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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第1話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:04:01

光が、音が、全ての物が収まり、辺りを静寂が包む。
気を失ってしまったガロードが意識を再び取り戻したのはその数分後の事だった。
「痛つつ……」
体の節々が長い間油を差していない機械の様にギシギシする感覚が襲ってくる。
次に視界が漸く晴れてくる。目の前のモニターには何も映ってはいなかった。唯真っ黒なビロードに、輝く水銀を一面に塗した様な宇宙空間が広がっているだけである。
徐々に全身の感覚も取り戻してきたガロードはゆっくりとコントローラーを動かす。
しかし、ダブルエックスはぎこちなく右腕が動く程度で、ビームサーベルのある所に手が届くのがやっとだった。
しかも届いたところできちんとビームサーベルが作動するかどうかも疑わしい。
「ここは、一体何処なんだ ? まさか天国……な訳ないよな ? 」
ガロードは僅かに動くスラスターを使って機体をぐるりと360度回してみる。
途中モニター一杯に映る地球や、遠目に何か巨大な構造物は見えたが、フリーデンのメンバーがてこずっていた大量の連邦軍と革命軍のMSは影も形も消えていた。そしてそのメンバー達も。
通信機からも仲間の声は聞こえてこなかった。先程よりは音が小さくなったものの、未だにザーザーと雑音しか聞こえない。聞こえるとしてもフロスト兄弟の声は御免こうむりたかったが。

そこまで考えた時、ガロードの頭にある事が去来する。
「そうだ ! ティファ ! 聞こえてるのか ? 俺の事が分かるのか ? ティファ ! 」
自分以外誰もいないダブルエックスのコクピットで、ガロードはそこにいない守るべき者の名を叫ぶ。しかし何も聞こえて来る事は無かった。
そもそもティファの心が発する声を聞く事が出来るのはティファと同じ様な能力を持った人間しかいないと、ガロードは今までの経験から思っていた。
途端にどっと脱力感がガロードを襲う。
「聞き違いじゃねぇ筈なのに……」
あれは結局の所幻だったのだろうか ?
自分はティファの声を聞き違えるなんて事は無い筈だから。
その時、状況把握の為機体旋回に使っていたスラスターさえも完全に死んでしまった。
自分の位置が不明、仲間の機影も見えない所か、通信すらも出来ない。機体は自分が意識している辺り、さっきのフロスト兄弟とのサテライトキャノンの打ち合いで大破しているのは態々コクピットを出なくても分かった。
スラスターも沈黙し、武装は未だに動かしておらず、また動くかどうか分からないビームサーベル一本だけ。
しかも機体がこんな状態ではまともな戦闘など出来はしない。殆ど丸腰に近かった。
「ダブルエックス……俺はお前の事を信じてる。けど俺はまだ生きてるって分かったからには、まだ死ねねぇんだよな。別にお前の事を見捨てる訳じゃねぇけどよ……」
そこまで呟いてガロードはコクピットハッチを開ける。
ノーマルスーツを着ていたので宇宙空間に出ても問題は無い。
が、外に出たガロードはやっぱりと言う表情で寂しげな目を自身の愛機に送る。
ツインサテライトキャノンの砲門は途中から千切れた様になっていたし、マイクロウェーブ受信パネルも半分以上が失われていた。両手は辛うじて残っているものの、右足が膝の辺りから無い。
何より機体全体の傷と焦げ跡が悲愴感を煽っていた。
「これじゃあなあ……如何すればいいんだか。」
ヘルメットの中ではあと小さい溜め息を吐いた。
連邦軍と革命軍の戦いがどうなったかも分からないのに、途方に暮れるしかないなど。

その時だった。
「ガロード、聞こえる ? ガロード。」
今度ははっきりと聞こえてきた。間違いない。この声はティファのものだ。
「ティファ ! 何処にいるんだ ?! 」
ガロードの心に染み渡る様なティファの声は更に続いた。
「ガロードの目の前、目の前にあるコロニーにいます。」
「目の前にあるコロニー……あれか ! 」
ガロードがヘルメット越しに目を凝らすとそこにはクラウド9とよく似たコロニーが確かにある。但し、その当のクラウド9とは若干構造と色合いが違っていた。
そこに行けばティファに会える。いや、ティファだけじゃない。他のフリーデンメンバーにも会えるかもしれない。ガロードは俄然やる気が出てきた。
「よおしっ ! 今行くからな。待っててくれよ、ティファ ! 」
「有り難う、ガロード。私も……また会いたい。」
しっかとコロニーを見据えた後、コクピットに戻ろうとするガロードは非常に痛い現実が襲われた。
こんなボロボロのダブルエックスでどうあのコロニーまで行けるのか。バーニアもスラスターも使えないというのに。
ガロードはMSのメンテナンスをキッドからある程度教わっていたが、こうまで大破し、また修理用の材料も無いのでは本当にどうしようもなかった。
ジャンク屋が周辺を通れば話はまた別だろうが、そんな都合の良い事などこんな広大な宇宙空間で起こりうる訳が無い。

と、その時、ダブルエックスの通信機にノイズ混じりに声が聞こえてきた。
「そこのMSパイロット、そちらの機体は軍事教練用エリアに侵入している。名前と所属隊を名乗れ ! 」
コクピットに入ろうとしていたガロードは辺りを2~3回振り向くが何も見えない。
通信機から通信が入るという事は、ある程度の近さまで自分に通信を入れた機体が近づいているという事だがなかなか相手の姿は見えてこない。
その答えは程無くガロードの頭上から現れた。
再び通信機から声が聞こえて来る。
「聞こえないのか ?! そちらの名前と所属隊を名乗れ ! 返答の無い場合当機を拿捕する ! 」
ガロードが上を見ると、一機のMSが迫りつつあった。
形状はジェニスにある程度似ているが、機体の色はジェニスより明るい緑をしている。
背面には何やら大きいオレンジ色のバックパックのような物を積んでいた。
一見してみれば作業用のMSにも見えるが、それはガロードの目の前で確かに宇宙空間を航行している。
それを見てガロードはふっと笑った。
神様を信じたくなったのはこれで二度目だなと自分でも思えてくる。
「へへっ、ビンゴってか ? 」
そう呟いている間にも相手の機体はこちらに迫ってくる。
やがてその距離は5メートルと離れていない所まで近づいていた。