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Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第14話『敢えて汚名を』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:32:46

晴天の空はまるで二人の新しい門出を祝っているかのようであり、
街頭では、新郎と新婦を乗せた黒塗りの車の中を一目見ようと、
立入禁止と書かれたテープから身を乗り出す人々で溢れかえっていた。
その姿を映し出すTVのモニター
――それを憂いの目で見つめる者がいた。

「カガリ……自分が何をしているのか分かっているの?」

キラは座っていたソファから立ち上がり、
TVの電源を切るとそのまま部屋を退出した。
「……やるしか……ない……」

何処か寂しげな背中が、カガリへの失望を暗示していた。
しかし、キラの目の光は失われていなかった。
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機動戦士ZガンダムDESTINY

第14話『敢えて汚名を』

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結婚式場は混乱の極みであった。
突然現れたMSが花嫁を拐っていったのだから無理もない。
白いタキシードを着た新郎は、がっくりと肩を落として事態を把握出来ていないように見える。
キラはフリーダムのモニター越しで、その次第に小さくなっていく光景を見つめていた。

「キラ!降ろしてくれ!」

キラが腕に抱いている花嫁、カガリが怒鳴り声を上げた。

「駄目だよ。こんな結婚、許す訳には行かないからね」

キラの冷静な対応が気に障ったのか、
カガリはますます顔を紅潮させた。

「こんなことをして、只で済むと思っているのか!?」

その言葉に、キラは明らかに苛立った。
何のために、誰の為にこんなことをしたのかカガリは全く理解して居なかったからだ。

「……話は、アークエンジェルでしよう」

苛立ちを腹に収め、キラはスラスターを一気に吹かした。
もう、結婚式場は見えなくなっていた。

「ちゃんと説明してもらおうか!?キラ!!」

アークエンジェルの艦橋にて、軍服に着替えたカガリがキラを忌々しげに睨みつけた。
しかし、キラはうろたえもせずにカガリの瞳を直視した。

「僕は、カガリを止めるためにこんなことをやったんだ」
「……?」
「この結婚を機に、連合と同盟を結ぶつもりなんだよね?」
「……そうだ」
「何故、反対しなかったの?」
「……何が言いたいんだ!?」
「何故、反対しなかったと聞いているんだ!!」

普段は、温厚な性格ゆえに怒鳴ることなど滅多に無い。
そのキラが声を荒げているのに、カガリは只ならぬものを感じた。

「オーブを再び焼く訳にはいかないから……」
「……それだけ……?」
「それだけとは何だ!!」

自分の苦渋の決断を軽ろんじられたのに腹を立てたカガリは、キラに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
その途端、キラの顔付きが義憤に満ちていった。
パァン!
キラの平手がカガリの頬を打ち付けたのだ。
カガリは唖然とし、鋭い痛みによって、瞳に涙を浮かべた。

「オーブを焼かせないためだったら、いくらでもやりようはあった筈だ!
プラントとの同盟をちらつかせるとか、
かつて連合がオーブを支配したという落ち度を突くとか……。

それなのに場当たり的な対応をするなんて……がっかりだよ……。
今のはね、ウズミさんの代わりに殴ったんだ……。
自分が進めなかった道を託した娘が、情けないことをしているなら、きっとこうした筈だからね」
痛みを堪えながら気を取り直して、カガリはキラを睨みつけた。

「この二年間、安息を貪っていただけのキラに何が分かるんだ!」

その言葉に、キラは激昂した。

「僕だって、何かしたかったさ!
この二年間、世界を平和のままにしておきたいと、政治や経済、法律の勉強もした!
でも、僕には何も無かったんだ!
カガリのような血筋も、
アスランのようなザフトのコネも、
ラクスのような派閥も!
僕に出来ることはこんなことしか無かったんだ!」

キラの血を吐くような言葉に、カガリは閉口した。

「その辺りにしておきましょう。論点がずれていますわ。
今は、これからどうするか考えましょう」

そんな二人のやり取りを見かねたラクスが仲裁に入ると二人は口論を止めた

一同はマリューとバルトフェルドを加えて議論を交し始めた。
その結果、もしオーブ軍が遠征に出た場合は、撤退を呼び掛けることにした。
下策だが、そうするほか無かった。
今更同盟を白紙にすることは他国との信用問題に発展してしまうし、
連合の侵略に対して徹底交戦する国力もオーブには無かった。
つまり、交渉の段階を過ぎてしまった時点で、正攻法は消えてしまっていたのだ。

「汚名を着ることになるでしょう……」

キラが呟いた。

「だけど、オーブの理念は守らなければなりません……
理念無きオーブは既にオーブではありませんから……」

キラの言葉に、カガリは自分が恥ずかしくなった。
自分がすべきことは、理念に背くことでも、理念を強いることでもなく、
理念を守ることであったと、今更になって気が付いたのだ。