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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第20話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:37:37

第二十話「悲しい再会」

ドイツの首都ベルリンはその日、雪吹雪く大荒れの天気だった。まだ昼間なのに、今にも迫ってきそうな雪雲のせいで薄暗く感じる。
この日の天気はこれから起こる出来事の前兆だったのか、それとも事を起こす者が発した気合がこの天気を呼んだのか…それは余りにも唐突で、余りにも凶暴な出来事だった。
ベルリンの街にロシア方面から暴虐の限りを尽くしてきた破壊の化身が舞い降りる……
 
その破壊の化身は無差別に攻撃を開始する。
防衛に出た守備隊の攻撃はかすり傷一つ付けられずに無効化され、反撃で放たれたビームは隙間の無いほどの数で守備隊を焼き払う。そして発射されたミサイルは数えるのも憚れる程の数で建物を次々と破壊していく。
その圧倒的力の前に、ベルリンの街は成す術なく炎に包まれていった。
 
破壊の化身は巨体を進める。
その中で操っている人物、それはステラ=ルーシェだった。
 
「凄いな、このデストロイは…名前どおりの性能を発揮しているという事か」
 
デストロイと呼ばれた破壊の化身に随伴するように付いて来るウインダムにはネオが乗っていた。
 
「ステラ、こいつらは皆お前を苦しめる敵だ。ここで奴らを排除しなければお前が苦しむ事になるぞ」
『ネオも……?』
「そうだ、ステラが苦しめば私も苦しい。だから、こいつらを生かしておくわけにはいかないんだ」
『うん、分かった!』
「ステラはいい子だな?」
 
(ふん…調整は上手く行ったという事か……)
 
言葉とは裏腹に、ネオの口元は不満気だった。いくら上からの命令とはいえ、本来フェミニストである自分が、このような形で少女を戦争に利用している現実に幾分か腹が立っていた。
 
「あんた達、消えちゃえぇぇ!」
 
雄叫びを上げるステラと同調するかのように、デストロイからこれまで以上の砲撃が放たれる。
それは一瞬にしてベルリンの街並みを火の中に巻き込んで行く。
巻き上がる煙はデストロイの邪悪なオーラであるかのようだった。その中からモノアイを光らせて浮かび上がるデストロイのシルエットは、正に悪魔そのものであった。
既に守備隊は役に立つ事も無く大半を無力化され、ベルリンの街はただ滅びを待つのみであった。
しかし、人々が最早これまで、と思ったその時、デストロイの動きを邪魔するように数発のビームが注がれる。

「もうやめろぉぉ!こんな破壊を繰り返して何になるって言うんだ!?」
 
やって来たのはフリーダムと、前回の戦闘後アークエンジェルに合流していた数機のムラサメだった。
ムラサメは綺麗にフォーメーションを組み、その他のウインダムやスティングのカオスの相手に取り掛かる。
フリーダムはそのままデストロイの破壊を阻止するべく砲撃を繰り返す。
 
「これもステラの邪魔をする……!?ステラやネオをいじめる奴は消えちゃえぇ!」
 
ステラは周囲をうろちょろとするフリーダムに狙いを絞る。無数の攻撃がフリーダムを襲い、それをかわすも流石のキラも中々反撃を行うまでに至らない。
手数の多さではフリーダムをも圧倒するデストロイの攻撃は、たった一機で相手にするには無理があった。
 
「くっ…何て攻撃だ!近づくどころかビームの一発も撃てやしないなんて……!」
 
圧倒的物量の砲撃を前に、フリーダムは何とか回避しながら隙を見てビームライフルを撃つだけに留まっていた。
しかし、その攻撃もデストロイのバリアに弾かれて決定的打撃を与える事はおろか、砲門の一つも潰せない状態であった。
だが、そんなデストロイも戦闘が長引けば消耗する。その時が訪れればキラの勝利は確定的なのだが、それではベルリンの街はただの瓦礫の荒野になってしまう。
被害を最小限に食い止めるには時間が足りないのだ。キラは焦った。
 
「何とか…何とか出来ないのか!?」
 
必死に方法を模索している中、キラの下にアークエンジェルからの通信が入る。
キラ達と再会した折にそのままアークエンジェルに乗り込む事になったミリアリアからだった。
 
『キラ、ミネルバがこちらへ向かっているわ』
「えっ…!?」
『ザフトがどう出るか分からないけど油断しないでね!』
「ザフトが来る……どう出る!?」
 
そこに先行して発進していたインパルスとΖガンダムが辿り着く。
そこにそびえる様に敢然と立ちはだかるデストロイの異形に二人は息を呑む。
 
「こ…こんなでかいのが動くのか……!?」
 
シンはその余りのもの存在感に圧倒されそうになる。
 
「サイコ…ガンダム……!?」
 
カミーユは黒くそびえる様に立つマシンに、かつての悪魔を重ね合わせる。

「乗っているのは…まさか……」
 
「こんな風に街を焼くなんて……!何考えてんだぁぁ!」
 
綺麗だったであろうベルリンの街並みが見る影も無い現実に、シンは怒りを爆発させる。
フリーダムを相手にしていてインパルスの存在に気付いていないデストロイに、シンはビームライフルを連射する。
的が大きい分動きも鈍い為にシンの攻撃は全弾命中したが、バリアによって弾かれたビームが無規則に反射して余計にベルリンの街を破壊してしまった。
 
「バリア持ち!?…ならさぁ!」
 
シンはインパルスにビームサーベルを抜かせ、デストロイに吶喊する。フリーダム以外の攻撃に気付いたデストロイがインパルスの方へ向き直る。
 
「またちょろちょろとぉ!こいつも消えちゃえぇ!」
 
気持ちが高揚しているのか、ステラは普段絶対に見せないような形相で叫ぶ。
デストロイからは冗談としか思えないような無数の攻撃がインパルスに向けて放たれた。
 
「こんなものぉぉぉ!」
 
そんな状況の中でも、シンの気合がインパルスの限界を引き出し、嵐の様な弾幕をすり抜けてキラでさえ近付けなかったデストロイに肉迫する。
 
「一撃で仕留めてやる!」
 
目の前まで迫ったシンはビームサーベルを振りかぶったが、それをデストロイに振り下ろす前に一発のビームがそれを邪魔した。
 
「やらせんよ!」
 
ネオのウインダムが続けてインパルスにビームを放ち、デストロイから引き離す。
 
「貴様っ!」
 
シンはウインダムを睨みつける。しかし、その間にもデストロイは破壊行動を続ける。
その行為を放っておくわけにはいかなかった。
インパルスはウインダムの攻撃に怯まずに再びデストロイに向かう。
 
「ちっ……!やらせんと言っている!」
 
「行かせるかよ!」
 
それを追撃する形でインパルスを追おうとしたが、その前にカミーユのΖガンダムが立ちはだかる。

「お前の相手は俺だ!」
 
カミーユはシンの邪魔をさせない為にネオのウインダムに攻撃を仕掛ける。
 
「こいつか!?」
 
ネオはその正確な射撃を紙一重でかわしてΖガンダムへ迫る。自由落下とバーニアで空中戦を戦うΖガンダムには接近戦が一番有効的であると判断したからだ。
 
『お前、カミーユ=ビダンってんだろ!?』
「!?」
 
接近を許したカミーユはビームライフルを銃剣にして対応する。と、同時に接触回線から敵のパイロットの声が聞こえてくる。
 
『聞いてるぜぇ!?お前が異世界から来た異邦人だってな!』
「だから何だ!」
『この世界に関係ないお前が何故戦う!?関係ないお前は即座に手を引くべきだ!』
「ステラを戦いに駆り立てる貴様の言う事が聞けるか!」
『何!?』
 
Ζガンダムはウインダムのビームサーベルを弾き、そのままビームライフルでその右腕を撃ち壊す。
 
「うおっ!?」
 
衝撃でコントロールを失ったネオのウインダムであったが、そこは熟練したパイロットの腕で持ち直す。
 
「こいつもフリーダム同様、段違いか!…複数相手ではきついな…こいつだけでも……!」
 
無理をしないネオはカミーユを引きつける様に誘導していく。
 
「アイツ…誘っているのか?」
 
ネオの動きから引っ掛けであるということは分かっていたが、カミーユは敢えてその動きに釣られる様について行った。
ネオは、囮になることでステラの敵を少しでも減らそうとしていた。

デストロイには相変わらず遠距離から攻撃を繰り返すフリーダムと、接近戦で仕留めようと接近するタイミングを図るインパルスが居た。
しかし、デストロイにとっては相手が二機に増えようとも、全方位に攻撃が可能な為に関係ないことであった。
 
「フリーダムの奴は何しているんだ!?ビームは効かないってのに!」
 
「インパルスはどうするつもりなんだ!?接近なんて出来っこないのに!」
 
お互いに動きを把握していない為、何をしても無駄になる。決定打がお互いに撃てないままベルリンの街は荒廃を続けていく。
見るも無残な姿に変えられたベルリンの光景に、シンは唾を飲む。
 
「くっ…もうこれ以上は待てない!行くぞっ!」
 
痺れを切らせたシンが先程のようにデストロイに突っ込む。すると、案の定デストロイはビームとミサイルの弾幕を張る。
 
「インパルス!?死にに行くつもりか!?」
 
キラはシンの正気の沙汰とは思えない突撃を見て驚く。
それでもキラはシンを援護する為、フルバーストアタックでミサイルだけでも撃ち落す。
 
「今度こそ貰ったぞ、悪魔めぇ!」

インパルスがそこをすり抜けて、今度こそデストロイにビームサーベルを振り下ろそうとする。
しかし…
 
『駄目だシン!ステラだぞっ!』
「は…!?」 

通信機から聞こえてきたカミーユの声にシンは愕然とする。
ネオに引っ張られるように離れていったカミーユだったが、その並外れた勘で逆にネオをデストロイの方へ向かう様にライフルを撃っていたのだ。
 
「ほ…本当なのか…カミーユ!?」
『間違いない、彼女のものだ!』
 
「んっ!」
 
動きが止まる目の前のインパルスにステラは照準を合わせる。

「うわっ!?」
 
その時、フリーダムがインパルスを蹴りで突き飛ばした。その反動でフリーダムもデストロイの目の前から離脱する。
何も居なくなった空を収束されたビームが通過した。
これが直撃していれば間違いなくインパルスは蒸発していただろう。
 
「インパルスのパイロット!死にたいのか!?」
 
キラはデストロイの目前まで詰め寄りながらも動きを止めたインパルスに苛立ちをぶつける。
千載一遇のチャンスだったかも知れないからだ。
吹っ飛ばされたシンも姿勢制御を行ってバランスを保とうとしたが、追い討ちでネオのウインダムが襲い掛かってくる。
 
『この…まで…済まさ…よ!』
「声っ!?」
 
振り下ろされるビームサーベルをかわした瞬間、微かにシンの耳に聞こえた音声、それはネオの声であった。
 
「あいつ…約束破ってよく出て来れたな!?」
 
怒りに駆られるままにネオを攻撃しようとしたが、ステラがそれを邪魔してくる。
 
「ネオをいじめる奴、消えろっ!」
 
「ステラ…何でさ!?」
 
ステラの攻撃にシンは戸惑う。
 
 
「あの動き……そんなまさか!?」
 
苦しむシンを余所に、キラはウインダムの動きに既視感を覚えていた。
死んだ筈の男の動き…キラは急にそれを確かめたくなり、ネオのウインダムにターゲットを絞る。
 
「誰なんだ、あなたは!?ムウさんじゃないの!?」
 
前大戦末期、陽電子砲の直撃を受けて死亡した筈の男が、何故今敵として姿を見せるのかキラには理解できなかった。

「ちっ!またスペシャルな奴のお出ましか!」
 
フリーダムを前にネオは仮面の下から汗を流す。圧倒的な存在感を前に、ネオは背筋が凍りつく思いがした。
損傷したままのウインダムではやられる…そう感じたネオの予想はあっけな
く現実のものとなる。
 
何とかフリーダムを振り切ろうと牽制で誤魔化しながら後退を続けるネオであったが、フリーダム相手にそんな子供だましが通用する筈もなかった。
飛び切りの加速でウインダムとの間合いをあっという間に詰められ、高速の切込みでウインダムの四肢はバラバラにされる。
羽をもがれた蝶のようになったウインダムはそのまま地面に叩きつけられ、その衝撃で開いてしまったコックピットハッチからネオは投げ出されてしまった。
飛び出た勢いで地面に体を強打したネオは仮面が外れ、そのまま気を失う。
 
「やっぱり…ムウさん……」
 
長い金髪と顔に付いた傷…キラの知っているムウ=ラ=フラガとは少し見た目が違っているが、その顔はまさしくムウ=ラ=フラガその人であった。
 
「マリューさん、ムウさんです!回収を!」
 
キラはアークエンジェルにそう伝えると、再びデストロイの下へ向かっていった。