Top > X-seed_Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw氏_第28話
HTML convert time to 0.006 sec.


X-seed_Exceed4000 ◆mGmRyCfjPw氏_第28話

Last-modified: 2008-01-21 (月) 21:56:18

機動新世紀ガンダムXSEED 第二十八話「狼退治とキメますか !! 」

 

「ムウ・ラ・フラガ、スカイグラスパー、発進する!」
「キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」
アークエンジェルのカタパルトから先にストライクとスカイグラスパーが発進する。
今回スカイグラスパーはエールパックを装備していた。
ビームライフルとサーベルという組み合わせがマードックを渋い顔にさせたが、これは歴戦を潜り抜けたムウのアイディアによる物だった。
地球では宇宙と違って当然の事ながら重力があるために、機動性で見るならば重い武装は極力避けなくてはならない。
おまけにここは砂漠に程近い場所である。
大気中における熱対流によるビーム兵器の減衰率がどれほどになるものか、それが一体どういう状態になるのかまだよくは分からない。
もし宇宙と同じ様にランチャーパックを装備していればそれらの問題にブチ当たるだけではなく、エネルギー消費問題ももれなく付いてくる。
何の考えも無しにアグニを放てば直ぐにフェイズシフトダウンを迎える事になる。
キラは最初のストライクの戦闘に於いて戦闘中にOSの書き換えを行ったと言うが、
この状況……ほぼ十機を一人で相手にしなくてはならない中でビーム兵器の減衰率計算が出来るかどうかなど本人に訊いたって怪しいものである。
またソードパックにすれば別の問題が浮上してくる。
近接戦闘に特化されたソードストライカーで出撃すれば、当然対MS戦闘も近接戦になる。
という事はそれだけ敵に距離的リーチを与えるという事になる。
捌き切れない敵が母艦であるアークエンジェルを狙い始めたら、蜂の巣になる事は免れない。
加えてガロードが取り戻したブリッツはそれこそ近接戦闘用の機体。
位置的なバランスが崩れてしまう事になる。
エールはその点中距離戦闘はビームライフルで行い、それを逃れてきた敵はサーベルで相手をし、短期戦で決着をつければ遜色は無い。
唯一の問題点、三つのパックの中で最重量である事に関しても四基のバーニアの働きはお釣りが帰ってくるほどにカバーしている。

 

それから遅れる事二分。
「ガロード・ラン、ブリッツ、出るぜっ!」
アークエンジェルのカタパルトから漆黒の機体、ブリッツが発進する。
キラがナチュラル用に調整した事もあってかガロードは直ぐに操縦の感覚を掴んでいた。
しかしブリッツには不安要素が幾つもある。
単機で敵陣に突っ込む様に作られている為に、中距離、或いは遠距離戦用の兵器が搭載されていない事だった。
近接戦と中距離戦にストライクが専念するだけに遠距離用兵器は必要だったが無い物強請りをしたところでしょうがない。
搭載されているレーザーライフルとてストライクのビームライフルと比べれば威力は格段に落ちるし、効果が何処まで効くかそれも分からない。
またブリッツの兵器はピアサーロック グレイプニールを除いて全てレーザーライフルもランサーダートも右に存在している。
頭部にはストライクにも付いているイーゲルシュテルンすら付いていない。
つまり右腕を破壊されればグレイプニールで奮戦するしかないのだ。
そのグレイプニールすらも戦闘慣れしたガロードにとって、使いどころって一体どういうところなんだと思わせる物であるが。
またランサーダートとて三発分しかないので使い所を見極めなければ全部スカで終わってしまう。
またブリッツを魅力的な機体たらしめているミラージュコロイドは熱対流の関係で使えないし、
ストライクの様なバーニアがあってもそこまで高くは飛べないので会敵方法は敵陣までえっちらおっちら走っていかなくてはならない。
地上戦では不自由する事この上ない。
詳細を聞いた時、ガロードは一瞬Xナンバーの機体でも貧乏籤をひいたかなとさえ思ってしまった。
しかし今は戦力の一つでも惜しい所である。出ない訳にはいかなかった。

 

そしてブリッツの出撃とほぼ同時にカリスも発進する。
「カリス・ノーティラス、ヴェルティゴ、発進します!」
ガロード達を救った純白の機体が猛烈なスピードでストライクとほぼ同じ位置に躍り出る。
内蔵ビームライフルとビームサーベルがあるだけにスペックや戦闘方法としてはストライクと同じだが驚異的な武装が一線を画す物となっている。
全方位攻撃とも言われている飽和攻撃を可能とする遠隔誘導端末、ビット。
A.Wにいた時、自身の出身地フォートセバーンでガロードと対峙した時全基打ち落とされてはいたが、第八次宇宙戦争の最終決戦時に修理自体は出来ていた。
死角無しともいえるこの兵器ならこの戦況を覆すどころか戦闘自体も勝利に導く事も容易い物かもしれない。
しかし今のカリスはそれを十分に分かっていたとはいってもビットを使うことに対し相当の自制心をかけていた。
今日はあの症状……シナップス・シンドロームが襲ってくる日ではない。
原因はこの世界のMSを詳細に調べていく仮定で分かった二つの事だった。
一つは材質が全く違う事。
ヴェルティゴの機体を構成しているのはルナ・チタニュウムであったが、この世界ではルナ・チタニュウムは大量生産出来ないばかりか、それ以前に生成する事も出来ない。
A.Wの工業概念に照らし合わせればもっと重くそして脆い金属が使われているのだ。
またビットは小さい故に機体より破損率が高くなる。
どちらかの陣営において微細工学に詳しい人間が手にしたら間違い無くこの世界のパワーバランスは崩れる。
物量で勝る連合が手にしたら尚更不味いだろう。
もう一つはビット攻撃自体がこの世界に存在しない事。
自身が人工的に処置を程された人工ニュータイプだと言う事もビット攻撃が可能になる一つの要因だったがその構造面でも知られてはならない。
しかしずっと自重はしていたが、ガロード達と共に基地から逃れる時に遂にそのシステムを解除した。
既に後戻りは出来ない所まで来たのだ。

 
 

今アークエンジェルの周囲はそこそこ小高い丘に囲まれている。
元々宇宙での運用を目指していた艦だけに飛ぶにしてもそこまで高い高度は取れない。
降りた場所にしても地形から言えば高度な部類に入るため逃げるにしても平地沿いをずっと進むしかないのだ。
ガロードが発進後直ぐに地面に降り相手を迎える為の位置につくと、通信機から緊張感漂うムウの声が入る。
『相手さんは二手に分かれたままでこっちとやりあう可能性が高い !
発進前に確認したように艦の前方はキラ、後方をザフトの坊主、ガロードは艦自体の防衛に回ってくれ。俺はキラにプレゼント配達し終わったら一旦母艦に戻ってもう一度別のモン付け直して来る ! 』
「OK ! ……9対1だろうとなんだろうとこんな所で負けるわけにはいかねえんだ ! ティファも……みんなも……一人も死なせはしない ! やってやろうじゃねえか !! 」
気合を入れるためにそう叫ぶと操縦桿を握る手に自然と力が入る。
そうでもしなければ、こんな状況を切り抜けなければという感情も沸いて来ないからだった。
やがてそれは丘の向こうにある空から地も震えるような轟音を上げながらやって来る。
艦の後方を向いていた為にモニターに映ったのはジブラルタルからの追撃隊だったが、発進前にあった報告どおり半端な数ではない。
先頭にはテールローターの無い戦闘ヘリと小型VTOL戦闘機が密集陣形で迎撃態勢の用意にはいっているらしく、
その上方にいる6枚の翼を広げたディンは早くも重突撃機銃を携えこちらに狙いを構えている。
またサブフライトシステムに乗ったジンは全機、以前ガロードが改造した練習用ジンと同じ武装、つまりD装備をしてヘリや戦闘機のやや後方からこちらに向かっていた。
最初に挨拶代わりとばかりに戦闘ヘリが対地機関砲、そして戦闘機が25mm機関銃を次々に撃ってくる。
大量の弾がアークエンジェルの周りに着弾し粉塵が舞い上がるもののガロードはそれを何とか回避しながら自分に一番近い位置にいた戦闘機の一つにレーザーライフルの狙いを定め撃った。
レーザー波が到達し狙いの一機が爆散したのは良かったものの、ヘリと戦闘機は密集陣形を解除し、ミサイルまで使いアークエンジェルをあらゆる方向から狙い撃ちし始める。
飛来するミサイルの幾つかは75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルンをフルに使って打ち落とすが捌ききれずに着弾するものも少なくは無い。
なるべくそれを防ぐ為、ストライクがバーニアを吹かしながらビームライフルを駆使しヘリと戦闘機を打ち落とすが、前からもMSが接近している状況の中で気を配れる時間はほとほと少なかった。
またヘリと戦闘機が散開したのと同時にその上方にいたディン、そして前にいる味方などがいなくなった為に迫り出したジンが同時に重突撃機銃を斉射しだした。
大量且つ厚い弾幕にガロードは必死で機体を操って回避しながらレーザーライフルを撃つ。
しかし敵とてロックされている事ぐらい頭に入れて戦闘に臨んでいるのだから、ボーッとしながらその一撃を甘んじて受けるわけが無い。
とにかく狙いをつけてレーザーライフルを撃つものの、バーニアがあっても高くは飛べないという事と中距離戦用の兵器が乏しい事によるリーチの差はあまりに大きかった。
ヘリと戦闘機は相変わらずアークエンジェルにとりついて弾丸の雨を降らせていた。

 

だがそれは炎を上げながら落下する鉄塊と爆発音と共に徐々に止んでいった。
カリスとムウである。
彼の乗ったヴェルティゴは地上辺りからものの数秒で敵機のいる空域に上昇し、直ぐに一機のヘリにビームライフルの狙いを定め正確な一撃でしとめる。
その背後から高度を落としたもう一機のヘリが機関砲を構え接近するが、ランチャーパックを抱えたスカイグラスパーが120mm対艦バルカン砲を横っ面から打ち込みそれを撃墜した。
その時唐突にガロードにカリスから通信が入る。

 

『ガロード、無事ですか ?! 』
「ああ、今のところはなんとかな。この機体じゃ空は飛べねえし、レーザーライフルや槍以外は接近戦に持ち込むしか他ねえんだ。そっちは大丈夫か ?! 」
『正直な事を言うと、さっきから操縦桿を握る手の震えが止まらないんです。
僕も覚悟を決めて発進しましたがやはり慣れるまでに時間はかかりそうですね……あんな啖呵をきったのに情けないものですね……』

 

あまり心配する事はないと言うような調子の声だったが、事情が事情だけにやはり本人にはかなりの負担なのだろう。
覚悟するのと実際にそれを行動に起こすというのは全くの別物なのだから。

 

『ガロード。ヘリや戦闘機、ディンに関しては僕が引き受けます。君は地上に降ちた機体やキラ君の対処に回ってもらえますか ? 』
「分かった ! ……カリス !! 」
『はい ?! 』
「……有り難な。出来るだけ無理するんじゃねえぞ。」
『有り難う御座います。』

 

礼の言葉を言うが速いかカリスは自分の前に躍り出たディンに向けてビームライフルのトリガーを引いていた。
ディンは右腕と右翼を二枚破壊され地上に墜落するもその攻撃は止む事は無い。
更にジンもミサイルや無反動砲を乱れ撃ちしてくる。
しかしそれに負けじとスカイグラスパーが素早い動きを見せ、敵機が密集している場所に向け再度バルカン砲を打ち込みジンを二機空から引き摺り下ろした。

 

通信機からは相変わらず飄々とした感じのムウの声が聞こえてくる。

 

『俺も忘れてもらっちゃあ困るぜ !! 』

 

空の足がかりを失ったジンは、煙をあげるサブフライトシステムのグゥルから飛び降りブリッツに向け素早く重突撃機銃を構えて迫る。
間は自分に近い機体は距離にして約200mで遠い方は約300m程。
間合いとしては申し分無い。
ガロードはランサーダートを構えジンに狙いを構え直ぐに撃つ。
銀色の弾丸と化したそれはジンの胸部のやや上を串刺しにした。
ジンは完全にバランスを失い後ろに向かって倒れ、猛烈な火花を散らして爆散する。
それを確認したガロードはバーニアを目一杯に吹かし、もう一機のジンの方に急速接近する。
その過程においてガロードはトリケロスからビームサーベルを繰り出し爆煙の中に突っ込んだ。
一瞬モニターが真っ黒になり次に光を感じた瞬間、目の前にはやはりこちらに向かってきたジンが視界一杯に入る。
ジンは重突撃機銃をブリッツにありったけ撃ち込み、弾切れを起こしたと気づくやそれを捨て、今度は重斬刀を構えて切りこみにかかる。
しかし、フェイズシフト装甲の為に重斬刀は一つの傷も与える事は出来ない。
お返しとばかりにブリッツはすれ違い様にビームサーベルでジンのコクピットの辺りから真っ二つに切る。
分かたれたジンの両半身は空中で四散し、煙が晴れた頃にはただの鉄屑に変貌していた。

 

「こちとら2対1の戦闘はお手のもの !! 簡単にやられはしねえぜっ !! 」

 

爆発を背にしたブリッツの中でガロードは大きく叫ぶ。
だが、気を抜く事も格好を付けている場合でもなかった。
後方、アークエンジェルにとって前方からまたも弾丸の嵐が吹き付けてくる。
前方の防衛には確かキラが当たっているはず。
すぐさまガロードがその方向を向くと、様々な種類のMSとビームサーベルを使って接近戦をしつつ、近づいてくる敵にはビームライフルで応戦するキラの姿が映った。
だが素人目に見たって相手に出来ない数の敵を相手に奮戦している。
実体弾のダメージを受けないフェイズシフト装甲とはいえ、喰らっている数からしてもあと10分もしない内にシステムが落ちてしまうだろう。
迫り来るのは後方から襲ってきたのと同型の攻撃用ヘリと戦闘機、戦車の形をした鈍重そうなMS、黄土色に染められたジン、そして……

 

「い、犬ゥ ?? ちげーや、狼かぁ ? 何だ、あれ ?! 」

 

それはキャタピラを駆使して荒野を縦横無尽に動き回る野生の獣と言った方がいいだろう。
二足歩行ではなく四足歩行をするそれは見慣れていない事もあってか非常に奇異にガロードの目に映る。
が、その敏捷さは十分驚異になり得た。
動体視力ならある程度はあるといっていいガロードでも目でずっと追っていくのはきつかったからだ。
と、アークエンジェルから一本の通信が入る。マリューからのものだった。

 

「艦長さんか ?! どうした ?! 」
『ガロード君聞こえる ?!! それはザフト軍の地上作戦用MS バクゥよ !! 』
「バクゥっていうのか……」
『数も八機いるわ。キラ君と協力して迎撃して !! 』

 

しかしその声すらどこか遠くから聞こえているのではないかと錯覚してしまう。
八機もいるそれはブリッツを確認した後、ストライクを残りの連中に任せておき、一気にこちらに向かってやってくる。
その時ふいにガロードの頭の中にティファと始めて会った夜、彼女の導きに従ってGXを手にした時の事がフラッシュバックする。
あの時も……そう。GXの情報を聞きつけたとても一人では相手に出来ないMSを相手に必死に戦った。
撃墜スコアだって今この場にいるMSと同数くらいいっていてもおかしくなかったかもしれない。
もうこれまでか、と思った時に窮地から脱出出来たのはティファが力を使って発射したサテライトキャノンのお陰でもあった。
しかし、今は違う。
自分の乗っている機体にそんな物はついていない。
近接戦に優れたこの機体を上手く活用し、キラやムウ、そしてカリスらと共に連係しながら地道に倒していくしか他無い。
後ろに目をやるとムウは新たに一機のディンを撃墜し、カリスは素早い動きで戦闘機のコクピットを撃ち抜く。
ガロードは心の底に熱い物を感じ、直後小刻みに機体を動かしつつバクゥに向かっていった。

 

「へっ !! いっちょ、狼退治とキメますか !! 」

 
 
 

【前】 【戻】 【次】