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W-Seed_380氏_第06話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 12:58:46

モニター越しに望む凄惨な戦場に、私は不快感を覚える。志を持たぬ者が力を持てば、この様な蛮行を行うものなのか……。
「……もはや、これは戦争ではない。ただの殺戮に過ぎない……」
白旗を挙げて投降する敵兵を一方的に惨殺する、あってはならぬ光景。私は憤りを禁じる事が出来ない。戦争は理念を持った兵士が行うものであるが、これは違う。理想を持たぬ者が戦場にでて、殺戮を繰り返すという、私には認める事の出来ない行為。
「我が友、そして若き戦士達よ……。君達がこの光景を見たらどう思うのだろうか?」
私は瞳を閉じ、瞼の裏に焼き付いている友、そして若きガンダムのパイロットに問いかける。彼等は答えることは無い。あの悪魔の二つのシステムならば答えを出す事も出来ようが、此処には存在しないし、私には機械が出す答えに頼る気は無い。
 私には縁も由も無い世界だが、私はあえてこの世界で今一度、力を誇示しよう。
再び世界の脅威となる為に。

私は此方に来てから修復した愛機を戦場に舞うように浮かび上がらせ、外部通信を介して呼び掛ける。
「連合の兵士諸君、この場を撤退したまえ。私が時間を稼ごう」
当たるを幸いに一機、そしてまた一機と私は敵機を屠っていく。戦士として洗練されていない者を討つのは悲しい事であるが、全力を尽す事で私は哀悼の意を表そう。
「ああ!ジャン・ルイがやられた!」
「落ち着け!指揮を引き継ぐ!」
無線が混線し、戦場の混乱を私に知らせる。私一人の出現で戦況が変わりつつある。しかし、この戦の帰趨を覆す事は出来ないだろう。
今の私の使命は一人でも多くの将兵を生かす事であり、私も生き残る事だ。
「ナチュラル風情が……舐めるなぁっ!」
 外部から無線が入り、視界の片隅に何処か見慣れた機体が此方に向かってくるのが入る。
私は機械的な動作で射撃するが、回避される。
「中々出来る様だが、私に敵するにはまだまだだな」
まだまだ粗削りな機体運びで此方に向かってくる様は、少々滑稽に見える。しかし、私にはそれをか笑うことは出来ないだろう。
私も言うなれば蛮勇を振るう匹夫に過ぎないかもしれないのだ。
「ほざけぇっ!」
烈迫の気合いと共に私へとビームライフルを放つが、悲しい迄に予備動作が大きい。私はビームライフルが発射される前に射線から機体を翻し、突進させて彼の眼前にビームサーベルを突き着ける。
「くっ……貴様!どういうつもりだ!」
「どうもこうもない。君は戦士たりえる事が出来ない。それだけだ」
私は冷徹に通告する。そして……。
「私の名はトレーズ・クシュリナーダ。覚えておきたまえ。君が戦士として再び私の前に現れる事を期待する」
「ナチュラルが何をふざけた事を!」
「戦場にいる資格があるのは理念を持った戦士のみ。ナチュラルとコーディネーター等些細な事に過ぎない。君には理念が有る様にには見受けられないな」
「……!馬鹿にするなぁっ!」
 彼はビームサーベルをかいくぐり私に斬撃を加えようとするが、感情を爆発させた単調な動きでは私を捉える事など出来ない。
私は彼の斬撃をいなし、大地へと叩きつける。
「筋は悪くないが動きが単調だ。修練を積み腕を上げたまえ。……さらばだ」

私はそう告げると、スラスターを噴かし戦場を離脱する。
「逃げるのか?腰抜けぇっ!」
 背中に彼の言葉が被さる。私は今は決着をつける気など毛頭無い。
 ……此処まで時間を稼げば充分だろう。
脱出していく将兵をまとめ、敵の虎口を抜け、安全な場所へと誘導する。
私は彼等を旗下に収め、足掛かりへの第一歩にしよう。この戦乱を帰着させるために。

――to be continued――