
「ええ、その魔女狩りです。ロゴスと関係していた財団や盟主達は次々に襲撃され、多くの人が殺されたり投獄されました」
「……なるほど。それで、資産を移したり、地球に見切りを付けた人達が続々と火星へ来たと。何をやっているのやら」
「リリーナ様は北欧のピースクラフト家、マリーメイア様もトレーズ様の娘であり、バートン財団の所属と言う名目がありましたから。特にドロシーさんは元ロームフェラ財団の家柄でしたから安心も出来た訳です」
「その時のドロシーさんはあまり元気がありませんでしたが、その事情を知って……でしょうか? 私は何も知らずにぬか喜びをしてしまって」
「……気にする事はありません。マリーメイア様はよくやっていました。あの混乱の後、デキム・バートンが姿を消して気落ちしていた貴方にはいいニュースでしたから」

 

 受け取った言葉にマリーメイアは心を痛めていく。自分達が火星で何とか建て直していた栄華が、その人達の恐怖と逃亡の犠牲になった人達と遺産だったという現実はあまりにも惨たらしく、その富を享受していたという事への責任がより一段とその小さい背へとのしかかっていった。
 流石にあからさまに気落ちしているのを見て、レディは優しく肩を掴み慰めてくる。
 その時の顔は、時々トレーズの事を思い起こす時に見せる優しい聖女の微笑みであった。
 密かに敬愛していたトレーズの死を経て、火星へと渡った時から、彼女は再び眼鏡を掛けている。それと同時にその笑みを彼女は封印していた。
 マリーメイアからすれば、最初に出会った優しい笑みの聖女と眼鏡を掛け凍りついた心で仕事に生きる女の表情の差は著しいギャップを感じさせるが、元々は眼鏡の方が彼女の素である事は周りからは聞いていた。

 

「けど……実際はお金や資産は移せても、逃げられた方は殆ど居ませんでしたね」
「資産を火星に移した後、火星に向かう為月に身を寄せて居た様ですが、結局、プラント軍の攻撃で死んでしまいました」
「まぁ、私達はその人達の遺産で生き長らえたと……感謝しなければいけませんわね。おかげで今や私達3人はマーシャンの代表と言う立場です」
「D.S.S.D(深宇宙探査開発機構)も潰されてほんと困り果てていましたからね。自給自足を目指しながらも結局は技術があってこそですから……マーシャンは」
「何とかスターゲイザーと一部のデータだけは持ってきてくれましたけど。まさか、地球圏からMS単独で来るとは思いもしませんでした」
「スターゲイザーのコンピュータが二人を一番生存率が高い場所へと選んだと思われます。しかし、二人はある意味奇跡的生存でした」

 

 慰めに対して少し前向きになれそうだったマリーメイアだったが、その投資をし、自分達の命を繋いでくれた大勢の人達と、それを支えた技術者達が殺されてしまった事を改めて実感させられて、気分は快晴とは程遠く曇っていた。
 火星と言う環境はそもそも人類が宇宙に出始めた後、更に遠くに手を伸ばす形になっている。木星ですら一度の往復で何十年も掛かっている中、長い年月で様々な技術が開発されてようやく地に足をつけて根を張ることの出来た技術の結晶。
 それを支えていたのは地球連合とプラント両方から支援を受けていた組織がD.S.S.Dであり、最後の形見とも言えるMS”スターゲイザー”を運んできたスウェン・カル・バヤンとソル・リューネ・ランジュもその多くを語ってはくれていなかった。
 しかし、その最新の推進航行技術である”ヴォワチュール・リュミエール”は、船舶の航行速度を飛躍的に改善し、彼女達が載っている規格外の大きさである戦艦”ピースミリオン”も短期間で火星から地球へと移動する事が可能になった。

 

「ちなみに今回の戦争はブレイク・ザ・ワールドと呼ばれるコロニー落下”事故”を皮切りに事態が動きます。
 そのコロニーの管理責任を問い、プラントへの議会解散などを盛り込んだ要求書を提出。
 それを破棄し、地球連合はプランに対して核攻撃を始めてザフトと連合の戦争が再び始まります」
「……地球圏のコロニーはプラントの管理下にあるものでしょうに。
 何をやってたんでしょうか。それで、戦争を仕掛ける連合も連合ですが」
「破砕作業等は行っていたのですがその辺りは情報が入りません。
 まぁ、そこら辺は大人の事情もあるのでしょう。地球も被害が大きかったですし」
「解りました。察しましょうか。”事故”という事で」

 

 少し苦味走った顔のマリーメイアにレディは僅かに頷いた後、話を続けていく。
 地表の変動などで勢力図どころかその地形すら大幅に変わってしまったその事故は、自分達が想像を絶する苦難に満ちていたのだろうと想像する。その後見せられる映像もまた幼いマリーメイアにとってはショッキングであった。津波、天変地異、異常気象etc…………
 おまけに聞いた話では連合もプラントもそれに乗じた無差別テロを各地で行っていたらしい。
 実際、前のマーシャン特使もその現場に居合わせていたらしく、大量のデータが未だに未解析のままである。
 全てが謎。何故、急にコロニーが落とされたのか。その間プラントはナニをしていたのか。
 科学者上がりの議長も平和の歌姫もそこについては何も語ってはくれなかった。

 

「後、何を血迷ったか地球連合はこのちょっと前辺りでベルリンなんかを自ら襲撃していますね。
 それは確かに親プラントに靡き掛けていたと言う傾向はあったらしいのですが、自爆行為と言うか、これでは民衆も怒り出すのも無理は無いと思います」
「………はいぃ?」
「だから、自らの国を焼き払ったんです。何でも試作段階だった巨大MSの実験として大虐殺だった様です。
 あまり、開戦に賛同していない地域だったのと見せしめだった様で」
「本当ですか?」
「本当です。では、オーブの説明にも入ります」

 

 このレディの情報から一気に空気が変わる。古い表現で例えるなら、後ろに黒いトンボのマークが濁点を残しながらも
 飛んでいたり、素っ頓狂なSEが流れて何故か登場人物の胸元の服がずれたりする現象が起こりそうな位の爆弾発言だった。
 マリーメイアも一瞬レディが何を言っているか理解が出来なかったのか高く上ずった声で聞き返してしまう。
 それに短い返答を返し話題を進めるレディの言葉に、言われた事が現実に起こった確かな史実だと言う事にマリーメイアは頭を抱えてしまう。それを見計らっての話題の変更だという事は何となく理解してはいたが、そもそも自国の反乱分子をMSで焼き払うとは一体全体何時の時代の政治判断だろうか?
 共産圏で過去にそういうことが実際行われていたのは知っているが、ただでさえ国力を失い、混乱と不安に満たされた中、この通信やマスメディアの多様化した世界で、粛清まがいの事を行うなんて正気の沙汰とは思えない。

 

「オーブ連合首長国は最初の戦役の時、連合に無理矢理併合を強いられていますが、プラントのクライン派の戦争介入と宇宙のアメノミハシラで軍隊を温存していたオーブのロンド・ミナ・サハクによって、何とか独立を保っていました」
「永久中立と言いながらも意外としたたかですね」
「まぁ、スイスなど国民皆兵でしたし、東アジアの日本という国も昔は戦争不介入を謡いながらも強力な軍隊を持っていました。規模が小さかったのと人道支援を積極的にしていたと言う事情もありますが」
「……何処の国も建前と本音があるのですね。で、一年前の戦役では?」
「その頃はえーと、プラントのクライン派とオーブの亡命政府が暫定政府からオーブを奪還?いえ、之は侵略でしょうか? んー、いえ。そもそも、亡命していた政府があった事すら不確かですし」
「どっちなんですか? 亡命やら暫定やら訳が解りません」
「私も二度、ドロシー様とリリーナ様に説明をしていますが、今でも判断が困っています」
「では、事実だけ話してください」
「解りました。その当時のオーブの代表カガリ・ユラ・アスハが誘拐されており、ウナト・エマ・セイランを首班とした暫定政府が発足。
 地球連合に加入していたオーブがプラントから攻撃を受けた際、誘拐されていたアスハ代表がクライン派と共に襲撃し、亡命していたとされる政府が主権を奪取となっています」

 

 シリアスな空気を持ち直す様に語られる技術立国であり、地球で唯一永久中立を謡っていたオーブ。
 コロニー民の避難にも協力を申し出てくれて、一部の住人はオーブへと移住を済ませていた。
 マリーメイア個人にとっても避難をしたマーシャンにとっても影ながらに協力してくれた国であり、意外にも地球の国としての心象は良かった。何より以前の特使も大分世話になっており、施設の貸し出しや治療にと至れり尽くせりだった事から、前特使から”何かあったらオーブに頼れ”と散々聞かされていた。
 今回もそれに習い頼る予定だったのだが、その事情の説明を始めるレディは珍しく困惑と戸惑いの表情を見せながらも、説明に苦慮していた。そして、告げられる言葉にマリーメイアはまるで石像の様に固まる。事実を飲み込むまでぽかんっとした表情をしている中、沈黙と静寂がその部屋へ蔓延していた。

 

「……はぁ? 戦争はゲームじゃありませんよ? なんですかその滅茶苦茶な政権交代は。と言うか、”誘拐犯に替え玉にされた”とか”洗脳された”と思わないんですか!?」
「そうですね。私だったら洗脳は出来なくても、体内に爆弾でも仕込んで言う事を聞かせるか、中枢に入った所で爆破します」
「それはそれでどうかと思いますが……でも、まぁそう考えておかしくないのですが何故!?」
「といってもそれが史実ですから。一応、誘拐の部分は政治的亡命となっています。
 また、それを機にオーブは連合から離脱。独立を維持しつつ、現プラントの最大派閥のクライン派の行動に連れ沿っていますね」

 

 激昂するマリーメイアの言葉にしれっと更に斜め上の文字通りの爆弾発言の応酬をするレディ。
 さすがにその言葉にはたじろきを見せているいる間に話は進められていく。
 人間爆弾なぞフィクションの話だと思うが、今のレディならやりそうと言うか単身で要人に爆破テロを仕掛けた彼女の経歴なら絶対にその位やっているだろうとマリーメイアは心の中でうなずきを返していった。
 代表を誘拐される亡命政府など聞いた事が無い。まして、その誘拐犯が政府を立ち上げて主権を奪取するなど、明らかに誘拐側の意図にそった国を作られるのは承知の筈。
 そういえば、前特使の滞在中にそれを許していたと聞いていたがそのことについてあまり語っていなかった。
 確かその後、ロンド・ミナ・サハクなどと会合をしていることから、何らかの政治的決着かもしくは事情を説明されていたとは思うが、それでもその主権委譲の流れは疑問が残る。
 マリーメイアはもはや歴史の闇とも取れるその一連の事項について考える事を途中で止めた。
 人伝に聞いた話しでは判断は鈍るだろうし、何か事情か情報の行き違いがあったのだろうと結論付ける。
 以前助けてくれたオーブの行動から僅かな希望と信頼を抱いており、それに賭ける事にした様だ。

 

「ま……まぁ、オーブは良いです。プラントと連合について詳しくお願いします」
「はい。プラントはその後、地球連合の重要拠点次々に強襲、月基地も消滅させました。
 その前に連合も一糸報いてプラントコロニーを撃沈させていますね」
「消滅?! コロニーを撃沈!? う、嘘そんな事を」
「何でも、巨大なビーム砲を屈折させる戦略兵器基地を使用したらしいです。レクイエムという名だったそうです。
 プラントがそれを掌握後、修理して再使用。残っていた軍隊を焼き払ったそうです。
 それでほぼ、地球連合は宇宙での戦力を喪失していますね」

 

 マリーメイアは再び立ち上がり、その”史実”を疑いのまなざしとそんなことをした人類への絶望を滲ませながら、その事実が虚偽である事を望んで叫んでいる。コロニーを直接砲撃する超兵器の開発までなら、かつてのリーブラやウイングガンダムゼロの行動などからまだ彼女の想像の範疇にはあった。だが、それを連合が自ら基地を母体に作り上げた事、更にそれをプラントが再利用して地球連合に砲火を放った事実は一転受け入れ難いと言うか、人類は戦争どころかもはや人種の根絶レベルの行為をしている地球とプラントの思想と行動は理解し難かった。
 しかして、現実にモニターにはその時の映像が顛末が僅かに映し出されている。プラントコロニーがまるでガラス製の砂時計の様に光でなぎ払われ、へしゃげてその形を失っていく様は正に恐怖と狂気の産物であった。
 恐らく、かつて最初に原子爆弾を投下された国はこれと同じ様な衝撃を受けたのかもしれない。
 それが今の核へ対するアレルギー的な嫌悪を寄せているのに繋がっているだろうと想像できるほどの惨事に見えた。

 

「……プラントのその後は? えーと、確かその当時、デュランダル議長からクライン議長になった経緯は?」
「そこですか? クライン派はオーブに完全中立を破棄させ、共に宇宙に上がりプラントに宣戦布告。
 クライン派とオーブ軍は武力を用いてザフト軍を打ち破り、クライン派の代表ラクス・クラインがプラントの議長になっています」

 

 マリーメイアはその事実に狼狽し、受け入れることが最初は出来なかった。
 頭を抱えているのも無理はない。本来は永久中立を謡っていたオーブがプラントに攻撃を仕掛けるなどありえない。明らかに誘拐側の意図が見え隠れしており、それではオーブの理念もあったものじゃない。そして、それを全て推し進めていたクライン派の行動に恐怖を感じていた。
 確かにマリーメイアが出した軍勢は結果的に存在するだけの圧力として独立を勝ち取る事は出来たが、それも勝算と勝機を見出しての事だ。
 プラントの軍勢が大西洋連合と睨み合い、ユーラシア連邦の戦力の疲弊、ベテラン兵員とガンダム四機の掌握。
 用意と準備、奇襲と好機、乱戦への持込。すべからく準備を経てからの行動だ。
 それに対し、クライン派の行動はあまりにも無邪気で大胆だ。二度焼かれるオーブを利用し何処から手に入れたか解らない高性能MSを駆使して、戦場を駆け巡り勝利を掴み取っていく。
 そして、その後のプラントの人民の意思の掌握は悪魔的であるとマリーメイアは感じていた。
 一体どんな粛清と扇動とプロパガンタを組まれていたのかと思うと体の震えが止まらない。

 

「…………えーと、これまでの話は何時の時代の何処の国の仮想戦史ですの?」
「ほんの一年前の地球圏全体の出来事であり、れっきとした史実です」
「……コロニーに……火星に帰ります」
「ダメです」

 

 立ち上がり、部屋の外を駆け出る準備を進めながらもマリーメイアは
 最後に「今までの話が冗談である」という幻想にすがろうとした。
 きっとレディは「……というのは嘘で実際はこうですよ」と言う言葉を待っていた。
 しかし、それはレディの冷静な返答により、露雲へと化したのが解るとそのまま脱兎の如く逃げようとするが、それを見越してか僅かに腰を屈めていたレディの右手が獲物を狙った大蛇の如く
 マリーメイアの肩を掴んで引き止めた。しばし、両者に静寂とぴりぴりと拮抗する緊張感が漂う中、目をうるうるとさせながらもマリーメイアはどうにかしてこの場所から脱出したら良いか考えを巡らしていた。
 彼女はまるで壁の様に立ちふさがるレディを何とかしなければいけないというの問題は、先ほどまで話されていた史実を受け入れるよりは安易と判断していた。
 ただ、問題は既にリリーナやドロシーも既に含めているという事が意味するモノ。
 つまり、一番聞き分けが悪いであろう自分には既に対処と対策を練っている筈。
 しかも、それを行うのが眼鏡を掛けたレディ・アンだという事が目の前の壁の分厚さを誇っている。

 

「なんでですか!? そんな、連中と話し合いなど通じる訳がありません!」
「それが、今回のお仕事です」
「私達が居ない間に地球圏の人間は頭が狂ってしまったんです! きっとニュートロンジャマーとかいう奴で」
「今の所はそういう報告は上がってません。医学的にも立証されてません。調べる余地はありますが」
「即急に安全確保を! きっと私も殺されるか軟禁されて洗脳されるに決まっています! 後、マーシャンも武装化を進めないといけません! 次はきっと火星にまで手を出すつもりです!」
「その為にヒイロ達のガンダム、ドロシー様までMSを持ってきているのです。後、そうさせない為の今回の特使派遣による外交の再開です」
「嫌です! なんでそんな連中と付き合わなければいけないんですか!」
「仕事ですし、身の安全は私たちが何とかします。私はその為に心を封印して今回の事に対応しているのですから」

 

 激昂する言葉をたしなながら矢継ぎ早に出るネガティブな憶測と不安要素を潰していくレディ。
 マリーメイアも己の頭脳をフル回転させて様々な要素の上げへつらい、ここからの撤退を懇願する。
 レディの言葉は一個一個的確かつ理論としては的を得ているのだが、不安に駆られた少女に対する慰めと言う効果においては、あまり意味を成していなかったが、言葉の銃撃戦はマリーメイアの連続射撃に対しピンポイント爆撃を繰り返すレディに軍配が上がる。レディの言葉は力強い。
 己の力、信念、経験からなる意思はそれほど強く重いのだろう。
 マリーメイアは弾は何処だと言わんばかりにうーうーっと言葉の銃弾を探している。
 レディはそれに対して、押しもせず、かといって挑発や引くこともなくじっとその場に佇み、マリーメイアの言葉を待つ――否、正確にはどんな言葉の銃撃でも間髪いれずにカウンターをする気で待ち伏せしていた。

 

「それに私が居たOZやホワイトファング、マリーメイア様の軍も傍から見れば似た様な感じですから。
 きっと、人類はデフォルトで誰もがそういう道を通るものなんです」
「慰めにも説得にもなってません! 第一、なんでこんなにも重要な事を、後数日で到着するって時に!」
「リリーナ様やマリーメイア様が途中で帰ったり逃がさない為です。流石にあのリリーナ様も泣いてました。
 後、ドロシーさんはもうちょっと戦力を持って来るべきだと後悔していました。
 大体、見積もったのがアストレイとサーペントの一個師団位だったでしょうか?」
「そ、そんなぁ……あ、あんまりです! 私は絶対に嫌ですよ……う、うわぁーあーーーーーんっ!!!」

 

 言葉に行き詰まり、もう言い訳が思い浮かばないのを見兼ねるとそのまま言葉を連ねていく。
 レディの告げた事情は少女の心へと最後のアッパーカットを食らわせてノックダウン寸前へと追い込んでいく。
 良く見たら彼女の目もどこか綺麗に濁っている事が解った。嗚呼、彼女もその現実を知った上での眼鏡の再装備なのか。
 その現実に泣きじゃくったまま、勢いだけでなんとかレディの手を振り払い部屋を出て行くマリーメイア。
 その後、彼女はキッチンに立てこもり、火星のコロニーに帰る要求を通す為篭城戦を開始した。
 しかしその願いも虚しく、レディ・アン及びヒイロ達ガンダムパイロットの物理的介入と、事前に話を聞かされていたりリーナの生暖かい説得により、”第二次マリーメイア事変”はほんの数時間により鎮圧され、大事に至らず終結したのであった。
 マリーメイア本人も事態を沈静化した周りも含めて、特にめでたくもなく、めでたしめでたしと相成った。
 しかし、彼女のエンドレスワルツ症候群が再発してしまい、暫く塞ぎ込んでいた。
 ”人類は血まみれの赤い靴をはいて永遠に戦争と言うワルツを踊り続けるのだ”と月に着くまで、ずっと愚痴っていたらしい。

 
 

 事実は小説より奇なり。
 彼女は残念ながら、またワルツを踊ってしまう事になった様だ。

 
 

 ――舞台は第三幕「蜜の老熊とお花畑戦線」へと続く――

 
 

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