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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第30話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:39:51

第三十話「ヘブンズベースは燃えてその2」

デスティニーとレジェンドに防衛ラインを突破され、布陣を崩された連合側は乱れるままに攻撃を仕掛けて来た。
ミネルバにも押し寄せるようにウインダムやダガーLの大軍が襲い掛かってくる。
そんな状況に格闘戦主体のルナマリアは苦戦を強いられていた。
 
「この数…ヘブンズベースを守る気は無いの!?」
 
流れるようにインパルスを操り、1・2・3と一撃の下にビームサーベルで敵を切り落として行く。
 
「あの先で何が……くっ!?」
 
ヘブンズベースの中心部のある方向を見つめたルナマリアに、後ろからのビームがインパルスの脇を掠める。ルナマリアは背筋が凍る想いを味わったが、それを押し殺して攻撃してきたダガーLをビームサーベルで切り落す。
 
「油断大敵!敵も焦っているようね!」
 
気を引き締める台詞とは裏腹に、心の内では今のがどれほど危険な事であったのかを認識出来ていない。
と、その時又も背後から爆発音が聞こえた。ルナマリアが振り返ると、インパルスを狙っていたウインダムを友軍のバビが撃ち落してくれたのだ。
 
『動きが止ってるぞ!しっかりしろ、ザフトレッド!』
「す、すみません!」
 
ベテランのパイロットを思わせる低い声でバビのパイロットがルナマリアに檄を飛ばす。
それに応えるようにルナマリアは再び機動性を生かした格闘戦を仕掛けていく。
しかし、本来自陣を固めていた大量の防衛部隊がザフト軍側に流れ込んできた事によって、逆にザフト軍側が包囲されるような形になりつつあった。
次々と沸くように現れる敵に、接近戦主体のルナマリアでは今までの様に上手く捌けない。
状況は一転して不利になりつつあった。
 
「息苦しい戦場…いままでが嘘みたい!」

出来るだけ正面に敵を据える為に、ルナマリアは敵を誘導するように引きつける。
中には艦隊の方向へ向かう敵も居たが、それは他の友軍に任せるとして、後ろからついて来た敵に振り返る。
大体四、五機程度だろうか、ルナマリアは動きを止めたインパルスに一斉にビームライフルを放つ敵軍に対してシールドを構えて突っ込む。
 
「こんなものぉ!」
 
敵の放ったビームは運良く全弾シールドで防げたが、一度に多数の負荷を掛けられたシールドは弾ける様に割れてしまう。目の前の敵以外にもまだ多数の敵が残っている中で、ルナマリアはシールドの耐久力を過信しすぎていた。
 
「嘘っ!?」
 
躊躇う余裕は無い状況。そのままインパルスを流れるままに操り、並ぶようにしている複数の敵を流れ作業の工程をこなして行く様に切り落して行く。
その場は何とかなったものの、シールドを失ったインパルスにはビームを防ぐ手段は残されていない。スペアを出して貰おうにもミネルバとは少し距離が離れてしまっている筈である。
次の敵がインパルスにターゲットを絞る中、ルナマリアは自らの油断が招いたピンチを迎えていた。
 
「私にかわせるかしら……!」
 
浮き足立つインパルスに気付いてか、ダガーLの編隊が向かって来る。シールドの無い状況でこの数を相手にする事は不可能であった。
シールドを失った事の不覚を認め、腹を括るしか選択肢は残されていない。
 
(結局あたしはもうアスランには会えないのかなぁ……)
 
覚悟を決た瞬間、突然目の前のダガーLの群れがタンホイザーの光の中に消えていった。
 
「タンホイザー…え…嘘ッ!?ミネルバはもっと後方に居るはずじゃ……!」
『お姉ちゃん、危なかったでしょ!?』
「メイリン!何でミネルバがこんな前に……!?」
『カミーユさんが教えてくれたのよ!』
「カミーユが……?」
『インパルスのシールド、出たよ!ちゃんと受け取ってね!』
 
ミネルバからインパルスのシールドが射出される。ルナマリアの命綱とも言えるそれを丁寧に受け取り、Ζガンダムを捜す。
 
「カミーユ…どうしてあたしがピンチなの分かったのかしら……居た!」
 
ルナマリアがミネルバの北東に目をやると、そこに単機で奮戦するΖガンダムの姿が見えた。
周囲をウインダムに囲まれ、ほぼ360度からの攻撃を受けている。

「何あれ!?孤立しちゃってるじゃない!他の機体はどうしたのよ!?」
 
慌てて友軍を探したが、どこの部隊も押し寄せてきた敵を相手にする事で手一杯の状態だった。
 
「って、他を当てにしてる場合じゃない!あたしが行かなきゃ!」
 
気を取り直し、ルナマリアはΖガンダムの下へ全速力で向かって行った。
  
「後ろ…下…!」
 
コックピットの中でそう呟きながら、アームレイカーを捏ねる様に細かく操作しながらカミーユは敵の攻撃を最小限の動きで回避していく。
 
「次は右の二機と上に移動した……ん…?ルナマリア、間に合ったか!」
 
ウェイブライダーで回避し続けながらも、インパルスがこちらへ向かっている事がカミーユにイメージとして伝わってくる。サイコフレームがカミーユの思惟を拡大し、戦場の人間の感情をより敏感に察知する。
サザビーの部品を組み込んだことにより、Ζガンダムの反応速度は格段に鋭くなっていた。
 
「囲まれて…何処か一つでも穴が空けば……!」
 
ウェイブライダーのままで、この包囲された状況から突破するのは難しい。
相手が素人なら問題無く切り抜けられるのだが、敵も慣れているらしく、タイミングの取れた連携でカミーユに逃げる隙を与えない。
 
「こいつら、ベテランパイロットか!」
 
カミーユの予測は当たっていた。
現在Ζガンダムを包囲しているウインダムは八機である。その八機は同じチームの所属であった。
このパイロット達は、これまでのミネルバの戦闘データからカミーユのΖガンダムが一番厄介な相手であると分析し、戦場で見つけた時には真っ先にΖガンダムを落とそうと画策していたのだ。
そしてΖガンダムを見つけ、ベテラン特有の老獪さで包囲して逃げ道を塞ぎ、カミーユを追い詰めていた。
しかし、そこまでは上手く事を運べたが、問題はそこからであった。いくら連携でΖガンダムを囲い込み、死角からの攻撃を何度繰り返そうとも掠りもしないのだ。
この八機のウインダムチームはこれまでこの戦法で何度と無く敵を葬ってきた。
それなのに、このΖガンダムに限っては手を出そうが足を出そうが全く手に負えないのである。
彼らは根競べには自信があったが、ここまで鮮やかにかわされ続けると流石に焦りの表情を浮かべる。カミーユに攻撃させる隙は与えていないが、時間が掛かりすぎていた。

「カミーユ!」
 
ルナマリアのインパルスがその場に乱入して来る。
Ζガンダムに気を取られていたウインダムチームはその接近に気付かず、一機を撃墜されてしまう。
 
「カミーユに気を取られて…迂闊すぎるのよ!」
 
ルナマリアが口にする"迂闊"という言葉は相手に対してだけでなく、自分に対しても戒めの意味を含んでいた。自分の不注意のせいで周りに迷惑を掛けた事がルナマリアの気持ちを引き締めていた。ここは戦場である。
 
「インパルス!ルナマリアが来たか!……取り敢えず抜けられたけど……」
『カミーユ、無事よね!?』
「ああ、助かった!ルナマリアは前に出たミネルバを守れ!こいつらは俺がやる!」
『何で!?二機で掛かった方が良いじゃない!』
「母艦を落とされたら終わりだろう!いいから戻れ!」
『……分かったわよ』
 
ルナマリアは不満そうにインパルスをミネルバへ向ける。
 
カミーユがルナマリアをミネルバに戻したのには理由があった。
このウインダムチームは、不意を突かれて一機が撃墜されたものの、本来はルナマリアが苦手とする射撃戦に特化した集団だった。
カミーユはその連携の取れた集中砲火を体感して本質を見抜いていたが、今来たばかりのルナマリアには体感も無ければ実感も無い。それ故、もしルナマリアがこの場に残れば、彼女を庇いながらの戦いになってしまうだろうと予測していた。
それはカミーユにとって都合が悪かった。
 
仲間を一人失ったウインダムチームは怒りの感情をカミーユにぶつけてくる。
二、三機がインパルスを追いかけようと離脱を試みたが、Ζガンダムのビームライフルがその進路を邪魔する。
その行為に彼らは憤激し、七機でたった一機のΖガンダムに挑みかかる。
 
「自分勝手な!仲間を落とされて悔しいのは貴方達だけじゃないんですよ!」
 
ウインダムのパイロット達から伝わってくるプレッシャーにカミーユは反論する。
独りよがりに感情を叩きつけてくる相手にカミーユは不愉快になっていた。
ウインダムが再びΖガンダムを囲うように展開を始める。しかし、先程までの洗練された連携は影を潜め、為すがままに雑な動きをする。
 
「感情に任せて動くから当たっちゃうんでしょう!」
 
気持ちに収集がつかない酷く散漫な動きを見せるウインダムチームに、カミーユは容赦なくビームライフルを当てて行く。
あべこべな攻撃をするウインダムは最早Ζガンダムを落とす事しか頭に無く、ビームライフルをイージーに連射するだけで一機、二機と簡単に落ちていく。

「動かなきゃ当たるのは当然なのに…復讐しか頭に無いから!」
 
頭に血が上った残りの五機の内の二機がビームサーベル片手に接近戦を仕掛けてこようとする。
残りの三機は役割分担のため中距離からの射撃を繰り返すが、接近してきた二機の内の一機はあっさりとΖガンダムのビームライフルの餌食になり、もう片方は、冷静さを欠いてタイミングの狂った味方のビームライフルの誤射に当たり、下に落ちていった。
 
「言わんこっちゃ無い!冷静になれなくて戦場で生き延びられるものか!」
 
敵とは言え、味方の攻撃に当たって沈むという最悪のパターンを目の当たりにしたカミーユは苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
誤射してしまったウインダムは怒り狂ったようにビームサーベルを抜き放ち、高度維持の為にウェイブライダーに変形したΖガンダムを追いかける。
しかし、純粋な高速移動形態のウェイブライダーに人型のMSが追い着ける筈も無く、位置的に不利な真上のポジションを取られてしまう。
太陽を背負ったΖガンダムからグレネードランチャーが放たれ、光に目が眩むウインダムのパイロットはその軌道を見る事無く撃墜される。
八機居たウインダムチームも既に残り二機にまで減ってしまった。
 
「もう良いでしょう!死にたくなければ帰って下さいよ!」
 
一人叫ぶカミーユの願いも空しく、残りの二機のウインダムは覚悟を決めたのか、無謀にもΖガンダムに挑んで来る。
 
「何でそうやって無駄に命を散らすんだ!?そんな事しても誰かが悲しむだけだって言うのに!」
 
それまで相手の感情をぶつけられてきたカミーユだったが、今度は逆に自分の感情を発散させる。その感情の高まりとニュータイプ能力がサイコフレームを刺激し、薄いエメラルドグリーンの光をコックピット部分から微かに吐き出す。
サイコフレームの光はウインダムのパイロット達に通じはしたが、ニュータイプではない彼らには唯の不愉快な感覚としか捉えられず、逆に神経を逆なでしてしまう。
怒りに駆られる二機のウインダムはΖガンダムに対して特攻を敢行する。
 
「いくらなんでも無謀すぎる!それじゃ無駄死にです!」
 
いくら装甲の丈夫なΖガンダムでも、変形機構を有する設計の為に構造上は脆い部分もある。
その為、このまま特攻を受ければΖガンダムは大破してしまう。
それ故、カミーユは止む無く特攻してくるウインダム二機をビームライフルで撃ち落す。
 
「戦争は…生き残る事こそが勝利でしょう……!死んでしまった人を思う気持ちは分かるけど進んで会いに行く事はないでしょうが……」
 
各部隊の奮戦が押し寄せて来た連合軍を押し返し、戦況は再びザフト側有利に傾いてきた。
炎を上げ、煙を噴きながら落ちていくMSの残骸…その中で敵の生の感情を浴びたカミーユは一抹の空虚感を感じていた。
 
ヘブンズベースの中枢を目指すデスティニーとレジェンド。
後方での味方の頑張りが功を奏し、予想してたよりも遥かに簡単に進んでいた。
 
「敵の抵抗が弱くなった……諦めたというのか?」
 
レジェンドのコックピットでレイは、安易な状況に言葉を漏らす。
 
『レイ、後どの位だ!?』
「もう直ぐ其処のはずだ。シン、それにしても余りにも静か過ぎないか?」
『そうか?』
「考えすぎか…カミーユやルナが頑張っているおかげか……?」
 
そうこうしている内にヘブンズゲートの中枢部分が見えてくる。敵地の中枢の割には敵の抵抗が全く見当たらない。
 
「後はあそこに居るロゴスの連中を捕らえるだけだが……」
 
レイがそう呟いた瞬間だった。モニターのレーダーに反応が映り、警戒を告げるブザーが鳴る。
 
『レイ!』
「分かっている、どうやら隠し玉のデストロイはここで俺達を待ち伏せしていたみたいだな」
『出し惜しみしてたって事か!』
「シン、お前は左側の方をやれ、俺はもう片方をやる」
『了解だ!』
 
シンは操縦桿を握る手に力を込める。
 
「その程度で俺を止められるものか!」
 
一気に全速力をかけてデストロイに接近しようとするシン。しかし、相手もそれが分かっているらしく、容易に接近させない為に厚い弾幕を張る。
 
「小賢しいんだよ!」
 
アロンダイトを構え、残像を残しつつシンはデストロイに少しづつ近づいていく。だが、腕に長物を持たせたままの高速回避は難しく、近付いては引き離されるを繰り返していた。
 
「こいつ、邪魔をするなぁ!」
 
思わずシンは回線を開き、デストロイのパイロットに聞こえるように叫ぶ。
シンは一方的に話しかけたつもりであったが、思わぬことにデストロイから返事が返ってくる。
 
『その声、聞き覚えがあるぜ!その新型、お前かぁ!』
「何っ!?」

通信回線から聞こえてきた声に、シンは意表を突かれる。意外な返信に一瞬怯んだシンは安全圏まで一旦引き返さざるを得なかった。
だが、シンの方にも聞こえてきた声に覚えがあった。
 
「お前…カオスの……!」
『へっ、覚えていてくれたかよ!今度は逃げるなよ!』
 
お互いに名前こそ知らないが、ダーダネルス海峡とクレタ島沖の二回に渡って交戦した事があった。
ダーダネルス海峡の時は突如現れたフリーダムにシンが引っ張られた為に中途半端な形での幕引きになったが、交戦中に相手を罵りあった間柄なだけに二人共お互いが印象に残っていた。その次にクレタ島沖で戦った時も中途半端な状態で一方的にカオスが脱落していった。
その後、スティングはベルリンでの戦闘の際にアークエンジェルのムラサメ隊にカオスを撃墜されたが、奇跡的に助かり、ロゴスに回収されていたのだ。
 
「誰が逃げたって……!」
『お前だろうが、チキン野郎!』
 
シンの頭の中で何かが切れた音がした。今更この程度で切れたりはしない筈だが、スティングの声がやけに癇に障った。やはりシンとは相性が悪いのだろう。
 
「刻んでバラバラにしてやる!」
『出来るもんならやって見やがれ、チキン野郎がぁ!』
 
スティングのデストロイの両腕が外れ、機動砲台シュトゥルムファウストが襲い掛かってくる。
重力下でどの様な理屈かは分からないが、それは生き物のようにうごめいてデスティニーに襲い掛かる。加えて本体からの弾幕が厄介だった。
 
「こいつ!」
『ははは!うぜぇんだよ、落ちちまいなぁ!』
 
動きの鈍いデストロイの基本は接近させない事である。スティングは其処の所を良く弁えていた。
一方のシンはデストロイに近付く事が至上命題となる事は前例の通りである。いくら新型の高級機であろうとも、遠距離からの攻撃に絶大な防御力を誇るデストロイには接近戦での攻撃が必須である。
故に今のところはスティングに有利な展開であった。
 
『おらおら、避けてばっかじゃ俺を刻む事なんて出来ないぜ!?それとも、やっぱチキン野郎は逃げる事しか能が無いのかよ!?』
「言わせておけばぁ……!」
 
スティングの挑発に、シンは冷静さを失いつつあった。
落ち着いて物事を捉えさえすれば、今のシンにデストロイは苦戦するほどの相手では無い。
動きでかく乱して、効かないまでも遠くから色々試してみればいつかは自ずと相手が隙を見せる筈なのだ。
しかし、アロンダイトで切り伏せる事しか頭に無いシンはなかなか攻略する糸口が見えてこない。

『黙って楽になれや!コックピットを狙って一思いに殺してやるってんだよぉ!』
「お前なんかにやられるかよ!」
『遠慮するなよ、おらっ!』
 
スティングはデスティニーの周りを囲むようにミサイルとビームを放つ。そして、逃げ道を塞がれたデスティニーにシュトゥルムファウストが近付いてきてシンの居るコックピット部分に狙いを定める。
 
「!?」
『終わりだなぁ!?』
 
目の前に迫るシュトゥルムファウストの五本の指からビームが放たれる。しかし、シンは間一髪のところでビームシールドを展開し、その攻撃を防いだ。
 
『洒落たモノ持ってんじゃねぇか!?そんなの捨てて楽になれってよぉ!』
「ふざけんな!お前の言い成りになんかなってたまるかぁ!」
 
シンは角度を変えて再度コックピット部分を狙って来るシュトゥルムファウストを気にして横に逃げる。
 
『甘いんだよ!』
 
しかし、逃げた所でデストロイの弾幕に遭い、動きを遅らされた所にシュトゥルムファウストが追いすがって来る。
 
「くそっ…さっさとアイツを倒したい所だけど、先ずはこの厄介な腕を何とかしなくちゃ……!」
 
シンの考えが纏まる前にシュトゥルムファウストがデスティニーの背後に狙いをつける。
警告のアラームが鳴り響いた。
 
「しまった!?」
『貰ったぜ!十字砲火を喰らえ!』
 
更に横方向からももう片方のシュトゥルムファウストが狙いを定めている。どちらに逃げようとも回避は困難だった。
 
『余計な事考えるんじゃねぇぞ!?そらっ、景気良く逝けぇ!』
「まだまだぁ!」
 
デストロイ本体の砲門からも一斉に攻撃が放たれる。
同時にその瞬間シンの思惟が弾け、覚醒状態に入った。
シンはフラッシュエッジを取り出し、横方向のシュトゥルムファウストに投げつけて破壊する。
しかし、デストロイからの攻撃とシュトゥルムファウストからのビームが尚もデスティニーを襲う。
スティングは勝利を確信していた。

『もう遅い!』
「デスティニーは…遅くないっ!」
 
シンの気合一閃、背部スラスターから羽のように光が飛び散り、デスティニーは残像を残してその場から消える。
 
『な、何だと!?』
 
何も存在しない空をミサイルとビームが空しく通り過ぎ、スティングは一瞬デスティニーを見失ったが、直ぐにその姿を確認することになる。
 
『しょ、正面だと!?こんな近くに!』
 
スティングが気付いた時には既にデスティニーはデストロイの正面に陣取り、攻撃の姿勢に入っていた。アロンダイトを大きく構える。
 
「約束通り刻んでやるぅっ!」
 
デスティニーがアロンダイトを振り下ろそうとした瞬間、後方からのアラームが鳴ってシンはハッとする。
デストロイのシュトゥルムファウストがデスティニーの背後を狙っていたのだ。
 
「くっ!」
 
デスティニーはそれを間一髪でかわすが、高エネルギー砲を破壊されてしまう。
 
『ぐおっ!?テメェ!』
 
デスティニーに攻撃を避けられたスティングは、高エネルギー砲を貫通したシュトゥルムファウストの攻撃を自分で受けてしまう。バリアが張ってあるとはいえ、ビームの光と破壊されたデスティニーの高エネルギー砲の破片や煙がスティングの視界を奪う。
 
『なぁっ!?どうなっている、レーダー!……傾いているだとぉ!?』
 
スティングが気付いた時には既に手遅れであった。デスティニーがアロンダイトでデストロイの脚部を切断し、崩れるようにデストロイは巨体を傾けていく。
 
『チッ!』
 
それでもスティングは最後まで諦めずにシュトゥルムファウストを操作してデスティニーを攻撃しようとするが、そんなささやかな抵抗もシンはあっさり切り落す。
 
「でぇぇぇえぇぇぃっ!」
 
シンの気合と共にアロンダイトを構えたデスティニーが動けないデストロイに突撃する。
 
『くそっ!動け、動けよこいつぅ!』
 
スティングは必死になって操縦桿を動かすが、デストロイの自重に負けて言う事を聞かない。デスティニーが直ぐ其処に迫っていた。

『チクショウ!俺はまだこんな事では……アウルゥ、ステラァ!』
「!?」
 
スティングの無意識から出た言葉にシンは一瞬動揺する。しかし、デスティニーの加速の勢いはそのまま殺されず、デストロイに止めを刺す。
爆発を逃れる為、シンはデスティニーを離脱させた。
 
「アウル…?ステラって……」
『シン、片はついたのか?』
 
同じ頃、もう片方のデストロイを倒したレイがシンに訊ねてくる。
 
「アイツ…ステラの何だって?」
『聞こえているのか、シン?』
「あ…レイ……?」
『どうした、呆けて?デストロイは倒したんだな?』
「あ…あぁ……」
『様子がおかしいぞ、シン。何があった?』
「別に…何も……」
『ならしっかりしろ、ここももう直ぐ味方の部隊がやって来る。後の事は任せて俺達は戻るぞ』
「了解…」
 
レイはシンの様子に釈然としないまでも、後方の味方部隊にヘブンズベースの中枢への道が開けた事を報告する。
 
「……そうです、デストロイは全て撃破しました。後の事は任せてしまってよろしいですね?……了解です、これから帰還します……はい、お疲れさ…」
『なぁ……?』
「ん?」
 
シンがレイに突然話し掛け、レイは察して素早く通信を切る。必要事項は伝え終えた後だったので問題は無かった。
 
『あのさ……』
「何だ、はっきりしろ」
『…今回出てきたデストロイの中にもステラと同じ様な人が乗っていたのかな……?』
「……さぁな」
『もしそうだとしたら、俺……』
「ロゴスがやった事だ、俺達には分からん事だ。だが、この戦争がどちらの勝利で終わったとしても彼等には辛い未来しか待っていなかっただろう」
『そう…そうなのか?じゃあ俺達がやっている事って…』
「誰でもお前とステラの様には行かないものだ。それでも犠牲を払ってでも俺達は戦争を終わらせなければならない……プラントで待っていてくれる人々の為にもな……」
『それは…分かっているけど……皆が幸せになれる優しい世界って無理なのか?俺の考えている事って無駄な事なのか?』
「……その答えは俺には分からない。だが、今の俺達にはそんな余裕も無い事は確かだ。……今回の戦闘で全てが終わる、今後の世界がどうなるかは議長のさじ加減一つだ」
『……』

ここまで時間が進んでしまった以上、シンは自分の出来る事は無い事に気付く。
レイの言葉にシンは沈黙を続けた。
 
(ここまで来た……後はギル次第か…間に合ったのか?)
 
レイはこれまでに無いほど安堵していた。開戦してからこのかた、いつ戦争が終わるかとヤキモキしていたが、思っていたよりも早く終結しそうな雰囲気にレイは深く息をつく。
 
(ギルの望む世界を、俺は生きられるのか…ラウ?)
《それこそ…君次第ではないのかね……?》
 
レイの耳にクルーゼの声が聞こえた気がした……
 
 
その頃、部隊を突破されたヘブンズベースの中枢司令室は混乱の只中にあった。
乱戦に移行して指揮系統は混乱し、伝えられる報告は各部隊の敗北の通信のみである。
ロゴスのメンバーは焦っていた。
 
「どうした、まだあやつらを撃破できんのか!?」
「ぜ、前面部隊が全滅しているぞ、デストロイはもう居らぬのか!?」
「このままでは敗北は必至ではないか!?」
 
傍目から見ればもう連合側に勝機は残っていない事は一目瞭然であるのにも拘らず、ロゴスのメンバーは必死になって抗戦を訴える。
 
「くぅぅ…!こうなったのも全てジブリールのせいではないか!?さっさと切り札とやらを出させろ!」
「そ、それが……」
「ん?そう言えばあやつめは何処へ行ったのじゃ?先程まで其処に居たはずじゃが……?」
「ジブリール様は先程この基地から脱出なさいました」
「なな…何だと!?」
 
一人のオペレーターの言葉にロゴスのメンバーは驚愕する。
ジブリールは他のメンバーを見捨てて既にヘブンズベースを後にしていたのだ。
 
「何故それを言わなかった!?」
「く、口止めをされていましたので……」
 
掴みかかったオペレーターの胸ポケットが分厚い手帳をしまっている様に不自然に膨らんでいる。
 
「あやつめ…我らを見捨てたというのか……!?」
「最初からこうするつもりで……謀りおったのか……!」
 
愕然としてロゴスのメンバーは膝をつく。ジブリールの真意に気付き、全身から力が抜けていく。
彼らに最早抵抗する力は残されていなかった。

「ふふふふふ……ロゴスは私さえ残っていれば良いのだよ…血気盛んな御老人達にはここらで退場してもらいましょうか……」
 
移動する機内でジブリールは聞こえない相手に向けて言葉を放つ。
 
(さて、デュランダルよ、私を怒らせたことを後悔するのだな……!
その砂時計を宇宙の塵に変えてやる…!)
 
ジブリールの危険な計画が動き始めていた……
 
 
ヘブンズベースの中枢への道が開けたことにより、ヘブンズベースの攻防戦はザフト軍の勝利に終わる。司令室に残っていたロゴスのメンバーは抵抗する事無くザフトに拘束された。
 
「おう、お疲れさん!お前も生き残れたじゃないか!」
『あ、有難うございます!ハイネ隊長のお陰です!』
 
戦闘が終了し、ハイネとグフのパイロットも無事に乗り切れたことを称え合う。
 
「違うな、生き残れたのはお前の実力だ。俺はお前の背中を押してやったに過ぎん」
『いえ、ハイネ隊長が居なければ自分は死んでいました……本当は自分、今回の戦闘に生き残れたら軍を辞めようかと考えていたのですが、もう少し頑張ってみようと思います! 今回の事で自分に少しだけ自信が持てたんです!』
「そうか、それは良かったが、家族は良いのか?」
『気がかりなのは確かですけど、自分はもっと頑張ってみたいのです!逃げ帰ってきたなどと家族に笑われたくはありませんから!』
「そっか…なら、頑張って生き延びろよ!また何処かの戦場で会おうぜ!」
『ハイ!その時は自分もハイネ隊長と肩を並べて戦えるように精進します!』
 
グフのパイロットはハイネに別れを告げ、原隊へと戻って行った。
 
『カミーユ、お疲れ!』
 
ルナマリアのインパルスがΖガンダムに近付いてくる。複数相手に接近戦主体で攻めていたのにも拘らず、その外見はとてもそうには見えないほど傷が目立っていなかった。
 
「ああ、お疲れ」
『カミーユには借りが出来ちゃったわね?』
「その借りがもっと増えないように気をつけてくれよ?」
『それは…気をつけるけど、もうこんな大規模な戦闘は無いわよ、ロゴスの拠点を攻め落としたんだもの。何か別の方法で返さなくちゃね』
「別にいいよ、返さなくても……アスランに合いに行くんだろ?なら早い方がいい、気にする事無く捜してこいよ」
『うん…ありがとうね、カミーユ……』

そこへ前線から戻ってきたシンとレイが合流する。
デスティニーは高エネルギー砲を損傷していたが、レジェンドはほぼ無傷だった。
いくら高性能機とはいえ、全面戦闘でこれだけの状態で戻るのは驚異的である。
ルナマリアは素直にレイの技術に感心する。
 
「レイ…前線で戦っててよくも無傷で済んだわね?」
『防衛ラインを抜けてしまえばそう大した事無かったからな。寧ろそちらの方が大変だったのではないか?大分混戦になったと聞いたが』
「まぁね。カミーユとかに助けてもらわなかったら危なかったけど」
『それはそうだろう。その為のカミーユだ。それでもダメージをあまり受けていない様だし、ルナもそこそこ役に立ったみたいだしな、良くやったといっておこう』
「ちょ…あんた、何様のつもり!?カミーユを残したのはあたしのお守りをさせる為だったって言うの!?」
『口が滑ったな……聞き流してくれ』
 
モニターの向こう側でレイが手で口元を押さえる。しかし、目は明らかに笑っていた。
 
「聞いちゃったわよ!ワザとでしょ、レイ!」
『…疲れたな、先に戻ってるぞ』
「ちょっと、待ちなさいよ!」
 
レジェンドとインパルスが駆け足で戻っていく。カミーユとシンは置いてけぼりにされてしまった。
 
「あの二人、あんなに仲良かったっけ?」
『お、俺に聞くなよ!』
「でもいいな、ああやって喧嘩する相手がいるってのは……」
『またホームシックか?意外と繊細なんだな、カミーユって。もっと乱暴な性格かと思ってた』
「お前が言うか?」
 
二人は笑った。
 
カミーユとシン…地球育ちだからという理由でエリートぶったティターンズに対する純粋な怒りで戦っていたカミーユと、自分たち一般人を戦争に巻き込んだオーブに対する怒りで戦ってきたシン。
それぞれ戦っていく内にその対象は変わっていったが、根底にあるものは対象に対する怒りである。
戦争に対する怒り、戦争をする人への怒り、戦争を煽る者への怒り…様々あれど、両者の荒ぶる魂はそれらを許さない。
 
…このヘブンズベース攻略戦により、戦局は大きくその図式を変える。
ロゴスのメンバーの大半を欠いた連合は大きく力を消耗し、その影は薄くなる。
事態はジブリールを巡り、思わぬ展開へともつれ込んでいく……