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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第34話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:41:00

第三十四話「憎しみの季節」

再び起こったオーブでの戦闘。それは次第に激しさを増していた。
その中で、突如現れたストライクフリーダムに、シンは動揺を隠せないでいた。
そして、次いでアークエンジェルと交戦するミネルバのブリッジに新たに上空から現れた物体の報告が入る。

「何が落ちてきたの!?」
「た…大気圏突入カプセルです!……中から何か出てきます!」

赤く、隕石を思わせる大気圏突入カプセルはやがてバラバラになり、中からは三機の黒いMSが姿を現す。

「宇宙からのザフトの増援は!?」
「待って下さい…情報が混乱しているようです……出ました!……全て…撃墜されています!」
「全て撃墜……!?そんな馬鹿な!」

『みんな気付いているか?空からお客さんだぜ』

ハイネからミネルバのパイロット全員に通信が入る。

「この感じ…迷惑な奴…フリーダムっていう奴が来たのか?あれで生きていたとは!」

カミーユがキラの存在を察知する。その時視界にアカツキが一瞬だけ入る。

「あれ、今の百式なのか?……宇宙から降りてきたのは……アングラの出版物で見た事がある…MS-09!一年戦争のMSが何で!?」

カミーユの目の前に信じられない現実が広がる。
フォルムが違うとはいえ、アカツキの金色の外見はカミーユに自分の世界でのMS"百式"を連想させる。更にはカミーユにとっては骨董品にしか見えないずんぐりとしたMS、ドムが三機降りて来たのだ。

「何なんだこれ……こうも僕の世界のMSだらけなんて……」

あまりの事にカミーユの思考が絡まる。しかし、Ζガンダムにそっくりなムラサメ、インパルスをはじめとする"G"と呼ばれるMSはどう見てもガンダムである。それにザクやグフ等、外観は違っても同じ名称のMSはいくらでもあった。
そんな事を思い出し、カミーユはドムも百式っぽいアカツキも今更の事と割り切り、頭の中を処理する。

「もう一機?」

ふと、カミーユは気付く。それまでの派手な登場の仕方の敵増援とは明らかに毛色の違う、おとなしい登場をするMSを見つけた。
その姿はハイネのセイバーよりもくすんだ赤で、間接はシルバーに塗られている。
しかしそれは戦闘に参加する事無く、アークエンジェルの方向へ向かって行った。

「何なんだ一体…!?」
『カミーユ!宇宙から降りてきた三機は俺とお前とルナマリアで対応するぞ!』
「レイは!?」
『シンの援護に向かわせた!』
「了解!ミネルバはどうなっている!?」
『友軍の艦から援護が出た!心配するな、デブ退治に行くぞ!』

ハイネはその外見からドムをデブと呼んだ。カミーユは安直だな、と内心で苦笑しつつ二人と共に三機のドムの元へ向かって行った。

「お前は俺が倒したはずだろ!何でまだ生きている!?」

咆哮を上げるシンがストライクフリーダムに躍り掛かる。カガリと出会った事、自分が倒したはずのキラがまた自分の前に現れた事がシンの心の余裕を奪っていた。
キラはデスティニーのビームライフルをかわし、敢えてビームサーベルによる接近戦を仕掛けた。アロンダイトを破壊した事で、接近戦におけるデスティニーの戦闘能力は落ちているだろうと踏んだのだ。

「応えろ!お前は俺の邪魔をする為にここに来たのか!?」

ストライクフリーダムのビームサーベルをフラッシュエッジで受け止め、シンはキラに問い掛ける。

「君は…インパルスの!」

シンの声を聞き、瞬間的にキラはデスティニーのフラッシュエッジを弾き、体当たりをかまして引き離した。前回のシンとの戦いで芽生えた潜在的な恐怖心が、直感的にシンを近づけてはいけないと反応した。

「んぐ…こいつぅ!」

シンはカミーユとの模擬戦で見せた高速機動攻撃を繰り出す。
キラは初めて遭遇する未知のMSの動きに戸惑った。

「残像…!?何処から……!」

虚を突かれたキラは動きを止めてしまう。そして、シンが攻撃してきたのはストライクフリーダムの背後からだった。

「くっ!」

キラはそれを何とかシールドで受け止めるが、直後に反対側の背後からビームが飛んでくる。

「くそっ!」

それにも対応したキラは流石といった所だろう。しかし、打開策が在る訳でもなかった。

「インパルスのパイロット…あの時よりも更に強くなっている!」

方々からの攻撃を何とか防いでいたキラだが、シンの成長に驚いていた。

「何がフリーダムだ!?俺の動きについてこれないお前の何処が自由だ!」

だが、ひたすら背後を狙うシンの攻撃は徐々にパターン化し、キラがそれに慣れるのに時間は殆ど必要としなかった。

「そこっ!」

見切られたシンの動きはキラの予測に引っ掛かり、待ち伏せして構えていたストライクフリーダムのビームライフルに捉えられる。
その攻撃をシンはギリギリで防御したが、背後狙いを繰り返した結果、それが習慣化して更なる待ち伏せを受ける。

「読まれてる…乗せられた!?」

シンは仕方なくオールレンジ機動を止め、ストライクフリーダムと向かい合う。
デスティニーの高速機動は機体だけでなく、パイロット自信にも大きな負担を掛ける。それ程長い間行っていたわけでもないのに、シンの体は思った以上に疲弊してしまった。

「く…少し気持ち悪い……!」

直角に曲がるようなデスティニーの動きは曲がる時に強烈な重圧をパイロットに与える。勿論、少しでもそれを緩和する為にコックピットシートにも仕掛けが施されているが、所詮は付け焼刃的なものでしかなかった。
胃の中を猛烈にシェイクされたシンは、多少の嘔吐感をもよおし、精神的にげんなりしていた。加えて、一番負担が掛っていたのは首だった。ストライクフリーダムの相手に、このコンディションでは絶望的に不利である。

「!?」

シンが一旦退こうかと思ったその瞬間、ストライクフリーダムを別方向からのビームの束が襲った。
ひらりと避けるストライクフリーダム、視線はビームを放った相手…レジェンドに向いていた。

『シン、動きを止めるな!奴が復活したというのなら、もう一度討つのが俺達の使命だ!』
「レイ!」
『コンビネーションで決着をつける!仕掛けろ、シン!』
「わ…分かった!」

不調を押してシンは再び高速機動を始める。一度は見切られた動きだが、今度はレイと二人掛りでの二面攻撃だ。
次々と入れ替わる二人の動きと常に角度を変える十字砲火に、キラは必死になって避け続けるしかなかった。

「く…!彼等の動き…手強い!」

ストライクフリーダムのコックピットの中で操作するキラの両手の動きは、最早人間のこなせる域を超えていた。思惟が弾け、二機のGに囲まれても決定的な打撃を受けないキラは驚異的であった。
しかし、其処から抜け出せないのも又、事実であった。

アークエンジェルのMSデッキで、先程の機体が崩れるように入り込んできた。
素人が操縦していたのであろう、あちこちに機体をぶつけ、機材が飛び散る様はちょっとした嵐の後になっていた。
その機体のハッチが開き、出てきた人物にアスラン=ザラは驚愕した。

「申し訳ありません……」
『マイド、マイド、ミトメタクナイ!』
「ラクス……!」

ピンクの派手なパイロットスーツに身を包み、かつてアスランが製作し、ラクスにあげたハロを伴って降りてくる。

「君が直接MSに乗って来るなんて……」
「キラに連れてきてもらいました」

ヘルメットを取り、パイロットスーツと同じ色の髪が柔らかく舞う。

「…これは、ジャスティスか……?」
「そうです」
「俺をこれに乗せる気か?」
「強制は致しません。ですが、これは貴方が乗るのに相応しいと思って持ってきました」
「ふざけた事を…俺はカガリがオーブに還る事には協力するが、君達の軍事行動には協力しないと言った。だから、この機体はバルトフェルドさんにでも預ければいいだろ。俺は戦いたくない……」

アスランは横を向いてラクスから視線を外す。しかし、ラクスはそれに構わずに続けた。

「貴方が何を思おうと貴方の自由です。しかし、貴方がカガリさんを守ろうと思っているのなら、このオーブを守る為に今は力が必要なのではないでしょうか?今のままでは、貴方は余りにも無力です」
「俺はザフトだ!同胞を敵に回してまでして戦いたくは無い……」
「そうではないのです。貴方がアスラン=ザラである為に、わたくしは今はこれに乗ることが正しい事と思っています。ここでジャスティスに乗らないという選択もあるでしょう。ですが、それではきっと後で後悔する事になると思います」
「…俺にカガリの為に同胞殺しをしろと言うのか…ラクス!」
「違います。カガリさんを救う為にこれに乗ったほうが良いと言っているのです。それが、貴方の為ににもなりましょう……」
「く……」

アスランの思考が廻る。仲間のザフトと大切なカガリ…二つの錘が天秤の上で拮抗する。
アスランは未だにミネルバに帰還することを諦めていない。カガリがオーブへ戻る事を見送った後に戻るつもりだったのだ。
しかし、今このインフィニットジャスティスで出て行けば、恐らくその望みは殆ど断ち切られてしまうであろう事は分かっていた。
戦力的に予断を許さないオーブの状況を考えると、それでもインフィニットジャスティスに乗らない訳にはいかないということも分かっていた。

「もしかしたら、俺はジャスティスに乗ったままザフトに戻ってしまうかもしれないぞ」
「それが貴方の意思であるなら構いません。ですが、それが貴方が本当に望む事では無いと信じております」
「……っ!」

眉間に皺を寄せるばかりでアスランは中々決意を固めない。

「…こうしている間にも、兵士達は戦い、その命を落とし続けています。アスラン=ザラはこのような時にもそうして頭を抱えているだけですか?見て見ぬ振りをしてやり過ごす事が貴方ですか?」
「口ではそう言えるがな……」
「考えてください、アスラン。ここでオーブを見捨てるのであるか救うのであるかを…そして、決めてください。貴方にはそれが出来るはずです…あの戦争で辛い経験をなさった貴方なら……」
「だが…俺は……」
「何かしたい時、何も出来なかったらそれが一番辛いよね……キラはそう言っていました」
「……」

ラクスがそう言い終えると、少し考慮した後に、アスランは無言のままインフィニットジャスティスの元へ向かう。そして、そのままコックピットに乗り込むと、ブリッジに発進の合図を呼びかけた。

「ブリッジ!アスラン=ザラがジャスティスで出る!発進のタイミングを教えてくれ!」
『え…!何が!?』
「アスラン=ザラがジャスティスで出る!発進のタイミングを教えてくれ!」

半ばやけくそに近いアスランの怒声に、応対に出たミリアリアも困惑する。
その事をラミアスに相談した所、それがラクスの意思でもある事を悟ったラミアスは許可を出す。

『了解、20秒後に前方の進路を開けるわ。出撃後はそのままキラの援護に向かって!』
「了解」
『カウント開始します!』

アークエンジェルのカタパルトハッチが開かれていく。その先にちらりとミネルバの姿が見えた。
アスランはそれを視界に入れることに罪悪感を抱き、目蓋を下ろす。

いつからこうなってしまったのだろうか。アスランは、アークエンジェルの面々に嫌悪感を抱きながらも憎みきれなかった。
それは単にアークエンジェルに長居しすぎただけではなく、元々潜在的に存在していたアスランの根幹にある気持ちがそうさせたのだろう。
拉致された形になったキラを憎みきれず、ラクスの言葉にもどこか気を許してしまう辺り、自分は二年前と一切変わっていない証拠だろうと思う。否、変わろうとして失敗したと言った方が良いかもしれない。
結局このような形でザフトを離れるのなら、最初からもっと素直にアークエンジェルに馴染んでおけば良かったとさえ思える。
それが最低な感情である事を分かっていながらも考えてしまうのは、自分が根っからのどうしようもない人間の証だろうと自嘲する。
しかし、オーブに侵攻してくるザフトはどうしても許せなかった。それはカガリに惚れてしまった故の悲しい性なのかもしれないが、それが自分なのだから仕方ないと自らに言い訳するしかない。

ふと、ミネルバの面々の顔が浮かんでくる。その記憶は、アスランの心に大きな負い目となって圧し掛かる。

『カウント5秒前!4、3、2、1…ジャスティスどうぞ!』
「アスラン=ザラ、ジャスティス出る!」

アスランは目を見開き、アークエンジェルより鶏冠のついたGが飛び出す。
目の前にはミネルバ…しかし、その攻撃はラミアスが上手く前方から逸らしていた為、アスランは難無くその場を抜ける。
新生ジャスティス…インフィニットジャスティスの初陣であった。

インフィニットジャスティスが飛び立って行った後、ラクスは誰にも見られない場所で深い溜息をついた。本音を言えば、アスランにMSを託すのは一か八かの賭けである事はキラから聞いていた。
しかし、それでも自分の成さねばならない役割はアスランにインフィニットジャスティスを託す事であると、これまでの自分の行動から解釈していた。
周囲の期待に応えるにはこうするしか道が無いとラクスは思う。
既に一本の道しか見えていないラクスは掛け離れていく自分の想いと行動に辟易し始めていた。

「結局、わたくしはこのような事しか出来ないのですね……」
『ワカサユエノアヤマチ!ワカサユエノアヤマチ!』
「ピンクちゃん……」

ピンクのハロの言う事が今のラクスには最も当てはまった言葉だろう。それに気付かずしてラクスの安住は無い事を、ピンクのハロは知っているかの様であった。
しかし、今のラクスにはその事に気付けない周囲からの期待を纏っている。その期待を脱ぎ捨てない限り、彼女はずっとこのままだろう。
それは、ラクスの人生の錘にしかならない。そして、その錘は少しずつラクスを押し潰していっている事に誰も気付いて居なかった。

オーブに加勢した三機のドムトルーパーのパイロット、ヒルダ、ヘルベルト、マーズは良く訓練された兵士だった。オーブ本土に侵攻してきたザフトのMS群を相手に、三機でのコンビネーションで獅子奮迅の活躍を見せる。
紅一点のヒルダを隊長に他の二人がサポートに回り、並み居る敵を寄せ付けない。
三位一体の攻撃"ジェットストリームアタック"は攻防一体の戦術で、一列に並んだドム三機は通りがかるだけで爆発の花火を打ち上げていった。

「ヘルベルト、マーズ!このまま一気に押し返すよ!」

ヒルダが高揚した声で二人に話しかける。

『ですが姐さん、これでは余りにも歯ごたえがありませんぜ?』
「馬鹿言ってんじゃないよヘルベルト!ここで手こずってたらラクス様の為にならないじゃないか!」
『そうですよ、ヘルベルト。私たちの目的はオーブからザフトを追い出す事。この戦闘は楽しむ為のものではない事は分かっているでしょう?』

ヘルベルトの発言にマーズが横槍を入れる。

「その通りだよ、マーズ!いいね、ヘルベルト、勝手な事はするんじゃないよ!」
『了解了解!姐さんに嫌われたくないですからね!』
「ふん、殊勝だね…今の言葉、忘れるんじゃないよ!」
『二人ともそこまでにしましょう。新手が来ましたよ!』

マーズが二人に警告する。

「おや…?あれは噂のミネルバとやらの……」
『へへっ、こいつは大物だ!姐さん、俺の願い、叶いそうですぜ!』
「いいだろう…ガス抜きの相手にしてやんな!」
『『了解!』』

三人の視線の先にはセイバー、インパルスそしてウェイブライダーがいた。

『相手も三機だ!俺達と奴等…どっちの連携が上かで勝負がつく!遅れを取るなよ!』
『了解!赤の実力、見せてやるんだから!』
「ドムが三機…油断は出来ないな!」

ハイネのセイバーを中心にインパルスとウェイブライダーが散開する。
空中戦の出来ないドムを相手にするならば、このまま空中から攻撃した方が有利である。

「ちっ…はしっこいね!敵が散開しているなら固まっているのは危険だ!こっちも散開するよ!」

ヒルダの号令と共に三機のドムはそれぞれの相手に向かって散開する。
マーズはカミーユへ、ヘルベルトはルナマリアへ、そしてヒルダはハイネの下へ向かっていった。

「何だ奴等!連携取らずに各個撃破するつもりか!?」

セイバーが向かってくるヒルダのドムに向かってプラズマ収束ビーム砲を放つ。

「はっ!見え見えなんだよ!くらいな!」

ホバー移動のドムは四輪車がドリフトをする様にスライドして手に持ったバズーカ砲からビームをセイバーに見舞う。

「下からご苦労さん!」

セイバーもそれを事も無げにかわす。
空中対地上では圧倒的にセイバーの方が有利であるが、それを感じさせないのはドムの運動性がホバーのお陰で思った以上に高いせいでもある。
それはルナマリアとヘルベルトとの対決にも同じ事が言えるが、如何せん射撃が苦手なルナマリアはドムの運動性の高さに、攻撃を当てられる気がしなかった。

「ちょこまかと鼠みたいに!何で見た目通りの動きじゃないのよ!」

苛立ちを見せるルナマリアだが、空中に陣取る利点を生かしてビームライフルを連射する。

「無駄無駄!そんなアバウトな狙いじゃ俺を捉える事など出来ないぜ!」

インパルスの射撃を嘲笑うかのごとく、ドムはその外見からは想像出来ない動きでルナマリアを翻弄する。

「そんな所に居ないでこっちに降りて来いよ!俺と遊ぼうぜ!」

挑発するようにドムが意味不明な無駄な動きをする。それはルナマリアを馬鹿にしている様で、不愉快な動きだった。

「あったまきた!そんなにやられたいなら、行ってやるわよ!」

挑発に乗ったルナマリアはインパルスにビームサーベルを引き抜かせ、ヘルベルトのドムに向かって突進する。

「まんまと乗ってきたか!それじゃ、こっちもお前に合わせてやるよ!」

ヘルベルトもドムにヒートサーベルを抜かせる。突進してくるインパルスに対して真っ向から挑もうとしていた。
しかし、インパルスは一撃をドムに防がれるとそのまま駆け抜けて再び空中に逃れた。

「こいつ…やる気あんのか!?」

ルナマリアの行為に怒りを顕わにするヘルベルト。それに対してルナマリアは彼よりも落ち着いていた。

「一々付き合ってあげられますかっての!あんたなんかこれで十分よ!あたしはさっさとあんた等を倒してアスランを探しに行くんだから!」

対峙するこの二人も決定的な勝敗が着きそうに無い。
そして、もう一組の対戦は膠着状態の二組とは違い、ウェイブライダーから変形を解いたΖガンダムがマーズのドムと同じ土俵で戦っていた。

「こいつが噂のΖガンダム……どの程度のものか見せてもらいましょうか」

バイザー越しの眼鏡が怪しく光る。
マーズはバズーカを放つ。カミーユはそれを事も無げにかわす。

「いい動きをしますね…ですが、ドムの動きに付いて来れますかね!」

ドムのモノアイが光り、Ζガンダムに正面を向けたままスライドを始める。
順次放たれるバズーカのビームを避ける為にΖガンダムは空中にジャンプする。
それを追いかけてドムもジャンプし、サーベルを引き抜いてΖガンダムに躍り掛かる。
カミーユはそれをシールドで防いだが、ドムの胸部にある砲門らしき穴にエネルギーがチャージされているのが目に入った。攻防一体のスクリーミングニンバスである。

「空中では身動きが取れまい!」
「目眩ビーム…違う!」

瞬時にカミーユは察知して、ウェイブライダーに変形して逃げる。

「ぬ…!逃がしましたか……!」

ドムはそのまま地上に降り立ち、Ζガンダムも変形を解いて離れた場所に降り立ってビームライフルを構える。

「厄介ですね、可変型は」
「ジブリールはまだ捕まらないのか?」

マーズを相手にしていてもカミーユが気に掛けるのは作戦の成否である。
オーブの抵抗を黙らせるのが一番の近道であると知りながらも、ジブリールがザフトによって捕えられればこの戦闘は終わる。それまでは出来るだけ敵を倒したくは無いと思っていた。
カミーユはドムの足元をビームライフルで狙う。

「当たりませんよ、それでは!」

マーズはホバーで簡単にかわすが、仕掛けてこないΖガンダムに違和感を覚えていた。

「何故仕掛けてこないのですか……余裕のつもりですか!」

舐められたと思ったマーズのドムは胸部の砲門からスクリーミングニンバスを放ってΖガンダムに突進する。それはバリアのようにドムの前面を包み、瓦礫を破壊しながら突っ込んで来る。
Ζガンダムがビームライフルを撃つが、それは弾かれてしまった。

「さあ、かわせますか!?」
「く…!」

ほぼ無敵状態のドムを相手にカミーユは逃げるしかない。ウェイブライダーに変形し、空中へと逃れる。

「又ですか…私も見くびられたものですね!」

ドムがその巨体に見合わぬ加速でスクリーミングニンバスを纏ってジャンプしてくる。カミーユもウェイブライダーに加速を掛けてかわすが、一度地上に着地したドムは再びジャンプして追いかけてくる。

「バッタかよこいつ!?」
「いつまで持ちますかね!」

逃げるカミーユと追いかけるマーズ…この両者も決着が付きそうにない。
三人がそうこうしている内に、ストライクフリーダムと抗戦するシンとレイの下にアークエンジェルからの増援が駆けつけてきた。

「ん…何だ、あれは?」
『レイ…見た事ないか、あれ……!』

ビームライフルを撃って邪魔をしてきた機体を見て二人が動きを止める。

「あれはジャスティス!アスラン……」

何とか持ち堪えていたキラはインフィニットジャスティスの介入に胸を撫で下ろす。デスティニーとレジェンドに攻撃したという事は、アスランはオーブの味方になってくれるという事だ。
苦戦していたキラにしてみれば、助け舟である。

『ミネルバのパイロット二名に告ぐ』

インフィニットジャスティスからデスティニーとレジェンドの回線に通信が入る。

「この声…アスラン……!」
「本当に生きていたか……」
『それに乗っているのはシンとレイだな?直ぐにオーブから撤退するようにタリア艦長に進言してくれ、お前達の行為は侵略そのものだ』
「アスラン=ザラ…その前にこちらの質問に答えてもらおう。何故貴方がそちら側の味方をするのか…」
『力尽くでジブリールを捕獲しようなどと考えるザフトに正義は無い。俺はそれを止めるために!』
「それがザフトを裏切った貴方の言い分か…」
『レ…レイ……』

動きを止めた四機のG。アスラン一人の介入でそこだけ戦闘が止まってしまった。

『お前達ザフトが間違った方向に進もうとしているから、それを正す為に俺はオーブの味方に付いた。ザフトの行為が平和に向かっているようには思えない』
「逆だな、アスラン=ザラ。ジブリールを匿うオーブこそ、この戦争を長引かせている原因と言える。自らの事を棚に上げて、こちらを悪く言うのは止めて貰おう」
『なら、お前達が正しいと言えるのか?ジブリールを渡さないからって力に頼って侵攻して来るザフトが正しいと言えるのか!』
『さっきから聞いてりゃ……!』
『!?』

レイとアスランの会話にシンが割り込んでくる。

「アスラン!あんた、そんな正しいだの間違ってるだの言う前に俺達に言う事があるだろ!?生きてたなら何でミネルバに戻って来なかったんだ!?」
『それは……!』
「答えろよ、アスラン=ザラ!このまま裏切り者として俺達と戦う気か!?」
『アスランはそうじゃなくて…!』
「フリーダムっ!お前は黙ってろ!」
『お…俺は……!』

覚悟は決めていたが、いざ裏切り者と言われるとアスランは黙ってしまう。彼が思っていた以上に精神的にズシリと来るものがあった。

「……アスラン、お前がこれ以上何も言わないのなら俺達はお前を裏切り者として処分する」

レジェンドがビームライフルをインフィニットジャスティスに向けて構える。

「させない!」

キラはその間にストライクフリーダムを滑り込ませた。

(フリーダム……キラ=ヤマト……!)

レイの表情が更に険しく変化する。

『シン、お前がアスランの処分をしろ。俺はフリーダムを排除する…!』
「レイ……」
『アスランはもう敵だ。奴がフリーダムの味方をする以上、奴はもうミネルバに戻る気は無い』
「……」
『いいな、奴は俺達を裏切ったのだ。信じていたお前の気持ちを裏切ったのだ。奴はアークエンジェルに捕まっていたのではない、進んで奴等の仲間に入ったんだ…今の仲間である俺達を見限って、昔の居心地の良い仲間の下へ逃げたのだ』
「アスラン…ザラ……!」
『その気持ちを奴にぶつけろ。邪魔をするフリーダムは俺が落とす。そして終わらせるのだ、戦争を!』
「アスラン=ザラァァァァッ!」

叫ぶが早いか、シンはアスランに対して躍り掛かった。体調不良も怒りで忘れる程シンは興奮していた。

「シン!?」

アスランは猛スピードで接近してくるデスティニーにビームライフルを放つ。
しかしそれをシンはあっさりかわすと、手にしたビームサーベルを躊躇無く振り下ろす。

「止めろ、シン!」

アスランはそれを脚部の爪先にあるビームサーベルで蹴り上げる。

「これ以上オーブを傷つけるな!ここはお前の故郷だろう!?」

シンは問いかけるアスランの声を無視して再度ビームサーベルを振り下ろす。

「関係有るかよ!?あんたが敵になった事とオーブが俺の故郷だって事が関係あるのかよ!」
『俺はお前が自分の故郷を傷つけるのを止めたい!』
「なら…今すぐにフリーダムを落とせよ!俺達の敵になるなよ!俺達を裏切っておいて勝手なことを言うんじゃない!」
『!?』

インフィニットジャスティスはデスティニーのビームサーベルをビームシールドで受けていたが、それを弾き飛ばしてビームサーベルの柄を取り出す。
インフィニットジャスティスのビームサーベルは他の一般のビームサーベルとは違い、二本の柄を連結し、その双方から刃が伸びる。

『言った筈だ!今のザフトの進む道が間違っているから、それにお前達が利用されているから…俺はそれを正したいだけだ!』
「都合のいい言い訳を…!そんな事決める権利があんたにあるのか!?あんたは正しいのかよ!」
『俺はザフトに復隊する時にデュランダル議長に抑止力になるように言われた!フェイスに任命されたのはその証だったんだ!』

自分は馬鹿だと思った。インフィニットジャスティスに乗って戦場に立った時点でそんな言い訳など通じるはずなど無いのに、それでも言ってしまった。
デュランダルの言葉を自分の都合のよい風に解釈し、自分の方が正しいのだと思い込みたかった。
半ばヤケクソで出てきてしまったとはいえ、言い訳でもしなければやってられない気分には違いない。
シンは、そんなアスランの気持ちが透けて見えているかのようにアスランの言葉を歯牙にもかけない。

「ふざけるな!ザフトを裏切って…一人の女をダメにして置いて、何が抑止力だ!あんたのやっている事は余計に問題を増やしているだけじゃないか!」
『女…!?』
「あんたが居なくなってルナがどれだけ苦しんだか…あんた分かってんのか!?」
『ルナマリア…しかし、俺にそんなつもりは無かった!』
「なら、何でもっと早くその事をルナに伝えなかったんだ!あんたがいつまでも曖昧な態度で居たから!」
『俺にそこまで責任は取れない!』
「この…無責任野郎ぉぉぉ!」

完全に頭に血が昇ったシンは、目の前のインフィニットジャスティスに無我夢中に攻め立てていく。

「……!この感じ…アスラン!?」

マーズと交戦中のカミーユがアスランの存在を感知する。

「止まった…?それが命取りですよ!」

サーベルで仕掛けるマーズだったが、そこをΖガンダムのグレネードランチャーに狙われる。

「む…!」

それをかわそうとしたが、弾頭に備えられたワイヤーがドムの腕に絡まる。捕えられたドムはΖガンダムに引っ張られ、態勢を崩す。

「何ですと!?」
「おとなしくしてろ!」

バランスを崩されたドムのランドセルをビームサーベルで破壊し、そのままワイヤーを切り離して放り投げると、カミーユは膠着する二人の下へ向かっていった。
その頃のハイネとルナマリアは、合流して二人でヒルダとヘルベルトを相手にしていた。そこへΖガンダムがやって来る。

「カミーユ!」
「やったのか、カミーユ!?」

二人がカミーユに問いかける。

「あれは…マーズがやられちまったってのかい!?」
『姐さん、慌てなさんな!レーダーに反応は残っている、死んじゃいないぜ!』

「止めは刺しちゃいないが…とにかく今はこいつ等を倒して……!」
『どうしたカミーユ?そんなに慌てて…』
「詳細は後だ!」

時間を焦るカミーユはヒルダとヘルベルトのドムに向かっていく。

『カミーユ、どうしたの!?』
「俺が知るかよ!」

ハイネとルナマリアもそれに続く。

『姐さん!』
「ちっ…!こっちはマーズが欠けてるってのに、二対三じゃこっちが不利だね……腹立たしいけどここは一旦退くよ!」
『了解!』
「マーズの回収、忘れるんじゃないよ!」
『合点でさぁ!』

三人が仕掛ける前にヒルダとヘルベルトは退いて行く。

「逃がすもんですか!」
『ルナマリア、追撃はいい!』
「カミーユ…何でさ!?」
『そうだ、どうしてだカミーユ?』
『二人とも俺に付いて来てくれ。俺の勘に間違いが無ければ…そこにアスランが居る!』
「!?」

ルナマリアの表情が一変する。

『何処なの、カミーユ!』
「こっちだ!ハイネも!」
『あ…あぁ!』

ハイネとルナマリアはカミーユの後について飛び立っていく。
そこで待ち受けるのは更なる修羅場であった。