Top > Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x > lz6TqR1w氏_第40話
HTML convert time to 0.010 sec.


Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第40話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:42:33

第四十話「宇宙(ソラ)へ その2」

『わたくしの行為が逃げであるという非難は甘んじて受けます』
 
カガリの窮している表情を見て取ったラクスが二人の会話に割り込んでくる。
しかし、そこから反論できる術は持っていなかった。
ラクスは人心を集めるカリスマは持っていても、討論に使う弁論術は持ち合わせていなかった。
それでもラクスは少しでも勢いを取り戻させる為、デュランダルに論戦を挑む。
 
『ほぉ…貴方もお話しますか?』
『許されるのでしたら』
『構いません。どうぞ』
『ありがとうございます』
 
一呼吸置いてラクスは語りだす。
 
『この放送を聴いている方々は理解なさっているはずです。人々の自由とは戦争の中では決して見つけられないことを…そして、既にこの戦争は形骸に過ぎないという事も理解しておいでのはずです。
そう、戦う必要は無いのにわたくし達は戦っている……それは、とても悲しい事でしょう。
しかし、戦わねば守れぬもの、救えぬものがあるからわたくし達は戦っているとも言えるのです。だから、そのような時に、わたくし達は戦うのです。それこそが人に与えられた感情であり、自由であるのですから』
 
ラクスはデュランダルだけでなく、世界中の人々に対して語りだした。デュランダルとまともに話した所で勝てる見込みが無いと踏んだからだ。
だからこそ、ラクスは自らのカリスマを発揮して、デュランダルにではなく、世界の人々に訴えかけた。事実、彼女の言葉は人々の心を揺り動かした。
彼女が本物という証拠は無いが、それでもラクスの強烈な記憶のイメージが、人々の心を傾けさせたのだ。
そして、それは追い詰められた時の為のカガリが掛けた保険でもあった。
 
(やはり、ラクスを用意しておいて正解だったか)
 
ラクスを見て、自分に考える時間が出来た事を確信し、次なる一手を考える。
そんなカガリをちらりと横目で見て、ラクスは更に話を続ける。
自分に出来る事はカガリに時間を与える事であると承知していた。
 
『確かに戦いは何も生みません、全てを壊すだけです。しかし、戦う事で失われるはずのものが失われずに済む場合もあるのです。それは、感動的なことです。皆様にも、その事が良く分かるはずです。この二年で、二つも大きな戦争を経験している皆様には、この…』
『ラクス=クライン。私はその様な刹那的な感情を話しているのではないのです。人の感情は得てして自己中心的になり易い。それでは一時の正当性を得られても、本当の救いにはならないのですよ』
 
デュランダルが遂にラクスに話しかけてくる。本当ならこのような展開になった時点でラクスの役目は終わりとなるが、彼女も出来るだけ抗ってみようと決意し、会話にもっていく。
デュランダルにしてみれば、ラクスの一人相撲を止められればそれだけでいいのである。

『そうではありません。人の感情に刹那的な事などありはしないのです。それならば、居なくなってしまわれた人の事を想う気持ちは何なのでしょう?
果てしない喪失感を味わい、いくら生きても故人を偲ぶ気持ちは永遠です。デュランダル議長はそれすらも否定なさるおつもりですか?』
『記憶を失くせばその感情も無くなります。人は所詮その程度なのです。人類は、自らを過大評価したからこそ自我を強固にし続けてきたのです。それは傲慢となり、遂には我々"コーディネイター"という新たな種を誕生させるに至りました。
しかし、その結果はどうだったでしょう?元は同じ種族であったはずのナチュラルと争い、人類全体を巻き込んでいるではないですか。それは、感情に支配されてきた人類の結果なのです』
『違います。人は、その様な矮小で愚かな生き物ではないはずです。感情を持ち、理性を持ち、知恵を得たからこそ今まで生存してきたのです。そして、それはこれからも人が人たらしめて行く限り続いていくでしょう』
『それが人類の傲慢なのです。その証たる愚かな人類を貴方も知っていらっしゃるでしょう?』
『わたくしはその様な人物は知りません』
『いえ、ラクス=クライン…貴方は知っていなければおかしいのですよ。居たではないですか、戦争を続けさせようとしてオーブから逃げたロード=ジブリールが……。彼こそ人類が驕り過ぎた証拠となる人物です。貴方達はその人物を逃がしたのです』
『……』
 
ラクスは黙ってしまう。ジブリールの名前を出されれば流石に彼を庇う発言は出来ない。彼を庇う事は、ロゴスの支持に回ることに繋がってしまうからだ。
全世界がロゴスは敵だと認識する中では迂闊に発言する事は出来なかった。
 
『……確かに、ジブリールを逃がしたのはオーブのミスです』
 
再びカガリが発言する。考えが纏まったようだ。
 
『しかし、ジブリールを匿った張本人であるロゴスのメンバー…セイラン家ですが、彼等は既にこの世にはおりません。先の戦闘に於いて巻き込まれ、死亡いたしました』
『ほぉ……では、その責任は誰にあるのでしょうね?』
『勿論セイラン家です。私は、この場をお借りして報告させていただきます、先のジブリール逃走は、セイラン家の責任として現在調査中です』
『代表、それは少し遅いのではないですか?責任問題は早めに結果を出してもらわなければ、誰も納得できません』
『昨日の今日です。ザフトの侵攻を受け、荒れているオーブには難しい話です』
 
追及するデュランダルに対し、カガリは毅然と言い切る。ここで表情を変えてしまったら、なし崩し的に追い込まれていってしまう。

『ジブリールに関しては私の居ない間に行われた事です。私がいればジブリールの勝手を絶対に許しませんでした。そして、オーブを戦争に参加させ、ジブリールを匿い、逃がしたのはセイラン家の仕業であるというのは紛れも無い事実です。
結果的にオーブを戦場にしてしまった事を考えると、その前に無理にでも私に連絡を取って相談してくれれば良かったと思うのですが……』
『代表は拉致されていらっしゃいましたよね?その状態で連絡など取れたのですか?』
『どうやらセイラン家の長男は私達の行動は分かっていたみたいだったのです。断片的ではありますが、その証拠が出てきました。
しかし、それをしなかったのはきっと自らの座を明け渡したくないが故の行為だったのでしょう。残念ですが、欲に囚われていたとしか考えられません……』
『成る程……』
『因果応報…先の戦闘で彼等がこの世を去ったのは、彼等が悪であったが故ではないでしょうか。彼等のしてきた事を考えれば、それが彼等自身に返って来たとも思えるのです……』
 
カガリは涙を呑んだ。演技とはいえ、このような言い方はユウナに対して非常に心苦しい気持ちになる。本当は自分が一番いけなかったことはよく理解している分、余計に苦みばしった様に感じる。
しかし、だからと言ってここでその気持ちを表に出すような事はしない。命を懸けたユウナの最後の望みは、自分が悪役になることだったからだ。
それはカガリの将来を案じてくれた事。そして、カガリはそれを受けて何とか画面の中の相手に喰らい付いていかなければならない。
悲しい事だが、これが政治なんだと思って割り切らなければならない。ユウナに指摘されたしたたかさ…まだ多少の抵抗はあるが、やらなければならない。
慣れるまでの間だ、と自分を慰める。
 
『では、ジブリールを引き渡さなかったのは貴方が悪いのではなく、代行をなさっていたセイラン家の方々の責任であるというのが正式な発表であるのですね?』
『そういう事になります』
『しかし、それで納得しろと仰られても、世界の皆様は納得なさらないのではないですか?』
『それならば、セイラン家の代わりに何度でも私は謝罪します。申し訳ありませんでした』
 
おもむろに立ち上がり、深く頭を垂れるカガリ。その姿は見る者に悲壮感を与える。謝罪するのは当たり前だが、こうも何回も繰り返されれば、多少の情も沸く。
本当はデュランダルの言いたい事はそんな事ではなかったのだが、ここで更に追い詰めるような発言をしてしまってはデュランダルの印象が悪くなってしまう。
後々に発表するデスティニープランの事を考えれば、少しでも印象を崩したくないのがデュランダルの本音であった。
そして、断片的ではあるがその事を知っているカガリの狙いはそこにあった。
例え可能性に過ぎなかったとしても、牽制はしておく必要はある。
 
『いえ、分かりました。それをオーブの正式な発表としてプラント最高評議会は協議いたします』
『よろしくお願いします』
 
ここで追い詰めるわけにはかないが、すんなりと受け入れるわけにも行かない。ここはあくまで協議するという形でデュランダルは話題から逃げる。
カガリは顔を上げ、続ける。

『ただ、その後のことで私はそちらにお聞きしたい事があります。何故、ジブリールが逃走した後もオーブでの戦闘を続けたのです?
先程デュランダル議長はジブリールをかなり敵視していらっしゃったが、目的を果たせなかった以上、あれ以上の我が国での戦闘は無意味だったはずではないですか?』
『オーブは大西洋連合と同盟を結んでおられましたよね?それならば、オーブはプラントの交戦国と言えます。戦うのはある意味必然です』
『ですが、目的はあくまでジブリールの捕獲でしたよね?しかし、目的が逃走した後も戦闘を続けていらっしゃった……平和を標榜しておきながら随分と手荒な真似がお好きのようですね?』
 
カガリがデュランダルに再び噛み付く。それを、デュランダルは表情一つ変えないで聞いていた。
 
『ジブリール逃走後の戦闘…正当性があったとは言えないのではないですか?あれではザフトは単に戦争をしたがっている様にも見えます』
 
尚も攻め立てるカガリの言葉。デュランダルは言葉一つ発せずに黙って聞いていた。その様子は、デュランダルがカガリの言葉に押されている様に世界の人々には見えていた。
 
『何も仰らないという事は、正当性が無かったと認めるという事ですか?旗艦が撃沈して、自軍が不利になってやっと戦闘を停止したのはオーブ占領に失敗したからであると…』
『その前に代表。一つお聞きしたい事があります』
 
黙って聞いていたかと思うと、急にデュランダルがカガリの言葉に割り込んで発言する。
 
『この映像……今代表が仰った我が軍の旗艦が撃沈された時の写真です』
 
デュランダル側の画面に映し出されたのは静止画の映像。その中では、大量の煙を噴く戦艦と、それを見下ろす一体のMSが映されていた。
 
『そして、この端に映っているMSに焦点を移し、拡大してみましょう』
 
カメラがMSにズームし、その姿を鮮明にした。その姿に、世界はどよめき声を上げる。
 
『ご存知の方も多いと思います。フリーダムです』
 
どよめきがざわめきに変わる。
デュランダルがカガリの話を黙って聞いていたのは、カガリの口から旗艦撃沈の事を引き出させる為だった。
こうしてカウンター気味に出せば、カガリの勢いを殺す事が出来る。

『外観に多少の差異は見られますが、恐らくこれはフリーダムの後継機であると思われます。そして、これが本当のフリーダムです』
 
更に映像が切り替わり、今度はダーダネルスでの戦闘映像が流された。
 
『御覧の通り、フリーダムは我が軍のみならず、連合やオーブに対しても仕掛けています。その活躍たるや、単独で我が軍と連合軍を殲滅出来るほどの力を秘めていました』
 
画面がデュランダルに戻る。
 
『そのフリーダムを更に強力にしたMSをオーブは保有していたのです。私はこのようなMSを保有しているオーブに危機感を抱きました。故に、せめてフリーダムだけでも破壊しようと思い、戦闘の継続を命じたのです』
 
デュランダルの流した映像は、フリーダムの力の強大さを雄弁に物語った。人々は、その力に魅了される者も居たが、殆どは恐怖を抱かざるを得ない。
フリーダムは英雄としての側面を持ちながらも、反面では恐怖の対象でもあるのだ。
 
『代表、お分かりいただけるでしょうか?フリーダムを保有しているあなた方オーブは、中立を訴えながらも世界をその手に出来る力をお持ちになっているのです。そして、そのフリーダムが以前に傍若無人な振る舞いを犯していることをお忘れになってはいけません』
『その言い方は大袈裟過ぎます。たった一機のMSが戦局に与える影響など微々たる物でしょう』
『いいえ、油断は出来ません。事実あれだけの動きをするのです』
『しかし、アークエンジェルの行動は私の意志を反映させておりません。彼等は彼等で勝手に動いていたのです』
『問題はまだあります。フリーダムは元々ザフトのモノでした。しかし、二年前にそこのラクス=クラインによってあなた方に強奪されました。
本来ならば、ヤキン戦役が終わった後にザフトに返却されるべきものだったのです。ザフトは連合から奪ったバスターとデュエルは返却いたしました』
『……』
『先程もお伝えしたように、フリーダムは単機で一個艦隊を相手に出来るほど強力な兵器です。それを保有するという事は平和に対する脅威でしかありません。付け加えれば、フリーダムは本来ユニウス条約に違反する機体であったはずです』
『そ…それは……』
『先のヤキン戦役での破壊が報告されているフリーダムが何故修復されていたのかは知りませんが、いつまたフリーダムが暴走するかも分かりません。そうなってからでは遅いのです。だから、今のうちにフリーダムを処分するべきだと私は判断したのです』
 
デュランダルの視線は相変わらず穏やかに見える。しかし、相対しているカガリだけは突き刺すような鋭さを感じていた。
それは、相手を怯ませるには十分な力を持っている。しかし、カガリはここで屈するわけには行かない。必死に平静を装い、決して動揺を見せてはならないのだ。
 
『ユニウス条約は停戦条約故に、戦時中の現在には意味がありません。しかし、どう考えてもフリーダムは停戦中に修復したとしか思えないタイミングで出て来た……。
つまり、オーブが密かにフリーダムを回収、修復していたいう事になるのです。これは立派な条約違反ですよね?』
 
デュランダルの突き刺すような言葉に、カガリは窮したように見えた。しかし、目はまだ死んでいない。

『…デュランダル議長、何故フリーダムがオーブで修復されたと御思いなのですか?』
『代表が乗っていらっしゃったではありませんか?だから、そこからアークエンジェル共々オーブが隠してたと考えるのは当然であります』
『いえ、その理屈は通りません。私は突如現れたフリーダムに攫われたのです。それが何処から来たのか…本人達以外は誰も知るはずが無いのです』
『代表はお聞きになっていらっしゃらない……?』
『その通りです。私がわざわざ火種になり得るものを隠しておくわけがありません。以前にも議長にお話した筈です』
『……』
『そちらの勝手な推測で非難するのはフェアじゃありません。訂正していただきたい』
 
カガリのカウンターが決まった。確かにアークエンジェルが何処から出てきて、誰が修復したかなどは知りようが無い。
仮にラクス襲撃がデュランダルの仕業で、それによってフリーダムがオーブから出現したという事を公表しても、それではラクス襲撃の犯人がザフトであると認めることになってしまう。
それではデュランダルが一番避けたいイメージダウンに繋がってしまう。
どちらにしろ、デュランダルはカガリに一本取られてしまったのである。
 
『…確かに、代表の仰るとおりです。私も少々考えすぎていたようです、申し訳ありません』
 
素直に認めるデュランダル。しかし、非を認めたとはいえ、この素直な態度によって彼のイメージが崩れることは無い。観衆の中の印象はあくまで"物腰柔らかなデュランダル議長"なのである。
 
『さて、それならばもう一つお聞きしたい事がございます』
『何でしょう?』
『こちらの映像を御覧になって下さい』
 
そう言うと、デュランダル側のモニターが切り替わり、戦闘の映像が流れた。
 
『代表はこれの説明をどうつけますか?ダーダネルス、クレタの戦いで代表の姿が二回確認されております。代表は中立の理念をかざしておきながら、戦闘に介入するのはお好きのようですね?』
『あれも私の不徳です。それも認め、謝罪いたします。しかし、私自身はビームの一発も撃っておりません』
『オーブを大事になさる代表のお気持ちは、同じ国のトップを任されている私ですからよく分かります。言葉でその場を納めようとしていたのは若さ故として理解できます。しかし、フリーダムは大分好き勝手にしてくれたようですね?ザフトも相当の被害を受けました』
『……』
『アークエンジェルが代表を拉致し、自らの妄想の為に利用していたのは事実ですよね?お咎め無しですか?』
『…いえ、彼等は既に我々で拘束しております。正式な罪状はこれから調査していくうちに確定するでしょう』
『そうですか』
 
デュランダルにしてみれば、このカガリの処置に噛み付きたいところだが、放送は全世界に広がっている。処置が決定しているアークエンジェル問題について、これ以上無闇に追及しても印象を悪くするだけだと思い、言葉を飲み込んだ。

デュランダルに秘書が耳打ちをする。
 
『……ん、分かった。申し訳ありません代表、もっとお話をしていたいところでしたが、そろそろお時間のようです。いい話し合いが出来ましたね?またお会いしましょう』
 
不敵な笑みを浮かべてデュランダルはその席を後にした。
それに対してカガリは何とか表情を崩さないようにするのが精一杯だった。
 
放送終了後、ラクスはカガリに話しかける。かなり消耗していると感じたからだ。
 
「カガリさん……」
「見ろ、これ」
 
ラクスの顔の前に掌を突き出す。すると、そこには大量の汗がべっとりと付着していた。
 
「これは……」
「大変だよ、私はあのような化け物と戦わなければならないのだから」
「……」
「しかしラクス、私はツイてるかもしれないぞ」
「え?」
「あの会見で、本来ならばもっと私の立場は苦しくなる筈だった。しかし、デュランダル議長が出てきてくれたお陰で、五分とまでは行かないが少しは楽な立場に持ってこれた。油断してくれたデュランダル議長には感謝しなくてはな」
 
デュランダルがカガリの会見に乱入してきたのは、カガリを見くびっていたからだ。簡単にオーブの主張を切り崩し、自らのイメージアップに繋げられると思っていた。
しかし、想定外のカガリの粘りに、デュランダルの思惑はズレが生じた。
彼にしてみれば、この結果は予想外だったであろう。
 
「さて…これからが大変な事になるぞ……」
 
いくらユウナに触発されても、突然大きく変われるほどカガリは優秀な政治家ではない。彼女はまだ未熟だった。これから起こる出来事を想像できないのは、経験が圧倒的に不足しているからだ。
最初の一歩としては上出来でも、時代はその程度では許されない状況にあるのもまた、事実だった。
 
ミネルバのラウンジではどよめきが大きくなっていた。遂にデュランダルがミーアを偽者であると認めたのだ。
 
「なあ、レイ……デュランダル議長って…」
「お前は何も気にする必要は無い。ラクスが偽者であったとしても議長の仰るとおり、何の問題も無いのだ。問題は、今更になって本物がのこのこと出て来た事だ」
「でも、やっぱり嘘ついてたって事じゃ……」
「シン、デュランダル議長の仰っていた言葉が間違っているように聞こえたか?オーブの元首やラクスの行っていた事が正しいように聞こえたか?」
「いや…それは……」
 
シンはレイの声に言葉を詰まらせる。レイの迫力に負けたわけではないが、確かに彼の言うとおり、カガリやラクスの言う事が一方的に正しいとは思えなかった。
 
「いくらラクスであろうとも、本物の言っている事が常に正しいとは限らないのだ。今の放送では、議長の言う事の方が圧倒的に正しい」
「……」
 
このような言い回しをしてくるという事は、レイは恐らく全て最初から知っていたのだろう。そう考えると、シンは少しだけ二人に騙されていたような気分になる。
表情には出さなかったが、内心では複雑だった。
 
「まさか議長が偽者をお認めになるとはね」
 
ハイネは感服したように声を出す。それをカミーユは不思議に思った。
 
「あのラクスって言う子は、そんなに凄い存在なのか?」
「凄いなんてもんじゃないさ。その魅力といったら、世界中の人々が支持するくらい強力だぜ」
「じゃあ、それの偽者をでっち上げていたデュランダル議長は…」
「しかし、その上で言いくるめているように見えたな。俺は議長が怖いぜ」
 
デュランダルの手腕にハイネは舌を巻く。
 
「でも、デュランダル議長が一方的に正しいとはならなかった。それはどう見る?」
「そりゃあ、そうだろう。普通の人にしてみれば、戦争やってる奴はみんな悪者だ。そんな奴が自分は決定的に正しいなんて態度で表に出てみろ、思いっきりぶっ叩かれるぞ。
議長は正しさを見せたかったのではなく、プラントとオーブのどちらがマシかを示したかったように思えるな」
「確かに…オーブがジブリールを逃がした事には変わりない……じゃあ、ハイネはザフトも間違っている所があると思うのか?」
「……」
「ハイネ?」
「前にも言ったはずだぜ、俺達はそこまで気を回す必要は無い。命令を聞いていればいいだけだ」
 
釘を刺すハイネの言葉。しかし、直前に見せたハイネの表情は、何かを迷っているようにも見えた。
そんなハイネの言葉にカミーユは物思いに耽る。
 
(しかし、デュランダル議長の言葉には筋が通っているとはいえ、全てが本当の事だとは思えない……)
 
放送中のデュランダルの表情と言葉から何かを感じ取ったのか、ニュータイプとしての注意深さが本能的な警告を与えてくる。デュランダルを信じきってはいけないと警鐘を鳴らす。
そんな想いが頭を駆け巡る中、カミーユの中の不信感が広がりつつあるのを実感する。
 
その後、長きに渡る地球での作戦行動を終え、ミネルバは再び漆黒の星の海へと還って行く。逃走したジブリール追跡の為である。