Top > Z-Seed_◆x > lz6TqR1w氏_第15話 『アスランの手』
HTML convert time to 0.005 sec.


Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第15話 『アスランの手』

Last-modified: 2010-08-07 (土) 17:37:18

=======================

機動戦士ZガンダムDESTINY
第15話 『アスランの手』

=======================
ガルナハンでは、火力プラントを巡って、ザフトと連合の攻防戦が繰り広げられていた。
マハムール基地の戦力と共に、ミネルバもこの作戦に参加していた。
艦上ではレイのザクとルナマリアのアビスが護衛に、
空中ではアスランのセイバーとカミーユのZが制空権の確保に勤しんでいる。
しかし、彼等の奮戦にもかかわらず、ザフト側の状況は芳しく無いように見えた。
その証拠として、じわりじわりと連合によって戦線を押し上げられていることが挙げられる。
だが、ザフト側に焦りの二文字は無かった。

「そろそろ頃合だ!」

アスランも焦燥に駆られてはいなかった。
その手には、パイロットスーツによって隠れてはいるが、
ルナマリアの修正の際に負った傷を塞ぐ包帯が巻かれていた。

『うおおおお!』

アスランの言葉に応えるかのような雄叫びと共に、ローエングリンゲートと守備隊の間隙に三つの飛行物体が飛び出した。
軸合わせをそつなくこなし、ドッキングした物体群は一つの個体を形成した。
それは『衝撃』の名を冠するMS――インパルス――!

――ザフト側の狙いは、インパルスが奇襲を掛ける為の陽動であったのだ。
この作戦を成立せしめる奇襲のルートは、地元レジスタンスによってもたらされたものだった――

シルエット装備を行わないにも関わらず、
軽快な足取りで敵の最大火力の破壊に取り掛かったシンを援護するかのように、
ザフト軍は戦線を急激に押し上げ始めた。

『冗談ではない!』

連合軍のMA――ゲルズゲーのパイロットはいち早く奇襲を察知し、
ローエングリンを灰塵に帰さしめようとするインパルスに向かって行った。

『させるかよぉ!』

高高度からの光熱元体がゲルズゲーの鼻先を霞める――!
MA形態のZが、急降下しながらビームガンを乱射したのだ。
ゲルズゲーはライフルで弾幕を張ったが、旋回するZはかすらせもしない。

『な、何者だ!』

カミーユのでたらめと形容してもよい動きに、ゲルズゲーのパイロットは混乱した。
そして、もたついている間に、砲台から狼煙が上がってしまったのであった。

『おのれぇぇ!!』

ゲルズゲーは激昂しながら、Zを狙い続けた。

『……覚悟はいいな?』

後方からの通信によって、ゲルズゲーのパイロットの背筋に戦慄が走った――!

『しまった!』

Zに気を取られていたゲルズゲーは、セイバーの接近に気が付かなかった。
セイバーはMS形態で懐に入ると、サーベルでコックピットを突くと、
ゲルズゲーは動かなくなった。

=======================

ローエングリンとゲルズゲーを失った連合軍は総崩れになっていた。
撤退せずに徹底的に戦った者もいたが、
その末路は決して穏やかなものでは無かった。
ミネルバが羽を休めに戻ったディノキアの街でも、
市民による連合の迫害が始まっていた。

「あれは……!?」

偶然、その現場を目の当たりにしたルナマリアは憤りによる体の振るえを感じた。
アスランは戦争が何たるかを答えてはくれなかった。
しかし、目の前に最も拒絶すべき回答の一つが横たわっていた。

――戦争とは、単なる殺し合い――

「止めなさいよ!」

ルナマリアはアビスを降り、連合兵に私刑を加える市民達の間に割って入った。
自らも戦争をしている身ゆえ、傍観することは出来なかった。
そうしてしまえば、自分達も同類になってしまうからだ。
ルナマリアの制止にも関わらず、市民達の怒りは収まらなかった。

「……ザフトには感謝してるけどな!
こいつらには長いこと肝を舐めさせられて来たんだ!
退いてくれ!」
「きゃあ!」
ルナマリアは押し退けられ、地面に突っ伏した。
その瞳は、暴行を加えられ力尽きて行く連合兵を見つめていた。

「……結局、何も出来ないじゃない……」

考えるから、辛くなる。
考えなければ楽になれる。

甘い誘惑のような言葉がルナマリアの頭をよぎった時だった。

「よさないか!!」

何処からともなくアスラン・ザラが現れたのだ。

「あんたも止めるのか!?コーディネイターのくせに!!」

暴徒と化した市民の反論を捨て去るように、
アスランは鬼のような顔付きで睨んだ。

「そんなことは関係無い……!
一つ忠告してやるが、こんなことをすれば次は貴様らが撃たれる番になるぞ……!」

冷たいナイフのような一言が市民たちをえぐった。
今のアスランには、言葉では言い表せない凄味があったのだ。
彼等は怖じけづいたのか、暴力に訴えるのを止め、散々になっていった。

「さ、手を貸そう。ルナマリア」

普段の雰囲気に戻ったアスランは、
這いつく張りながら一部始終を眺めていたルナマリアに手を差し出したが、
ルナマリアは手を取ろうとはしなかった。

「……私は……何も出来ませんでした……」

無力さに嘆いているのだろうか。
今にも泣き出しそうな様子である。

「お前は間違っちゃいない。
少しだけ胆力が足りなかっただけだ」
「……」
その慰めの言葉に、ルナマリアは救われるような気がした。
そして、ルナマリアが差し出された手を握り締めた。

「痛っ……」

腕を引いてルナマリアを起き上がらせると、
アスランが苦痛に顔を歪めたのだ。

「……どうしました?
……あっ……」

ルナマリアの脳裏に、拳に鮮血を滴らせるアスランの姿がよぎった。
破片で切った傷は未だ癒えていないのだ。

「……何をしている?」

ルナマリアはアスランの手を離さず、そのままじっとそれを見つめていた。

「いえ……何でもありません……」

そして手を離した。
思い悩み続けることは間違っていないと、
アスランの手が語りかけているような気がした。

?