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W-Seed_運命の歌姫◆1gwURfmbQU_第03話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:01:37

「本気ですか? 大統領?」
 ブルーコスモス盟主ロード・ジブリールは、スクリーン越しに映る男、大西洋連邦大統
領ジョゼフ・コープランドと対峙していた。
「いや、正気と言い直すべきですかね、プラントとの相互理解のための和平会議? この
私に向かってそんなものに出席なされと、貴方はそういうのですか?」
 苦々しげに毒づくジブリールに、ジョゼフはやれやれと首を振る。
「ジブリール、議場での君の扱いは軍事関係者と言うことになる。君は連合軍のあの部隊の
トップとして……」
「勝手に話を進めて貰っては困る。私はまだ出席するとはいっていない!」
「いや、出席して貰う。君も連合に身を置く物ならば拒否はさせん」
 ジョゼフは、反戦派の筆頭、穏健派の鑑と言われる稀代の政治家で、大西洋連邦大統領と、
連合軍最高顧問を兼任する謂わば地球圏の実質的リーダーだった。
 彼は、その役職に就任した当初、世界各国で毎年消費されている『軍事費』を計算し、
その国一つ買えるかも知れないという『莫大な無駄遣い』を大々的に公表した。
 これは、彼なりの作戦の一環で、実質的な数字を見せることによって反戦や和平にイ
マイチピンと来ないであろう一般民衆の関心を買うことに成功していた。反戦や和平な
ど政治家が決めることと思っている民衆も、自分たちの支払っている税金が、軍事費削
減によって幾分か『マシ』になるかも知れないと聞けば、少しは耳を貸すようになる。
「私はこのまま、全世界で軍備の縮小が進められ、最終的に一般的な治安維持以外の兵
力が無くなることを期待している」
「フン、世迷い言を……そんなことが出来ると思っているんですか?」
「私の夢は、公約通りだ。その為にもこれからは軍事力などではなく、対話によって完
全な平和の道へと進まねばならん」
「コーディネイターどもと? 危険な発想ですな」
「君よりはマシだ……ジブリール、私は他人の主義主張にとやかく言いたいとは思わな
いが、君や君の仲間たちは少々異常だよ。君が今回私の元に送りつけてきた『意見書』
と、やらもだ」
 ジョゼフがなるべく会いたくもないようなこの男と、多忙な時間を割いて会話をして
いるのには事情があった。というのも、先のユニウス・セブンのテロ未遂事件について、
ブルーコスモス及び軍事複合大体ロゴスから意見書とは名ばかりの、命令書が届いたの
だ。その内容というのがまた驚きで、現プラント政権及びザフトの解体、地球側に被害
も出ていないのに莫大な額の補償金を要求、ジョゼフなどは項目の二つめを読む頃には
頭を抱えてしまった。こいつらに常識はあるのか? と。
「ジブリール、君は何か勘違いをしている。我々連合は、他国であるプラントの政権に
対して、何ら介入する権限など有りはしないのだ。内政干渉など、考えただけでも馬鹿
馬鹿しい」
「奴らが満足にコーディネイターどもを統率できないから、今回のような事件が起こっ
たのですぞ? これは謂わば、自衛のためですよ」
「拒否すれば戦争をすればいい、とでも言い出すんだろうな、君ならば」
「ブルーコスモスも、そしてロゴスも、全面的にバックアップいたしますぞ? その為
に奴らのような存在もいるのだ」
 ブルコースモス、そしてそのバックにいるロゴスの声をジョゼフが無視できないでい
るのは、彼が『戦争景気』によって誕生した軍需産業複合体だからである。
 一言で言ってしまえば『一番税金を払っている連中』であり、全てのメンバーが世界
経済の中枢にいる。会社で言えば大株主のような存在だ。

「残念だが私にそんな気は毛頭無い。君らのように何でも武力で解決しようという考え方
の連中がいるから、戦争がなくならんのだ」
「…………」
「あの、故ムルタ・アズラエル氏も、最初は交渉から入ったものだぞ?」
 その名をジョゼフが口にした途端、ジブリールに異変が起きた。ワナワナと震え、歯ぎ
しりをする。
「死人の名など出さないで貰いたい!」
「その様子だと未だにブルーコスモスは迷走中のようだな。君ではアズラエル氏のように
自身の持つカリスマ性で信者を統率する、と言うことが出来ないらしい」
「私があの男に劣っているとでも言うのか!」
「極端なナチュラル原理主義者、コーディネイター根絶原理主義者である君よりは、幾分
かマシな男ではあったよ」
 事実、大統領になる以前、上院議員時代のジョゼフは、アズラエルにあまり悪い印象は
持っていなかった。彼は常に理知的で、打算で行動をしない、彼が自身の会社を放棄して
政治家にでもなっていれば、今頃大統領は彼だったかも知れない。
「ジブリール、私は今度の和平会議の議題として、ブルーコスモスとロゴス、そしてその
お抱え部隊である彼らの問題について話すつもりだ」
「なんですと!?」
「君は自信があるようだが、世界は常に変化し、進歩している。君ご自慢の部隊も、早々
に解散ということになるだろう」
「たいした自信ですな。大統領……」
「当たり前だ、私は大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドだからな」
 そして、時代を平和へと導く使命を持った男は、ジブリールとの通信を終えた。ジブリ
ールは、苛立ち紛れに酒の入ったグラスを床に叩き付けようかと思ったが、床に寝ころぶ
猫を見て、その手を止めた。そして暫く精神集中をした後、もう一度通信機のスイッチを
入れた。
「私だ、ファントムペインのネオ・ロアノーク大佐を呼べ」

            第3話「ファントムペイン」

 プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは、元々は遺伝子工学の研究を専門
とする学者から政治観に転向した男で、人並み以上に節度と常識を持っていると自他共に
いわれる男だった。プラント、と言うよりもコーディネイターが抱える遺伝子的な問題は
深刻で、最高評議会議長自らがその問題に率先して挑むという姿は、プラント市民にとっ
ては決して悪い物ではなかった。研究者としての実績もある。
 しかし、そんなコーディネイターのことを人一倍知り尽くしている男でも、受け入れが
たい現実というものは存在するらしい。
 それは人間誰しもが持つ固有の感情『嫉妬心』というものである。

 人間自分より優れた存在、容姿にしろ頭脳にしろ、それを持ち得る存在に、自身の持つ
些細な優越感を崩され、劣等感を抱く。それは対抗心や、嫉妬心、果ては憎悪にまで変貌
するというが、デュランダルがこの時受けたのは、圧倒的なまでの敗北感による嫉妬だった。
「では、ロッシェ……君は本当に異世界から来たというのだね?」
 軍病院の一室、高級士官用の応接室にてギルバート・デュランダルは、先日議長のラク
スことミーア・キャンベルが救助した、謎のモビルスーツのパイロットと面会していた。
「あぁ、そうらしいな。俄には信じがたい話だが」
 優雅な口調で、紅茶のカップを口元に運ぶその姿は、気品に満ちていた。中世の貴族の
ような立ち振る舞いに、デュランダルは始終圧倒されていた。
「それはこちらの台詞だよ……しかし、あんなものを見せられれば、納得するしかないな」
「あんなもの、とは?」
「君のモビルスーツだよ。この世界の技術力ではとてもじゃないが作れる物じゃない」
 しかし、デュランダルを一番『驚愕』させたのはそんな事実ではなかった。彼にとっては
未知の技術に驚き、唖然とさせられている技術者たちよりも、目の前の『ナチュラル』であ
るロッシェに受けた衝撃のほうがずっと大きかった。
「おかしいなものだな、宇宙があり、地球があり、人もいるというのに歩んできた道はまる
で違うという……平行世界とはまた違うらしい」
 愉快そうに笑うロッシェには、今の境遇に対しての驚きや、動揺がほとんど見られなかっ
た。全く大した精神力だとデュランダルは思う。
(そしてこの容姿……こんな『人間』が異世界にはいるのか)
 氷のような美貌と、薔薇のような気高さを持つ男……黄金色の髪、端麗な鼻梁と唇、そし
て耳によく通る声が、彼を一種の芸術作品のようにも思わせた。
「危険だな……」
 ポソリと、デュランダルは呟いた。別に彼はコーディネイター原理主義者ではない。しか
し彼は、コーディネイターがナチュラルよりも優れているということを学術的観点で知って
いたし、またその事実は彼が密かに進めている『ある計画』にとって必要不可欠だった。
 だが目の前にいる青年はどうだろうか? 何ら遺伝詩的操作をしていないナチュラルであ
りながら、その容姿は完成されきっている。そして恐らくモビルスーツパイロットとしての
腕も……
「それで? 君はこれからどうするつもりなんだ?」
 デュランダルは自身の考えに溜息をつきながら、ロッシェに尋ねた。
「それを決める権利が私にあるのかな?」
 不敵な笑みで返してくるロッシェ。
「……私個人としては君の存在は余り歓迎できるものではないな。正直、天地がひっくり返
るどころの騒ぎではないよ」
「なら拘禁でもするか? それとも……」
 デュランダルもその先はわかっている。もっとも単純で、確実な方法がある。しかし、安
易にその方法をとることが、彼には正しくないようにも思えた。
 と、その時。

「ロッシェ! ロッシェはここにいるの?」
 応接室の扉が勢いよく開き、ミーア・キャンベルが飛び込んできた。
「これは、これは……ミーア嬢ではありませんか」
 ロッシェはソファに腰掛けたまま、うやうやしく頭を下げる。
「ラクス、君がどうして……そして何故ロッシェが君の、その」
 デュランダルは突然のミーアの来訪と、ロッシェが彼女の元々の名前を知っている事実
に困惑した。が、当のミーアはけろりとして、
「だって、ラクス様のことを知らない異世界の男性に、ラクス様を名乗ったところで無意
味でしょ? 知らないんだから」
「それはまあ、そうだが……」
 確かにこの世界におけるラクス・クラインの影響力など、異世界の住人であるロッシェ
には皆無である。しかし、だからといってあっさり正体をばらすのもどうかとデュランダ
ルには思われた。
「それより、今日はお早いですね」
「仕事が早く終わったの。それであなたの病室に寄ったら、応接室で議長に会ってるって
言うんだもの」
 笑いあう二人の雰囲気に違和感を感じながら、デュランダルはロッシェの言葉からある
ことに気付いた。
「今日は? ラクス、君は毎日この病院に来てるのか?」
「そうですけど?」
 これまたけろりとした表情でいうミーア。ミーアは、ロッシェを助けたあの日以来、異
世界からの訪問者である彼に、色々な意味で興味津々だった。
「ラクス様としての活動はちゃんとやってますし、問題はないでしょ?」
「むぅ……それはそうだが」
 ラクスとしての活動と、その秘密さえ守ればプライベートにはなるべく干渉しない、と
いうのがデュランダルとミーアが交わした契約だった。
「それより、お話しはもう終わったの?」
 ミーアはロッシェに向き直る。
「さぁ? 私は議長の質問に答えているだけですから。あぁ、そういえばこれからの身の
振り方をどうするか、でしたか?」
 ロッシェは微笑を浮かべ、デュランダルを見る。その美しい笑みに、デュランダルは目
を逸らしたい衝動に駆られる。
「お互い知るべき事は山ほどある。とりえず、ロッシェ、君の言うことを信じるためにも
君がここの世界に来てしまった経緯等を、詳しく教えて貰いたいね」
「いいでしょう。時間はタップリある」

 その頃、ユニウス・セブンでの破砕作業を終えて帰還したミネルバとジュール隊にそれ
ぞれ国防委員会からの次の指令が待っていた。ミネルバに対しては、当初の予定通り月軌
道への配備。進水式に関しては、予算の都合上改めてやるつもりはないようだった。
 そしてジュール隊への指令は先の事件を起こしたテロリストの捜索という物だった。
「捜索、でありますか?」
 その言い慣れぬ単語を、イザークは少々不快そうに口にする。
「君たちはあのテロリストどもと遭遇し、戦闘も行っている部隊だ。捜索任務というのは
確かに地味な仕事ではあるが、君も軍人である以上は拒否権はない」
 国防委員長は、端的に事実だけを述べる。
「しかし、この発見次第抹殺も許可するというのは……」
「行動は迅速かつ的確に。生死問わず、テロリストどもを始末できれば今回の一件は終わ
る。上はそう判断したのさ」
 イザークとて僅かな期間ではあるものの政治の世界にいたことがある人間だ。テロ行為
に対して国というのは、どんな方法でも早期解決を目指さなければ行けないと言うことぐ
らい知っている。しかし、イザークはなるたけテロリストは逮捕し、大々的に裁判にでも
かけたほうが良いのではないかとも思う。内々に処理しては帰って疑惑を生む。
(それとも、生きていられると困る事情でもあるのか?)
 イザークはこの可能性が決して低くはないと思った。いくらザフトの脱走兵とはいえ、
独自にカスタマイズされたモビルスーツを持ち、安価とはいえ大型フレアモーターを持ち
出してテロ行為走るなど、彼らだけで出来るとは思えない。故にバックに政治家や企業が
付いていたとしても、不思議ではない。
(だから裁判を恐れる。ボロを出させないために、か)
 しかし、イザークはそれ以上何も言うつもりはなかった。軍人に戻った以上、彼には政
治に対して発言をする権利などないのだ。
「ジュール隊、任務了解。直ちに出動します」

 ロッシェは自分の事情を説明するに当たって、なるべくウルカヌスの件について触れな
いように心がけた。デュランダルがどう言った種類の人間であるか、まだ明確に見定めら
れない以上、あの存在を軽はずみに話すのは憚られた。
(この世界の技術力がどの程度かは知らんが、カスタムタイプのレオスに驚愕しているよ
うでは、アレの中身はもっと危険だ)
 例えデュランダルが善人であったとしても、欲や野心というのは人を変えてしまう。
そして、ロッシェはそれを身内からの裏切り行為という形で、よく知っていた。
「つまりこの世界に、君の他にも異世界から来たであろう人間がいると?」
 デュランダルはロッシェの話に愕然としていた。ロッシェのような人間がこの世界に複
数人来ているという事実は、彼にとっては無視できない事実だったのである。
「少なくとも私と行動を共にしていた男は来ている可能性が高い。そして私とそいつが行
方を追っていた男もまた……」
「その人も、ロッシェみたいな感じの人なの?」
 当然のようにその場に残っていたミーアが、そうロッシェに尋ねる。
「みたいな感じ、というと?」
「ロッシェみたいに、なんていうのか……そう、貴族的って言うか」
「貴族的も何も、私は貴族ですよ、ミーア嬢」
「えっ! そうなの?」
 デュランダルは頭を抱えたくなった。何が貴族だ馬鹿馬鹿しい。
が、そう思いつつも既に自分は、目の前の青年が異世界の皇帝陛下だと言われても納得し
てしまいそうなほど圧倒されまくっていた。
「まあ、財団が崩壊して以来飾りのような物ですが、爵位も持ってましたよ」
「じゃあ、その一緒にいたお友達も?」
 友達、自分にとってオデルは友達なのだろうか? ミーアの言葉に、そんなことを考え
たロッシェだったが、フッと笑うと、
「アイツは民間の技術屋です。今頃でどこで何をしているのか……」
 しかし、ロッシェはそんなに心配はしていなかった。時としてオデルの行動力は自分な
どの予想以上のものだからだ。……仮面にマントを羽織っていたときは、密かにそのセン
スを疑ったが。
「議長、行動の自由をいただけるのであれば、私は仲間を捜したい」
「むぅ……それは、しかし……」
 ロッシェの頼みに、デュランダルは眉を顰める。害意のある人間ではない、そんなこと
はこの会話の中から容易にわかることだ。しかし、行動の自由を与えるにしても、ある程
度の監視下に置いておく必要はある。こんな企画外れの容姿を持つナチュラルを、野放し
にしておくのは余りにも危険だ。
「こちらの条件を呑むのならば、ある程度自由は保障しよう」
「ほぅ……その条件とは?」
 ロッシェの瞳が探るように、ミーアの瞳が覗くように、デュランダルを見る。
「それは……」

 ネオ・ロアノークは常に仮面を被っている男だ。人が仮面を被る理由は、顔を隠すため
であり、顔を隠す理由は様々だ。傷や火傷、跡の残る外的損傷を人に見せないため、醜い
容姿を隠すため、そして、他人に顔を知られてはいけないため。しかし、この時ネオの仮
面はいつもとは違った効果を発揮していた。もっともそれは、嫌いな上司からの嫌な命令
に対して、表情を隠す、というものだったが。
「お話の内容は分かりました……しかし、この作戦、本気で行うのですか?」
 ネオは、ジブリールから渡された、ある作戦の計画書に一通りの目を通すと、率直な感
想を漏らした。作戦自体は見事な物だと思う。とてもこの盟主が一人で考えたのだとは思
えないが、確かにこれならば成功率は高い。しかし……
「この作戦、成功した場合、また戦争が起こるのでは?」
「それがどうした? 我々は戦争をしたいのだ。コーディネイターどもと和平などとあり
得ん妄想を抱き続ける偽善者どもを排除し、宇宙にある砂時計を全て消滅させるためにな」
 それはある意味、ユニウス・セブンのテロリストと同じ発想と意見なのだが、ジブリール
はそんなことを知る由もない。
「なるほど、如何にもブルーコスモスとロゴスの考えそうなことです」
 タップリと皮肉を込めていってやったつもりだが、ジブリールは堪えた様子もなく不敵に
笑っている。ネオに元より拒否権がないことを知っているのだ。
「ファントムペインを総動員するとして、間に合うか?」
 ジブリールの問いに、ネオは嫌々ながらも計画書を捲り、
「ギリギリ、といったところですかね。まあ、宇宙はダイダロスにいるイアンに任せるとし
て……」
「地上の実働兵力は貴様とホアキンに任せる。必要な資材があればなんでもいえ」
「必要なのは資材ではなく人材ですよ、盟主」
 ネオは、苦々しげにそう言うと、すぐに細部の調整にはいるためジブリールとの協議を始
めた。所詮自分はこんな風にしか生きられないのだ。拾われた死に損ないは、拾ってくれた
飼い主に忠誠を尽くす。例えそいつがどんなに嫌な奴であっても、だ。

 翌日、ジブリールは改めて大西洋連邦ジョゼフ・コープランドと通信による会話を交わ
し、和平会議へ正式に出席することを述べた。ジョゼフはこの心変わりを不審に思ったが、
自分から呼んでおいて怪しいから来るな、ともいえず、とりあえず形式的な感謝をし、通
信を終わらせた。
 通信後、ジブリールは笑いを堪えるのに必死だったという。彼はこの先起こるであろう
出来事と、始まる新たな時代に対して驚喜の笑い声を上げたくて、堪らなかった。
「いよいよだ。いよいよ、我らファントムペインが歴史の表舞台に立つときが来た」
 そして、憎らしきコーディネイターを、ザフトを、プラントを、今度こそ完全消滅させ
ることが出来る。
「アズラエル、私は貴様のような甘さは持たんぞ。貴様が怯え、震え、実行できなかった
作戦だろうと、勇気と冷酷さ持って実行してやる」
 この時、未だ世界は平和を維持することが出来ていた。それは大西洋連邦大統領ジョゼ
フコープランドを始めとした、地球連合内に広がりつつある反戦と和平を望む穏健派たち
の存在、オーブ代表カガリ・ユラ・アスハを始めとした中立国群の存在、そして今のとこ
ろは反戦派であるプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの存在が、その平和
の均衡を保つため、存在の大きさを見せていたからだ。

 それから数日後、プラント国防委員会諜報部が、驚くべき機密情報の入手に成功した。
それはあのブルーコスモスが、今回のテロ行為に対する『報復』を目的とした極秘総会を
開き、プラントに対してすぐにでも核攻撃を行うという内容であった。