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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第17話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:36:44

航行を続けるミネルバは地中海に浮かぶクレタ島沖を航行していた。しかし、ここで連合・
オーブの同盟軍が第二ラウンドを仕掛けてきたのだ。
ダーダネルスの時のように無数のMSが空母より飛び立つ。
タンホイザーを失ってはいるが、ミネルバもそれを迎え撃つ為に戦闘態勢をとる。
アスランをはじめとするMS隊も出撃の準備に取り掛かった。
それぞれにとって運命の会戦が幕を開ける……
 
 
MSデッキでそれぞれが準備を進める中、カミーユは又もあの不快感を感じていた。
そんな時、シンからの直通回線が回ってくる。
 
『カミーユ……』
「シン?珍しいな、お前から話し掛けてくるなんて。それも直接」
『いや…その…これなら他の奴に聞かれる事は無いと思って……
そ、それで…今まで悪かったな…疑ってばっかで……』
「どうしたんだ?今更……」
『あの、俺…カミーユがあんな経験してたなんて知らなかったから……』
「気にするなよ、そんな事。話さなかった俺が悪いんだから」
『そ、それにさ…あの時気を利かせてくれて助かったよ。ホント、感謝してる!』
「フフ……」
『な、何がおかしいんだよ……』
 
照れながら感謝を述べるシンがカミーユには良い意味で可笑しかった。たどたどしいしゃべり
方は、きっと慣れてないからだろう。
しかし、そんなシンも本来はこのように素直に気持ちを表せる普通の男の子なのだろうと
カミーユは思った。それが戦争に身を置く事であのような刺々しい性格になったんだよな、
とパネルを操作しながら考えていた。
 
「シン、それより気をつけろよ。奴ら、また出て来るつもりでいるぞ」
『奴ら……?まさか……!』
「ああ……」
 
カミ-ユの感じ取っていた気配はアークエンジェルだった。
それを知ったシンはレバーを握る手に力が入る。
 
『アイツが…また……』
「シン、お前も奴に私怨があるみたいだが、今回は俺に任せてもらえないか?悪いようには
しないつもりだ」
『……カミーユ、それでもあんたにアイツを譲る事は出来ない……アイツを討つ事が俺の
復讐でもあるんだ……』
「シン……?」
 
そう言うとシンは一方的に回線を切ってしまった。

豹変するシンの顔つきに不安を覚えながらもカミーユは準備を進める。シンの瞳に渦巻く私怨
の炎は簡単に消せそうに無かった。
その時、ハッチの外からノックをする音が聞こえる。
 
「おい、カミーユ。ちょっといいか?」
 
粗暴そうな声はマッドの声だった。
カミーユはハッチを開く。
 
「何です?もう時間無いですよ」
「ああ、悪いな。でも、あれを見てくれ」
 
マッドがデッキの壁に立て掛けてある一丁の大型ランチャーを指差した。
 
「あれは…メガランチャー!?」
「そうだ、以前お前に聞いてたあれを暇がある時に造ってみたんだ。お前が居ない間に勝手
にテストさせてもらったから実戦でも十分使える筈なんだが、時間が足りなくてお前にテスト
してもらう事が出来なかった。一応結果は出てるから使ってみてくれ」
「ほ、本当に大丈夫なんですか!?」
「なーに言ってんだ、俺の腕を信じろって!ちゃんと小型のジェネレーターも乗っけてある。
だから、心配すんな」
「でも…僕の世界の武器ですよ!?」
「ザフト、脅威の技術力ってな!テストで結果は出てるって言ったろ?」
「わ、分かりました…ありがとうございます!」
「おう、死ぬなよ!」
 
マッドはそれだけ言うと離れていったが、カミーユに一抹の不安はあった。マッドの腕を信用
してないわけではないが、まさか異世界の武器を造り上げるとは思ってもみなかった。
しかし、せっかくのマッドの厚意を無碍に扱うわけにもいかず、カミーユはハイパーメガラン
チャーで出撃することにした。
  
「何もこんな時に出してこなくてもいいのに……なるようになるか……?」
 
発進が行われていく中、カミーユはZガンダムをカタパルトへ向かわせた。

アスランに次いで出撃したシンは、今回はブラストシルエットで出ていた。
毎回毎回の多数部隊相手では、基本兵装のみのフォースシルエットよりも砲撃兵装に特化し
たブラストシルエットの方が効率が良いと今更ながらに思ったからだ。
 
「こいつら、いつもいつも数で押してきて!それだけで落とされるかよ!」
 
シンは咆哮を上げ、殆どの敵をケルベロスの一撃で仕留めて行く。遠距離からの射撃では分
が悪いと悟った何機かがビームサーベルを抜いて向かってきたが、シンはその接近を許す前
に撃ち落していた。
 
「どんどん来い!アイツが来るまでにお前等全員叩き落してやる!」
 
フリーダム打倒に燃えるシンは次の相手…カオスへと向かって行った。
 
『またてめえか!』
「お前なんかに時間は掛けられんからな!速攻で落としてやる!」
『出来るもんなら落としてみやがれ!』
 
機動兵装ポッドの攻撃は牽制でしかないだろう。カオスの手に持ったビームライフルがインパ
ルスの動きを確かめるように撃ってこないのが証拠だった。
シンは機動兵装ポッドの攻撃をかわし、背部のケルベロスで応戦する。
 
「さっさと掛って来いよ!そんなんじゃ何時まで経ったって俺を落とす事は出来ないぜ!」
『なら大人しくこいつの的になれよ!』
「そっちこそ!」
 
お互い口の悪さは攻撃的だが、その動きは意外なほど消極的であった。
シンはフリーダムに備えて、スティングは確実に落としたいという欲があり、中々決定打に
繋がるようなミスは犯さない。
二人は相性が悪いのか、磁石の同じ極の様に相反するだけだった。
 
 
その頃出撃したカミーユは最初の敵と遭遇していた。相手はウインダム二機とムラサメだ。
ウインダム二機の方は連携が取れているようだが、ムラサメの方は違う所属だからかやや
孤立した動きを見せている。
カミーユはまず厄介なウインダムの方から相手にすることにした。
 
「本当に使えるのか……?」
 
未だ不安のあるカミーユであったが、マッドを信じてトリガーを引く。
すると、ハイパーメガランチャーの砲身から普通のビームライフルとは比較にならないほどの
ビームが迸った。
試射感覚で放ったビームの為にウインダムにはかわされてしまったが、ハイパーメガラン
チャーは予定通りの性能を発揮したのだ。

「凄い、本当に使える……!」
 
カミーユは予想外の結果に驚きつつもウェイブライダーを上昇させる。
 
「今度は当てる!」
 
十分高度を確保した所でカミーユは変形を解き、二撃目を放つ。予め動きを予測した所へ
放たれたビームはウインダムを直撃し、カミーユは定石通りに一撃離脱を図る。
しかし、それを許さないかのように突撃してきたムラサメが横から邪魔を入れる。カミーユが
それを回避して離脱が遅れた分、もう一機のウインダムに接近する時間を与えてしまった。
 
「しまった!?」
 
サーベルを振り下ろすウインダムを間近に据えながら、カミーユはハイパーメガランチャーの
もう一つの機能が実装されている事を願ってモードを切り替える。
 
「たのむ!」
 
祈るようにカミーユは大剣の様に構えたハイパーメガランチャーをウインダムに振り下ろした。
ハイパーメガランチャーの銃口からビームが伸び、それがサーベル状に固定される。そのま
ま勢い良くウインダムに切り込み、真っ二つに切り裂いて今度こそ離脱をする。
 
「銃剣も使えるようになってる…凄いな……」
 
銃剣も再現されていた事に、カミーユは驚く。尤も、それが無ければカミーユは致命傷を受け
ていたわけだが、マッドの技術力に舌を巻いた。
 
「よし…いけるぞ!」
 
仕上げとばかりにカミーユはムラサメに仕掛ける。得物が大きい為いつもより動きは鈍かった
が、それでもカミーユはムラサメを難なく落とす。
当面の敵を倒したカミーユはふと気付く。
 
(……早いな……)
 
アークエンジェルの気配がもうすぐそこまで迫っているのを感じた。

(フフフ…今回もカガリは来るのかねぇ……)
 
タケミカヅチのブリッジに居るユウナは黙って戦況を見つめていた。
 
(ま、この様子はどこかで見ていると思うけど、出てこざるを得ない演出をするのが僕の役目
かな)
「艦長、あれをミネルバに使いたまえ」
「はっ」
 
タケミカヅチから無数のミサイルが発射される。
その様子はミネルバのブリッジからも見えていた。
 
「ミサイル多数接近!弾道は真っ直ぐこちらへ向かっています!」
「対空砲火!ミサイルを叩き落しなさい!」
 
襲い来るミサイルがミネルバの機銃によって次々と落とされていく。が、そのミサイルはそれ
だけでは終わらなかった。機銃によって撃ち落されたと思われたミサイルの破片がそのまま
拡散し、降り注いできたのだ。
 
「えっ……きゃああぁぁぁぁっ!」
 
降り注ぐ弾丸を甲板に陣取っていたレイは何とか致命傷を避けて回避するものの、不意を突
かれたルナマリアはモロにその弾丸を浴びてしまった。
 
「おねぇちゃんっ!?」
「ルナっ!?」
 
メイリンとレイが叫ぶ。ミネルバは装甲を派手にやられ、あちこちから煙を上げていた。
 
「被害状況知らせ!」
「おねぇちゃん!」
「メイリン!」
「はっ…あ……」
「もうっ!アーサー!」
「はっ!メイリンちょっと代わりなさい!」
 
姉の思わぬ負傷にメイリンは気が動転していた。軍属であるがまだ年端も行かない少女に
この現実は辛かったのだ。
それを見かねてアーサーが代わりに計器の前に座り、火器管制のチェンがミネルバの状況
を告げる。
 
「船体チェック!…損傷は軽微です!第一装甲に穴を開けられた程度です!ただ、火器の
殆どが沈黙させられています!」
「ルナマリアは!?」

メイリンに代わったアーサーが応える。
 
「……応答がありません!」
「そ、そんな……!」
「落ち着きなさい、メイリン!まだ死んだわけじゃないでしょう!レイに回収させて!」
「あ、もう終わってるみたいです!」
 
近くに居たレイは中破したルナマリア機を即座にミネルバの中に放り込んでいた。
 
「メイリン…アーサーに任せて行ってあげなさい」
「で…ですが……」
「ここは私が何とかするから行ってきなさい!」
「はっ、はい!申し訳ありませんっ!」
 
メイリンは今にも泣きそうな顔で急いでブリッジを飛び出していった。
 
「バート、後続は?」
「ありません!」
「前線の様子はどうか?」
「問題ありません、健闘しています!」
「了解。マリク、ミネルバ微速後退!現位置からやや退いて前線を援護!」
「はっ、ミネルバ微速後退します!」
「アーサーはパイロット達に通達!」
「了解です!」
 
機銃の殆どが使えなくなったミネルバは後退を始める。
致命傷は避けられたとは言え、ダメージを負ってしまったレイも甲板の上でそれに従う。
 
 
オーブの志を理解しているオーブ兵のババは戦場に身を置きながらも迷っていた。
前回カガリが出てきた事でその迷いは一層膨らんだのだ。
 
(私は…本当にこんな事をしていていいのだろうか……)
 
黒煙を上げるミネルバを見つめて、ババは苦悩する。
オーブという国は徹底的な中立国家であり、どの様な理由があろうともどちらかの陣営に
付くことなくやってきていて、二年前にもそれを実証していた。
結果的に国を焼く事になってしまったが、その志までは灰になることなく今日まで続いてきた
のだ。
 
(しかし、今のオーブはどうだ……?)
 
あれ程拒んできた戦争参加をあっさりと取り決め、軍隊を大西洋連合に提供し、挙句の果て
に今は圧倒的な物量でザフトの軍艦を追い詰めている始末である。

(…これの何処に正義があるのだ……オーブの理念はどうなってしまったのだ……我々は何
の為に軍に入り、戦っているのだ…何の為に……)
 
悩めるババの耳に聞き覚えのある声が聞こえてくる。それは少年のような…しかし女の声で
ある。まだ穢れを知らないその声は信念のこもったはっきりとした口調で戦場に響き渡る。
 
『今すぐに戦闘を停止しろ!』
 
ババはその言葉を待っていた。
その声の主が戦いを止めるよう呼びかけるのを救いとして待っていた。
 
「カガリ様!」
 
ババはモニター越しにカガリのストライク・ルージュを見つける。
肩のアーマーに刻まれた獅子のエンブレムが今にもその雄々しい雄たけびをあげんとばかり
に感じられた。
ババは黙ってその言葉に耳を傾ける。
 
 
「何度言えば分かる!?オーブの軍隊は戦争をする為にあるんじゃない!理念を違えた力は
オーブの力じゃない!」
 
横にフリーダムを従え、カガリは戦場全体に呼びかける。
またもや現れたアークエンジェルに、戦場は再びその動きを止める。
 
「こうして争いをする事がオーブのする事じゃない!オーブの元首たるこの私、カガリ=ユラ=
アスハが言うのだ!戦闘を停止して今すぐオーブへ戻れ!」
 
(カガリ…君はまたそれかい?分からない子だねぇ……)
 
ユウナはカガリに不快感を示した。
仮にもカガリが去った後、オーブを支えてきたのは彼であった。それがここに来て同じ事を
繰り返すカガリがユウナには許せなかった。
 
(カガリ…キラ…お前達の言う事も分かるが今は……)
 
再び姿を現したアークエンジェルに向け、アスランはセイバーを向かわせる。
なんとかこの場から引き上げさせようとする為にアスランは全速力で向かう。
 
同じ頃、アスラン同様アークエンジェルを確認したシンとカミーユも其処へ向かっていた。
シンは復讐を…カミーユはそれを諌める為に光の尾を空に引いて行く。

それぞれがアークエンジェルの下へ向かった頃、一人思うババは決意する。
 
『全オーブ軍に告ぐ!これ以上の戦いはオーブという国自体の危機であると判断する!』
 
突然流れる全周波による無線に全員が驚く。
ババは続けた。
 
『オーブ軍の諸君はもう分かっている事と思う!この戦いが既にオーブのもので無いと言う
事を!』
 
いきなりの事に戦場は静けさを浮かべる。その言葉の一つ一つにババの想いが込められて
いた。
 
『あのカガリ様は本物である!オーブ国家元首であらせられるカガリ様の停戦命令は聞かね
ばならぬ!しかし我々は連合との同盟を結んでいる!これを違えるわけにもいかない!
だから……これが最後だ!』
 
ババはムラサメをMAに変形させて最大限にバーニアを蒸かしてミネルバへと進路を取った。
 
「えっ……!?」
 
急な接近にタリアは反応出来ない。
操舵のマリクもただ呆然とするしか出来なかった。
 
「チィ…!」

甲板のレイがそれに弾幕を浴びせたが、ババは被弾しても怯まなかった。
 
「オーブという国はぁぁぁぁぁ!」
 
ババの悲鳴という魂の鼓動が木霊した時、ムラサメはミネルバの横っ腹にその身を飛び込ま
せた。
 
「くうぅぅっ!」
「ぐあぁっ!?」
 
ミネルバの船体がまるで地震が起こったかのように揺れる。計器は乱れ、危険を告げる警報
がけたたましく鳴り響く。
  
「チ、チェン!被害状況は!?」
「は、はい!…ど、どてっぱらをやられたようです、機関が安定しません!これ以上は……」
「もたないの!?」
「次が来れば……!」
「くっ…何てことを…自爆攻撃なんて……!」

「あ…ああぁぁぁぁぁ……」
 
ババの特攻をその目で見たカガリはただ泣き叫んでいた。
オーブ軍はその壮絶なババの散り際を見て戦闘をようやく停止する。
 
(さて、どうするカガリ?君を信じてまた一人その命を失った……君はそれに応える事が出来
るのかい?)
 
見つめるユウナを余所に、連合側はこれをチャンスと見てミネルバへ一斉攻撃を仕掛ける。
水中から忍び寄ったアビスが止めを刺そうとミネルバの眼前から飛び出した。
 
「はんっ!これで終わりだな、ミネルバ!」
 
しかし、その刹那、狙い済まされた強力なビームがアビスの胴を撃ち貫く。ミネルバの危機を
察知したカミーユが戻ってきていて、ハイパーメガランチャーの一撃を放ったのだ。
コックピットを貫かれたアウルは自分に何が起こったのかを知る事無くその命を散らせた。
 
「アウル!?」
 
連合艦に陣取るネオはそれを目撃して叫ぶ。しかし、仮面に隠されたその表情は読み取れな
かった。
 
「……」
 
ステラと同じ存在と知りながらカミーユは止めを刺した。
結局こんな方法しか取れない自分に苛立つ。その苛立ちをぶつける為にカミーユはミネルバ
に襲い来るウインダムの群れへ向かっていった。
 
しかしその時、別方向からビームが飛んでくる。
それを事も無げにかわすカミーユだったが、その不快感から誰がそのビームを放ったかは
分かっていた。
 
「あのフリーダムって奴!」
 
カミーユはウインダムの相手でフリーダムを相手にする余裕が無い。
しかし、フリーダムはその狙いをウインダムへ向け、一斉射撃を行う。乱射されたそれは適当
では無く、ウインダムを爆散させる事無く戦闘能力だけを奪っていく。
 
「ぐぅおっ!?」
 
その中にまたもやシンに戦いをすっぽかされてしまったカオスがドサクサ紛れに混ざってい
た。今度は何とか自力で飛行できる能力が残っていたらしく、煙を噴く機体をフラフラさせな
がら母艦に戻って行った。
 
「アイツはまた……!」
 
その行為にカミーユは憤りを示す。

シンはフリーダムがアークエンジェルより離れたのを見てルージュに接近していた。彼にとって
フリーダムと同じ位許せない相手…それがカガリであった。
 
「お前が何でまたこんな所に出て来たぁぁぁ!」
 
ルージュに砲撃するシン。対するカガリはそれを辛うじてかわしているに過ぎなかった。
 
『お…お前の声…あの時の』
「覚えていてくれたかよ!そうだ、アスハに裏切られたシン=アスカだ!」
『そ、それは……な、何故攻撃する!?私は戦いを止めたかっただけだ!』
「都合のいい言い訳を!オーブだけだろ、あんたの考えてる事は!」
『そ、そんな事は無い!オーブの理念によって…』
「そのオーブの理念で殺された人の事を忘れてんだろっ!?」
『……っ!?』
 
アークエンジェルの援護射撃も空しく、カガリは徐々に追い込まれていった。
 
「!?」
 
しかし、シンが捉えたと思った瞬間、フリーダムが神速の如き速さでカガリを援護しにやって
来る。後一歩のところで好機を逃したシンは怒りのあまり思惟を覚醒させる。
 
「あんたはぁ!また俺の邪魔をするのかぁぁぁっ!」
 
弾け飛ぶシンの意識がかつて無い集中力を生み出す。それはキラにとっても想定外で、シン
の攻撃に一瞬怯む。
シンはそのまま機体をフリーダムの真下へ滑り込ませて攻撃する。
 
「下に……!?なら!」
 
それを回避とシールドで何とか防いだキラはシン同様に覚醒し、一撃必殺の下にビームサー
ベルで突撃する。…今までのシンには避けられない攻撃だった。
しかし、シンはその攻撃に目を見開き、キラの動きを見切った上で回避した。
空を切り裂くフリーダムのビームサーベルはそのまま勢い良く海面に振り下ろされ、その接触
と同時に巨大な水しぶきを上げた。
その水しぶきのせいで視界を一瞬奪われたキラはインパルスが空中へ逃れたと思い、空へ
向けてビームライフルをかざす。

「!?いない……!」
 
水しぶきが収まってきて視界が徐々に晴れてきた頃、インパルスの姿は空には無かった。
 
「俺はここだぁぁぁっ!」
 
水しぶきに包まれるように姿を隠していたインパルスがフリーダムの側面から姿を現す。
シンは明後日の方向にライフルを構えるフリーダムにケルベロスの一撃を見舞った。
 
「くぅっ!」
 
それでも世界最高のパイロットはその攻撃をギリギリで回避する。しかし、キラはインパルス
のパイロットが最早自分より格下ではないことを実感する。

場の混乱を見たカガリはアークエンジェルへ避難した。
それを確認したキラはアークエンジェルの後退に掛かる時間を稼ぐ為に囮作戦に切り替える。
インパルスの攻撃を回避する事に専念し、必要以上に仕掛けないようにしてやり過ごそうと
した。
 
「ちょろちょろとぉっ!」
 
かつて無い動きを見せるシンは、カガリが退いた事も見えずにフリーダムの事しか見ていな
かった。そのガムシャラな動きにインパルスはエネルギー切れの警告音を鳴らす。
 
「エネルギー切れ!?何でこんな時に…!」
 
いつもよりエネルギー使用量の多いブラスト装備で出ていたシンはエネルギーを使いすぎて
いた。ただでさえカオスやウインダムを葬るのにエネルギーを使っていたのに、フリーダム
相手にキレたシンはその事に全く気付いていなかった。
 
『シン、ここは退け!』
「カミーユ!…くそぉっ!」
  
やっと追いついたカミーユがシンに警告する。
シンの方もエネルギー切れではどうしようもない事は分かっていた故に、一度ミネルバに
戻ってデュートリオンビームで回復をしようと戻っていった。

「あれは!?アスランの言っていたカミーユって人が乗っている……」
 
キラにとって最も気を付けなければならない相手がやって来た。
この相手ばかりには誤魔化すような戦法は通じない。キラはそう思って全力で相手をする
決意をする。
フリーダムは一斉に全火器を前面に集中させ、フルバーストアタックの態勢に入った。
それに気付いたカミーユはウェイブライダーからハイパーメガランチャーを切り離し、機動性
を確保する。
その直後、フリーダムからビームの雨がウェイブライダーに向けて放たれた。
しかし、構わずにカミーユはウェイブライダーを突っ込ませる。
 
「そんな直線的な攻撃に当たるかよっ!」
 
もの凄いビームの雨の中を、Ζガンダムはすり抜けるように最短の過程でフリーダムに
接近する。
カミーユはフリーダムの倍以上もあるサイコガンダムのメガ粒子砲の雨も潜り抜けてきた
猛者だ。いくら正確な射撃とは言え、それに当たるほどカミーユは間抜けではない。
接近戦レンジにΖガンダムが到達するとカミーユは変形を解き、Ζガンダムにビームサーベ
ルを抜かせる。キラもそれを予測していたのか、すかさずビームサーベルをフリーダムに抜か
せる。
前回に続き、またもや接近戦であった。

「お前がこれ以上邪魔をするなら、俺はここでお前を落とす!それが嫌なら二度と俺達の前
に姿を現すな!」
『それはあなたの勝手でしょう!?僕達には僕達の理由があるんだ!』
「それがこんな迷惑を掛けてする事かよ!?人の命を吸ってまでやる事なのかよ!?」
『人の命が掛かってるからこそやるんだ、僕達は!』
 
キラはΖガンダムのビームサーベルを切り払い、シールドでΖガンダムを突き飛ばした。
バランスを崩されたΖガンダムへフリーダムのバラエーナが襲い掛かるが、カミーユは器用
にアポジモーターで姿勢制御を行い、ウェイブライダーで離脱した。
 
『あなた達が無駄な戦いをしているから僕達はそれを止める為に戦っているんじゃないか!
それがどうして分からないんだ!?』
 
再びフリーダムがフルバーストアタックの姿勢に入る。
 
「都合のいい言い訳を!」
 
フリーダムからビームの嵐がΖガンダムに注がれるが、当たった事の無い攻撃に当たる
わけも無くその攻撃をサラリとかわし、再び格闘戦へと持ち込む。
 
「お前にとって戦争を止めるには戦う事が全てか!?戦いで戦争を終わらせる事が全てじゃ
ないだろう!」
『あなたの言う事も分かるけど…じゃあどうすればいいんだ!?』
「自分で考えろ!」
『そうやって誤魔化すんですか、あなたは!』
「お前が考えてないだけだろ!」

最早ただの罵り合いである。
互いの主張が噛み合わないままビームサーベルによるチャンバラが続く。実力が拮抗した
二人の戦いは永遠に続くものかと思われた。
しかし、それを止めたのは紅い機体に乗った人物だった。

「キラァァァー!」
「アスラン!?」
 
セイバーがフリーダムにビームサーベルで躍りかかる。
 
「アスラン!無理はするな!」
 
しかし、そんなカミーユの忠告も空しく、無謀にもアスランはフリーダムに追い込みを掛ける。
 
「キラ、聞こえているだろう!お前のせいでまた余計な犠牲が増えた!こんな事をするのが
オーブの為になるのか!?」
『それは…アスラン!』
「お前のやっている事はただ悪戯に戦場を混乱させるだけだと言っただろう!
…それなのに……!」
『それは…それは分かってる!』
「分かってないからこうして戦争に介入してくるんだろ!?」
『でも…でも……カガリは今泣いているんだ!こうなる事が悲しくて、今泣いているんだ!
君がそれを一番分かってあげなくちゃいけないんだろ!?』

「アスラン!そいつの戯言に惑わされるな!」
 
脇で会話を聞いていたカミーユは必死にアスランに呼びかける。
しかし、当のアスランには分かっていた。
戦争中に一人の女の主張が理由になるわけが無い…例えそれがどんなに素晴らしい事
でも、このような介入方法しか知らない連中の言い分を聞くわけにはいかなかった。

「……キラ…それで俺が引くと思っているのか?」
『アスラン!?』
「これは戦争なんだ!一介の所属不明勢力の言い分なんて聞けるわけ無いだろ!?」
『じゃあ、アスランはカガリの事はどうでもいいの!?戦争だから仕方ないって…それで
カガリの目指そうとしている物を否定するの!?』
「そうじゃないキラ!カガリにはもっと違うやり方で戦争を止めて欲しいんだ…戦い以外の
方法で!だから今はそれをしようとしないお前達を…俺は討つ!」
『アスラン…なら僕も君を討つ!カガリを守る為に!』
 
お互いは再び敵と味方に分かれた。それは二年前の再現…しかし、相討ちで終わった前回
の戦いとは結果が違っていた。二人の戦いはフリーダムの一方的な勝利という形であっけな
く幕を閉じる事になる。

フリーダムのメインカメラが瞬き、両手にビームサーベルを掴む。
そして、左腕に握らせたビームサーベルで切りかかってくるセイバーの右腕を弾き切り、右の
ビームサーベルで左足を切り落とした。そのまま返す刃で頭部を吹き飛ばし、腹に蹴りを食ら
わせて突き飛ばす。
その衝撃でアスランは気を失い、フリーダムは止めを刺しに掛かる。
 
「やめろぉぉー!」
 
カミーユの叫びも空しく、フリーダムはセイバーの腹を突き刺して硬直する。
キラの一撃はセイバーの致命傷を避けていた為爆発は起こらなかったが、カミーユからは
コックピットを串刺しにされたようにしか見えなかった。
 
「そ…そんな……アス…ラン……?」
 
アスランの死に動けないカミーユはフリーダムがセイバーを突き刺したまま暫く動かなかった
のに何も出来なかった。
やがてフリーダムはセイバーを突き放して飛び去って行き、そのすぐ後にシンが戻ってきた。
 
『カミーユ!あいつは…フリーダムは何処だ!?』
「シン……」
『逃げられちゃったのかよ!?』
「アスランが…死んだ……」
『えっ……?』
 
シンが海面へ目を向けると、其処には破壊されたセイバーの残骸が空しく浮かんでいた。
 
『ア…アスランが死んだって…どういうことだよ……?』
「……」 

戦場には既にミネルバしか残されていなかった。
戦力の大半をフリーダムに無力化された連合は退き、既に停戦をしていたオーブのMSは
何処かへ消えていき、タケミカヅチも何処かへと戻っていった。
戦場に残った虚無感がこの戦いの意味を表していた……