Top > Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x > lz6TqR1w氏_第06話
HTML convert time to 0.007 sec.


Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第06話

Last-modified: 2008-05-25 (日) 09:00:44

オーブ近海での連合との戦いに何とか勝利したミネルバは、カーペンタリア基地にやってきて
いた。先の戦闘で消耗したミネルバは修理と補給を受けていた。

 

「カミーユ、これがあなたの制服になります。これからのあなたの働きに期待させてもらいます」
「はい」

 

ザフトのパイロットとして任命されたカミーユはタリアより赤服を渡された。
カミーユは一度部屋を出てそれに着替える。
その服は明らかにエゥーゴの制服とは違い、デザインは何となくジオン軍のそれに近い印象を
受けた。
カミーユはその赤い制服に袖を通しながら、エゥーゴで自分の上司であった男の事を思い出し
ていた。

 

美しいブロンドの髪にサングラス、そして鍛えられた肉体にこの赤服と同じ色のノースリーブの
制服を着た男……クワトロ=バジーナ。
かつての世界の一年戦争でのジオン側の伝説的エースパイロット・シャア=アズナブルであり、
スペースノイドの自治権を得ようとしたジオンの生みの親、ジオン=ズム=ダイクンの息子・
キャスバル=レム=ダイクンでもあった男。
カミーユはこの男に多大な影響を受けていた。
クワトロ=バジーナがいなければ今日のカミーユの存在は無かったであろう。
彼はカミーユのニュータイプとしての才能にいち早く目を付け、それがより良く成長する様に
導いてきたつもりであった。
しかし、その期待はカミーユの心に大きな負担となり、彼の精神的な脆弱さを露呈する事と
なった。
そんなクワトロもコロニーレーザーを巡る最終決戦の最中、過去を清算できなかった自らの
弱さに敗れた。
そしてカミーユがその力の強さ故に押しつぶされてしまった事を知り、見えかけていた希望の
光がかき消されてしまったと言う絶望感が包む中、彼は突然姿を消したのであった……

 

(あの後あなたがどうなったか知りませんけど、僕はあなたの事を信じますよ)

 

彼のトレードマークでもあったその制服の色を見つめてカミーユは頭の中でそう呟いた。

 

「着心地はどうかしら?」
「悪くは無いですけど……派手ですね、これ」
「赤は目立つ色です。これであなたを監視しやすくなるわ」
「疑うのは結構ですが、そういう事はあまり口に出さないで下さい。
…気のいい物ではありません」
「釘を刺してるのよ。でないと、あなたに甘く見られるわ」
「タリア艦長は優秀だと思います」
「おだてても無駄よ。信用を得たいなら地道に成果を稼ぐ事ね。そうすればあなたの監視も
解いてあげるわ」
「今のは本音ですよ。そういう油断が無いところがそうだと言ったんです」
「あなたに評価される云われはないわ。戻りなさい」
「は、はい。失礼します」

 

少し調子に乗りすぎたな、とカミーユは反省し部屋を出た。

 

(やはり油断のならない子ね……)

 

部屋に残ったタリアは色々な意味でカミーユをそう評価していた。

 
 

カミーユが正式にザフトとして制服を受け取った頃、ミネルバに一機のMSがやって来た。
パイロットは前大戦後退役していた筈のアスラン=ザラ。
補充人員としてデュランダル議長の指示でミネルバへと配属になったのだ。
その姿にクルー達は驚く。中でもシンはカガリと共にいたアスランに対していい感情は持って
いなかった。

 

「ザフト特務隊のフェイス、アスラン=ザラだ。本日付でこのミネルバに配属となった、よろしく頼む」

 

アスランの挨拶を聞くとクルーの間にどよめきが起こる。
フェイスとは大きな権限をもつ称号である。復隊してすぐの、ましてや前大戦末期にはザフトに
対しても仕掛けて来た男がいきなりフェイスとしてやって来たのだ。
だが、アスランの襟元にはその証であるバッジが輝いていた。

 

「君は……」
「は、はっ!ミネルバでパイロットをしています、ルナマリア=ホークであります!」
「あ、あぁ……艦長はどちらにいらっしゃるのかな?」
「かんしょ……艦長室にいると思われまふっ!」

 

言い終わってルナマリアはしまった、という顔をする。緊張して台詞を噛んでしまったのだ。

 

「ありがとう。そんなに緊張しなくていい、もっと楽に話してくれ」
「は、はいっ!すみません……」
「そういう時は『了解』っていうんだ」
「了解です!」

 

そういい終えるとアスランは艦長室へ向かっていった。
残されたルナマリアは緊張から解放されたせいか、やや疲れた顔をしている。
その様子に不満を持ったシンがルナマリアに突っかかってくる。

 

「あんな奴に緊張する事無いだろ」
「だってアスラン=ザラなのよ!緊張するに決まってるじゃない」
「ちょっと前にも乗ってただろ?」
「その時は彼がアスラン=ザラだなんて思ってもみなかったわ。オーブの姫と一緒にいたんだ
もの」
「女と一緒だったから意識しなっかたって事かよ?」

 

無思慮なシンの言い草にルナマリアは溜め息をつく。

 

「ハァ……子供ね、シン。それじゃあアスラン=ザラの様なパイロットになれないわよ?」
「俺は赤服だぜ?」
「あたしもそうよ。あんた、服の色で強くなれると思ってんの?だから子供なのよ」
「俺はこの間の戦闘で敵の空母を何隻も沈めたんだぜ!?それでもあいつに勝てないって
言うのか!?」
「何言ってんのよ、アスランさんは二年前の大戦じゃもの凄い活躍をしているのよ?英雄って
呼ばれてるんだから!たった一回活躍したぐらいでいい気にならないでよね!」
「はっ!そう言うルナこそちょっと話しかけられたくらいで随分あいつの肩を持つじゃないか!
めでたい頭してるんだな、ルナは!」
「別にいいでしょ、これから一緒に戦っていくんだもの!
……それともシン、あんたあたしに焼き餅焼いてるんじゃないの?」
「んな事あるか!大体お前が……」
「あ~やめやめ!あんたと言い争ってると疲れるわ」

 

ルナマリアが突然肩を竦めてシンに背を向ける。
呆れたように溜息をついて立ち去ろうとする。

 

「逃げんのかよ!?」
「冗談、あんたの相手はしてられないって言ってるのよ」
「待てよ!」
「止めておけ、シン」

 

ルナマリアを追いかけようとしたシンを、先程からやり取りを傍観していたレイが制止する。

 

「熱くなり過ぎだ、お前は。ルナマリアを落とすんならもっと落ち着いて話さなければな?」
「なっ、何言ってんだよレイ!」

 

レイの意表を突く発言にシンは少し顔を赤くする。

 

「フッ、冗談だ」
「お、脅かすなよ……」
「だが、痴話喧嘩ならもっと場所を選んでするんだな。ここでは目立ちすぎる」
「……!」

 

そう言われて周りを見渡すと、他のクルーが急に顔を背けた。
今のやり取りがまさか注目されてたなんて思っていなかったシンは必死に弁解する。

 

「ち、違う!今のはそう言うんじゃないんだ!」
「まぁ、違うって事にしておくか」

 

そう笑ってレイはさっさと戻って行った。
少しの間ばつの悪そうにしていたシンだが、冷静になって考えてみるとレイがあんな事を言う
なんて、まず有り得ない事だった。
レイもそういう事を話するんだな、と思うと、レイに対して少し興味が沸いてきた。

 

(ん……?という事はレイもそういう事に興味があるのか?)

 

シンは勝手にそう想像すると、レイともっと話をしてみたいと思った。

 
 

タリアの下へと移動していたアスランはその途中で彼にとって意外な人物と遭遇していた。
ザフトの赤服を着るカミーユ=ビダンであった。
一瞬、時が止まったかのような感覚でカミーユを見つめていると、それを不思議に思った
カミーユがアスランに話しかける。

 

「君は……?」
「……」
「……?どうしたんだ?」
「……ぁ、何で君が……」
「俺の事、知ってるのか?」
「前に……寝ているところを……」
「なら、俺の事は聞いているんだろ?」

 

「議長から現地徴用兵として一人パイロットが補充されたって聞いたけど……
それがまさか君だったなんて……」
「カミーユ=ビダンだ、よろしく。Ζガンダムのパイロットをしている」
「あ、あぁ……アスラン=ザラだ。今日からミネルバに配属になった」

 

握手を交わす二人。
ふとカミーユがアスランの襟元に目をやった。

 

「それ、"フェイス"っていうんだろ?現場レベルでも大きな発言権があるって聞いたけど……」
「あぁ、そうだ」
「凄いもんだな、その若さで」
「いや、実際大した意味は無いさ、この勲章には……結局実戦になれば大局を見るのは
難しくなる」
「そうだな……」
「そう言えばカミーユは体の方はもう大丈夫なのか?」
「あぁ、寝てるばかりじゃどうにも出来ないしな。元の世界に帰れるまではこの艦で戦うつもり
だ」
「……?元の世界?」

 

首をかしげて難儀な顔をしているアスランは明らかに何も知らない様子だった。
それを感じ取ったカミーユは自分がこの世界の人間でない事を説明する。
かつてカミーユの存在にしこりを残していたアスランはその事実を知り驚く反面、あの時の自分
の推理が全くの的外れであった事に安心を覚えていた。

 

「そうだったのか……それであんな不自然な所で……」
「まぁ、これが俺の運命らしい。この世界に俺が加わる事でどうなるか想像もつかないんだけ
ど、俺はこうしなきゃいけない様な気がするから」
「自分のやるべき事、ちゃんと解ってるんだ?」
「気がするだけさ……アスランだってそうなんだろ?」
「いや、俺は今はこうするしかないって思うけど、まだ実感は湧かないな……」
「探せばいいさ、戦っていく内に分かる事があるかも知れない」
「そうだな……」
「二年前は英雄だったんだろ?戦いでは当てにさせてもらうからな?」
「誰がそんな事言ったんだ?」
「皆そう噂してる。心強いってさ」
「そうか……そんな大した者でもないのにな……。
そう言うカミーユの方こそ君の世界じゃ活躍だったんだろ?こちらの方こそ当てにさせてもらう」
「艦長は疑ってるみたいだけどな?」
「軍ってそういうものさ、そうだろ?」
「そう……だよな」
「じゃ、艦長に挨拶に行くから……」
「あぁ」

 

アスランはそう告げると艦長室の方へと向かっていった。その目的はタリアにフェイスのバッジ
を渡すためであった。
初めてアスランと会話したカミーユの彼への印象は、落ち着いた奴だな、という印象であった。
そんなアスランの存在はとても頼りになりそうだ、と感じた。