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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第41話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 14:00:07

第41話「このバッキャロォォォォ!」

「ふう…」
(このところ、ため息ばかりついてるねぇ)

バルトフェルドは、趣味であるコーヒーのブレンドをほとんどすることも叶わず、
毎日のように大量の書類と格闘しながら部隊の編成を朝から晩まで行なう日々を送っていた。

何しろ、メサイア攻防戦でザフトの戦力は真っ二つに割れただけでなく、さらにその直後に連合宇宙軍の大艦隊と交戦しただけでなく、アルザッヘルを落としたのである。
ただでさえ、宇宙でのザフト支配圏を維持するので一杯一杯であったのに、ラクス・クラインの要求に応えるために再度のオーブ侵攻用の戦力を捻出することは極めて困難だったのである。
だが、無理だ無理だと言い続けては軍事に関しての専門的知識を持っている訳ではないラクスが突拍子もない作戦を立てて、ダコスタのような信者がそれに盲目的に従うことで、かえって「プラント」を危機に陥れる危険もあり、
彼女の要求を無視する訳にもいかず、結局、バルトフェルドが動かざるを得なかった。

「…どういうことだ?」

そんな中で彼は書類上の数字がおかしいことに気付いた。
明らかに、今まで自分が把握していた戦力、物資、人員、予算に比べて、書類に示されているそれらの数がかなり少なかった。つまり、データの改竄が行なわれていたのである。
彼がそれに気付くことができたのは、ラクスの無理難題に近い要求をなんとか実現するべく、コーディネーターとしての能力とライフワークであったコーヒーのブレンドで鍛え抜いた絶妙なバランス感覚で戦力の配分をしていたためであったといえよう。

そこで彼が取った行動は自分の部下であるダコスタに調査の指示を与えるというものであった。
いくら先日、衝突を起こしたとはいえ、ダコスタは長年自分の下で働いてきた信頼できる部下であり、かつ、確かな能力を備えた人間であることに変わりはなく、山のような仕事に終われて神経が擦り切れかけている中で、ふと無意識のうちにダコスタを頼ってしまったのである。

結果的にはこれが、データの改竄を行い、未曾有のテロを実行しようとしている本人に調査を依頼するという最悪のものとなってしまうのであるが、まさか長年接してきた自分の部下が、とは到底考えることが出来なかったのだった。

一方、カガリはテレビのニュースが伝えるオーブの情報を毎日見るようにしていた。
彼女は自分がオーブに戻ることを諦めていなかったのである。
キラの手によってオーブから連れ出されて早1年近く、自分が時代に取り残されているのだと感じたことがあったが、そんな彼女を勇気付けたものは、プラントのマスコミが、ニュース、バラエティ、ドラマ等でラクス・クラインに歯向かう不埒な輩として連日批判され続けるユウナの言動であった。

カガリは、ユウナの、ガロードと出会う前の、どことなく頼りのない、それでいて癇に障る言動をしていた頃の姿を知っている。
だが、世界の中心人物の1人となって、しかもオーブの理念を守りながら、圧倒的な武力を背景にする
ラクスに立ち向かう彼の姿、そして彼が未だに自分を必要としていることは、彼女に確かな勇気を与えていた。

他方、バルトフェルドが予想以上に早く物資等の横流しに気付いたことにダコスタは焦りを感じていた。

(くそ、想像以上に早かったな。さすが隊長だ…だが!)

地球へ落下させる廃棄コロニーの隠匿に、MSや弾薬、食料、人員、資金…既に準備は、その凄まじい事務処理能力を生かして完了しており、金で動く傭兵の手配も終わっている。
あとは自分がプラントを離れて現場に向かい、作戦を実行するのみであった。

マーティン・ダコスタという人間にとっては、ラクス・クラインという存在は絶対的なものであり、彼女こそが世界を統べるに相応しいのだと彼は考えていた。

だからこそ彼はヤキン後のエターナルの秘匿、ファクトリー等との連絡役、ドム・トルーパーの横流しに携わり、アークエンジェルの情報を集め、ルナマリアを唆してアスランをジブラルタル基地から脱走させたり、メサイア攻防戦の直前までザフト軍の兵士の切り崩しを行なうなど、自分の手を汚してまでしてラクス・クラインがプラントを手に入れるために尽力してきたのであった。

そして今は、ラクス・クラインに正面から喧嘩を売り、ラクス・クラインに歯向かう地球側の代表的な存在の1つであるオーブを潰すことこそが彼のなすべきことなのだと考えていた。

とはいえ、本来、ダコスタは裏工作が専門なので、今回のような実力行使は得意ではないのだが、オーブ国内の徹底的なクライン派の排除によって、得意の内部からの切り崩しが叶わない今、彼の世界で最も崇高な存在であるラクス・クラインの邪魔をするオーブを潰すことに何らの躊躇もなかった。
今回の作戦で自分に危険が及んでも、オーブに壊滅的打撃を与えることができればラクス・クラインの目的は容易に達成されることが予想されるので、彼にとってはそれで十分なのである。

そしてダコスタが「調査」の名目でプラントから忽然と姿を消したのはその僅か数日後であった。

ダコスタが姿を消してさらに数日後、処分が決まっていたレクイエム用の廃棄コロニーの1基が地球に向けて移動しつつあることが、地球・プラント双方で発覚していた。

その報を自分の執務室で聞いたユウナがまず思ったことは、今度はそう来たか、というものであった。
オペレーションフラワーを辛くも阻止することに成功したオーブであったが、次にラクス・クライン率いるザフトがどのような攻勢にでるかわからずにいた。
いくらテロリストが占拠した状態だと扱うとしても、他国を侵略しない、という理念がある以上、艦隊を率いてプラントに攻め込むことには躊躇いがあるし、一国を滅ぼすほどの戦力は、ダブルエックスを除けば存在しない。
そのため、相手の出方を伺う形にならざるを得なかったのである。
だが、その結果として聞かされたのは今度はMS部隊ではなく、廃棄コロニーというトンでもないものが落ちてくるという凶報だった。

(もういい加減にしてくれよ)

ストレスで胃がキリキリと痛むのと同時に、ユウナの中にはラクス・クラインへの怒りが湧き上がってきていた。
この時ユウナは未だそれがダコスタの暴走によるものだとは知らなかったが、ラクス・クラインの手の者による、
彼女と敵対するオーブを始めとした地球上の国々への攻撃であることは明らかである。
ガロード達の世界が滅びた原因を聞かされていたユウナは、ガロードらに対してよくない知らせをしなければならないことに、今度は頭痛がしてきていた。

そして、ラクス軍の迎撃に備えるべく宇宙に上がることになったガロード達の下にコロニーが地球に迫りつつあることを知らせに来たユウナから、そのことが伝えられた。

「コロニーが落ちてくるって!?」

まず声を上げたのはガロードであった。
だが、コロニーが落ちてくるという知らせに衝撃を受けたのは当然ながらガロードだけではない。
ジャミルを筆頭にウィッツ、ロアビィ、サラ、トニヤ、シンゴ、キッド、テクス…コロニー落としによって一度は滅びを迎え、荒れ果てた世界で生きてきた彼らは、コロニー落としの恐怖を身を以って知っている。

「この世界でも人はあのような悲劇を起こそうとするつもりなのか・・・」

その中でも特にジャミルは、異世界でも同じようなことを考える人間がいることに強い怒りを覚えていた。
彼の引いた引鉄が発端となって、彼のいた世界は滅んだのである。
コロニー落としという行為がいかなる悲劇をもたらすのかを知ってか知らずかは不明であるが、そのような行為に及ぼうとする者がこの世界にも存在すること自体が彼には腹立たしかった。

「心中お察しします、キャプテンジャミル。この世界の人間としては全く恥ずかしい限りです。
 ですが、専門家の計算によればオーブ付近に向けて落下しつつあることは間違いないようです」
「今度の作戦も、ラクス・クライン率いるザフトによるものなのですか?」
「今のところは何の発表もありませんので、おそらく『ザフト軍』としての行動ではないでしょう。
 彼女は世界に向けてアピールすることが大好きなようですからね。
 ですが、ラクス・クラインの信奉者による行為だと考えるのが妥当でしょう。
 そうでなければ、地球にコロニーなんかを落とす理由がありません」

そこにガロードが口を挟んだ。

「撃つしか…ないのか」

ガロードの心のどこかには、ユニウスセブンの時と同様に、サテライトキャノンを撃つことで、今回の事態は防げる、という考えがあることを否定できない。
少なくとも、人間相手に撃つ訳ではないし、ユニウスセブンを撃ったときと同じく、このままコロニーを落下させる訳にはいかない。
この事態をそのままにしておいたのではどれだけの人間が死ぬかわからないし、自分にはそれを阻止できる力がある。
そして、自分たちの世界が辿った道を、自分達の世界が犯した過ちを繰り返させない、という想いがガロードにはある。
ただ、彼の理解を超えているラクス信者への行動原理への戸惑いがあることも否定できない状態にあったとも言えた。

「ああ、でもそれだけで済むといいんだけどね…」
「へ?どういうことだ?」
「ラクス軍…いや、コロニーを落とそうとしている連中が何かサテライトキャノン対策をしている、ということだ」
「その通りです、キャプテンジャミル。オーブにはダブルエックスがあって、そのダブルエックスは、地球に落下しようとするユニウスセブンをサテライトキャノンで消し去った、ということは世界中が知っているんだ。
 こういう言い方はよくないかもしれないけど、今さらコロニーを1つ落とそうとしたところで、ダブルエックスに阻まれるんじゃないかということは簡単に予想がつくだろう?」
「じゃあ、コロニー落とし自体が何かの陽動ってことか?」
「それはわからないが、単純なコロニー落下作戦でないことは確かだよ」

ガロードには、なぜラクス・クラインの信者がそこまでして敵対する者を滅ぼそうとするのかがまったく分からなかった。

実際、ラクス信者といわれる人間の思考を正確に理解している者の数はおそらく多くはないのであるが。

「敵が何考えてようが、知ったこっちゃねーよ。どうせロクなこっちゃない。
 だけどコロニーが落ちれば大勢の罪もない人達が殺される。これは確かだ。だから戦う、それで十分だろ」

ラクス信者の、常人には理解できない行動を考えていて、少し悩みを見せているガロードに声を掛けたのはシンであった。
彼は自分が1人の復讐者であることを自覚しているし、既に自分が戦う目的を、過ちを繰り返させない、
というガロードの戦う目的よりは具体的な形で持っていた。
つまり、自分の大切な人間を奪ったキラ・ヤマトへの復讐と、キラ・ヤマトのように、自分の都合で他人を巻き込み傷つける者から人々を守ることが彼の戦う目的であり、そのために今、講じている手段が、奇麗事をやめて現実的視点から世界に存在感を示すようになったオーブという国の軍のパイロットとして戦う、というものである。
客観的には、やや単純だと言えなくもないが、単純であるが故に今のシンには迷いというものがないのである。

だが、そんな単純なものだからこそ、困惑によって立ち止まりかけてしまった人の肩を押すことができることもある。

「…そうだな、今はなんにしても落ちてくるコロニーを何とかしなきゃな…」

自分に理解できないことに直面したとき、人間は、目的を見失うことがある。
見失うまでいかなくても、理解不能なものへの困惑から決意や意思に影響が出ることもある。
シンの言葉を聞くまでのガロードがまさにそうであったといえよう。
だが、ガロードはシンによって、再び決意を取り戻していた。

「行こうぜみんな!何にしたって考えてても始まんねえ、俺達の世界と同じ過ちは繰り返させない!」
「よし、そうと決まれば急いで打ち上げの準備に取り掛かるぞ、よろしいですか、代表代行?」
「…ええ、お願いします。そして本当に申し訳ない。結局僕は最後はあなたやガロードに頼りっぱなしだ」
「お気になさらないで下さい。ガロードも私達も、目の前で世界が滅んでいく姿を見ることを望んではいません」
「そういうこった。いつも通り、後始末と下準備は頼んだぜ」

ガロードは笑みを浮かべながら親指を立ててユウナの方に向けていた。

数時間後、クサナギとアークエンジェルは、宇宙に向けて飛び立っていった。
一方、その頃、廃棄コロニーの落下阻止及び破壊のために出撃した連合宇宙軍と、廃棄コロニーを乗っ取ったテロリストとの戦いが始まっており、その光景を見ながら、ダコスタは静かに笑みを浮かべていたのだった。

そして、プラントからは遅すぎた落下阻止艦隊が出撃しようとしていた。
ラクス・クライン本人の主観としては、自らがセイランを排除してオーブを解放してカガリに返してやる、という構図が存在している以上、コロニーの落下によってオーブ自体が滅ぶことは避けなければならないからである。
つまり、ユニウスセブン落下未遂事件の時とは異なり、一旦自らの手で、「目的として掲げたこと」を達成する必要があったのである。
ただ、そのための戦力をかき集めるための時間がかかってしまっていたために部隊の派遣が遅れる結果となっていた。

「シン・アスカ、デスティニーガンダムいきます!」
「ダブルエックス行くぜ!」

落下を始めているコロニーへ向けて、宇宙に上がったクサナギ、アークエンジェルからMSが発進して行った。
デスティニーを先頭に、ダブルエックス、エアマスターバースト、レオパルドデストロイ、ムラサメの部隊が次々とコロニーに向かって行く。

ダブルエックスはサテライトキャノンのエネルギーチャージを既に完了しており、両腕両足の排熱板は黄金に輝いている。
そのため、サテライトキャノン発射を阻止すべく、ジンやシグーだけでなくザク、グフ、ゲイツRをも含めた所属不明のMS部隊(正体はダコスタに雇われた傭兵であるが)が攻め寄せて来ていた。
だが、彼らにとって不幸だったのは、ダブルエックスの護衛についていたのが、オーブ軍の、超が付くほどの精鋭部隊であったことだった。
ある者はエアマスターバーストの餌食となり、それを免れた者もアロンダイトに真っ二つに切裂かれ、幸運にもそれらの攻撃から生き延びた者もレオパルドデストロイの重火力によって撃ち落されていった。

「こちら炎のMS乗りガロード・ラン、今から3分後にサテライトキャノンでそのコロニーをぶっ飛ばす!
 いい子も悪い子もさっさと避難してくれ!」

国際救難チャンネルを通じて、サテライトキャノン発射が告げられ、コロニー周辺から多くのMSが離れていく。
コロニー周辺にいた傭兵部隊も、命が大事とほとんどがその場から離脱を始め、ダコスタの真意を知らされることなくコロニー防衛を命じられたMS部隊はダブルエックスへ特攻まがいの突撃を仕掛けるものの、コロニーに先立って次々と宇宙の塵へと姿を変えていった。

「ツインサテライトキャノン、発射ぁぁぁ!!!」

ダブルエックスから放たれた2筋の光は、地球へと落下するコロニーを貫き、その存在を消し去った。
だが、ガロードを始めとする面々は、相変わらずの手応えのなさを不気味に感じ続けていた。
(…やっぱり何かおかしいぜ…あっさりしすぎてやがる)

「ガロード、ひとまず戻ろう。レーダーを見る限り、もうこの辺に敵はいない」
「ああ…でも…」
「残った欠片は俺とムラサメ部隊が始末しとくからお前達は戻っておけよ。
 いざとなったら一番どうにかできるのはお前だろ?」
「ロアビィ…わかった、ここは頼むぜ」
「お前誰に向かって言ってるんだ?いい餌つけるからしっかりと大物を釣り上げて来いよ」
「てめえ!誰のこと言ってやがる!?」
「あら、俺は誰が餌かは言ってないよ~」
「覚えてやがれこの野郎!」
「そいつは残念でした、俺は女との約束と契約以外のことは3歩歩くと忘れちゃうのよ」
「…クソ!ガロード、シン、戻るぞ!」
「「了解!」」

こうして、言いようのない不安感を刹那的にでも忘れるための軽い言葉にやりとりを終えた3人はひとまずアークエンジェルとクサナギのいる方向へと戻っていった。

「!?」
「ティファ!どうしたんだ!?」

手にしていた医薬品のケースを落としてしまったティファの下に、テクスが駆け寄ってきた。
ガロード達が艦へ戻ろうとしたのと同時に、ティファの脳裏を1つのヴィジョンが奔り抜けていた。
ティファの特殊な能力の1つである予知の力が発動したのである。
そして、次の瞬間、彼女は医務室を飛び出していった。

「お、おい、ティファ、どこに行くんだ?」
「ブリッジに…ジャミルに伝えないと…」

「どう出てくるんだ…?」
「レーダーには反応がありませんが…」
「もうしばらくここで様子を見よう、やはりまだ何かがある気がしてならない」
「了解しました」
「残骸破砕作業は順調に進行中です。ダブルエックス、デスティニー、エアマスターバースト、あと少しで戻ってきます」
「ジャミル!」

ジャミル、サラ、アマギの3人がクサナギのブリッジで今後の行動を検討しているところに、
息を切らせたティファが飛び込んできた。

「どうしたんだティファ!?…まさか…何かを見たのか?」
「はい…」

ジャミルの問にティファはうなずくと、廃棄コロニーがあった方向とは全く逆の、何もない宇宙空間を指差した。

「あの先から…来ます」
「わかった。サラ、ローエングリン用意。トニヤ、アークエンジェルに連絡してこちらの指示したポイントに攻撃を加えさせてくれ。
 それと、万が一に備えてGファルコン射出準備をさせておけ。何が出てくるかわからん」
「了解です。………ローエングリン発射準備完了しました」
「よし、指定ポイントに向けて、ローエングリン発射!」

「て、敵艦より陽電子砲発射されました!」
「なんだと!?」

クサナギとアークエンジェルから放たれたローエングリンは、宇宙空間の何もないように見える所で何かに命中し大きな爆発を起こしていた。

「陽電子砲命中、ミラージュコロイド維持できません!」

そして、ローエングリンが命中して生じた爆煙の中からは、もう1基の廃棄コロニーが姿を現していた。
同時に、付近に1隻のヴェサリウス級戦艦もミラージュコロイドを解いて姿を現す。

「ダブルエックス、デスティニー、エアマスターバースト、急速に接近してきます!」
「残ったMSを出せ!コロニーはもうあるんだ!」

ブリッジにダコスタの指示が響き渡った。
ダコスタの真の狙いは、大々的に廃棄コロニーを落とそうとして目をそちらに向ける一方で、ミラージュコロイドで姿を隠したもう一基のコロニーをオーブに向けて落とそうとするものであった。
この作戦は、バルトフェルドがオペレーションフラワーで降下部隊をミラージュコロイドで隠したこと、かつてパトリック・ザラがジェネシスという巨大構造物をミラージュコロイドを使って隠していたことを参考にしたものである。

「キャプテン、コロニーが姿を現しました!ミラージュコロイドで姿を隠していたようです!」
「急いでGファルコンを射出しろ!」
「了解!」
「聞こえたか、ガロード!」
「バッチリ聞こえてるぜ!」
「シン!ウィッツ!ドッキングまでの時間を稼いでくれ!
 ダブルエックスにもう一発分のサテライトキャノンのエネルギーをチャージさせろ!」
「おう!」
「了解です!」

エアマスターバーストがバスターライフルを連射してヴェサリウス級から発進したMSを叩き落してゆき、デスティニーが撃ち漏らされたザクのコックピットにアロンダイトを突き立てる。
そしてそのままビームの刃の方向に向けて横に斬り抜き、機体を回転させて背後からビームソードを手にして迫りつつあったグフを真っ二つに斬り裂いた。

一方、ガロードはダブルエックスとGファルコンのドッキングを終えて、機体のチェックをしていた。

「すげぇ、本当にエネルギーが一気にチャージできちまったぜ…より、これなら!」

再びダブルエックスの排熱版が展開してダブルエックスの機体が金色に輝き始めた。
そして2門の巨大な砲塔が2基目の廃棄コロニーに向けられる。

引鉄を手にしているガロードは、自分たちのいた世界のことを思い出していた。
地域毎の差はあるものの、大地は焼き尽くされ、人々はMSを駆る無法者に苦しめられ、弱い人間から命を落としていくという正に暴力が支配する世界が彼の生きてきた世界であった。

「なんでてめえらはそんな簡単に多くの人間を殺そうとできるんだよ…
 こんなもんを落としたらどうなるかのわからねえのか!みんなが味わう苦しみがわからねえのか!?このバッキャロォォォォ!」

「ダコスタ様!ダブルエックスがサテライトキャノンを…」
「バカな!MSがあんなもの連射するだと!?回避だ、回避しろ、作戦を立て直す!」
「ま、間に合いません!攻撃範囲が広すぎます!」
「おのれダブルエックス、セイラン、オーブめ…よくも…よくもぉぉ…ラクス様に栄光あれええぇぇぇ………」

ダブルエックスから放たれた巨大な光はダコスタの乗っていたヴェサリウスを軽々と消し去り、その先にある2基目のコロニーも貫いた。

「ガロード…」
「…俺なら大丈夫だ、シン。過ちは繰り返させないって決めたのは俺自身だしな」
「そうか…ならいい」

ガンダムダブルエックスの肩に手をかけたデスティニーガンダムに乗ったシンにガロードは静かにではあるが、力強く答えていた。

かくしてオーブだけでなく地球に迫らんとした危機はガンダムダブルエックスによって辛うじて回避された。
だが、後日、ラクス・クラインの統治するプラントから発表されたのは、このコロニー落としは
正体不明のテロリストによって行なわれた、というものだった。

確かに、真実としては「ザフト」であることをやめたダコスタの手によるものであり、プラントが嘘偽りを発表したわけではないのだが、コロニーがオーブに向けて落とされようとしていたころから、今回の事件がコーディネーターには数多く存在する、ラクス・クライン至上主義者によって引き起こされようとしたことは地球の人間には明らかであった。

そのため、これにより生じた怒りは、ラクス・クラインへの怒りを超えて、コーディネーターへの反発に僅かに、確かに僅かにではあるのだが、姿を変えようとしていた。
そしてユウナは、時計の針を戻さないために、最後の手段に打って出ることを決意した。