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X-Seed◆EDNw4MHoHg氏 第44話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 14:01:01

第44話「嵐が花を吹き飛ばしたか…」

カガリを乗せたトラックの収容を終えたアークエンジェルは、そのままエターナルを追撃すべく港を緊急発進していた。
既にコペルニクスの宙域の外では、にらみ合っていたオーブ軍とラクス軍の戦闘が開始されており、月周辺の宙域では両軍による大規模な戦闘が行なわれ、一進一退の攻防が繰り広げられていた。

アークエンジェルのブリッジでは、銃弾を受けたユウナが応急措置だけを受けて各部隊への指示を出していた。
当然、トダカや護衛の兵士達はそれを止めようとしたのであるが、ユウナ自身が無理を押して指揮を執り続けていたのである。

「ユウナ!」
「おいユウナさん、大丈夫かよ!?」

ブリッジの扉が開いて、シン、ガロード、そして彼らに連れられたカガリが入ってきた。

「どうしたんだいカガリ、ガロード、シンも…」
「どうしたじゃないだろ!お前、撃たれたんだぞ!早く治療を…!」
「…それはできないよ。戦闘は始まっているんだ、責任者の僕が現場を放り投げるわけにはいかないだろ?」
「だからってすごい血が出てるじゃないかよ!このままじゃ死んじゃうぞ!」

カガリの視線の先にはじわじわと赤く染まっていく、ユウナの腹部に巻かれた包帯がある。
しかし、ユウナはカガリの言葉を聞き入れることなく指示を出し続けていた。
現在の戦場は非常に混沌としていて、各部隊は正確な現状認識が難しい中で戦っており、体系的な指示を的確に出すことが不可欠だったからである。
すると、ひと段落したのか、椅子を回転させてユウナはカガリの方を向いて口を開いた。

「カガリ、君に聞きたいことがある」
「えっ?」

今の今まで自分が治療を受けろと言っていたのを軽く聞き流していたユウナが突然真剣な表情を浮かべたことにカガリはいささか戸惑っていた。
だがユウナはさらに続けて言う。

「君が今までラクス・クライン達といて、どのように思ったか聞かせてくれないか?好きなように答えてくれていいから」

カガリは静かにこの1年ほどを振り返ってみた。
アーモリーワン襲撃事件の中で、父の行動を「奇麗事」と罵られたとき、彼女は反論をすることができなかった。
その後、ユニウスセブンを消し去ったガンダムダブルエックスのパイロットであるガロード達に出会い、戦い続けた先にある結末を迎えてしまった世界のことを聞かされ、同時に、ユウナから、国を治める人間がすべきことを教えられた。

父が唱えたオーブの理念はあくまで国とそこに住む人間を守るという目的を達成するための手段にすぎず、自分が敬愛する父が目的を見失い、国を焼き、国民を傷付けることになってしまったことが統治者としてあるまじき行為であることと向かい合うことになった。
父親の否定は、カガリにとって身を引き裂かれるような苦しみであったが、彼女もまた理念を守っていきたかった。

それを実現してくれたのが、ダブルエックスとガロード、いつの間にかどこかに火がついたユウナであり、力は力でしかなく、使う者次第ということを教えてくれたのも彼らであった。
そしてダブルエックスの力を背景としてではあるが、連合との同盟締結の白紙撤回を発表しようとしたとき、彼女の運命は大きく変わることとなった。

フリーダムに乗る弟のキラ・ヤマトに拉致されてからというものの、彼女は今までと大きく異なる世界を目にすることになった。
ラクス・クラインやキラ・ヤマトの意見がほとんど、全くと言っていいほど批判なく通ってゆき、最後には1国を制圧するほどのことすら、身内からとはいえ、無批判に実現される。
自分の言葉は、2言目には洗脳、騙されている、と聞き入れられることはなく、ラクス・クラインの言葉のみが彼女らにとって唯一絶対の歩むべき道であったのだ。
これらは、閣議のたびにユウナやウナト、他の閣僚から批判を受け、反論されてきたカガリにはあまりに異常なものに映っていたのである。

「…何かがおかしいと思った。ラクスの言葉だけが絶対視されてて、話し合いも何もなかった。
 そのラクスも自分の意見を何一つ聞かないから…上手く言えないけどみんなラクス一色みたいだった」

それを聞いたユウナの表情が少し和らいだ。
カガリがまだ正常な感覚を持っていることを聞いて安心できたからである。
洗脳されている可能性も捨て切れなかったが、上手く表現しない言葉は、刷り込まれたものでないことを示していたと言えた。

「カガリ、人はみんな、人それぞれ違う意見を持っているんだ。同じ人間なんて誰一人いないんだよ。
 みんな違う育ち方をして、違う人と触れ合って、それぞれ守りたいもの、欲しいものを持っている。
 同じことを望み、同じことを夢見ているように見えても、その背景やよって立つ考え方はそれぞれ違うんだ。
 だから僕達は色んな意見に耳を傾けなければならない、耳が痛い意見の中にだって、よりよい方策を作り出すために重要な手掛かりがあるかもしれないからね。

「おいユウナ!お前いきなり何を言ってるんだよ!」

「信念を持つことはいいことだけど、実現すべき目的を見失っちゃいけないし、自分と違う考え方があることを忘れちゃ絶対にいけない。
 君が望めば父上も閣僚達にも他のスタッフもきっと様々な手助けをしてくれるし、様々な意見を言ってくるはずだ。
 だからきちんと話し合って、自分と違う意見を聞き入れることができるようになるんだ。
 そうすればきっと君は今よりずっといい政治ができるはずだよ」

「何を改まって言ってるんだ!お前だって私をサポートしてくれるんだろ!
 私にいい政治ができるようにしてくれるなら早く治療を受けろよ!」

カガリの目からは涙が出てきていた。
彼女の脳裏には、父ウズミが自分に国を託したときの記憶が蘇っていたからである。
それを見たユウナは苦しそうな表情を浮かべながらも少し微笑むようにして懐からハンカチを取り出した。

「代表たる者がこんなところで泣いてちゃだめだろ?周りのみんなが心配しちゃうじゃないか…」

そう言ってユウナはカガリの涙をぬぐって、そのハンカチを彼女の鼻と口に押し当てた。

「ユ、ユウナ!何を…」

カガリは言葉を言い終える前にユウナの腕の中に倒れ込んだ。

「ユウナ様、一体何を!?」

トダカが驚きの声を上げた。

「アスハ代表は長期に渡る監禁生活でお倒れになられた。トダカ一佐、アスハ代表を連れてクサナギに避難しろ」
「どういうことですか!?」
「アークエンジェルはこれよりエターナルを討つ。
 これ以上、ラクス・クラインを生かしておいたら、今度こそラクス・クラインがオーブに何をするかわからないし、ナチュラルとコーディネーターの間に再び大きな対立が生まれかねない。奴は結果的には世界中に火種を撒き散らしているからね。
 もう世界では、いつ再び大きな戦いが起こってもおかしくはないところまで来ているんだ。
 今、ここであの女を討たないと、2回も大きな戦争をして疲れきった世界は本当に滅んでしまう。
 だから、今日僕がラクス・クラインを討つ、僕の命に換えても」

「ですが!それに敵にはストライクフリーダム、フリーダム、ジャスティスもいるのですよ!?」
「策はある。だからカガリを支えてやってくれないか?まだ少し手のかかる子だからね」
「ご自分の仕事から逃げないで下さい!貴方にはカガリ様を補佐するという責務があるでしょう!」

トダカにとっては今のユウナはそれなりには信用できる人物であり、今後はカガリをサポートしていくべきだと思っていた。
それ故、ユウナをここで死なすことは適切ではないと考えたのである。

「カガリのサポートは他の人間でもできる。僕が出来ることはそれなりの政治家ならみんな僕以上に上手く出来る。
 しかし、ラクス・クラインという傲慢な思考と独善的価値観に基づいて世界に要らぬ戦いを撒き散らす、言わば無用な争いを生む源を今討つことができるのは僕達だけだ!」

腹部から全身に伝わる痛みのせいで怒鳴りつけてしまったことにふと気付き、自分もまだまだだな、と言うような顔を浮かべてユウナは一呼吸置いてから再び喋りだした。

「それに近く地球に残っていたデュランダル派の政治家主導の下、議会の制圧作戦が行なわれる手筈になっている。
 その時、オーブに、プラントではアイドルだったらしいラクス・クラインを討った人間がいたらカガリの邪魔にもなりかねないだろう?
 オーブを代表するのは『世間的には』ラクス・クラインと親交のあったとされるカガリだけの方が都合がいいんだ。
 ラクス・クラインさえ討てば、クライン派がいくら強力だったとしても世間的には非合法集団にすぎなくなるしね。
 カガリを頼むよ?」

「ユウナ様!………失礼します」

ユウナに敬礼をしてトダカはカガリを抱えてブリッジから出て行った。

ユウナはほっとしたような表情でブリッジの扉が閉まるのを確認すると、アーサーに問いかけた。

「艦長、君ならここからエターナルをどうやって沈める?」

アーサーはエターナル周辺の敵部隊の配置をじっくりと眺めてしばし考え込んだ後、口を開いた。

「ザフト…いえ、ラクス軍はエターナルの周囲を固めるのではなく、広く囲み、我が軍との間に広範囲の壁を作っています。
 おそらくこれはサテライトキャノンで密集形態となった所をまとめて撃たれることを恐れてのことだと思われます。
 だとすれば、ダブルエックスを中心とした部隊を囮にするということが考えられます。
 ですが、ダブルエックスを出したのでは、エターナルが交戦をやめて戦場から一気に離脱するおそれもあります」

「そこまでは僕も考えていた。それに極力サテライトキャノンで敵軍を一掃する、ということは避けたい。
 使い方次第ではプラントの一般市民にすら恐怖を与えて反ラクス派の反発すら買いかねない」

ユウナは変わらず渋い顔をしているが、アーサーは鋭い視線をユウナに向けた。

「アークエンジェルを突撃させます」
「…やっぱりそれしかないか…シン、ガロード、艦の護衛を頼むよ」

「お、おい、どういうことだよユウナさん!」
「そうですよ、トライン副じゃなかった艦長も何考えてんすか!そんなことしたら敵の的ですよ!」

シンとガロードが一斉に食って掛かった。
彼らにはアーサーとユウナの考えている作戦が見えていなかったのである。

「つまりだね…」
「いえ、ここは私が説明します」

腹部に手を当てたままのユウナをアーサーが遮った。

「いいか2人とも。エターナルを囲う防衛部隊の壁自体は厚いものではないし、エターナルを防衛している敵部隊自体の数も決して多くはない。
 だからアークエンジェルでその壁に穴を開けるんだ。敵部隊もサテライトキャノンがこちらにある以上、一度に大量のMS部隊を集めてアークエンジェルに向かってくることはできないはずだ。
 敵にはダブルエックスがどこにいるか分かっていないからな。
 いつ、どこから出てくるかわからないのがMSの恐ろしさだ。
 とすれば必然的に精鋭部隊をアークエンジェルにぶつけてくるはず、それを抑えるのがシン、お前の役目だ。
 当然ストライクフリーダムも出てくるだろうからな。お膳立てとしては十分だろう?頼んだぞ、シン」

「…これで最後にしますよ。みんなのためにも…!お膳立てありがとうございます、艦長」

「そしてガロード、お前はアークエンジェルが敵防衛網を突破し次第、一気にアークエンジェルから突っ込んでエターナルを沈めるんだ。
 まさかいきなりダブルエックスがアークエンジェルから出てくるとは思わないだろうからな」
「でも本当にそんなこと出来んのかよ!?攻めてくるMSが多くなくても艦砲射撃とかは来るだろ!?」

「それなら心配要らないよ、ガロード。そこの合コン大好きなお兄さん達がきっと意地でも無事に運んでくれるさ」
「うえぇぇぇぇ!?」

ユウナが薄ら笑いを浮かべながら、突然の無茶振りのあまりに、一瞬、普段はアーサーに憑いている何かを自分に降臨させてしまったノイマンの方に目を向けた。

「ラクス・クラインを討った暁にはこのアークエンジェルは君達に払い下げてもいいけど?」
「「了解しました!」」

即座にアークエンジェル払い下げという餌に2人が喰いついた。

「大丈夫です…きっと上手く行きます」

勝手に盛り上がるユウナと少しダメな大人2人を余所に、ティファはそう言って表情に不安を隠しきれないガロードの手を握った。

「ティ、ティファ!?それって…未来が見えたってことか?」

少し顔を赤くしたガロードの問いかけにティファは首を横に振った。

「ただそんな気がしただけです…でも…信じています、ガロードは未来も変えてくれるから…」
「…ああ、そうだったよな。未来だって変えられるんだ、見えてないもんくらい…実現してやるぜ!って痛っ!」
「何ちゃっかりストロベリってんだよ!俺達が死ぬ気でアークエンジェルを守ってやるから安心しろ。
 それにお前やレイ、ジャミルさんとの特訓は無駄にはしないさ。キラ・ヤマトは俺が倒してやる」
「へっ!妬いてんじゃねーよ…頼んだぜ、シン」
「お前こそしくじんじゃねーぞ、ラクス・クラインとキラ・ヤマトを倒して戦いを終わらせる。それが俺達がしなくちゃいけないことだからな」

今までは自分でティファが予知した未来を覆してきたガロードとしては、今回自らは大っぴらに動けないため、不安が残っていた。
だが、未来を変えようと、いや未来を切り開こうとしているのはガロードだけではない。
レイの託した遺言にもあったとおり、シンもまた自らの未来という運命を自分と仲間達の力で切り開こうとしていたのである。
このときガロードはシンも未来を切り開こうと戦っているのだということを肌で感じていた。

「シン・アスカ、デスティニーガンダムいきます!」

必要最低限のクルー以外の脱出を終わらせたアークエンジェルからデスティニーガンダムが出撃していく。
既に周辺ではエアマスターバーストやレオパルドデストロイが敵部隊の迎撃を始めており、シンの出撃はやや遅いものとなっていた。

「遅えぞ、シン!」
「す、すいません!」
「まあまあ、そう言うなって。代表さん達といたんだろ、それにどうやらちょうど本命のお越しみたいだよ?」

シンの出撃のタイミングは彼にとっては、ちょうどいいタイミングであったのかもしれない。
なぜなら、シン達の前にはちょうどストライクフリーダム、ジャスティス、フリーダムがエターナルに向かってくるアークエンジェルを討つべく姿を現していたからである。

「結局最初も最後も俺達の前に立ちはだかるのは足つきか…」
「そうだねぇ、でもやめない、その言い方?なんか悪いジンクスありそうだぜ」
「やめろ!本当にザフトには足つきを落とせないってジンクスがあったらどうするんだ!?」
「2人とも迎撃が来ます!なんとしてもエターナルを守りますよ!」
「了解!」
「へいへい了~解♪」

こうして3機は散開して向かってくるデスティニー、エアマスターバースト、レオパルドデストロイと戦闘を開始した。

ロアビィのレオパルドデストロイはディアッカのフリーダムと、ウィッツのエアマスターバーストはイザークのジャスティスとそれぞれ戦闘を開始し、シンのデスティニーは迷わずミーティアを装着したストライクフリーダムへと向かっていった。

「よおディアッカ、随分とカッコいいのに乗ってんじゃないの?」
「ロアビィの旦那、あんたに恨みは……色々あったな、今日こそこの恨みをグレイトに晴らさせてもらうぜ」

レオパルドデストロイから発射されたミサイルがフリーダムに向けて襲い掛かるが、ディアッカは動じずにそれを回避し、回避しきれないミサイルは撃ち落して、クスフィアスをレオパルドデストロイに撃ち込む。
レオパルドデストロイはそれを回避して両腕のツインビームシリンダーをフリーダムに向けるが、フリーダムは危険を察知したのか急速に離脱してレオパルドデストロイから距離を置いた。

「へ~、結構いい動きするねぇ、さすが有名な黒炒飯!」
「ザクとは違うんだぜ、ザクとは!」

「ウィッツ・スー、今日こそは覚悟してもらうぞ!」
「やれるモンならやってみやがれ!」

ジャスティスが両手にビームサーベルを構えて切りかかるのをエアマスターバーストは機体を後方に下がらせて回避し、反撃にバスターライフルをジャスティスに向けて撃ち込むが、それはジャスティスに装備されたビームシールドによって阻まれる。

「その機体でジャスティスには勝てはしない!いい加減に観念しろぉ!」
「ざけんじゃねえ!受けた恩を仇で返すような奴の刃でこの俺が斬れると思ってんじゃねえぞ!」

ウィッツ、ロアビィがイザーク、ディアッカと戦っているころ、
シンはミーティアを装着したストライクフリーダムに苦戦を強いられていた。

デスティニーは高エネルギービーム砲をミーティアに向けて放つがSEEDの力を発動させているキラの乗るストライクフリーダムには命中しない。

「くそ!あんなデカイ図体してなんて機動性だよ!」
「もうやめるんだ!どうして君は憎しみに囚われたまま戦うんだ!?」
「俺はあんたみたいに大切な人を失って憎しみを持たないような人形とは違うんだよ!」
「それはどういうことだ!」
「アスランの奴も相当いけ好かない野郎だったが、あれだけキラキラ言ってたのにその当人に俺を憎んでもらえないってのはさすがに気の毒だぜ!」

シンの心にアスランと衝突を繰り返したときの記憶が蘇る。
シンにとっては対立することばかりで、言っていることも支離滅裂なことばかりだったことの記憶が多かったが、
それでも一応は一緒に戦ってきたことは確かである。
だがアスランがアークエンジェルの中で孤立してまで擁護していたキラ・ヤマトの言動はアスランの言動に見合ったものだとは思えなかった。

「僕だってアスランが死んだのは悲しいさ!でも後ろを振り向いてばかりじゃ仕方ないじゃないか!」

ミーティアから放たれたミサイルの一発がビーム砲に命中して吹き飛ぶが、シンは怯まずに言い返す。

「違うな!あんたはそうやって振り返りたくない過去を見ないようにしてるだけだ!結局、過去から逃げてるだけなんだよ!」
「そんなことはない!」
「だったら俺を憎んでみろ!」
「憎いから殺したって憎しみの連鎖が続くだけじゃないか!」

そう言ってキラはミーティアの高エネルギー収束火線砲を発射した。
体勢が整え終えてないデスティニーガンダムは両腕のビームシールドを展開してそれを防ぐが、あまりのエネルギーに機体を吹き飛ばされる。

「戦場に出て憎まれないとでも思ってんのかあんたは!」
「どうしてそこまでしてラクスに歯向かおうとするんだ!彼女は本当は戦いたくなんてないんだぞ!」

キラはデスティニーガンダムが動きを止めた隙にミーティアをアークエンジェルへと向かわせるが、
デスティニーはアロンダイトを引き抜いてなおもストライクフリーダムを追って行く。

「終わった戦争をまた引き起こしておいて何を言ってやがる!」
「デュランダルを止めなかったら世界が滅んでいたかもしれないんだ!」
「訳わかんねえ理屈で自分を正当化するんじゃねえ!」
「いい加減にしろ!君はラクスの言葉を聞いていなかったのか!」
「あんなに傲慢な奴を見たのは初めてだ!」
「君はラクスの言ってることが正しいってどうしてわからない!?」
「そのためにどれだけ関係ない人を傷付けるつもりだ!ふざっけるなああああああ!!!!」

シンが最も嫌悪するもの、それは自分の都合を関係のない人に押しつけて傷付けることである。
かつてはそれがウズミ・ナラ・アスハの引き起こしたオーブ解放戦であり、そして今はラクス・クラインが、自分のみが正しいと盲信してオーブに攻め込んだり、戦争を拡げていくことであった。
そんなラクス・クラインの傲慢さ、エゴイズムにシンの怒りが爆発し、シンもSEEDの力を発動させた。

「うおおおおお!」

デスティニーは翼を輝かせながら展開してストライクフリーダムへと迫っていく。
そして一方のストライクフリーダムはとうとうアークエンジェルの下へと辿り着こうとしていた。

「ストライクフリーダムを近付けさせるな!イーゲルシュテルン、スレッジハマー、ヘルダートで撃ち落せ!」

アーサーの命令によってアークエンジェルからミサイルが発射されるが、ストライクフリーダムは張り巡らされた弾幕を掻い潜ってアークエンジェルに接近してゆく。ノイマンも舵を切って回避しようとするが、さすがに戦艦よりはミーティアを装着したストライクフリーダムのスピードの方が上である。
そして、ストライクフリーダムが巨大なビームソードを振り上げたときであった。

「させるかぁぁぁ!」

猛スピードで接近してきていたデスティニーがアロンダイトで巨大なビームソードの根元を斬り裂いた。

「くっ!」

しかしキラはパイロットとしては極めて優秀な能力を持っており、バランスを崩しながらもミーティアのミサイルを発射する。
何十発ものミサイルがキラの敵となったアークエンジェルに向かって降り注ごうとするが、それらのミサイルはアークエンジェルの後方から飛んできたビームの雨によって全て撃ち落されてしまった。

「シン、今だ!」

デスティニーガンダムのコックピットに響いてきた聞き覚えのある声にシンはハッとして集中力を取り戻すと、そのままアロンダイトを構えてミーティアに斬りかかった。

「これで…どうだあああ!」

アロンダイトの刃がミーティアの横っ腹に深々と突き刺さり、ミーティアは爆発を起こしてアロンダイト諸共消え去った。
他方でストライクフリーダムは咄嗟にミーティアを切り離してビームシールドを展開したが、その爆発で大きく吹き飛ばされてしまった。

「助かりました、ジャミルさん」

シンはディバイダーのビームでミサイルを撃ち落したGXに乗るジャミルに礼を言う。

「いやいい、気にするな。それよりシン…ストライクフリーダムはまだ健在だ。
 アークエンジェルは私が引受ける…だからお前は過去へのケジメをつけて来い!」
「…わかりました、ここをお願いします」

そう言ってシンはストライクフリーダムが飛んでいった方へ向かっていった。
ジャミルがアークエンジェル防衛のために重要な戦力であるデスティニーを行かせたのには訳がある。
ローレライの海と呼ばれる海域で、新連邦の部隊からかつての同僚ルチル・リリアントを奪還しようとしたとき、彼を助けてくれたのは自分の仲間達であった。
ジャミルにとってシンは短期間ではあるが彼の特訓に付き合った弟子の1人のような存在でもあり、そのケジメは自分の手でつけさせようと思えたのである。

一方でアークエンジェルの前にはエターナルへの最後の壁とならんばかりにミネルバが姿を現していた。

「アンドリュー・バルトフェルド、インパルス出るぞ!」

ミネルバから射出されたMSのパーツが合体してインパルスとなりアークエンジェルへ向かってくる。
インパルスにはGXが迎撃にあたり、アークエンジェルはミネルバをかわそうと船体を動かす。
だがミネルバもザフトの開発した足自慢の機動性に優れた戦艦であり、なかなかアークエンジェルもミネルバをふり切れないでいた。

出血のあまり段々と意識が朦朧としてきたユウナに加え、アーサーもなんとかしてミネルバを抜くべく策を考えているがその間にも両艦の距離は刻一刻と近付いていく。その時、ノイマンが口を開いた。

「艦長、代表代行、しっかりつかまっていてください!」

そう言ってノイマンは舵を思いっきり切り、ミネルバに接近していくアークエンジェルの船体をバレルロールさせてミネルバの頭上を通過させたのである。
そしてアーサーはこの隙を逃さなかった。

「今だ!ダブルエックスを発進させろ!発進と同時にバリアントを艦尾メインスラスターに撃ち込め!」
「よっしゃあ!ダブルエックスいくぜぇ!」

既にボロボロになりつつあるアークエンジェルのカタパルトが開き、そこからダブルエックスがエターナルに向けて一直線に向かっていく。
それと同時にバレルロールしているアークエンジェルから至近距離のミネルバに残りわずかの武装であるバリアントが撃ち込まれ、ミネルバが静かに動きを止めた。

他方でエターナルのブリッジではアークエンジェルからいきなり現れたダブルエックスの存在に大騒ぎになっていた。

「か、艦長!ダブルエックスがアークエンジェルから出現しました!我が艦に接近してきます」
「対空砲火で撃ち落して!」
「艦長!アークエンジェルから我が艦に打電!
「『オーブの青き嵐様と炎のMS乗り様の依頼で地獄への片道切符をお届けします。判子の代わりにお命頂戴、大天使急便』です」
「そんなもの一々読み上げないで!MSはないの!?」
「もう残っていません!ダブルエックス、なおも接近!」
「回避できないの!?」
「無理です!」

ブリッジに響き渡るエターナル艦長のマリュー・ラミアスの怒声を聞き流しながら、ラクス・クラインは拳を握り締め、こみあげる苛立ちにわずかにであるが震えていた。

「どうして私がここまで…」

しかし、ラクスの都合などおかまいなしに、ダブルエックスはエターナルから放たれた対空ミサイルを掻い潜ってブリッジ付近に迫ってきていた。
そしてダブルエックスはハイパービームソードを引き抜き、グリーンに輝く刃を発生させる。

「私はラクス・クライン…私は世界のもの、世界は私のもの…世界のために私は戦っているのにどうして!」

(ラクス・クライン、お前は単なる世間知らずの我侭な小娘に過ぎない。だからお前は僕達に敗れるんだ!)
「行け!ガロードォォォォ!」
アークエンジェルのユウナが最後の力を振り絞って声を上げた。

「これで…終わりだあああぁぁぁ!!!」

ガロードの咆哮とともにダブルエックスの振り下ろしたビームの刃が、エターナルのブリッジを切り裂き、そこにあった全て焼き尽くした。
やがて小さな爆発が起こり始め、それが段々と大きな爆発と変わってゆき、エターナル全体に広がっていった。

「ありがとう、ガロード…父上、僕は先に行ってます、すみません」

エターナルのブリッジが破壊され、爆発が起きたのを確認したユウナは、そのまま静かに、安らかな表情のまま瞼を閉じた。
彼は自分のすべきことはもうすべてし終えたと確信していたのである。

(嵐が花を吹き飛ばしたか…)
一方ジャミルと交戦していたバルトフェルドは心の中で呟くと、通信装置の周波数をあわせ始めた。

「ラクスウゥゥゥゥゥ……!!!!」

他方で、ダブルエックスがいる宙域から少し離れたところにいたキラの叫びが虚しく宇宙に響き渡った。
キラがエターナルの撃沈を確認したのである。

「どうして!どうして君達は!」
「これがあんたのやってきたことの結果だ!キラ・ヤマト!あんただってそうやってみんなの大切な人たちを殺してきたんだ!」
「だからって…だからって!!!」

キラの中に忘れかけていたどす黒い感情が少しずつ膨れ上がってきていた。
そしてストライクフリーダムの端末を操作し始める。

しばらくキラの様子を見ていたシンであったが、キラの動きが止まったのを確認して口を開いた
「決着をつけようぜ、キラ・ヤマト。どっちにしたって俺とあんたは戦うしかないんだ」

シン・アスカとキラ・ヤマト、奪われた側と奪った側から始まった二人の最後の戦いが今始まろうとしていた。