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X-seed◆mGmRyCfjPw氏 第27話

Last-modified: 2008-01-21 (月) 22:02:48

「こちらガロード ! アークエンジェル応答してくれッ !! くそっ、さっきからうんともすんともいわねえ ! 通信状況が酷すぎる !! 」
『Nジャマーの影響でしょうね……でも大丈夫です。こちらの事は断片的ながらあちらに伝わっているようです。』
通信を入れ続けるも上手くいかない様子のガロードをカリスが宥める。
ザフトが開発し、地球各地に把握しきれないほど落とされたNジャマーことニュートロンジャマーは全ての核分裂を抑制するものであり、
その影響下では核分裂は抑制させられる。そのために核ミサイルをはじめとするかつての最終兵器であった核兵器を始めとする核エンジン、そして原子力発電などは使用不可能となった。
更に電波も阻害するために、影響下では電波を利用した長距離通信や携帯電話は使用不可能となり、レーダーも撹乱される。
自然の中にいる時や戦闘中のモビルスーツとの通信も困難になるケースが多く、長距離通信手段としてレーザー通信が使用されている。
しかし今はそれを一からガロードに詳しく説明している時間は無い。
やがてアークエンジェルが有視界範囲に入った時、彼にとって待ちに待った返事が相手方から返って来た。
『こちらアークエンジェ……マリュー・ラ……ス !! それに乗っ……るのは本当にガロード……のね ?!! 』
それは何度か話した事のあるラミアス艦長の声。
ガロードの声が一気に明るくなる。
「おっ、艦長さんか ?! おーし、本格的に繋がったみてえだな。そうだよ。こっちの黒いMSに乗ってるのは炎のMS乗り、ガロード・ラン様だぜ。
んで、この機体を今持ってくれてんのは俺の頼もしい仲間だ。」
『カリス・ノーティラスです。アークエンジェルの皆さん、お初にお目にかかります。ザフトにいましたがガロードの言った通り僕らは仲間です。
色々とお話したい事は多々あるのですが、後ろからの追手の事もあります。先ずは着艦させてもらえませんでしょうか ? 』
少しの間だけ通信機が静かになる。
ブリッツにガロードが乗っている事は確認出来たものの、詳細が分からないカリスに関しては慎重が要されるといったところだろうか。
調整したモニターの別枠を見ると、追撃隊との差が段々詰まりつつあるのが分かる。
かなり長く待たされたガロードは少し声を荒げた調子でアークエンジェルに再び通信を入れる。
「カリスは味方だ !! 着艦許可だけでも早く下ろさせてくれ !! でねえとハッチに俺が突っ込んででも…… !! 」
『お、落ち着きなさい !! ……分かりました。着艦を許可します !! 』
「よしっ ! サンキュー、艦長さん !! 」
とても穏やかでない発言を抑えつつマリューは着艦の許可を出した。
やがてアークエンジェルの左側のハッチが彼らを受け入れるべくゆっくりと開いていき、ヴェルティゴはそこに一直線に向かっていく。
ものの五分としない内に二機は吸い込まれる様にハッチの中に突っ込んでいった。
デッキに着いた瞬間の下から突き上げる衝撃と見慣れた整備班の面々はガロードに帰ってきたという感情を起こさせる。

ガロードはブリッツのコクピット内で一息を吐く。
またしても成り行きとは言えXナンバーの一機の奪還をする事となった。
格納庫にいる皆はその事実に気づき、イージスや艦隊合流前の一戦で勝利した時の様に喜びたい雰囲気の様だったが、今は状況が状況なのでそんな悠長な事は言っていられない。
急いでハッチを開けると、下からいつも世話になっているマードック曹長が両手をメガホンの様にしてガロードに声をかけてきた。
「良くやったな、坊主 !! だけどお祝いは目の前の敵さん追っ払ってからになりそうだ !! 機体の応急処置が終わったら直ぐ出撃できるか ?! 」
「機体は別段何ともねえんだけどよ、OSがコーディネーター用だからナチュラル用の調整が必要なんだ !
自力で何とかしてえけどパソコンとかそういうのまださっぱりだから、キラが一緒にいたらスムーズにいくかもしれねえ !! 」
そうガロードが答えると、マードックは少し渋い顔になる。
「悪ぃがあっちの坊主もこれから直ぐにストライクで出撃しなきゃいけねえ ! けど安心しろ ! ウチんとこの技術班や工作班だってそんなに柔じゃねえさ ! 協力すればある程度は何とかなる筈だ !! 」
「オッケー、わかった !! それから……」
ガロードはちらと後ろの方を見やる。
先程は毅然とした態度でアークエンジェルのブリッジに通信を入れていたが、この状況でカリスはザフトの黒服を着ているのを気にしているのか何の反応もよこしてこない。
不審がっているスタッフを相手にガロードは咄嗟のフォローを入れる。
「こっちの機体に乗っているのはいろいろあってザフトにいた俺の仲間だ。名前はカリス・ノーティラス。」
するとすっとヴェルティゴのコクピットハッチが開く。
全員に姿が見える様に外を出たカリスは格納庫全体に響く様な大きく、そして努めて明るい雰囲気の声で簡単な自分の状況説明を始める。
「皆さん ! 僕は今ザフトの制服を着ています。ですが、ガロードの仲間です !! そしてたった今ジブラルタル基地を脱出し、彼と共にここまで来ました !! もし僕がお役に立てるのなら出させて下さい !! 」
突然の口上に周りの者達は一瞬動きを止める。
だがそこにもう一つガロードにとって聞き慣れた声が響き渡る。
「それでいいのか ? 君は。」
ふとガロード、カリス二人の視線が奥の方に向けられる。
そこには今から一つしかないスカイグラスパーに乗って出撃に向かうといった様子のムウが、カリスの方に真剣な眼差しを向けていた。
ムウは正規の連合軍軍人、そしてカリスは仮にもザフトでは高位の役職の人間が袖を通す黒服を纏っている事から、ガロードはムウが何を言おうとしているのか直感的に気づく。
「外の様子を見れば分かるが俺達は今からザフトと戦闘をするわけだ。今さっきまでジブラルタルで色々な人間に指図出来るほどの権利を持っていた君が、
直ぐに仲間を討つ覚悟がこの戦闘の中で出来るのか俺としては少し厳しい。幾ら坊主の仲間だと言われてもな。
……俺もあまり疑り深い性格だと思われるのは心外だし、来ている制服にとやかく注文をつけるつもりは無いが……本当に良いのか ? 」
カリスはコーディネーターではない。
今のところはガロード、ティファ、テクスしか知らないが、人工ニュータイプであるといった所を除けば彼もナチュラルだから、
コーディネーター達に対して同胞という意識は割合希薄と言った方が正しいかもしれない。
とはいえ、彼はザフトに入って少なからずともある程度の恩恵は受けた。
更に今アークエンジェルを襲おうとしているジブラルタルからの追撃隊にはカリスが昨日今日談笑したり寝食を共にしたりした人間がいるかもしれない。
ここで前線に出て行ってその時になってから迷いや躊躇いが出るようであれば安心してその場を任せるなんて事は出来ないし、勿論自分の背後を守らせるわけにもいかない。

しばしの沈黙の後、カリスは口を開いた。
「僕やガロード達は自らの意志でここに来たわけではありません。ですから残りの仲間を見つけた後に全員揃って協力して戻る必要があります。
一人として欠けてはならないですし、こんな世界で敵味方に別れて戦争を続けるなんて愚の骨頂です。
……もしそこまでお疑いなのでしたら、出撃後に僕が妙な動きをした時には即座に撃っても構いません ! 」
その言葉にガロードはギョッとして振り向く。
しかし、カリスの表情は穏やかなものそのもので、言葉にも一片の飾り気は見られなかった。
寧ろそれは心の中の真摯な意見であった。
それを聞いたムウの顔からふっと笑みが漏れる。
「そこまで言ったんならお前さんを信用しよう。但しその代わり、こちらの陣営の人間として戦闘も含めてしゃかりき働いてもらうぜ。それとこれから先の事はもう誰のせいにもできないからな。」
「そのつもりです。信用してくれて有り難う御座います。」
言い終えたカリスの口からも軽く笑みが零れる。
しかし、安心する事は出来なかった。
くぐもった音と強烈な振動が艦全体に響き渡ったからである。
遂に敵方からの砲撃が始まったのだ。
「ともかく艦長達に詳しい話を通すのは戦闘が終わってからだ。相手の数が数だが弱気な事は言ってられねえぞ。ブリッジ ! どうなってんだ ?! 」
ムウは近くにあった通信用パネルまで行き、ブリッジに通信を入れる。
画面には口をこれ以上は無いほど固く真一文字に結んだマリューが映った。
それから神妙な面持ちのまま現状報告をする。
『敵が本艦を捕捉し砲撃を開始しました。出撃準備が整い次第直ちに発進して下さい。……それと、ガロード君と共に来たというあのカリスと名乗る少年については ? 』
「こっちと共闘するとは言ってるぜ。自分の後ろに銃突きつけた状態のままでも良いって覚悟持ったままな。
まあ、あの坊主の知り合いだって言うし、こんな状況だから俺としては信用してやらんでもないが……どうする ? 」
問いかけられたマリューはしばしの間思案にふける。
すると下のCICからナタルの厳しい声が横槍を入れる様に割って入ってきた。
『艦長。いかにこちらに与する意志と覚悟があったとしても、この状況下では信用に欠けます ! やはり一度艦内で勾留した状態にした方が良いかと。』
アークエンジェルの近くでは引っ切り無しに砲撃が続けられている。
マリューの考えとしてはこのまま沈むわけにはいかないというのなら藁にもすがる気持ちでこのカリスという少年の助けを借りたかった。
例えそれが現状にとって焼け石に水程度の事であったとしても。
だが幾ら傭兵にしたガロード達の仲間とはいえ、そして信用が無いなら背中に銃を突きつけたまま戦闘に臨んでもいいとはいえ、元を正せば彼は敵軍の重要ポストにいた人間だ。
早々簡単に信用しても良いものだろうか ?
『敵艦尚も接近 ! 』
ミリアリアの声がその音色も手伝って、自分に素早い処断を求めるベルの様に聞こえてならない。
『艦長 ! 急がなければこちらがやられます ! 』
ナタルは一時勾留を進言しているが、ここで墜とされる様な事があっては勾留も何もあったものではない。
迷った末にマリューは一つの決断を下した。

『ストライク、スカイグラスパー発進用意。ブリッツは調整が済み次第発進して下さい。カリス少年の乗った機体については先に述べた三機と同様に処置します。
但し三機の迎撃照準の一部は常に彼に合わせておくように。』
『艦長 ! 』
マリューの判断にナタルは驚きの色を隠せない。
軍門の家で生まれ育った彼女の常識に照らし合わせてみれば、非常識も甚だしい事この上ない事なのだから。
だが近くからブリッジとのやり取りを聞いていたガロードは、そんな空気をあまり意に介さず明るい調子の返事をする。
「おっしゃ、そうこなくちゃあ ! あ……急いでるトコ悪いんだけど、出撃前にキラを少しだけ貸してくれねえか ?
機体はあんまし損傷はねえんだけどよ、こちとらOSの事はそれなりのプロがいねえと殆どさっぱりだし、ザフト製のMSしか動かした事ねえから。な、いいだろ ? 」
『許可します。だけどなるべく急いで ! 敵の接近している距離から判断すればもうそんなに時間的余裕は無いわ ! いいわね ? 』
「りょーかいっ !! 」
ガロードはそう言ってブリッジとの通信を切る。
その時先程より一際大きい振動が艦を揺さぶった。
本当に残された時間は少なさそうである。
直後、格納庫にパイロットスーツに着替えたキラが転がり込む様に入ってきた。
「坊主 ! もう一人の坊主……ガロードが帰ってきたぞ ! 」
マードックの威勢の良い胴間声がキラの耳に入る。
そしてキラは軽く頭を殴られたような衝撃に襲われた。
艦の中にブリッツがある。何故ブリッツがあるんだ ?
確かにあれは元々連合の物だが、あのヘリオポリス襲撃の時にザフト側に奪われ更に今までにも何回か対峙してきた相手だ。
しかもその近くには低軌道会戦の時MIAになったものだと聞かされ続けていたガロードがいる。
生きていた事は純粋に嬉しかったが一体どういう事なのだろう ?
ブリッツのコクピットにはあのティファもいる。
更にそのブリッツの後ろにある白い機体が謎を大きくした。
流線型が特徴的なフォルムのその機体は数日前にとりあえず目を通しておけと言われた連合、ザフト両軍の機体のどれにも一致しなかった。
決定的だったのはそれのコクピットの辺りに見慣れぬ服を着た少年がいる事。
いや、見慣れていなくても彼が一体どういう存在なのかは腕の辺りにあるザフトのマークが雄弁に語っていた。
ザフトの人間が何故この連合の艦にいるのだろうか ? 事情を知らないキラには正に全てが混沌としていた。
そこにキラの姿を確認したガロードが声をかけてくる。
「キラ ! 」
ガロードにとってキラの顔はそんなに長く離れていた訳でもないのに、何故か久しぶりに見るように感じられる。
敵の陣営にいたからだろうか。
やがてキラの目の前に来たガロードは親指をピッと上げて微笑み言う。
「戻ってきたぜ。高くついた寄り道からな。」
キラはそれを聞き一先ず安心する。
どうやら彼自身が何か大きな怪我を負っていたとかそういった事は無かったからだ。
「おかえり。」
キラは笑顔で答えた。
そして、それを聞いたガロードは話を続ける。
「後ろの白いやつに乗ってるのは俺の仲間で名前はカリスっていうんだ。訳あってザフトにいたけど今は俺達の仲間だ。安心してくれ。
それからあのブリッツは俺とティファが捕まってたザフトの基地から逃げる時に取り返してきたんだけどもよ、OSが良くわからねえんだよ。
キラ……これから出撃で時間ねえとは思うけど、出来る範囲で良い ! OS変えるの手伝ってくれねえかな ?! 」
「分かった !! 」
キラは直ぐにガロードの申し出を了承した。
残り少ない時間でどれまで出来るかは分からないが……
それにしても……今まで自分達を執拗に追いかけて攻撃してきたブリッツのOSの調整をやる事になるとは。
心に何がしかむず痒い物を感じたキラだった。