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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第35話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:41:13

第三十五話「オーブに死す その1」

オーブの国防本部に辿り着いたカガリはユウナを捜していた。ユウナはそこにはおらず、カガリの帰還を喜ぶ兵達のみで、その行方は知れなかった。
カガリはその場を追い着いてきたキサカとソガに任せ、本部に居た兵士数人を伴ってユウナ捜索に出た。
 
「何処に逃げたユウナ……」
 
護衛の兵士が突き当たりを曲がると、その場で足を止めてしまった。
カガリは何事かと思い、角の先に顔を出すと、其処にはユウナとその護衛が銃を構えて待ち伏せしていた。
 
「ユウナ……」
「待っていたよ、カガリ。さぁ…第二ラウンドと行こうか」
 
ユウナは側にある部屋の扉を指差し、カガリを手招きする。
 
「一対一でやろう。お互い物騒な物は出しっこなしで純粋な話し合いをしようじゃないか」
「カガリ様!彼の言う事など聞いてはなりません!貴方を陥れる為の罠です!」
 
ユウナの提案を当たり前のようにカガリの護衛が拒む。
 
「疑うのも尤もだけど、僕はそんな事はしないよ。心配ならカガリに銃を持たせればいい。僕は手ぶらで行かせて貰うけどね」
 
そう言ってユウナは両手をヒラヒラさせて何も持っていないことをアピールする。
 
「信用できるものか、そちらの手は読めている!どうせ伏兵が紛れているのだろう!?」
「まさか…僕に同調してくれたのはここに居る彼等で全てさ。それ以上の隠し玉なんて用意できるはずもないじゃないか」
「それもブラフであろう!カガリ様を亡き者にせんと企んでいる事はすでに分かっておるのだ!」
「止さないか…最初から疑って掛っては何も進展がない」
 
カガリが前に出て興奮する護衛を諌める。
 
「しかし…カガリ様、万が一という事もあります。その万が一で貴方を失うわけにはいかんのです」
「……」
「それでも行くと仰るのならこの防弾チョッキを御付けになって下さい」
「だが…これではお前が万が一の時……」
「構いません。これが役に立つのなら私の命など捨ててしまっても構いません」
「心配しなくても大丈夫だよカガリ。おい」
 
ユウナが合図を掛けると、ユウナの護衛達は手にしていた銃火器を全て放る。
 
「さぁ、君の望む舞台は揃えたよ。後は君が返事をするだけだ」
「そんなもの決まっている。Yesだ」
「よろしい……」
 
カガリとユウナは部屋の中へ入っていく。
残されたカガリの護衛達は戸惑っていた。

「お、お前達…一体何が目的なのだ?ユウナ殿の目的は一体何なのだ!?」
「君等に教える必要は無い。ユウナ様とカガリ様の対談が終わった時にその答えが出る」
「……!」
「我々はここで待つのみ。君等も黙って待っているが良い」
 
残された護衛達は薄暗い通路で、唯黙って時が過ぎるのを待っていた。
 
 
「さて…先ずは誤解を解いておかなければならないね。ジブリールを引き渡さなかったのは父上の独断だ。僕は彼を渡しても良いと思っていた事を伝えておくよ」
「その位は分かっている。そんな事より聞きたいのはジブリールの行方だ。何処に彼を隠した?」
「さぁ?僕はジブリールとは会っていないからね…恐らく父上が匿っているのだろう」
「……」
 
カガリは疑いの眼差しでユウナを見つめる。カガリはユウナの言葉を信用していなかった。
 
「疑っているようだけどね、本当に僕は彼の行方が分からないんだ。ただ…」
「ただ?」
「この混乱に乗じてやる事は一つだろうね……」
「何だそれは?」
「マスドライバーによる宇宙への脱出…多分今頃父上がジブリールをシャトルに乗せている頃だろう」
「なっ…!それが分かっていて何故!?」
「マスドライバーへの通路は複数ある。加えて金で父上に抱き込まれた兵達も居る。一応指示は与えておいたけどね、直ぐには捕まえられないだろう」
「……」
「こんな状況なら、捕まえるだけならザフトの方が早いかもしれない。強攻策に出るくらいだから、余程ジブリールに会いたいようだね、デュランダル議長は……」
「随分と余裕だな?」
「そう見えるかい?まぁ、彼の事は彼にご執心のザフトの方々に任せるとして、そろそろ僕達の本題に入ろうか」
 
ユウナは部屋の真ん中に置いてある二脚の椅子の一つに腰掛ける。いつも通り長い足を組み、もう一脚に腰掛けるよう手でカガリに訴え掛ける。
 
「私はいい」
 
ユウナを信用し切れないカガリはユウナの厚意を拒否し、決して隙を見せないという意思表示をする。その様子にユウナは呆れたのか、肩を竦めて溜息をした。
 
「何度も言うようだけど、今日の僕は君を殺そうだなんて微塵も思っていない。君と僕…とことんまで話をしようと思っているのさ」
「どんな心境の変化だ?この短期間で、お前の気が変わったなどと信じられるはずも無い」
「辛辣だね…君を殺すつもりが無いのは本当さ。けど…君がオーブの国家元首に相応しくないという意見は変わらない」
 
それまでのユウナの目つきから一転、鋭い目つきへと変わる。それはカガリを圧倒する程のプレッシャーを孕んでいたが、カガリもここで引くわけには行かない。
そのユウナの視線に抵抗するようにカガリもユウナを睨み返した。
 
「前にも言ったが、私が国家元首に相応しいかどうかは国民が決める事だ。それをここで決める事はナンセンスだ」
「違うね…ここで君が国家元首に相応しくないと君自身が認める事には意味がある。僕がそれを然るべき場で証言し、それを国民に知らしめれば自ずと君の立場は僕等セイラン家に転がり込んでくる」
「お前やウナトに其処までの人望があるとは思えないな…それでは軍部が最初に疑いを掛けるぞ」

実際、オーブ軍の中ではこれまで主導してきたセイラン家に対する不信感が育ちつつあった。ロゴスが窮地に立たされ、大西洋連合と同盟を結んでいたオーブの立場が悪くなった事が軍部の不信感に拍車を掛けていた事は事実であった。
 
「フフ…言ってくれるじゃないか?けど、もしその証言が君自身の口から出た場合、どうなるだろうね?」
「同じだ。私がお前に言わされていると思われるだろう」
「ところがだ、カガリ?その場合、果たして君の言う通りの結果になるだろうか?」
 
カガリの言う事にも一理ある。しかし、ユウナはそれでも何かあるかのように余裕を見せる。
 
「……どういう意味だ?」
「確かにこの国の民は君を絶大に支持している…一度はこの国をほったらかしにしたのにも関わらずだ」
「……」
 
やはりカガリはこのユウナの言葉には弱かった。一番嫌な所を突かれ、少し顔を顰める。
 
「その君を慕っている国民が君自身からの退陣表明を聞いた時、どの様な反応を示すだろうねぇ?」
「……」
「答えられないかい?それとも、答えたくないのかい?」
「……」

 
カガリの頭の中でユウナの質問に対する答えが引っ掛かっているのを感じた。
出掛かっているのだが出てこない、カガリは嫌な予感がしていた。
 
「何となくは分かっているようだね。いいだろう、先を教えてあげるよ」
 
ユウナは答えないカガリの表情から察し、続きを話し始める。
 
「勿論、最初は君に辞めて欲しくないという声が圧倒的に多いだろうね。中には君の言う通りに僕等の陰謀だと声高に叫ぶ者も居るだろう。けど、そのカガリの退陣表明が最終的にどの様な解釈をされるのか……
それはその時にならなければ分からない事だけれども、放置されたのにも関わらず君の事が大好きな国民は、きっとこう考えるだろうね……?」
 
《我々の事を一番に考えて下さるカガリ様は、オーブを放置した事に責任を感じて元首を辞退なさるのだろう。ならば、そのカガリ様の意見を尊重して、我々はそれを気持ち良く受け入れてやろうではないか!》
 
「なまじ君の事に理解を示しているばかりに、国民はこんな風に考えるんじゃないかな?君を慕う余りにその言葉を信じ、疑う事無くそれを受け入れる……なれば、僕等の下に元首の座が転がってくるよね」
「……」
「まぁ…流石にそこまで上手く行く事は無いと思うけど、こちらから工作員を紛れ込ませて上手く扇動すれば十分可能な事だろう。そうなれば君は用済みだ、もう一度僕のお嫁さんにでもなるかい?」  
何も言えないカガリの様子に余裕を感じたのか、ユウナの言葉にカガリを挑発するような軽さが入り混じる。
 
「例え話だけどね、僕の正しさに気付いた国民はきっと支持してくれるだろうよ」
 
すっかりユウナのペースに持ち込まれたカガリは歯噛みする。カガリにはここから言い返す手札を持っていない。

「君は国家元首を辞退するべきだ。一番この国を大切にしなければならない君が、あろうことか弟に拉致され戦場に乱入しては混乱を撒き散らす。そしてその場でやる事といえば理念を振りかざす事だけ……不愉快だったよ、僕は……」
「オーブを大事にしていないお前が言うな!」
 
カガリの行動を非難するユウナにカガリが強く反発する。最初に戦争参加の口火を切ったユウナだけには言われたくなかった。
 
「私にオーブの国家元首たる資格がないと言い放つなら、それはお前も同様だ!国民に戦争を強い、今もそのお陰でオーブが戦場になってしまっている……!確かに私がしてきた事は褒められたものじゃないが、お前が国家元首に相応しいなどと間違っても思わない!」
「なら、君は僕よりも自分の方が国家元首に相応しいと思っているのかい?それこそ思い上がりだよ、自分の器の大きさを自覚しなさい」
「私は…そこまで傲慢ではない!それこそお前の傲慢を止める為に私はお前に会いに来たんだ!…お前が私に器の大きさの自覚を促すのなら、私はお前の傲慢さの自覚を促す!」
「僕が傲慢だって…?ククク…冗談じゃない……!」
 
カガリに傲慢を指摘され、ユウナの声のトーンが下がる。
 
「カガリ…君は僕をそのような俗物だと思っていたのか?ロゴスが力を落として大西洋連合の影響力が弱まり、その時になってやっと戻ってきた君が僕の存在を認めない……それこそ君の方が傲慢じゃないか!」
「私はオーブ国家元首だ!」
「それが傲慢だと言うのだ、カガリ!」
 
ヒートアップする両者。互いに感情の琴線に触れ、その高揚する気持ちを抑える人物は存在しない。
二人は感情の赴くままに言葉を走らせ、本音をぶつけていく。
 
「僕がこれまでどれだけの貢献をしてきたと思っている?それを忘れた君が、僕を傲慢と言わしめるものは何だ!?」
「国民を蔑ろにする心だ!それはこのオーブという国を蔑ろにする事と同義だ!」
「僕が国民を蔑ろにしている?それは君の方じゃないか!不安定な立場にあったオーブを見捨てて長期に渡る元首の空位期間!そして、その不安定な時期に行った事といえばオーブの立場を悪戯に悪くする破天荒な行為…あの時は連合に従わなければ今頃この国は無かった!」
「お前の言っている事は国という機関を守りたいだけだ!私が言いたいのは国民を守る事だ!国があって国民が居るのではない…国民が居るからこそオーブという国が出来たのだ!そこを履き違えているお前に、私にとやかく言う権利など無い!」
 
腕を薙ぎ、激しくユウナに語り掛けるカガリ。
珍しく顔を紅潮させたユウナはその興奮を抑えきれずに遂に椅子から立ち上がる。
睨み合う両者は一歩も引かず、お互いの持論をぶつけていく。
 
 
ユウナとカガリが意見をぶつかり合わせている頃、ジブリールはウナトの導きの下、大気圏脱出用シャトルに乗り込んでいた。
 
「御苦労です、ウナト殿。これで私はザフトに反撃の矢を放つことが出来る」
「いえ…その代わりですが、事が成就した際にはこの私の事、くれぐれもお忘れなきよう……」
「分かっていますよ」
 
ジブリールはシャトルに乗り込む。
ウナトはジブリールが宇宙で何をするのかを聞かされていた。ヘブンズベースを落とされ、窮地に立たされたジブリールであったが、それでもウナトが彼に協力するのには訳があった。

ジブリールは月に決戦兵器を用意している。
その詳細をジブリールから聞かされ、その威力に確信を持ったウナトはジブリールの口の上手さに乗せられ、オーブを戦場にしてしまったのだ。
先の幻想に目を奪われ、目の前の現実の見えないウナトは戦後の事を考え、少しでも自分の立場が有利になることばかり考えていた。
 
「状況を良く見て判断しろ!このシャトルを無事に宇宙へ上げるのだ!」
 
戦局が落ち着かない今、機を窺うようにしてジブリールはシャトルの中でひっそりと息を潜める……
 
 
その頃、シンとレイがキラとアスランと交戦している所へカミーユ達が辿り着く。
 
「赤いのがアスラン…レイはフリーダムか。援護は必要だな……ハイネ、俺はレイの援護につく!」
『頼む、任せた!』
 
Ζガンダムはフリーダムと交戦するレジェンドの援護に向かう。
 
「あれは……」
 
デスティニーと交戦するインフィニットジャスティスを確認したルナマリアは感情が高ぶるのを感じた。女の勘だろう、インフィニットジャスティスにはアスランが乗っているとルナマリアは直感した。
 
「シンどいてぇ!」
 
ビームサーベルで鍔迫り合いをする二人の間にインパルスが割り込んでくる。
 
「ルナ!?」  
「インパルス…!ルナマリアなのか!?」
『アスランでしょ?それ、アスランなんでしょ!?』
 
インパルスがインフィニットジャスティスに組み付く。
 
「待てルナマリア!」
 
ハイネが追いかける。
 
「く…ルナマリア……セイバー!?オレンジショルダーのセイバー…あれはハイネか!」
 
視界の隅から近寄ってくるオレンジのショルダーアーマーのセイバーを見て、アスランはそれにハイネが乗っていると分かる。
 
「ルナ、離れろ!こいつはもう俺達の仲間じゃない!裏切り者だ!」
 
アスランとの戦いを阻害するルナマリアにシンが叫ぶ。
 
「待ってよシン!嘘よ、そんなの!アスランがあたし達を裏切るなんて…!」
『現実を見ろ!現にこいつはフリーダムと一緒に戦っているんだぞ!俺達の気持ちを、こいつは踏みにじったんだ!』
「嘘よね、アスラン!フリーダムを騙す為に味方の振りをしているだけよね!?」

シンの言葉が耳に入らないのか、ルナマリアは必死にアスランに呼び掛けた。
そこへ更にハイネのセイバーが乱入してくる。
 
「落ち着けルナマリア!アスラン、聞いているだろう!?ハイネだ!」
『ハイネ……!』
「アスラン!お前、絶対に戻って来るって俺に言ったじゃないか!ミネルバに戻ると…お前は遵守すると言った筈だ!」
『だがハイネ…この戦いにザフトの正義はあるのか?ジブリールを引き渡さなかっただけで一方的なこの侵攻にどれほどの正当性がある?俺はザフトがこの様な暴挙に出たときの為に……』
「だからって俺達と戦うのか!?それがお前の正義か!」
『俺だってハイネ達と戦いたくなど無かった!それでも、オーブが焼かれているこの現実を見てしまえばしょうがないじゃないか!この戦いにザフトとしての正義があるのか!?ハイネもフェイスならもっと自分で考えろ!』
『あんたの言ってる事はうそ臭いんだよ!』
 
ハイネの言葉を遮るようにシンがビームサーベルをインフィニットジャスティスに向ける。
 
「待てシン!まだ話は終わっちゃ居ない!」
『これ以上こいつと話すことなんかあるものか!』
『駄目よシン!』
『ルナ!邪魔するならどっか行ってろ!』
 
食い下がるルナマリアに苛立つシンはインパルスの腕を掴んで放り投げる。
 
『シン!』
 
アスランはその様に怒りを覚える。
 
「シン!厳罰物だぞ!」
『ハイネもうるさい!こいつは許しておいちゃいけないんだ!』
 
シンはインフィニットジャスティスに蹴りを入れて突き飛ばす。それをデスティニーが追いかける。
 
「シン…我を忘れているのか……!?」
 
シンが心配に思えてきたハイネはそれを食い止めるべくデスティニーを追う。
放り投げられたルナマリアも姿勢を立て直し、アスランに説得を試みる為に同じく二人を追う。
 
 
一方ハイネとルナマリアを導いてきたカミーユは、レイと共にストライクフリーダムの相手をしていた。
 
「キラ=ヤマトっ!」
 
レイが叫んで背部にマウントされたドラグーンを前面に向け、ビームの束を撃ち出す。キラはそれを宙返りしてかわすが、回避の隙を突いてΖガンダムがビームライフルを仕掛ける。キラはそれもビームシールドで防ぐが、反撃は出来ない。
カミーユがウェイブライダーで突っ込んで来る。
 
「そんな機体じゃ…!」
 
キラはΖガンダムの性能は殆ど把握していた。
以前デストロイとの交戦の折にキラはΖガンダムを破壊している。ストライクフリーダムに乗り換えたキラにとって、Ζガンダムは既に敵では無くなっていると思っていた。

「君から!」
 
おびき寄せるようにキラはクスィフィアスを放つ。
当てる気の無いキラの攻撃は当然の如く回避するカミーユだが、ある程度接近した所で変形を解き、ビームサーベルで躍り掛かろうとしたその瞬間、嫌な予感がカミーユの脳髄を駆け抜けた。
 
「その形態なら…当たる!」  
「く……!」
 
MS形態のΖガンダムが空中で満足いく動きが出来ないのをいいことに、その隙を狙ってキラは腹部のカリドゥスを放つ。
しかし、事前に察知していたカミーユはそれをギリギリの所で回避した。
 
「何…!?」
『貰ったぞ、フリーダム!』
「!?」
 
カミーユにかわされた事にショックを受ける間も無くレイが背後からビームライフルを構える。だが、それに気付いたキラが超反応を見せ、後方に向けられたクスィフィアスがレジェンドを直撃する。
 
『くあ……っ!』
「レイ、下がってろ!」
 
カミーユがその間に再びビームサーベルで斬りかかる。
キラもビームサーベルを抜き、それに対応する。
パワーで圧倒的に勝るストライクフリーダムはΖガンダムを押す。
 
『そんなMSで無茶しないで下さい!貴方が相手では手加減できません!』
「こいつ……!」
 
キラの傲慢とも取れる台詞がカミーユの逆鱗に触れる。キラはシンを認めはしたが、MSの性能で圧倒的に劣るカミーユに対しては余裕を覗かせる。
カミーユは頭部のバルカンを放つが、フェイズシフトを装備するストライクフリーダムの装甲には傷一つ付けられなかった。
 
『無駄な抵抗はしないで!』
「無駄なものか!」
 
先程マーズのドムに片腕のグレネードランチャーを使ってしまったが、もう片方のは残っている。カミーユは至近距離でそれを放ち、弾頭に繋がったワイヤーがストライクフリーダムの右腕を絡め取った。
 
『なっ!?』
 
キラは反射的にクスィフィアスをΖガンダムの腹に向けたが、それに気付いたカミーユはストライクフリーダムの頭上に回り込むように回転する。Ζガンダムが背後を取るような形になったが、キラは力に任せてブーストを掛ける。
 
「うわっ!」
 
ストライクフリーダムのパワーに抗うだけの力の無いΖガンダムはそれに引っ張られるが、カミーユはサーベルを手放してビームライフルに持ち替える。
そのまま照準を合わせたが、それに気付いたキラが動きを止める。
引っ張られていたΖガンダムは慣性に流されしまい、ストライクフリーダムを追い越してたところで伸びきったワイヤーが切れ、明後日の方向へ放られる。

『これで!』
 
放られて態勢を崩しているΖガンダムに向けてビームライフルを構えたが、其処にレジェンドのビームライフルがストライクフリーダムを襲う。
 
『く…二対一じゃ……!』
 
レジェンドの一撃は逸れたが、複数の相手をしていたのでは分が悪いと感じたキラは先にΖガンダムを仕留めようとビームサーベルを構える。キラに取っては幸いな事に、Ζガンダムはまだ姿勢制御が終わっていない状況だった。
 
『カミーユ!』
「こっちを狙ってきた!」
 
レイがカミーユに警告を呼び掛けたが、凄まじいスピードでストライクフリーダムが迫っている。ビームサーベルを捨ててしまったΖガンダムではストライクフリーダムのビームサーベルを捌き切れない。
 
『貰った!』
「やるかよ!」
 
ビームサーベルを手放そうとも、Ζガンダムのビームライフルは銃剣にもなる。
銃口からサーベル状のビームが伸び、ストライクフリーダムのビームサーベルを受け止める。
 
『何で貴方は!?』
「お前なんかにやらせるか!」
 
鍔迫り合いをする両者はそのまま風に吹かれるようにじりじりと移動する。
 
「何でアスランを俺達から裏切らせた!最初からそうするつもりでアスランを攫ったのか!?」
『アスラン…!?違う!アスランは貴方達が間違っているから僕達に協力してくれたんだ!』
「そんな訳あるものか!そうやったお前の勝手な思い込みがアスランを惑わせたんだ!」
『貴方に…貴方に何が分かるって言うんだ!』
 
キラはΖガンダムの腹を蹴り上げようとしたが、両手で銃剣を支えるΖガンダムの左腕が丁度腹の辺りに位置し、ストライクフリーダムの蹴りはシールドに当たってしまう。それでも、その強烈な蹴りはΖガンダムを吹っ飛ばすのには十分な力を持っていた。
 
「力任せにガンガンと……!」
 
ストライクフリーダムの力押しにΖガンダムのパワーでは力不足だった。
しかし、サイコフレームを組み込んだことにより反応速度が飛躍的に向上したΖガンダムは、そんなストライクフリーダムとも互角に渡り合えるほどの可能性は秘めている。
やり様によってはΖガンダムでストライクフリーダムを倒す事も可能だが、戦闘フィールドが空戦である事が影響し、今の所はカミーユにとっては不利だった。
 
『カミーユ、奴の正面はこちらに任せろ!いくらカミーユでも新型のフリーダムは相手が悪い!俺のレジェンドならパワーは互角だ!』
 
レイがカミーユに提案する。

「だが、ドラグーンの使えないレジェンドでは……」
『俺が奴の注意を引き付ける…カミーユにはその穴を埋める為に俺の援護を頼みたい』
「分かった、無茶はするなよ!」
 
カミーユは迂回するようにレジェンドから離れてストライクフリーダムの動きを窺う。
 
「無茶はするさ…キラ=ヤマト、アイツだけは存在を許してはならない……!」
 
秘められたレイの決意が悲壮なまでの覚悟を打ち出す。キラに因縁を持つレイはキラを討つ事に執念を燃やす。
 
 
そんな時だった。一機のシャトルがマスドライバーから射出され、ブースターから大量の煙を吐いて上昇していくのが見えた。
その場に居た全員がそれにジブリールが搭乗していると直感した。
 
「あれは…!」
 
いち早くハイネがセイバーを変形させてシャトルを追いかける。
 
「あれを落とせば…戦争は終わる!」
 
シャトルの加速は速く、変形したセイバーでも正面に据えるのがやっとだった。
加えて邪魔をするウナトの私兵のMS達がハイネの攻撃を遅らせる。
 
「くそっ…邪魔しやがって!そんなに戦争が好きか、お前等は!?」
 
ハイネにとって手こずるほどの相手ではなかったが、お邪魔虫にかまけていた分、シャトルとの距離が開いてしまう。
それでも一縷の望みに賭けてビーム砲を撃つが、ぐんぐんと射程距離を外れていくシャトルに当てる事が出来ず、セイバーは大気圏内での限界高度に達した所でバランスを崩し、きりもみしながら墜落して行った。
 
「くっそぉぉぉぉぉぉっ!」
 
ジブリールを仕留め切れなかったハイネの無念の叫びが、密閉されたコックピットの中で響く……