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W-Seed_運命の歌姫◆1gwURfmbQU_第19話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:06:22

「トリスタン、イゾルデ起動。ミサイル発射管、ディスパール装填」
 ミネルバの武装は、対艦戦に置いては比類ない威力を発揮する強力なものが
多い。
「照準固定、敵ウィンダム隊中央部!」
 最新鋭艦を誇るだけあって、その一撃を食らえば既存の旧型艦など一溜まり
もなく、上手く当たれば一撃で沈めることが出来る。
 だが、モビルスーツが相手となると話は別である。
「――――――発射ッ!!!!」
 ミネルバから怒濤の勢いで発射された砲撃は、固定された標準通り、ウィン
ダム隊の中央部へと向かって放たれた。しかし、ウィンダム隊は散開すること
でこれを難なく避けてしまう。
「……こちらに十分な航空戦力があれば、ここで一気に各個撃破といけるんで
すがね」
「無い物ねだりをしてもしょうがないわ。差詰め、うちのエースと、ザフトの
英雄の力を期待しましょう」
 三十機のモビルスーツを戦艦だけで相手にするのは不可能である。最新鋭艦
だろうが、重武装艦だろうが、それは同じだ。機動力で勝るモビルスーツに包
囲されれば、袋叩きにされるだけ、だからこそモビルスーツにはモビルスーツ、
そんな概念が生まれるのである。
 だが、ミネルバの艦載機で空戦能力を備えたモビルスーツはたったの二機、
それに引き替え敵の総数は約三十機、こちらの十五倍である。
「十五倍……何かそういわれると途方もない数の敵に思えますね」
『いや、実際途方もない数だよ』
「えっ?」
 艦橋要員にしてオペレーターのメイリンは、ジャスティスに乗るアスラン・
ザラと喋っていた。出撃前にオペレーターはモビルスーツを誘導するために回
線を繋げるのだが、何となく会話をしていた。
『少数が多数を打ち破るのは、聞こえが良くて見た目も華麗だ。でも、そんな
のは用兵の常識から外れた出来事なのさ。普通は圧倒的な兵力を持ったほうが
勝つ』
「そんな……でも」
 メイリンが不思議に思ったのは、アスランの口調に気後れを感じなかったか
らだ。彼はあくまで冷静だった。
『だから、今回は数の不利を機体性能と実力で補うことになる』
「アスランさん……」
『まあ、虚名であっても英雄なんて呼ばれてる男だよ、俺は。出来る限り頑張
るから、サポートは頼む』
「ハイッ!」
 もっともそれは、こちらの実力が相手との数の差を補えるほど、圧倒的でな
くてはならない。機体性能に関してはジャスティスもインパルスも、ウィンダ
ムなどには引けを取らない。しかし、未来の英雄が混ざっているとも限らない。
最初は誰だって、無名なのだから。

        第19話「双子座の名を持つ機体」

 インド洋で行われた海戦に、明確な名称はない。ザフト側にインド洋遭遇戦
と言われることもあれば、ファントムペインではミネルバ討伐作戦などと呼ば
れている。
 後世においても、この海戦が歴史にさしたる意味をもたらしてはいないとの
記述が多いが、当事者たちからすればその見解は的はずれも良いことだった。
この一戦がなければ、後の歴史は変わっていたと、少なくともその時代を生き
抜いた者たちならば思ったであろう。

「ウィンダム隊は艦を襲え! 敵モビルスーツは俺が抑える」
 エミリオが単なる小賢しい策略家であったなら、ウィンダム隊を囮に使って
艦を狙いにいっただろう。だが、彼はそんなことはしない。艦だけならばウィ
ンダム隊でも事足りる。しかし、艦載機のモビルスーツはあのスウェン・カル

バヤンと渡り合ったほどである。自分でなければ相手は出来ないだろう。
 そう考えたエミリオであったが、この時の彼の考えは一つの誤算で崩れよう
としていた。
「艦載機の発進が一機多い? ミネルバの空戦用モビルスーツは一機だけでは
ないのか」
 ファントムペインの情報部は、ミネルバの動きこそ掴んではいたが、アスラ
ン・ザラがジャスティスと共に搭乗したことまで掴めなかったのだ。こうなる
と、エミリオはたった一機で二機のモビルスーツを相手にすることとなる。
(ダナを呼び戻す……いや、それでは作戦が崩れる)
 エミリオは、巡航形態で加速する機体の中で思案する。機体性能を活かし、
敵の二機を翻弄するか? いや、相手は艦を守ることを優先し、自分へ積極的
に向かってくることはないはずだ。ならば、戦闘によって釘付けにするしかな
い。出来うる限り、やってみるしかないだろう。
「どうであろうと、コーディネイターは倒す。それだけだ」

 出撃したアスランとシンは、先行してくる敵の大型戦闘機にぶつかろうとし
ていた。無論、二人ともそれがただの戦闘機だとは思っていない。大型のモビ
ルアーマーか、もしくは……
「可変型モビルスーツ。しかし、あの色と形は」
 アスランには覚えがあった。何故ならば、それは昔、自らが搭乗していたの
だから。
「シン、シン、聞こえるか?」
 アスランはシンに回線を繋ぐ。
『どうしたんです、戦闘中ですよ』
 交戦状態にこそ入っていないが、敵はすぐそこにいる。その寸前に回線を繋
ぐなど、確かに非常識だった。
「あの先行する機体に覚えがある。出来れば俺の指示に従って欲しい」
『覚え? 知ってるんですか、アレを』
「あぁ、よく知っている……俺が昔乗ってた機体の」
 敵のモビルアーマーが僅かに変形し、砲撃の体勢を取っていた。アスランは
それをよく知っている。そう、あれは580mm複列位相エネルギー砲……
「スキュラが来る! シン、避けろ」
 発射された赤い閃光は、爆音と共に大気を振るわせた。

 その見た目もド派手なパワーを前に、シンはさすがに戦慄を覚えた。掠った
だけでも、インパルスは装甲をえぐり取られるだろう。
「カスタム機って奴ですか、あれは」
『あぁ、GAT-X303イージス。前大戦で俺が乗っていた機体だ』
「どういった機体なんです」
『どちらかといえば格闘戦に長けた機体だった。両腕、両足にビームサーベル
が仕込まれている。だが、恐らくカスタマイズするに当たって、砲撃部分を強
くしている可能性が高い』
「それじゃあ、万能機じゃないですか」
 格闘戦に長け、砲撃も強い。モビルスーツのいいとこ取りのようなものだ。
『シン、俺達の任務はミネルバの防衛だ。奴が先行してきたのは、俺達の動き
を封じて、ウィンダム隊に艦を沈めさせるつもりだ』
「そんなことさせるもんか」
『シン、お前はウィンダム隊を頼む。奴は俺が食い止める』
 アスランとしては、機体の特性を知っている自分のほうが敵と対するに戦い
やすいと考えたからであるが、シンにしてみれば「三十機の大軍と戦え」と言
われたようなものである。
「……やるだけやってみます」
 腕に覚えがないわけではない。一度は敗北したが、シンはウィンダムという
機体を今まで幾度も倒してきた。加速力は高くても、運動性が低いという弱点
も知っている。だが、たった一機で三十倍の敵を相手にするのだ。
『なるべく早く、奴を落とす。艦のほうは頼んだぞ』
 二手に分かれた機体は、それぞれイージスとウィンダムに向かって飛び込ん
でいく。二人はイージスを隊長機だと思っていた。一機のエース機が、三十機
の量産機を引き連れてきたと、先入観からそう思ってしまったのだ。彼らはま
だ、もう一機の敵に気付いては居ない。

「この機体……ジャスティスという奴か」
 エミリオは自分に向かってきた赤い機体に対し、60mm高エネルギービームラ
イフルを斉射する。ビームの閃光は、敵を撃ち抜くために突き進むがジャステ
ィスはそれをあっさりと避け、逆に自身のルプスビームライフルを撃ち放つ。
核エンジンから供給されるエネルギーは、高出力のビームとなって放たれる。
イージスはこれを素早く避け、
「モード変形。飛行形態へ」
 巡航形態での不利を悟ったエミリオは、すぐさま機体を変形させる。加速度
において巡航形態に劣るものの、この形態はモビルスーツの長所を空戦でも十
二分に発揮できるのだ。
「核搭載機だろうと、コーディネイターは倒す!」
 敵が二手に分かれたことで、多少ウィンダム隊のことが気がかりでもあった
が、敵は一機、どうにでも戦えるとエミリオは思っていた。

 一方、三十機のウィンダム隊に、たった一機で戦いを挑むことになったシン
はウィンダムに対し、まずは長距離からの牽制を仕掛けた。
「ビームライフルを長距離射程に変更……これで!」
 長距離から連射されたビームライフルは、密集して進むウィンダム隊に命中
した。三十機も居るのである。それが固まっていれば、一発は当たるものだ。
「いかん、分散するんだ。十機ずつの集団に分かれろ!」
 一人のパイロットが送った通信は、全機に届いていたのだが、すんなりと行
動が出来なかった。そもそもこの守備部隊は連合軍パイロットの寄せ集めであ
り、明確な指揮官も定まってはいない。本来なら、出撃前にでもそれを決めて
おくべきなのだろうが、エミリオやダナという全体の指揮官が存在したため、
それを決めることを憚ったのだ。
「こいつら動きが鈍い?」
 シンもそのことに気付き、続けざまにビームライフルを連射する。撃墜を恐
れた各機は分散するも、数も場所もバラバラであった。
「チッ、そのまま固まってればいいのに」
 シンがもっとも恐れているのは、三十機による包囲である。いくらインパル
スでも、三十機のウィンダムに四方八方を包囲され、一斉射撃を喰らえば一溜
まりもない。その為には敵機に後背に回られることを避け常に前面に居て貰う
必要がある。
「だけど、こいつらの目的は俺じゃなくてミネルバのはずだ。適当に数機ぶつ
けてきて、後はミネルバに殺到するかもしれない」
 そうさせないためにも、シンはなるべく派手に戦い、敵の注意と注目をこち
らに向けさせなければ行けないのだ。
「行くぞ!」
 シンはインパルスのビームサーベルを抜き放つと、敵の集団に斬りかかった。