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W-Seed_Desteniy-Walts◆JESTW0zUfg_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:00:41

気づいた時にはそこは自分が見知った戦場ではなかった。砂時計がいくつも浮かび、静かな宇宙に彼はいた。
 自分がいた戦場には、リーブラと呼ばれ宇宙要塞、そしてピースミリオンと呼ばれる巨大宇宙戦艦、資源衛星MO-IIがあった。
 そして何より仲間が存在した。
 俺は地球に降下するリーブラをゼロで撃破することを試み、これの撃破に成功し、それから視界が晴れて――そこから先の記憶が全く無い。
 ゼロを地球の手ごろな場所に隠すとまずは情報収集を始めた。何故か? この世界では、OZはおろか連合という組織さえ存在しないのだ。
 似たような組織ならばある、地球連合軍。しかし、中身は全く違う。それから一ヶ月が過ぎ、いい加減この世界に必要な地域を蓄えてきたところで――ある情報が一部の者達を震撼させた。
 それはたまたま、もはや日課となっている情報収集の際に手に入れた情報。
「ユニウス・セブンが安定軌道上を外れ、地球に向かって進路を取っている」
 この世界にも、コロニーは存在した。まるで砂時計のようなコロニー。その集合国家。プラント。”前大戦では、連合の一部の者達の強行により核攻撃をユニウス・セブンに受けた。後のバレンタインである。
 そして、プラント、いやザフトはその報復としてニュートロンジャマーを世界中にばら撒いた。死者は10億人を越すとも言われ、後のエイプリルフール・クライシスである。
 その後、開戦。とまぁ、先ほど話に出ていたユニウス・セブンが進路を変更しているのだ。少なくともこんな短期間では絶対に安定軌道上からは外れないはずなのに。
「だが、俺には何も出来ない……他世界のものである俺が……干渉してはならない……」
 もう、元の世界に戻れないのだから、いっそどうにでもなれ――半ばそんな気持ちにヒイロは陥っていた。
 そんな気持ちのヒイロのところに来客が。
「お邪魔するよ。あんた、最近こしてきたんだって?何だか陰気な顔してるねぇ……」
 隣家の17,8頃の若者だった。家に入り込んで勝手に椅子に座ってヒイロを見上げる。
「帰れ。勝手に家の中を――」
「嫌なこった。そんな死にそうな顔してる奴を放って置けるか。お前、悩んでるだろ。悩んでるときには、空を見上げてみるといいぜ」
「空……?」
「そう、空さ。空を見てると、自分はものすごくちっぽけな存在に思えてきて、逆に清清しい気分になっちまう」
 大げさに天井を見上げて伸びをした若者は、席を立って振り返り、
「じゃあな、俺は忙しいんだよ。お前みたいな奴いちいち気にかけてらんねぇ」
 勝手に入り込んできて、それは無いと思うヒイロ。若者は振り返って、
「参考になったかい? 少なくとも、さっきまでよりはいい顔してるぜ、あんた」
「……ああ、参考になった。あり、がとう……」
「どういたしまして。じゃあな」
「……ああ」
 若者が出て行く。空を見上げる、か。忙しくてそんなこと、全然しなかったな。
 家を出て空を見上げる。そして、この町を見渡す。考えてみれば皆心優しい人たちばかりだった。それが、脅威にさらされている。
「確かに戦争には干渉してはならない……だが、少なくともアレを止めることは出来るはずだ……」
 ヒイロは自ずと足を自分の愛機の眠る場所に向かって進める。

 ヒイロは知らないが、ヒイロが現れたと同時に、五つの発光物体が宇宙・プラント・地球に出現していた。
 それが自分の仲間たちであり――そのうちの一人は強敵手であることを彼はまだ知らない。


「トロワ、今日も助かったよ! 給料は振り込んどくがいいか?」
 プラントの一角、都市街のサーカス団に彼――
 トロワ・バードンは属していた。今は一仕事終えて、テントの裏に椅子を並べて休んでいる。
「ああ、それで頼む。ところでなにやら町が騒がしいが……」
 トロワが尋ねると、サーカスの団長は怪訝そうな顔を浮かべて、何かを思い出したように話した。
「確かユニウス・セブンが安定軌道上から外れたとか言う噂話が出回っていた気が……」
 驚いたような表情を浮かべながら、自分の持っている情報が正しいということが分かり、内心ほっと溜め息をついた。
「本当か? それは大変だな。では、俺はここで失敬する」
「おう、今度もよろしく頼むよ」
 そういって、団長はサーカスのテントのほうに戻っていった。
 自分の喋り方まで変えたのには、理由があった。
 無口で、なにかあっても事務的な話方をしていればさすがに変な風に見られるからだった。
「しかし――情報通り、か。」
 リーブラが消滅したと同時に、視界がブラックアウトし、気づいたときにはこの世界にいたのだ。
 まさか自分と同じようにこの世界に飛ばされた者がいるなどとは思いもよらず、このサーカス団で働かせてもらっている。
 プラントの警備隊が丁度目を話したその瞬間にトロワはこの世界に来たのだ。その後、ヘビーアームズを手頃な場所に隠し、情報を集めている。
 この世界のMSの技術力は元居た世界のそれよりも格段に低い。
 当初はコレの所持者だといって、ザフトに入隊しようとも思ったが、その気も失せた。
「ユニウス・セブンは地球に直撃する。そして、世界は混迷の一途をたどる、か……予想が正しければ手を加えたものはコーディネーター。そこまで来れば……」
 トロワは直接ヘビーアームズで破砕作業の手伝いをしたい気持ちに駆られたが、それをするほど勇敢でもなければ無謀でもなかった。
 ふと、元居た世界にいる友人のことを思う。彼ならば、恐らく手伝っていただろう。それにより被害が減るのならば――
「カトル、お前はどうしている……?」
 一人呟くと、自分の寝床にしている場所に向かって足を進めた。


自分の仲間が自分と同じジレンマに悩まされているのも露知らず、ヒイロは自らの愛機の下へと急いでいた。
 自分の犯すことが例えどれほど大それたことだろうと、この町の人々、この世界の人々が苦しく様を見たくはなかったのだ。
 いつの間にかに、この世界のことを好きになっていた。それなのに、気づかないようにしていた。気づきたくなかったのかもしれない。
 ここに来てまだ間もない頃、親身に助言をしてくれたり穴場のお店を教えてくれた23,4の若者。日用品を買いに行く時に笑顔でサービスし、少なからず世間話をした店主。
 腕は下手だが、時々家に新鮮な魚を持って一緒に食べたこともある釣りの好きな八百屋の店主。公園でぼーっとしていた自分に花をプレゼントしてくれた少女。
 精一杯に生きている彼らを、誰が苦しんでいる様を見て喜べるだろうか。
 向こうの世界の人々となんら変わらない。精一杯生きているのだ。
 そして、愛機の元へと走る彼の目の前で――ありえないことが起こった。地響きを立てて虚から出現した黒い巨人。
 元いた世界では搭乗者を要さない自立操縦の元動いていた殺戮兵器。

 「モビル・ドール」。そして――「ビルゴ」

「ビルゴが……何故……!?」
 ビルゴは森林の中央に堂々と立っていた。その眼光に光は無い。混乱するヒイロに、更なる追い討ちが待っていた。
 ヒイロを尻目にビルゴの眼光に光が点され、市街地の方へゆっくりと足を向ける。
 その時、ヒイロにはいつもは平然と撃破していたビルゴが――酷く巨大な悪魔に見えた。
 愛機の下へと全速力で駆ける。しかし少なくとも後二分は掛かる。起動に二分――ロックを厳重にしているせいだ――。その間にはビルゴは市街地に辿り着いてしまう。
 何をするかは解らないが、たとえ自重が軽くとも、あんな物が市街地に出て歩き回れば住人の顔色は恐怖色に染まる。
 もし、最悪の場合は――考えた瞬間、ヒイロは何か冷たい刃物のような物が首筋に当てられた気がした。
 巧妙にカモフラージュされた愛機を見つけ、コックピットのロックを外す。キーを打ち込み、それを認証してまた入力。ロックが外れると同時に、コックピットに滑り込み起動。
 姿勢を制御して無理やり機体を起こすと、市街地の方角を視界に納めた。

 ビルゴの足は遅く、今まさに市街地の方へと踏み入らんというところだった。ほっとして、機体を操作しビルゴの方に機体を向けようとして――目を疑った。
「馬鹿な……ッ!」
 なんともまぁ、ビルゴが転倒したのだ。気づいたときには機体を走らせていた。
 ビルゴは乱暴に起き上がると、今度は走り始めた。市街地の端の方に辿り着いて、何かを思い出したかのようにビームキャノンを構え――森林部に上体部を突っ込ませた。
 ウイングガンダムゼロが飛び蹴りをしたのだ。ビルゴは起き上がり、さしてダメージが無いかのように振舞い再びビームキャノンを構えた。
 ヒイロは全てを瞬時に分析し、ビームサーベルを抜くと機体を走らせた。ビームキャノンが発射される。その時は上空に。上空から一直線に降下してコックピットめがけて一刺し。
 ビルゴは糸の切れた操り人形のように膝を突いた。ほっとして外状況に目を走らせる。この世界に来た時から答えてはくれないゼロシステムを除けば、無傷だった。
「損害ゼロ。久々の戦闘に、して、は………………」
 ヒイロの言葉はそこで途切れた。目は見開かれ、口は開きっぱなしだった。
 目の前には――ビームキャノンが抉った町の傷跡だけがあった。


何時までそうしていただろうか。ほんの一瞬が一分になり、やがて一時間、やがて一日と――
 ほとんど無意識のうちに膝をつかせてコックピットから飛び降り、素早く市街地に駆け込んだ。
 ちょうど、町の人々が集まっていた。辺りには人であったものや腕らしき物が四散していた。
 被爆現場にいた子供たちは泣き叫び、大人達はビームキャノンがえぐった場所を見つめて打ち震えていた。
「ヒイロ! 無事だったのか!」
 23,4の若者だ。ヒイロは彼にこの町についてまだ間もない頃世話になった。
「アイツがお前を見てないって言ってさ、お前の家に行こうとしてさ……あの光の巻き添えに……でも、お前が無事でよかったよ」
「な、に……?」
 ヒイロには最初どういう意味か分からなかった。
 だが、意味を理解した瞬間、ヒイロの中で何かが音を立てて崩れた気がした。
 彼の言うアイツとは、自分にこの世界がどういうものかを気づかせてくれた人物であり――彼の弟でもあった。
 いつも家の仲で遠目から眺めていた。街の子供たちと公園で駆けている姿を見ると、本当に二十歳を超えているのかどうか疑いたくなる兄に、面倒見がよく弟。
 そんな…馬鹿なことがあってたまるか。自分がもっと早く動いていれば――
「アイツ、本当にこの街が好きでさぁ、俺はここで永住だ! なんて言っててさ……それを……それを……あの黒いのは、悪魔かなんかなのかなぁ……」
 ようやく町の人々が正気に戻って、救助活動を始めていた。残骸に埋められた人々もいる。
「兄さんって呼んでくれてさ……畜生……」
 ヒイロはそっと離れた。自分がこの場にいてはいけない気がしたのだ。
 ゼロの下まで戻ると、機体を起動させて、ビルゴの残骸を抱えて機体を飛び立たせた。
 一刻も早くここ離れたかった。

 街から離れた海の上で、ゼロは佇んでいた。
 何時までそうしていたであろうか、ゼロは唐突に広大な海の上空から、ビルゴを手放すと同時に海へと降下していった。
 どうすればいいかわからなかった。あの声さえ聞こえなければ、このまま海に直面していたであろう。

 自分の名を呼ぶ声。少女の、呼ぶ声。

 ヒイロはとっさに瞑っていた目を見開き機体を急上昇させた。冷静になって、状況を分析する。
「ゼロを宇宙に上げたからといって、燃料の方の危険性もある……しかし、危険な賭けだが、やるしかない」
 ヒイロは機体をネオバード形態に変形させると、いまだ地球への落下コースを辿るユニウス・セブンに向けて発進させた。
 失敗する要因は多い。だが、今のヒイロにはそんなことどうでもよかった。
 地球への落下コースを辿るユニウス・セブンを消滅させることが出来るのならば。

 それを、離れたオーブ近海の島で見ていたキラは、思わず目を疑った。
 まるで鳥のような機体が宇宙(そら)に向かって飛んでいるように見えたのだ。
 しかし、それも一瞬。すぐに視界から消え失せてしまい、キラは疲れているのかな、と思った。
「どうかしましたか、キラ?」
 そんな様子を怪訝に思い、声を発した女性。
 キラは、我に返ったように、
「え? あ、ああ。気のせいかな、鳥が、宇宙(そら)に向かって飛んでいるように見えてさ……」
「まぁ、本当ですか?」
 女性は空を見上げ、必死に遠くを見ようとしている。
 キラは、苦笑しつつも、気のせいかと割り切って再び空を見上げた。