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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第31話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:40:09

第三十一話「戦いは誰の為に」

極秘にオーブヘ帰還していたアークエンジェルはその身を潜め、機を窺っていた。
そんな折、ザフトによってヘブンズベースが陥落した事実を知り、カガリ=ユラ=アスハは動き始める。
連合の影響力が弱まった今、政権をその手に戻すのは今しかなかった。
 
「それで、どうするつもりなんだ、カガリ?」
 
入り江の洞窟を改造したドックに格納されたアークエンジェルの甲板で仁王立ちしているカガリに話しかけたのはアスランだった。
いつぞやの護衛の時の様にサングラスをかけている。
 
「……まずは直接アイツと話してみる」
「簡単には会えないぞ、当てはあるのか?」
 
アスランからはカガリの背後しか見えない。だが、苦い表情をしているであろう事は何となく分かった。
 
「……無い」
「そんな事だろうと思ったよ。ほら、カガリ」
 
アスランが懐から便箋に詰められた手紙を差し出す。カガリは振り返って怪訝そうな顔をする。
 
「何だ、これは?…私宛て……」
「街に買出しに出たミリアリアが受け取ったらしい。差出人を見てみろ、裏に書いてある」
 
アスランから便箋を受け取り、カガリはそれを裏に返す。そこの端っこに見覚えのある字体で名前が書いてある。
 
「ユウナ=ロマ=セイラン……」
「中身は見てないが、相手はこちらの動きはお見通しだったみたいだな。挑戦状だぞ、カガリ」
「……」
「爆発物の類の物は入っていない。安心して開けていい」
「ユウナはそんな姑息な手段は採らないよ」
 
便箋の封を開け、中に差し込まれていた手紙を取り出して一通り目を通す。
 
「……私に対する挑発だな」
「挑発?」
 
カガリは一言呟いてアスランに手紙を渡す。それを手に取り、アスランは手紙を読み始めた。

「もし君にもプライドがあるのなら話しを聞いてやってもいい? ……オーブの元首気取りか、ユウナ殿は」
「そう言うな、実際に今のオーブを纏めているのはアイツだ。私はその間駄々を捏ねてただけだったからな」
「で…受けるのか?」
「アスランの言いたい事も分かる、罠かも知れないんだろ?」
「冷静に見れるようになったな……」
「けど、私は受けるぞ。ここで行動を起こさなきゃ、私も何の為に世界中を廻ったのか分からないからな」
「う、受けるのか!?わざわざ相手の罠に掛かりに行くようなものだぞ!」
「だが、せっかく向こうから近付いてきてくれたんだ。この機会を逃すわけには行かない」
「しかし!」
「護衛にお前が付いて来れば問題ないだろ?」
「俺だけで何でも出来ると思うな!」
「ユウナの性格は良く知っているつもりだ。一応婚約者だからな」
「だからってカガリの言う事が当てになるか!」
「大丈夫、私はここで躓く事などしないから……
もう目を覚まさなきゃいけないって事、分かってる」
「カガリ……」
 
真っ直ぐと見つめるカガリの瞳にアスランは何も言えなくなる。腰に手を当てて深く息をついた。
 
「頑固だからな、カガリは……一度言い出したら聞かないものな」
「私をおっさんみたいに言うな!」
 
むくれるカガリを余所にアスランも覚悟を決める。
 
「俺が必ずカガリを守るから……」
「アス…ラン……」
 
穏やかな波はこれからオーブに起こる出来事の前兆なのか、不気味なほど静かだった。
それは嵐の前の静けさを象徴している様であった。
 
「カガリ!ルージュを貸し…て……?」
 
そこへ突然キラが飛び込んできた。しかし、何やら雰囲気のある二人を目にして固まってしまう。
 
「ご、ごめん!…じゃなかった、邪魔しないからカガリ…でもなくってルージュを貸して!」
 
キラは空気を読まずに慌ててカガリに要求する。

「キ、キラ…!な、何かあったのか?」
 
そんなキラに慌てて取り繕い、アスランが訊ねる。
 
「宇宙のエターナルが…ラクスが危ないんだ!だから行かなくちゃ!」
「誰にやられているんだ?」
「分からないけど、ザフトだって!」
「ザフト!?」
 
アークエンジェルに入ったエターナルからの通信は危機を告げるものだった。
メンデルに隠れていたエターナルであったが、ザフトの哨戒機に見つかってしまったのだ。
現在バルトフェルドが応戦してはいるが多勢に無勢、ピンチを切り抜けるには至らない。
 
アスランはそのキラからの報告を耳にして困惑する。ラクスを邪魔に思う人物は数多あれど、ザフトが表立ってラクスを襲うとは考えられなかった。
エターナルは元々ザフトの艦とはいえ、二年前それを強奪したのはラクスである事はザフトなら誰でも知っている事実である。
制裁と捉えればそれまでであるが、それでもプラントのアイドルであるラクスを排除しようとするザフトの行為が信じられなかった。
 
(しかし……)
 
直ぐにアスランは考えを改めた。プラントはラクスの偽者を仕立て上げていたのを思い出したからだ。
その偽者の彼女が何を意味するのか、推測の域になってしまうがあまり歓迎できるものではない。
推測で決め付けるのは良くないとは思いつつも、アスランの心のうちは激しく揺れていた。
それでもまだ決定的な確証を得られたわけではない彼は、その事を表に出さないようにする。
 
「勘違いしているだけじゃないのか?」
「アスラン!?そんな事言ってる場合じゃないんだ!一刻も早く行かないと……」
「そうだ、アスラン。今は無駄な推測をしている場合じゃない、エターナルは現に攻撃を受けているんだ」
「しかし、エターナルが武装勢力によって奪取されたとザフトに思われていれば……第一オーブの元首がこんな事に関わっていたと知れたら大変だぞ!」
「私はこの件に関係ない。キラが勝手に飛び出して行っただけだ」
「カガリ!」
 
しれっと言い切るカガリ。それに対してアスランは意外そうな顔をする。
まさかカガリがこのような事を言うとは思わなかったからだ。
 
「カガリ!」
「貸すのは良いが、OSは私に合わせたままだぞ?」
「行く途中で書き換えるから、早く!」
「…分かった、ここには一基だけ大気圏離脱用のブースターが残っていたはずだ。それを使え」
「ありがとう、カガリ!」
「ラクスを頼むぞ!」
 
キラは急いで振り返ると手で合図して走り去って行った。

「…軽率じゃないか?」
「お前はラクスを見殺しにしたいのか?一瞬の判断の遅れは致命的になり得るんだぞ」
「俺は…まだザフトも信じている……」
 
アスランがこれまでアークエンジェルと行動を共にしてきたのは、カガリが心配だったからである。
あのままではカガリは二度とオーブには戻れないような気がしていた。
しかし、ここ最近は少しずつだがカガリにも気迫が戻ってきたように感じられていた。
故に、アスランはカガリのことに一段落ついたらザフトに戻るつもりで居た。
アスランは未だ自分の生存をミネルバは知らないと思っていた。
それならば、今まで怪我の治療で連絡が出来なかったとでも言えば自然に合流できるはずだと考えていた。
そして、その上でオーブとプラントの関係を何とかして行こうと画策していた。
先ずはカガリがしかるべきポジションに戻ってから、というのがアスランの主張である。
しかし、実際にはキラのもたらした情報によってアスランの生存はザフトに伝わってたのだ。
その事を知らないアスランは、既に自分の進むべき道が閉じかけている事に気付いていなかった。
 
この後に、アスランは最悪の形でミネルバの面々と再会することになる。
 
「そうだよな…お前にとってはプラントは故郷だもんな……」
「カガリも信じているが、プラントも信じたい……二年前で皆懲りたはずなんだって……」
「そうだな……」
「所で、エターナルは今何処に居るんだ?」
「ターミナルのファクトリーからの新型受け取りのためにメンデルに居る筈だ。あそこは前にも拠点として使ってたからな」
「ターミナル…ファクトリー?」
「ああ、ラクスに協力してくれているクライン派の秘密組織らしい。ただ、私は必要無いと思うのだが……」
 
大きすぎる力は争いを呼ぶ…それがカガリの持論であった。
かつてデュランダルに争いがあるから力が必要だと言われた事があったが、それこそ無限に続くメビウスリングの様なものだと今では考えていた。
力と力を衝突させれば、滅ぼされない為に又、力が必要になる…そうなれば争いの火種は決して燃え尽きる事など有り得ない。
力の放棄こそが平和への道であると考えていた。
それは甘い考えであり、とても難しい問題である事は承知していたが、力で捻じ伏せるやり方では永遠に火種を消す事は出来ない。
カガリは火に油を注ぐようなやり方を望んでいなかった。
 
「…ラクスの方はキラに任せる。ここからでは私は手が出せない。私は私の戦いをしに行く、付き合ってくれるな、アスラン」
「ああ……!」
 
意を決し、カガリとアスランはユウナの元へ向かう……

 
ブースターにしがみ付いて大気圏を抜け出したルージュはブースターから離れる。
移動する時間にキラはルージュのOSを弄り、自分に合わせたセッティングに変えていた。
ついでにフェイズシフトの設定も弄り、その外見は赤ではなくかつてのキラの愛機と同じのトリコロールカラーになっていた。
 
「僕に…出来るか……」
 
インパルスと戦って敗北した時以来のコックピットの感触。記憶の底に刷り込まれた敗北の記憶がレバーを握り締めるキラの腕を震わせる。
モニターに目を凝らすと、先の方で閃光がチラチラ目に入った。
 
「出来るか出来ないかじゃない…やらなくちゃ、僕が!」
 
ブーストレバーを握る右腕に左手を添え、何とか押さえつける。
 
「ラクスは、僕の痛みを分かってくれたんだ…だから、僕が助けなきゃ!」
 
気力を振り絞って恐怖を打ち払い、キラは一気にブーストを掛ける。
 
「行くぞ、ストライク!」
 
ブースターから離れ、伝説を築き上げたMSが再び咆哮を上げる。
 
 
そして、閃光の彼方のエターナルのブリッジでは、芳しくない状況にクルーは苦しい顔で応対していた。
 
「状況はどうなのですか?」
「右舷が手薄になっています…左舷の方は隊長が粘っていますが、このままではいずれ……」
 
ラクスの問いにダコスタが苦しげに応える。エターナルは困窮していた。
 
「何とかなりませんか?」
「ドムを出せればいいんですが、あれはまだ調整に時間が掛かります。とても戦闘できる状態ではありません」
「そうですか……このままではいずれ……」
 
ブリッジの窓からは一機のMSが多数を相手に苦しんでいるのが見えた。
 
「ぬぅ……!きつなぁ、これは!こう数が多いと、いくら僕でもねぇ……!」
 
何処からか調達してきたガイアを駆り、砂漠の虎が宇宙で吼える。
しかし空間戦ではその自慢のフットワークを活かせるMA形態は意味を為さない。

バルトフェルドはギリギリの所で持ち堪えているに過ぎなかった。

「まとめて掛かってくるだと!?」
 
ザクとグフが二機づつガイアに襲い掛かる。ビームライフルしか持たないガイアには対応しきれない数だ。
 
「僕もここまでかねぇ……!」
 
その時、別方向からのビームが四機を撃ち抜く。撃ち抜かれたMSは武器や四肢をもがれ、無力化した。
 
「地球の方から…誰だ!?」
 
バルトフェルドが目を向けると、そこからトリコロールカラーの派手なMSが接近していた。
 
「ストライク!?」
『無事ですか、バルトフェルドさん!』
「キラか!」
 
間一髪の所でキラが間に合った。そのままキラはビームライフルを連射して一機、二機と戦闘不能にして行く。
 
「キラ、お前はエターナルへ行け!」
『……!』
 
キラにはバルトフェルドの言っている意味が分かっていなかった。この困難な状況の中でエターナルへ行って何になるのだと思った。
先ずはこの危機を切り抜けること。その事だけを考えてエターナルを死守すべく応戦する。
 
「キラ……すみません、少し頼みます」
「分かりました!」
 
キラの到着にホッとする一方で、旧式のMSでやってきた事に不安を覚える。そして、何かを思い立ったラクスはシートを離れ、何処かへと向かう。
 
「くぅっ!」
 
キラは操縦の腕にかけては超一流であるが、一時代前のMSでやれる事には限界があった。
フリーダムに乗っていた時の様に上手く相手をいなす事が出来ない。
そうこうしている内にバルトフェルドのガイアが被弾して片腕を失う。
 
「バルトフェルドさん!」
『余所見をするな、キラ!』
 
一瞬気を取られたキラにグフのヒートロッドがストライクの右腕を引き千切る。
 
「うあっ!?」
 
続けて放たれたビームが左足を打ち壊す。ストライクに残されたものは頭部のバルカン砲とシールドのみになってしまった。
ザフト軍は殆ど無力化したストライクを無視して、エターナルに狙いを絞る。

「させないっ!」
 
ガナーザクがオルトロスをエターナルの横っ腹に狙いをつける。
それを素早く察知したキラがその間にストライクを滑り込ませた。
ザクのオルトロスから放たれた強力なビームをシールドで防ぐが、威力に負けてあっさりとシールドごと左腕をもぎ取られてしまう。
 
『キラ!いいからエターナルの格納庫へ急げ!このピンチを切り抜けるにはそれしかない!』
「でもっ!」
『ここで何もかも終わらせるつもりか!?彼女がお前に新しい剣を用意してくれてある!』
「……!」
『僕が持たせる!行け!』
 
バルトフェルドの説得に応じてキラはボロボロになったストライクをエターナルの中に滑り込ませる。
 
「さぁて…出来るだけ早くしてくれよ……!そう長くは持ちそうに無いんでね……!」
 
片腕を失ったガイアでかつてのザフトのエースが意地を見せる。
 
 
エターナルの格納庫に傷ついたストライクが投げ込まれる様に転がり込んでくる。
キラは急いでハッチを開き、外へ出た。
 
「キラ!」
「ラクス!」
 
キラの元へラクスがやって来る。無重力下の慣性で流れてくるラクスをキラがその身で受け止めた。
 
「キラ…貴方が来てくれるなんて……」
「それでラクス、この状況を打開する秘策って…!」
 
久しぶりに会えた喜びに浸りたいラクスと、それよりもバルトフェルドの為に一刻も早く戦線に復帰したいキラ…男と女の二人の感覚が少しずれる。
そんなキラをラクスは朴念仁だと思ったが、必死なその表情に自分の方こそ鈍いのだと気付いた。今は少しも気を緩める事の出来ない切迫した状況なのだ。
 
「あちらです…キラ……」
「あれは…フリー…ダム……?」
 
ラクスが指差す方向にはフェイズシフトの展開していない灰銀のMSが二人を見下ろしていた。それはフリーダムに似ていたが、細かい箇所に違いが見受けられる。

「これは新しい自由の翼。名を…ストライクフリーダムと名づけさせて頂きました……」
「ストライク…フリーダム……」
「キラ……」
 
ラクスは目を伏せる。
自分の命が狙われているとはいえ、本来ならこのように力に頼った防衛策はラクスの望むべき所では無かった。
そして、皆を巻き込み皆にそれを課す事が彼女にとって辛い事であった。
出来る事ならあのままオーブで何事も無く、平穏無事な生活を送りたかった。
かつてのプラントのアイドルはそうである事に疲れ、利用されるだけの自分を嫌っていた。
しかし、二年前に一度歩き出した道は決して後戻りできない道だった。その事がラクス自身に重く圧し掛かり、今も彼女にプレッシャーを与え続けている。
どんなに人々から慕われていても、彼女も唯の人間に過ぎないのである。
キラはラクスに触れてその事を知っていたから彼女に優しくする。
 
「分かってるよ、ラクス。でも、僕は行って来るよ、君やバルトフェルドさんを助けるために……」
「ごめんなさい…ごめんなさい…キラ……」
 
キラにしがみ付いたまま涙を零すラクスのおでこに軽く唇を当てて、キラはストライクフリーダムのコックピットへと向かう。
 
「ブリッジ、ハッチオープン!」
『ちょ、ちょっと待って!火線が集中しているから!』
「構いません、開けて下さい!」
『知らないよ!』
「すみません!ストライクフリーダム…行きます!」
 
エターナルのカタパルトからフェイズシフトを展開してストライクフリーダムが飛び出す。
バラエーナこそ無くなったが元のフリーダムよりも一回り大きくなった印象を受ける背中の八枚羽、腹部に新設された大型の砲門、
目立つ黄金に輝く関節……印象こそフリーダムだが、更に一際目立つようになったその威容は敵にプレッシャーを与える。
 
『な、何だあれは!?フリーダムとでも言うのか!』
『何故このような所に…あれはミネルバが落としたのではなかったのか!?』
『ここに存在する以上はそういう事なのだろう…あれを先に仕留めるぞ!』
 
ザフトのパイロット達は突然のストライクフリーダムの登場に慌てふためく。撃墜報告があったとはいえ、フリーダムの記憶は未だ根強く神話として息づいている。
 
「来たか…キラ!」
『バルトフェルドさんはエターナルまで後退して下さい!ここは僕が突破します!』
「了解だ、頼んだぞ少年!」
 
ここまで持ち堪えてきたガイアは両足を失っていた。苦しい状況だったのだろう、バルトフェルドは済んでの所で命を拾ったのだ。

新型のフリーダムに乗り込んだキラは不思議な高揚感を得ていた。
確かに先程まではMSに乗って戦う事が怖かったはずである。しかし、ラクスの泣いている顔と、彼女の想いが込められたMSに乗った瞬間、キラは戦士に戻った。
二年前辛かった自分を慰めてくれて、今は逆に自身が苦しんでいるラクスを自分が守らなければならないという使命感がキラに気合を取り戻させていた。
 
『うわっ…早い!?』
『砲撃を奴に集中させろ!』
 
ザフトも必死に応戦するが、水を得た魚のキラはそれをものともしない。
たった一機のMSに次々とザフトのMSが無力化されていく。
 
『ぬぅ…グフ小隊を前に出せ!生け捕りにして集中攻撃だ!』
 
ほぼ壊滅状態のザフトはチームを組ませたグフを前面に出す。隊長が他のMSを散開させてキラの注意を引く。
 
「開いた!本命は……!」
 
周囲に目を凝らして当たりを付けようとするが、その前にグフのヒートロッドがストライクフリーダムの四肢を拘束する。
 
『よぅし、今だ!全機十字砲火を掛けろ!』
 
「……っ!」
 
その時、捕えられたストライクフリーダムの背中の八枚羽が一斉に射出される。
その八枚羽は自在に動き回り、位置を整えると一斉にビームを放った。
無線攻撃端末…ドラグーンだ。
 
『なっ…何ぃ!?』
 
ドラグーンからの一斉射撃は正確にストライクフリーダムを捕えるヒートロッドを切り離し、ついでに周囲に展開する他のMSをも無力化した。
 
「な…何だと!?あれだけ押していたわが軍が壊滅しただと!?馬鹿を申すな!」
「し、しかし…望遠カメラではアンノウンを残して味方のMSで動けるものはおりません!」
「ほ…本当にフリーダムだと言うのか……!」
 
離れた所から戦況を見つめていたザフトの母艦もその顛末に唯驚愕するしかなかった。
 
「艦を転進させろ!本国に戻ってこの事を報告せねばならん!」
 
『キラ、あの艦を逃がすわけには行かないぞ!奴等はプラントに戻って僕達の事を告げるつもりだ!』
「分かってます!」

キラはストライクフリーダムに加速を掛け、ザフトの艦を追いかける。
ある程度の所まで接近し、ストライクフリーダムの射程内に艦を据えた所でドラグーンを展開させ、その場に固定する。
 
「目標が大きくては動きを止めるのは難しいけれど、これだけあれば…当たれぇぇ!」
 
ストライクフリーダムの全ての砲門からの一斉射がザフトの艦に向けて放たれる。
それは正確に艦の砲門や推進装置を狙い撃ち、艦としての機能を停止させた。
 
 
「わたくしは…ずっとこのままなのでしょうか……」
 
ブリッジに戻らず、窓から見える暗い宇宙に目を細め、ラクスは呟く。
周囲から期待される自分とそれに応える自分。本当は何もしなければ周りの人々を巻き込むことなど無かったのだ。
そもそも行動を開始した理由となった出来事が正体不明のコーディネイターによる襲撃だが、それは自分が前大戦を終結に導いたプラントの歌姫で、
有名人であった事が原因だと考えていた。プラントではラクスの名も、クラインの姓も大きな意味を孕んでいるからだ。
ならば二年前に行動を起こしたのは間違いだったのか…否、それならばプラントでアイドルなど気取ってしまった事が発端か…自分が生まれてしまった事が……
原因を突き詰めればキリが無い事は良く分かっている。行き着く先は世界を呪う事だけである。
周りの期待に応えれば応えるほど皆を巻き込んでしまうが、それは自分が本当に望む事ではないという矛盾が内なるラクスを悩ませていた。
気丈なラクスは周囲に気を遣わせまいと平静を装ってはいるが、唯一キラにだけは本心を覗かせる。
キラもそのラクスの心情を理解しており、その時は優しく微笑むのだ。
かつて自分が挫けそうな時にラクスがそうしてくれた様に、今はキラがラクスを支えている。
 
「キラ…わたくし、このままで宜しいのでしょうか……本当に…このまま進んでも……」
 
キラに甘えきれないラクスは誰も居ない場所で力無く呟く。そのか細い声はラクス以外存在しない空間に吸い込まれていく。
エターナルの無機質な機械音だけが返事をするでもなく、ただ鳴り響いていた……