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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第37話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:59:03

第37話「デスティニーガンダム、いきます!」

カーペンタリアからザフト軍が出撃して間もなく、住民の避難を終えたオーブからは、オーブ軍艦隊が次々と出撃している。
そして、オーブ軍旗艦タケミカズチには、ユウナの作戦参謀としてオーブに残ったトダカに代わってジャミルが特別に艦長として就任することになり、サラ、トニヤ、シンゴらも、タケミカズチのクルーとして、艦に乗り込んでいた。

一方のアークエンジェルでも、出撃の準備が着々と進められており、エアマスターバースト、レオパルドデストロイ、ダブルエックス、Gファルコン等のAWチームの機体が次々と搬入されている。
そして、ガロード達AWのパイロット3人、旧アークエンジェル・ミネルバクルーが集まるアークエンジェルのブリッジでは、新しい艦長が誕生しようとしていた。

「アーサー、ごめんなさいね…あなたにこんなことを押し付けてしまうことになって…」
「いえ、艦長は本国にお子様がいらっしゃいます。ここで戦われては、お子様に何があるかわかりません。
 その点、私には本国で待ってくれている相手もおりません。この任務、きっと果たして見せます」

アークエンジェル2代目艦長、タリア・グラディスには、プラント本国に子供がいる。
オーブに行ったザフト軍の人間は、便宜上オーブに亡命し、オーブ軍に志願した者として形式的には扱われていたが、メサイア防衛戦の後、タリアがそのままオーブに渡ったことはラクス・クラインが乗っ取ったプラントも知っているであろうことを考慮したアーサーは、しがらみのほとんどない自らに艦長就任を願い出ていた。
当然、当初はタリアも難色を示していたが、結局はアーサーの気迫と執念に根負けした結果となったのである。

「あなたには十分な実戦経験があるわ、自分の力と艦の仲間を信じなさい。
 そうすればきっとクルー達も力を貸してくれます。健闘を祈っているわ」
「ハッ!」

そして、通信映像からタリアの顔が消えると同時に今度はユウナの顔が映る。

「カーペンタリアから出撃した艦隊の数は少なくはないが、今のオーブ軍の総力を持ってすれば撃退できると確信している。頼んだぞ、ガロード」
「ああ、シンみたいに悲しい想いをする奴をこれ以上作りたくはねーしな。
 シンの奴には、全部俺に任しとけって伝えといてくれ」
「聞こえてるぞ、ガロード。完治してないからって俺が留守番かよ」
「ヘッ、怪我人は黙って養生してるか、デスティニーの調整でもやってろ」
「まあまあ2人とも、そろそろ一旦静かにしてくれるかい?」

そう言ってユウナが通信越しのシンとガロードを遮る。
その後、間もなくして軍本部からオーブ軍全艦に向け、ユウナが激励の言葉を紡ぎ出した。

「オーブ軍の兵士諸君、僕はオーブ首長国代表代行ユウナ・ロマ・セイランである。
 今、我が国には、人類史上最狂のテロリスト、ラクス・クラインが乗っ取ったプラントの軍勢という、未曾有の危機が迫ってきている。奴らは我らが愛してやまない我が国の代表カガリ・ユラ・アスハを拉致し、彼女がオーブへの帰還を望んでいるにも拘らず、引き続き監禁するという非道な行いをしているばかりでなく、我が国、いや、地球全体を救ったオーブの守護神ダブルエックスの破棄を不当に要求した挙句、それを拒否した我が国へ、軍勢を差し向けた。
 これはオーブへの明らかな内政干渉と侵略行為であり、我々オーブの理念は、他国の争いに介入しない代わりに我が国への侵略を断じて許さないとするものである。故に我々は奴らを退けねばならない。
 オーブという国を、そこに住まう人々を守るため、どうか、どうか諸君の力を僕に貸して欲しい」

そして、ユウナが演説を終えて少し間を置いた後、歓声が各艦からあがり始めた。

アークエンジェルのブリッジでも歓声が上がる一方で、その操舵席ではアーノルド・ノイマンが、黙々と発進準備を続けていた。

「機関定格起動中、コンジット及びFCSオンライン、パワーフロー正常、主動力コンタクト、システムオールグリーン、アークエンジェル全システムオンライン、発進準備完了」

艦の制御コンピューターの起動が完了し、ノイマンの視線がアーサーへと向けられる。

「アークエンジェル、発進せよ!」
「了解、アークエンジェル、発進!」

アーサーの指示に従い、ノイマンが舵を切り、伝説の不沈艦と言われる戦艦が、今度こそオーブを守るべく、発進した。

ちょうどその頃、オーブ上空宙域から少し離れた宙域では、キラ・ヤマトが率いるザフトの艦隊が、月基地へ向かうべく打ち上げられた連合軍の大艦隊と大規模な戦闘を開始していた。
この戦闘はオーブの軍本部でも把握していたが、眼前に迫ってくるカーペンタリアの大部隊に意識と地上軍の戦力を、宇宙の主要拠点のために宇宙軍の戦力を集中させねばならかった。
そのために、オペレーションフラワーへの対処が結果的に遅れてしまうこととなってしまったのはオーブの人間は誰も気付いていなかった。

しばらくして、オーブ領海に侵入しようとしたザフト軍との戦闘が始まった。

「ダブルエックス、行くぜ!」
「ガンダムエアマスターバースト出るぞ!」
「ガンダムレオパルドデストロイ、行くよ!」

ダブルエックスとエアマスターバーストがアークエンジェルから飛び立って、
各艦から出撃したムラサメの大部隊を連れて、グフやバビの部隊へ向かっていき、レオパルドデストロイが、キッドの作成した海戦用武装を着用して、海中へと飛び込んでいった。

「てめえら、このダブルエックスに喧嘩売るとはいい度胸だな!覚悟しやがれ!」

ダブルエックスがハイパービームソードを引き抜く。そしてそのまま刃を振り下ろしてスレイヤーウィップごとグフを切り裂く。
さらに返す刀で切りかかって来た別のグフを横薙ぎにしてその機体を上半身と下半身に分割する。

「オラオラオラオラオラ!ちんたら動いてんじゃねえぞ、コラァ!」

ダブルエックスのすぐ近くでエアマスターバーストが左右の手にしたバスターライフルを発射して次々とバビの編隊を射抜いて、海に叩き落としていく。
それに対して別のバビの編隊が高エネルギービームをエアマスターバーストに向けて放つが、ウィッツはそれを易々と回避してお礼とばかりにバスターライフルのビームの雨を降らせていった。

「やるじゃねーかウィッツ!」
「ヘッ、てめえもな。腕は鈍ってねーみたいで安心したぜ!」

久しぶりに肩を並べて戦う仲間の腕を見て、2人は懐かしい感じを覚えていた。
そこに海中で潜水艦が爆発することで生まれる大きな水柱がいくつも発生し、もう1人の仲間の声が聞こえてくる。

「あらあら、俺のことは仲間外れ?ちょっとそりゃ酷いんじゃないの?」

次々と発射される魚雷に撃ち抜かれてアッシュやグーン、ゾノが海の藻屑へと変わっていき、レオパルドはデストロイの名に相応しくザフトのMSを破壊していった。

「なんなんだ、あいつらは!?」
「ユニウスセブンを消し去った化け物が出て来たのか!?」
「化け物だ!やっぱりオーブには化け物が住んでるんだ!」
「あの変形する奴はナチュラルの元フェイスだ、早くあいつから離れろ!」
「むざむざエサ野郎のエサになること…ぎゃあああああ……」

鬼神の如くザフトのMSを倒していく3機のMSの姿に、サテライトキャノンなしでもザフトの部隊は戦意を喪失し始めていた

「…実際に見てみると思っていたより多くはないな…」
「それでは伏兵か増援がいると考えるべきでしょうか?」

戦闘が始まってしばらくして、タケミカズチのブリッジでジャミルが呟き、それに副官のサラが応えた。

「いや、それも考え難いのだが…ティファは何か言っていたか?」
「いえ…ただ、嫌な予感がするとは言っていましたが…」
「やはりな…だが一体何を仕掛けてくるのだ…」

攻め込んできた敵の数は確かに少なくはない。だが、目の前にいる数だけならば、MSや戦艦の質の差で辛うじてではあるが押し切れそうな程度の数であるともジャミルには思えた。

「ですけど、これならサテライトキャノンを使わずに済みそうですね」
「サテライトキャノンを…そうか!そういうことか!?」

ジャミルが大声を上げて艦長席から立ち上がる。

「トニヤ!ユウナ殿に繋げ!敵の艦隊は陽動だ!本土の守りを固めさせろ!」
「は、はい!」
「アマギ1尉、サラ、私はGXで本土に戻る。今からで間に合うかも分からんが、指揮を頼めるか?」
「了解しました!」

その頃、オーブ軍本部では、オーブ上空宙域に突然現れた反応に慌てふためいていた。

「ミラージュコロイド解除、突入ポッド射出、さあ諸君、オペレーションフラワーの開始だ。
 平和の花を植えてきてくれたまえ」

少し離れた宙域にいるミネルバの艦長席に腰掛けたバルトフェルドの指示が飛び、ミネルバから戦闘中にこっそりと射出された数基の大気圏突入ポッドに作戦開始の知らせが入っていた。

オペレーションフラワー、この作戦はバルトフェルドが考案した、突入部隊による強襲・制圧作戦である。
ミラージュコロイドを展開させた大気圏突入ポッドの射出を勘付かれないために、連合やオーブにとって有名なキラ・ヤマトと彼が乗るストライクフリーダムの別働隊を大掛かりな陽動にして宇宙の監視の目をそちらに向けさせて、地上の目をカーペンタリアの部隊に向けさせることで、ミラージュコロイドを展開させた突入ポッドの存在から目を逸らさせ、その隙にオーブ本土へ精鋭部隊を降下させて一気に行政府や軍本部を制圧させる、というのがその内容である。

この作戦を成功させるためには、地上のオーブ軍を可能な限り本土から引き離し、その上で、地上のカーペンタリア軍がオーブ軍に瞬時に殲滅されることを防ぐ。
つまりサテライトキャノンを撃たせないような手法を考えておくことが不可欠である。

かつて、連合にオーブ本土を制圧された過去を持つオーブ、そしてプラントの要求を即座にはねのけたユウナ・ロマ・セイランならば、カーペンタリア軍の迎撃も可能な限り本土から離れた海域で行なうであろうことが考えられたため、本土からオーブ軍を引き離すこと自体はそう難しいことではなかった。

そこで次に問題になるのが、ダブルエックスを擁するオーブ軍に、いかにしてサテライトキャノンを撃たせないようにするかであったが、そこでバルトフェルドが考えたのは、あえて均衡する戦力をぶつける、という方法であった。
つまり、サテライトキャノンやネオジェネシス、レクイエムが本来は抑止のための兵器であり、その引鉄は軽いものであってはならず相手にその引鉄を引かせる契機を与えないことが重要である。
つまり、引鉄を引く必要性を与えないようにするために、あえて圧倒的な大部隊で仕掛けるのではなく、あえてやや優勢となるような戦力をカーペンタリアからオーブに向けて出撃させたのであった。

もっとも、それほどの戦力がカーペンタリアに残されてはいなかったし、カーペンタリア以外は全て敵という状況で、サテライトキャノンがないにしても、全て敵という周りからカーペンタリアを防衛しつつ、オーブも攻め落とせるほどの戦力がなかったことも事実ではあったが。

「ガロード、エアマスターバーストの機動力なら間に合うかもしれねえ!
 俺がムラサメを何機か借りて戻るからここは頼めるか!?」
「わかった!こっちは俺とロアビィがなんとかしておく、オーブを頼んだぜ!」
「おう!元ウィッツ隊のムラサメ6機、俺についてきやがれ!」

だが、エアマスターバーストが変形してオーブの方向へと向かい始めた瞬間、
上空から降ってきた砲撃によって、ウィッツの指示を受けて転進したムラサメが撃ち抜かれた。

「何だと!?」

ウィッツから驚きの声が上がり、エアマスターバーストのレーダーが上空から接近する2機のMSの存在を知らせる。
そして、ガロード、ウィッツの前に2機のMSが降下してきたが、ガロードは、そのうちの一機に見覚えがあった。

「フリーダム…キラ・ヤマトか?いや、フリーダムはシンが落としたはずだろ…それにあれはジャスティスか?」
「くそ、あいつらよくも俺の部下を…ふざけやがって!どこの部隊の野郎だ!?」
「……お久しぶりです、ウィッツ・スー」

機体に見覚えはなかったが、エアマスターバーストのコックピットに入ってきた声には聞き覚えがあった。

「イザークてめぇ、よくも俺の前に面出せたもんだな。てめえがいるってことはあっちの白いのはディアッカか?」
「俺は自分が間違ったことをしたとは思っていません。それは今も同じです」
「恩を受けた人間に恩を仇で返しただけじゃ飽き足らず、他の国に因縁つけて潰しにかかってきやがる糞野郎に従うのが正しいとでも思ってやがるとは思わなかったぜ」
「あなた達はここで俺達の相手をしていてもらいます。オーブには戻らせません」
「なら気色悪ぃ敬語なんて使うんじゃねえ!」
「…ウィッツ・スー!今日こそは白黒はっきりつけてくれる!覚悟しろぉ!」
「上等だぜ!かかってきやがれ!てめえじゃ俺に勝てねえことを教えてやる!」

イザークの気迫に呼応するようにジャスティスがサーベルを構えてエアマスターバーストに斬りかかっていった。
一方でガロードの前には再び、フリーダムが立ちはだかっていた。

ガロードはウィッツをオーブに戻らせるべく、ジャスティスに攻撃を仕掛けようとしていたが、それは、全てフリーダムから放たれる砲撃に遮られていた。だが、今度はフリーダムに向かっていくと、今度はフリーダムはダブルエックスから離れていき、牽制には十分すぎるほどの砲撃でガロードを翻弄していた。

「グゥレイト!さすが噂に名高いダブルエックス、ちっとも当たらないぜ。だが、イザークの邪魔はさせないよ?」
「くそ!キラ・ヤマトじゃねえ、明らかに俺を足止めすることに専念してやがる!」

ディアッカの足止めに専念した戦い方にガロードはやや翻弄されていた。
戦う中で相手の動きやパターンに対応するのがガロードの特技であるが、ディアッカのように、戦う手法をそもそも見せず、ただ距離を置いての牽制に専念されていては、相手の行動を見切るまでに多くの時間を要するため、ガロードは戦いを自分のペースに引き込めないでいたのであった。

その頃、オーブでは降下してきたMS部隊に、防衛部隊が苦戦を強いられていた。
元々、ほとんどの戦力をカーペンタリアの攻撃部隊の迎撃に充てざるを得なかったため、本土に多くのMSを残すことができなかったのであるが、オーブ軍にとって脅威であったのは敵の数ではない。
降下してきたポッドから出てきたザクやグフだけであれば、残してあるムラサメだけでもなんとかなりそうなものだったのだが、問題なのは降下部隊の切り札であろうドム3機であった。

「マーズ、ヘルベルト、狙いはわかってるね!」
「おう!」
「軍本部と行政府だろ?」
「よしまずは迎えのMSを叩くよ!ラクス様のために!」

そして、オーブ軍本部では当然ながら、降下してきたMSの対応に追われていた。

「残ったムラサメは全機出撃させろ!時間を稼げ!もう少しすれば援軍が戻ってくる!」

次々と入ってくる、防衛線が突破された、MSが撃墜された、という情報が、ユウナの、トダカの、そして2人の傍で戦況を知らせる報告を聞いているシンの心を蝕んでいく。
機動力が特徴であるものの、ビームライフルとビームサーベルが主兵装のムラサメは、機体周辺に防御フィールドを展開させるスクリーミングニンバスを装備したドムトルーパーとは相性が悪い。
ビームを放っても弾かれるし、サーベルで斬りつけようとすれば接近する前に撃ち抜かれるか、3機のコンビネーションが取れた攻撃により返り討ちにあってしまっていた。

「ユウナ様、ムラサメではドムを止められません!今のうちに脱出して下さい!」
「キャプテンジャミルのGXが戻ってきている途中だ、もう少しだ、もう少し耐え抜かせろ!」
「それでもGXが戻ってくる前にドムが軍本部を潰しにかかってきます!これ以上はもちません」
「それをどうにかするのが僕たちの役目じゃないのか、トダカ!」

軍本部へ迫るドムの脅威を前にして、2人は衝突する。しかし、それを遮る声が間もなく上がった。

「ユウナさん、俺が行きます!このままじゃオーブがあいつらに!」
「シン!?君はまだ怪我人じゃないか、それにMSはどうするんだ!」
「デスティニーがあります!怪我だってだいぶ治りました!今、ドムをやれるのは俺とデスティニーだけです!」
「相手は3機、しかもエースパイロットだ。それをどうにか…」
「できます!じゃなきゃあいつらから…キラ・ヤマト達から守りたいもんだって守れない!」
「…このまま君がやろうとしていることはそのキラ・ヤマトが2年前にやったことと同じだぞ。
 力があるからと言って、自分勝手に力を使う。僕達は戦争をしているんだ。その力の使い方にはルールがある!」
「ならどうしろって言うんだ、あんたは!?」
「君がオーブの軍人になればいい。ガロード達だって形の上ではそうなっている。 守るため、だとしても目的は全てを正当化はしないんだ!」

オーブの軍人になる、シンには考えたことがないことであった。
今まで彼が戦っていたのはザフトの軍人としてであり、今の彼はザフトの軍人ではない。
現在のシン・アスカという人間はオーブに亡命した民間人に過ぎないのである。
だが、シンは決断を迷うことはなかった。

「わかったよ、俺がオーブの軍人になる、それならいいだろ」

彼が戦場で戦う理由、キラ・ヤマトへの復讐、そして、罪のない人達を守るという理由は、レイやガロードという仲間達と戦う中で確固たるものとなっていた。
そして、今自分がしなければならないことは、ラクス・クラインやキラ・ヤマトらから人々を守ることであり、それを達成するためには、今はオーブ軍に身を置くことが必要なのだと理解していた。
だが、あくまでシンは、世界のためということを第一に考えているわけではない。
彼は基本的に復讐者であり、かつ、1人の戦士に過ぎないことを自覚しているのである。

ただ彼が考えているのは、世界を手にすることも出来るほどの力を手に入れたキラ・ヤマト達が押し付けようとする理屈や判断から人々を守り、その人達の可能性を切り開くことである。
そのために必要なのが、今はオーブの軍人になることなのである。
確かにシンにとってオーブが自分の故郷という、特別な国であることは否定しようがないが、今、オーブという国は自分の目的を達するための手段の1つであることも事実なのであった。

「デスティニーはここの地下に移してある。オーブの運命を、君とデスティニーに託してもいいかな?」
「ええ、俺の故郷をこれ以上奴らの勝手にさせるつもりもないですしね」

そう言って、シンは司令室を飛び出していく。

「今から我が軍の切り札を出す!各機、あとほんの少しもたせろ!」

そして、シンが走っていくのを見届けたユウナの声が司令室に響き渡った。

シンはデスティニーのコックピットに乗り込むと、シートの上のオーブ軍用ノーマルスーツに目が行った。
都合よく軍本部の司令室地下に移されていたデスティニーといい、このノーマルスーツといい、自分はどうやら、まんまとユウナの口車に乗せられてしまったのだということにシンは気付く。

「これも予定通りってことかよ!政治家って奴は…」

シンはブツクサ言いながらデスティニーを起動させていく。
インフィニットジャスティスとの死闘の末に大破したはずのデスティニーの復元が完璧であることに少々驚いたが、そこはさすがガロードも御用達のスーパーメカニックの仕事だな、と感じていた。

「あー、1つ言い忘れたんだけどいいかい?」

コックピットにユウナから通信が入る。

「何ですか、ノーマルスーツの礼を言えってことですか?」
「いや、その機体は今は正式にオーブ軍のMSってことになっているからそこのところをよろしくね。
 あくまでその機体は、宇宙を漂ってたZGMF-X42Sデスティニーの『残骸』を、オーブとキッド・サルサミル氏の技術で復元させた、GD-01デスティニーガンダムだから」
「デスティニーガンダム?」
「ああ、ガロード達の世界ではデスティニーやフリーダムみたいな姿をした高性能の機体を『ガンダム』と呼ぶらしくてね。
 だからそれにあやかって、デスティニーガンダムって名前にしたんだ」
「ガロード達の世界ね…面白ぇ、いいっすね、その名前…」

そう呟きながらシンはデスティニーの起動準備を完了させた。

「デスティニーガンダム、いきます!」

戦い続ける中で、心の悲しみを増やされながらも、血を流しながらも突き進むシンを具現化したかのように、血の涙を流しているかのようにも見える頭部メインカメラにエメラルドグリーンの輝きが宿る。そして、紅の翼を広げ、ガンダムという称号を背負って復活した、運命という名の翼、デスティニーガンダムがシンのかけ声と共に地上に飛び出していった。