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W-Seed_運命の歌姫◆1gwURfmbQU_第17話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:05:51

 アスラン・ザラの来援。
 これはファントムペインは元より、来援を受けたミネルバでさえ予期せぬ事
だった。当時のカーペンタリア周辺海域は先の戦闘による影響で、レーダーや
センサーといった類のものが使用不能となっており、カーペンタリア基地が
ファントムペイン艦隊の動向を掴むのはまず不可能とされていたのだ。
 そう、この来援は全くの偶然が生んだ結果だった。というのも、カーペンタ
リア基地は撤退するファントムペイン艦隊の動向を探るために索敵艇を出して
いたのだ。仮にでもファントムペインが艦隊と戦力を再編し、カーペンタリア
に再度攻め込むといった事態が起こったときの、いわば保険であった。そして
その索敵艇がファントムペイン艦隊の殿部隊が進路を変更し、オーブへ向かっ
ているという情報を手に入れ、基地に持ち帰ってきたのだ。
「敵の狙いはミネルバか」
「敵国とはいえ使者に襲撃するつもりなのか」
 ミネルバに良い感情を持っていないとはいえ、さすがの基地司令部もこれに
は慌てた。すぐに救援を出さなければならない。しかし……
「今、この基地にそんな余剰戦力はない」
 それどころか、ミネルバを狙っている艦隊は陽動で、カーペンタリアから戦
力を減らす作戦と言うことも考えられた。
 だからといってミネルバを見殺しにすることも出来ない。そんな時、特務隊
員であるアスラン・ザラが、単機による救援を買って出たのだ。
「俺のジャスティスなら補給の心配はいらないし、速度的にもギリギリ間に合
う」
 この判断は正しく、アスランには単機で成功させるだけの自信もあった。
もっとも、それはミネルバが持ちこたえていればの話でもあるのだが、ミネル
バはアスランの希望通り、奮戦を果たしていた。
 結果、背後からの奇襲を受けたファントムペイン艦隊は、主戦力だった新型
モビルアーマーザムザザーをジャスティスに墜とされたこともあり、ミネルバ
との挟撃の前に敗れた。
 そしてこの敗北はファントムペインがザフトに敗北した最初の戦いでもあっ
たとされている。先の基地攻略戦においてはザフトの降下作戦が成功したとは
いえ、双方痛み分けといっていい損害を被った。だがこの戦いにおいては、一
隻の戦艦が複数の艦隊を叩きのめし、これを戦闘不能にまで追い込んだことも
あって、ザフトの勝利と認識されることとなった。

 戦闘終了後、アスランはすぐにミネルバに合流しようとはしなかった。アス
ランはただ、機体をオーブの方向へと向けて中空に佇んでいたという。彼の立
場を少なからず知っているタリアは、これに声をかけることはしなかったとい
う。

             第17話「贖罪の旅へ」

 あらかたの戦闘が終結した頃、プラント本国では最高評議会による今後の対
応協議が行われていた。
「眼前の驚異はこの度の降下作戦で排除したわけだが、敵が黙って引き下がる
とも思えん。こちらも打って出るときではないか?」
 攻撃を受けたカーペンタリア基地の惨状も相成って、プラントでは積極的な
交戦意識が高まりつつあった。元々、地球相手に苦渋を強いられてきたプラン
ト市民である。一度不満が募れば、爆発するのは当然であった。
「だが、戦うとしても何を最終目的にするかは決めておかねばなるまい。地球
のファントムペインを尽く倒し、それに協力している国家や政治家、企業、団
体などを根絶やしにするのか?」
「大西洋連邦を初めとした支流派の国々と戦うわけか。勝ったとしたら、我々
は征服者としてその国々の面倒を見るのか? 馬鹿馬鹿しい話だ。そんな資源
も財源も今のプラントには有りはしない」
 そもそも国力における明確な物量差がプラントと地球にはある。技術的にプ
ラントが有利であった前大戦時ならいざ知れず、現在のプラントと地球の技術
力は拮抗している。そして条件が同じなら、物量に余裕のある方が有利なの
だ。
「しかし……地球には未だ旗色を決めかねている人々もいる」
 この発言は、最高評議会議長ギルバート・デュランダルのものである。
「我々が敵、つまりファントムペインに対し着実な勝利を積み重ねていくこと
が出来れば、旗色も自ずとこちら側に染まるだろう。そうした人々や国々を増
やしていくことが出来れば、あるいは」
 そしてデュランダルは、地球で未だ混乱と内乱が続くユーラシア西側地域へ
の武力介入及び、介入後の援助を議題として提案した。この地域は資源的に重
要な火力プラントを有したガルナハンがあり、戦略的にも押さえておく意味は
高い。また、ザフト軍マハムール基地が近いこともあって、戦いを始めるには
都合の良い場所でもあった。
「確かにあの基地には開戦以前から駐留している兵力も多い。しかし、それだ
けで勝てますかな」
 国防委員長のこの意見は、何もマハムール基地を信頼していなかったからで
はない。過日、そのマハムールよりも強大な戦力を有していたはずのカーペン
タリアが被った被害を鑑みてのことだった。
「敵のモビルスーツの空戦能力は、我が方のディンを遙かに上回ると聞いてい
る。元々兵力差がある上に、モビルスーツの性能も負けているのでは不利と言
わざるを得ないでしょう」
 つまり、ディンを改修するなり、新型空戦モビルスーツを作るなりして対応
すべきではないか、と国防委員長は言っているのだ。
 これに対し、デュランダルは懐柔的だった。
「そうだな。この戦いには負けるわけにはいかない。出来うる努力は全てしな
ければな。差し当たって新型モビルスーツの件は、私に一任して貰おう」
 反対の声こそ出なかったが、疑問や疑念は委員たちの中に残った。率先して
議長が物事を進めるのは、リーダーシップを取る上では必要不可欠なものであ
ろうが、議長はモビルスーツと言った兵器の類の専門ではない。それなのにそ
れを一任するというのは何か意図があるのではないか……
 だが、結局、委員たちは明確な答えを出せぬまま、ユーラシア西側地域への
武力介入と、新型モビルスーツ開発を承認した。
「そして、議長は我々の協力を仰ぎたい。そう仰るわけか」
 事の次第を議長から直接聞いたロッシェは、議長の意図を呼んでいた。つま
り彼は、新型モビルスーツを作るに当たって異世界の技術を取り入れようと考
えたのだ。
「だそうだが、どうなんだハワード?」
 実際に請け負うことになるのはロッシェではなくハワードである。先日ロッ
シェと合流を果たしたハワードら異世界の調査団は、今のところは非公式な客
人として遇されている。
「ふむ、わしらの世界の技術を使った新型モビルスーツか」
「お願いできませんか?」
 デュランダルの物腰は低かったが、いざとなればハワードらの生殺与奪の権
利は彼の手中にあるといっていい状態だ。もっとも、そのような事態になった
ときのため、ロッシェもハワードも手を打っていないわけではないが、この程
度の要求なら呑んでも構わないとも考えていた。
「議長、アンタはこの世界では学者としても名を馳せた人物であると聞いてい
る。そのアンタになら分かるだろうが、わしらのいた世界とこの世界では、表
面上は似通っていても、異なる部分はやはり多い。それは個人の持つ考えや、発想や思想といった精神的部分から、政治形態や国家形成なんてものにも当て
はまる」
 例えば……と、ハワードは手に持つコーヒーカップを手の平に置いた。
「これはカップだ。わしらの世界にもカップは存在するし、形だってどれも似
たようなもんだ。中に入っているコーヒーだって、豆の種類こそあれど、そう
大差はないだろう。しかし、だ」
 ハワードはカップを持ち直すと、コーヒーを仰いだ。品種改良され、プラン
トに住む人の舌に合うように調合されたコーヒー豆だったが、ハワードは特に
美味いとも感じなかった。
「カップ程度ならともかく、モビルスーツのレベルになると話は違ってくる。
この世界と、わしらのいた世界ではそもそも相反する技術を使いすぎている
と、わしは思う」
 ロッシェのレオスと、ザフトのモビルスーツを比べれば、それは明らかだっ
た。使われている合金、使われているバーニア、使われている武装、使われて
いる加工技術、それら全てが異なっており、類似点は余りにも少ない。
「それに技術を生かそうにも、この世界でわしらがそれをなすだけの設備も、
材料もないのだよ。スパナやドライバー、ネジやパイプなどとは違う次元の話
だ」
 確かにその通りだ。異世界の人間がその技術を生かすには、異世界の材料が
必要なのだ。この世界にはガンダニュウム合金はおろか、チタニュウム合金も
ない。精製するにしても、精製できる技術がこの世界で実現できるかどうかも
分からない。
「では、やはり無理なのですか?」
 デュランダルとしては当てが外れた形となった。彼としては異世界の優れた
技術を使うことで、この戦争におけるプラントの戦力的不利をカバーするつも
りだったのだ。浅はか甚だしいことだが、手元にあるものは全て有効活用する
事に決めているデュランダルとしては当然だった。
「だがまあ、わしらの世界の知識と発想を、この世界の技術に応用することは
出来るかも知れんがな」
「というと?」
「この世界でレオスのようなモビルスーツを作り上げるのはまず不可能だが、
この世界のモビルスーツをそれに合わせることは可能かも知れん、ということ
さ」
 しかも、デュランダルが現在欲しているのは空戦能力を備えたモビルスーツ
だという。これは元の世界においてバーニア研究の専門家であったハワードに
とって、打って付けの仕事だった。
「この世界の技術で作ってやろうじゃないか。わしらの知識を使って作りあげ
る、新たなモビルスーツを」
 こうして、ハワードはこの世界において初めての仕事、モビルスーツ開発へ
と取りかかることとなった。
 満足したデュランダルが帰った後、ロッシェは少々の不満をぶつけた。
「ああも簡単に了承してしまうとは、いくらこちらが弱い立場だからと言っ
て、これでは相手が増長するぞ?」
「なに、構わんさ。どうせこの世界ですることと言えば、元の世界に帰る方法
を探すことぐらいだ。それまで、プラントで仕事をするのも悪くない。この世
界の技術にも興味があるしな」
「それが本音か。まったく、科学者という連中はつくづく救われがたいな」
 ロッシェは呆れたように言うと、話題を転じることにした。
「ところで、例の調査のことだが」
「ウルカヌスのことか?」
「ああ、お前がモビルスーツ開発に追われるなら、私はそっちを担当しよう
か?」
「その件なら、アイツがやっておるよ。わしらに万が一のことがあったときの
保険も兼ねているが、当分は奴一人に任せておいて大丈夫だろう」
「奴か……フッ、こんなこというのもどうかと思うが、奴の方が付き合いは長
いのに、オデルより信頼できないな」
 本人が聞けば顔を真っ赤にして怒るだろうが、ロッシェは彼に対し少々猪突
しすぎる部分があるとも感じていた。探索や調査などと言った根気のいる任務
が彼に勤まるかどうか……
「そうだ。オデルの方はどうなっている? 連絡はあるのか」
「オデルはオデルで、まだ地球だ。今はインドの辺り似るとか言ってたか」
「インドか……奴も我々のように厄介ごとに巻き込まれてなければいいが」
 後日ロッシェは、自身の言葉を顧みることとなる。それはまだ、先の話ではあるが……

 一方でファントムペインは、敗戦処理に追われていた。ヘブンズベースへと
帰還した遠征艦隊は、ネオ・ロアノークが八割以上を生還させてきたのに対
し、ホアキンは帰還含む数隻単位にまで減っていた。一部艦隊の暴走による損
失、ファントムペインタは内外に醜態をさらすこととなった。
「自己の責務も全うできないとは、貴様それでも軍人か!」
 ただ負けてきたのならいざ知れず、部下の暴発も抑えきれず貴重な艦艇を失
い、あまつさえ新型モビルアーマーまで墜とされたホアキンに対して、ジブ
リールは辛辣だった。
「面目しようもございません……」
 黙って頭を下げるホアキンを半ば無視し、ジブリールは手を払うことで退室
を命じた。
「ホアキンを処分しますか、盟主?」
 ネオは憮然として座る盟主に尋ねるが、ジブリールは首を振った。
「そうしたいのは山々だが、奴は指揮官能力を有した貴重な人材だ。差し当
たって譴責で済ませる他あるまい」
 月にいるイアン・リー少佐を呼び戻すという方法もあったが、彼は月基地の
復旧に忙殺されており、とても地上に来られる状況ではなかった。
 戦いの場が地上に移ったとしても、宇宙戦力を疎かには出来ない。
「我々の当面の目的は地上ザフト軍を一掃することだ。その為に必要人材なら
ば、一度の失敗ぐらい目を瞑る」
「ですが、ミネルバの方はどうなさいますか?」
「カーペンタリアに与えた損害は大きい。ミネルバが宇宙に帰るにしろ、監視
はさせておくべきだろう……そうだ、インド基地の件はどうなっている?」
 インド基地とは、旧連合がカーペンタリアへ進行する際、その拠点として考
え建設を進めていたものであり、連合崩壊後はファントムペインが接収し、建
設を続けているものだった。
「建設は続けておりますが、何分人手不足なもので……」
「構わんから、地域住民の導入でもさせて急がせろ。あの基地さえ完成すれば
カーペンタリアやミネルバの動向も探りやすくなる」
「しかし、それは」
「あの地域は我々の管轄下だ。そこに住む人間をどうしようが、我らの勝手で
はないか」
 この専制的な決断は、ネオにとっては不快以外の何物でもなかった。この時
代に強制人夫とは……いや、この戦乱の時代だからだろうか? 強制労働、強
制収容、武力を持って他者を支配し、それで全てが上手く行くと、盟主は本当
に思っているのだろうか? 思っているのだろう。一部権力者は、それを持た
ぬものに対して、支配し強制するのは当然と思っている節がある。特に軍事革
命など起こしたファントムペインにとって、革命家たる自分たちに従わない者
の存在など、供応できないのだろう。
(そうしたことを続けて、ファントムペインから人身の心が離れた時も、我ら
は武力でそれを押さえ込もうとするのだろうか? 人々の支持を受けない集団
に、何の価値があるのか)
 ネオは心の中で呟き、それをため息に変えては来だした。願わくば、そうな
らないように気をつけたいものだ。
 気をつけた程度で、何とかなるのなら。

 オーブ領海周辺で起きた戦闘から三日経ち、カーペンタリア基地へと帰投し
ていたミネルバに新たな指令が下ったのは、デュランダルがユーラシア西側地
域への支援を正式に発表したのと同じ時だった。
 特務隊のアスラン・ザラを介して伝えられた指令の内容は、ミネルバクルー
に驚きを持って迎えられた。
「あのユーラシア西側地域に、本艦を派遣すると?」
 ミネルバは、艦の整備及び補給が終了次第、ユーラシア西側地域ザフト軍マ
ハムール基地へ向けて出発されたし。
 その後は、マハムールの戦力と共にファントムペインガルナハン基地を攻略
せよ、とのことだった。
「尚、随員として、フェイスである自分、アスラン・ザラもミネルバに同行さ
せていただくことになります」
 ミネルバを窮地から救ったのは間違いなくアスランであり、この人事は比較
的暖かく受け入れられたという。
「マハムール……いよいよ議長もユーラシア西側地域の取り込みに掛かったわ
けね」
 執務室でアーサー、そしてアスランと話すタリアの口調は必ずしもいい物で
はなかった。
「ファントムペインに属さない国々の支持を得て、プラントの地盤を強化しよ
うというわけですかね。圧政を排除し、食料などの物資を支援する……まあ、
そんなところでしょう」
 アーサの洞察は、プラントの内情も理解し把握していた。食べ物で釣るとは
何か卑しいですね、とニヤリと笑った。アスランとしては何も言えなかった。
「ミネルバの速度なら、カーペンタリア基地からマハムール基地までそれほど
時間は掛からないと思いますが、いつ出発しますか?」
「そうね。国防委員会の命令と合っては仕方ないわ。艦の修理は後どれぐらい
掛かりそう?」
「明後日は終わると」
「じゃあ、今のうちに物資の積み込みもしちゃいましょう。修理と補給が終わ
り次第、すぐに出航よ」
 プラントが内乱状態にある他国に武力介入する。タリアとアーサーは共に複
雑な表情であったが、アスランはただ一人、冷静だった。

「酷くやられたな」
 アスランはタリアたちとの会議を終えた後、格納庫に来ていた。自身の機体
の整備を前に、この前の戦闘で撃墜されたインパルスの様子も見ることにし
た。そして、その有様は予想以上の酷さだった。
「これが並のモビルスーツなら、もうこれで廃棄処分ですがね。インパルスは
その点便利ですよ。コアスプレンダーさえ生きていれば、何とでもなります」
 整備主任はそう言って笑う。
「この艦は、インパルスの運用艦と言っても差し支えないですからね、パーツ
だけはまだまだあるんです」
「コクピット部分だけ生きていればどうとでもなる、か。確かにそれは驚異の
モビルスーツだな」
 倒しても、倒しても、パーツとコクピットさえあれば復活することの出来る
モビルスーツ。それがインパルス。
「だが、パイロットのほうはどうだ?」
 先日の戦闘において、シンは敵に対し完全なる敗北をした。機体こそ、核と
なるコアスプレンダーが無事だったため助かったが、シンはショックを隠せな
かった。いくら敵が新型とはいえ、手も足も出なかったのだ。
 しかも、後から来たアスラン・ザラは、それをあっさり倒したと言うではな
いか。これでショックを受けないわけがない。シンの中に残っていた、自尊心
やちっぽけなプライドは、粉々に打ち砕かれてしまっていた。
「俺は……何でこんなに弱いんだよ」
 そのシンは、相変わらず自室に閉じこもっていた。
 全てを失ってから一年、自分は必死で勉強し、モビルスーツパイロットに
なった。ザフトレッドというエリートにも選ばれ、モビルスーツに乗ることだ
けが自分の取り柄であり、生き甲斐だった。
 だが、それも機体と一緒に打ち砕かれた。自分は強くなどない、自分は弱
い。弱すぎる。そんな自分に、エースなど、インパルスのパイロットなど勤ま
るのだろうか?
 シンは自己疑心に囚われていた。

 宇宙で、地上で、様々な思惑が交錯して絡み合う。そんな中、アスラン・ザ
ラだけはその絡みから、一歩身を引いた位置にいる。
「当面はザフトに勝たせる。この基本計画に問題はない」
 誰もいない場所で一人、アスランは考える。
 ファントムペインはその勢いを完全に潰された形となっている。ミネルバの
勝利は、ザフトの士気を高めるだけでなく、敵の士気を殺ぐことにも成功し
た。連合相手には勝ち続けることが出来たファントムペインも、いざ本命であ
るザフトとの戦いには勝てず、小規模な戦闘とはいえ敗北もした。この事実が
双方の士気に影響しないわけがない。
「だからこそ、その勢いに乗ってザフトを勝たせる。やがて戦争が続き、ファ
ントムペインもザフトも疲弊しきったところで……」
 その為には、どちらの内情にも通じておく必要がある。まあ、とりあえずは
デュランダル議長の信用と信頼を得て、ザフトを掌握することから始めればい
い。時間はタップリある。
「何せ、戦争はまだ始まったばかりなんだからな」
 言って、アスランは低く笑った。かつての英雄は今、全てを奪うために、策
略と策謀の渦を巻き起こそうとしている。

そして、ザフト軍艦ミネルバは、カーペンタリア基地を出発した。それは、彼
らにとっては久しぶりの、軍事行動であった。