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Z-Seed_カミーユ In C.E. 73 ◆x/lz6TqR1w氏_第55話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:49:26

最終話「Ζの福音」 1

「みんな死んで行く……。ハイネも、レイも、マッドさんも……みんな、みんな……」
《君の可能性でも、こんな結果しか出せない……だから、私はエゴに縛られた人類を粛清しようとした……》
「クワトロ大尉……!」
《もういいだろう、カミーユ……君は良くやった》
 
男の声が幻聴のように聞こえる。打ちひしがれそうになるカミーユだが、彼の目は未だ諦めを知らなかった。
 
「まだだ!まだ僕には……!」
《無駄だ、それではまた君は閉じこもる事になる……それでは失敗なのだ》
「人は…人は超えられるはずだ!こんな…どんな困難だろうと、超えられるはずだ!それを、皆も分かっているはずだ!」
《カミーユ……》
「そうでなきゃ、今日という日を生きられないんだ!超えられるからこそ、人は今まで生きてこれたんだ!それが…今出来ないはずが無いんだ!」
 
Ζガンダムに吸い込まれていく光、そして、拡散される光。
集まってくる光はΖガンダムを包むように紅く光り、拡散する粉のような光は碧に光る。
それはやがて戦場全てに拡がって行くかのように思えた。

《これは…あの時のサイコフレームのオーバーロード……!?しかし!》
 
動揺を取り繕うような声。しかし、やがてその光の暖かさに自らの不覚を認めるしかなかった。
 
《……いや、結局私は急ぎ過ぎていたという事なのか……?なら、私のやった事は一体……》
(クワトロ大尉、あなたは人類がニュータイプに覚醒する事で変われるって言ってたじゃないですか!?それなのに…人を信じていたあなたが最初に見限ってどうするんです!)
《その原因の一端が君の崩壊だった……。私はハマーンに敗れ、ミネバを傀儡にする彼女を見てニュータイプですら地球の重力に引かれていると思った……》
(それは、あなたがオールドタイプだからです!ニュータイプって、もっと建設的なモノの見方が出来る人の事なんじゃないんですか!?)
《分かり合える…か……。そういった意味では、私とアムロはオールドタイプだったのかも知れん……》
(それが分かっているなら!)
 
Ζガンダムを中心に人の想いが不思議な感覚となって拡散していく。
死者も生者も関係なかった。
それは、カミーユの限界を超えた力となって一人一人の心の中に散らばっていく。
 
《おお…これは……!アムロ……私は……ララァ……》
 
その声は、男の最後の無念だったのだろうか。
男の声はそれを最後に聞こえなくなった……

爆発を続けるメサイアの近くで、キラはストライクフリーダムのコックピットの中で生き残ったモニターを眺めて寂しそうに目に涙を溜めていた。
ストライクフリーダムの外見は既にフェイズシフトが切れ、灰銀に戻っている。
デスティニーとの戦いで両腕を失い、頭部は無い。背部のバーニアも破壊されていて、動く事も出来なくなってしまったストライクフリーダムはゆっくりと月面の引力に引かれて下降を続けている。
 
「結局…僕は何なんだろう……」
 
キラは力無く呟く。独り言に答えは返ってこなかった。
キラが無気力に感情を委ね、瞳を閉じようとしたその時、小さなモニターに不自然な光が舞い散るように降り注いでいるのが目に入った。
 
「これは……一体……?」
 
優しい光だった。
その光景に、キラは夢見心地になる。安心を覚える光だった。
 
《キラ…キラ……》
 
聞いた事のある声がした。
 
《キラ……》
 
初めは幻聴かと思ったが、どうやらそうではないらしい。おぼろげだがはっきり聞こえる。矛盾しているが、キラにはそう感じた。
 
《キラ……》
 
もう一度呼ばれた。キラはその声の人物をはっきりと憶えている。
今はもうこの世には居ないが、決して忘れる事の出来ない二年前に別れた少女。
 
「フレ…イ……?」
《キラ……》
 
キラは顔を正面に向ける。すると、其処には赤髪を後ろで結った少女がキラを見つめていた。
二年前から全く変わりのない姿、しかし、キラは今でもはっきりとその姿を覚えている。
 
「君が…何で……?」
《キラに会いたくて……》
 
フレイは悲しそうな表情をしているが、少し嬉しそうだった。

「フレイ…ずっと会いたかった……!会って謝りたかった!」
《ううん…謝らなければならないのは私……。キラを傷つけてばかりで…それなのにあなたは優しくしてくれた……。私はそれに気付かずに…そのまま……》
「君が…君が謝る必要は無いんだ……!全部…僕がいけなかったんだから……!」
《違うの…違うのよ、キラ。私、あなたの事をずっと憎んでた。でも、あなたの優しさに気付いたのはあなたと離れてから。その事を言いたかったけど、言えなかった……。だから、今私をここに呼んでくれた人のお陰で言う事が出来る》
「僕は、ずっと君に笑って欲しかった……だから……!」
《今の私にはキラの言いたい事が凄く良く分かる……。こうしてあなたとまた出会えて、あなたの事がとても素直に見れる……》
「ずっと謝りたかった…謝って僕を許して欲しかった……!」
《許すも許さないも無いのよ……。だって、いけなかったのは私なんだから……》
「そんな…そんな事は無い!」
《分かる…あなたの優しさが痛いほど分かる……。だから、あなたはもう苦しまないで…泣かないで……》
「僕に君に優しくされる資格は無いんだ!本当に…フレイ…ごめん……!」
《謝らないで…私に謝らないで……。私の方こそ、キラ…ごめんなさい……》
「フレイ…僕を許してくれるのか……?」
《悪いのはあなたじゃない……それを私は言いたかったの》
「フレイ……」
《キラ、あなたはもう泣かないで生きていけるわ……》
「でも、僕はもう……」
 
デュランダルに言われた言葉が今になって効いてきた。キラは自身の存在に疑問を抱き始めている。
しかし、そんなキラの沈んだ表情を見ても、フレイは何事も無かったかのように微笑んだままだった。
 
《あなたは生きていていいのよ…それは誰でもない、あなた自身が決める事なのだから……》
「違うんだ…僕はそんな権利が…」
《誰かの言葉に惑わされないで。本当にキラを決めていいのはあなただけなんだから……》
 
その言葉にキラはハッと目を見開く。
 
《あなたが求めた自由って、そういう事なんじゃないの?》
「うん……」
《だから、大丈夫……》
 
キラは涙が止まらなかった。またこうしてフレイに出会えて、尻を叩いてもらっている。それはとてもありがたいことだった。
そんなキラに安心してか、フレイはキラの頬を撫でた。
 
《あの子を大切にね?お互いを慰めるだけじゃなく、支え合ってあげて。それが出来るのはキラ…あなただけだから……》
「うん…約束する……僕は、ラクスを支えた気になっていただけなんだ…だから、負けた……。もしチャンスが貰えるなら、僕はもう一度最初から歩き出したい…償いたいんだ……」
 
キラは俯いて呟くように告げる。そんなキラの言葉に、フレイは安心したように頬を緩ませ、笑顔を見せた。
 
「フ、フレイ……?」
《もう一度、キラと話せて良かった…嬉しかった……》
「待ってフレイ!もっと…もっと話したい事が!」
 
フレイの姿が遠くなっていく。キラは慌てて手を伸ばすが、フレイは素敵に微笑んでキラを見つめながら小さくなっていった。
 
《さようなら、キラ……ありがとう……》
 
優しい声が耳に残る。キラはメットを脱ぎ、流れる涙を拭った。

「…さようなら、フレイ……ありがとう……」
 
キラは少しだけ笑って救難信号を出した……
 
散らばっていく光は全ての人の心に降り注ぐ。それは、ザフトもオーブも関係なかった。
 
《アンディ……》
「アイシャ……」
《いつまでも坊や達に頼ってばかりでは駄目よ?大人の貴方がしっかりしなきゃ……》
「……確かに、僕は彼等に頼ってばっかで、手を抜いていたのかも知れんなぁ……これでは本気で戦争を終わらせる事は出来んか……」
《焦らなくていいから、負けないでね……》
「分かったよ」
 
《マリュー=ラミアス……》
「貴女は…バジルール中尉!」
《私は、今のあなたを見ていると、とても歯痒い思いになります。それが何故だか、お分かりになりますか?》
「……」
《私が懸けた貴女はもっと高貴で気高い誇りを持った人だった!例え軍の命令に背いてでも…いえ、軍そのものに背いてでも理想を実現させようとする貴女が私は羨ましかった!それなのに、今の貴女はその心を忘れてしまったとしか思えない!》
「私はそんな風には…」
《貴女が自分で気付いていないだけで、既にそうなってしまっているんです!あなたはフラガ大尉さえ居ればそれでいいのですか!?フラガ大尉はあなたさえ居ればそれでいいのですか!?》
「ナタル……」
《もっとご自分を自覚なさってください!このままでは、私は何の為に貴女に未来を預けたのか分かりません!》
 
バジルールの哀れむような表情にラミアスは眉尻を下げる。言われてみればそうだった。自分はアークエンジェルの艦長としての責任は負っていたが、それ以外のことは全て自分より若い者の手に委ねてしまっていた。
自分はどうして彼等よりも年上なのか、それをもう一度考えなければならないと思う。
 
「…そうね、ナタル……私は、いつの間にかキラ君たちに頼るばかりで、自分の大人としての責任を放棄していたのかもね……」
《今度こそ、この世界を頼みます!もう二度と、こんな空しいだけの戦いを繰り返さぬよう……》
「分かったわ、ナタル……」
 
全ては夢のような現実。しかし、驚くほど人々はその現象をすんなりと受け入れていた。
嘘のような出来事でも、二度と会えないかと思っていた人と再び会えた事が嬉しかったのだ。そして、そんな彼等が荒んだ人々の心を癒してくれる。
エターナルとアークエンジェルの二人の艦長も、過去に分かれた大切な人に励ましてもらえた。
そして、エターナルのブリッジではもう一人……
 
《ラクスよ》
「お父様……」
 
ラクスの目の前には父親であるシーゲル=クライン。その表情は生前と同じく穏やかだった。

「何故…わたくしにこのようなコーディネイトをなさったのですか?わたくしは……」
《それは違う、ラクス。お前はお前自身が望んだからその様な席に座るようになったのだ。全てはお前が望んだからだ》
「いいえ、違います!わたくしは、このようなことは望んでなどおりません!本当のわたくしはもっと弱いのです……このような事、できるはずもありません!」
《そうではない。お前は確かに今の自分の立ち位置に疑問を持っているだろう。しかしな、果たしてそれはずっとそうであっただろうか?》
「何を仰っているのです……!?」
《全ては若さゆえの過ち……私がハロに教えた言葉だ》
「え……!」
《いつか、このような日が来ると思っていた……》
「そ、それでは……わたくしは……!」
《私はお前の父だ。大切な娘の事を、何も知らないわけではないぞ?》
「わたくしは、お父様の助言に気付かずにここまで来てしまったのですね……」
《そうではない。今、お前は気付いたのだ。人は必ず過ちを犯す……大切なのは、その後に起こす行動だ。間違いに気付いて、初めて人は正しい事の存在に気付けるのだ。……若いお前にはまだ時間はたっぷり残されている……》
「お父様……」
《私は、いつでもお前を見守っているぞ……我が愛しの子、ラクスよ……》
 
シーゲルはそう言って消えて行った。ラクスはふと、頬に熱いものが流れている事に気付く。
それは、とても久しぶりに流しているような気がした……
 
そして、地球のオーブ。官邸でじっと待っていたカガリだったが、ふと誰かの声が聞こえてきた。
 
《カガリ…そんなところに篭ってないで、外に出て月を眺めてごらん》
「…誰だ?」
 
耳に聞こえてきたのは聞き慣れた声。カガリが今一番会いたい人物の声。
 
「居るのか?」
 
フラフラと緩い足取りでバルコニーへ向かう。
扉を開け、少し冷たい外気に身を震わせながら言われたとおりに夜の月を見上げた。
 
「これは……!」
《どうだい、感動的だろ?》
 
見上げた月は碧に輝く霧のような光を放っていた。そして、その光は地球の大気にも少量ながら散らばっていっている。
何よりも、目の前には幻のようなユウナ。
 
《また会えたね、ハニー。流石に気持ちを伝えた後は恥ずかしいものだけどね》
「ユ…ユウナ……」
 
何故か受け入れられる不思議。しかし、カガリはユウナに会わせる顔がなかった。

「理念を破った私を軽蔑しているんだろ?あれだけ偉そうに垂れた私の信念…貫ききれなかった……」
《僕はカガリを責めないよ。僕の言った事を一生懸命実行しようとしてくれてたみたいだからね》
「同情はいらない…私は……」
《元首を辞めるつもりなんだろ?分かっているよ、マイハニーだもの。…でもね、僕は冷たいだけのリアリストな君は嫌いだな……》
「えっ……?」
《君の本当の魅力は、何処までも真っ直ぐで力強い言葉にある。そこにオーブの民は惚れたのだろうし、実際に僕もそのファンさ。僕が望んでいたのは、そんなカガリの魅力の中に僕のしたたかさをスパイスとして加える事だったんだ》
「ユウナ……」
《分かるよ、友人を利用するだけの自分が辛かったって事は…でもね、それが今の君の精一杯なんだよ。それは現実として認めなくちゃいけない》
「そんな事はない…私は、別にキラ達を利用する事に躊躇いはない……」
《強がって見せなくてもいい。だからだろ?君が元首を辞めようとしているのは》
「……」
《こちらへどうぞ》
 
おもむろにユウナが誰かを呼ぶ。その声に俯いていた顔を上げると、そこには最愛の人物が居た。
 
「お父様……」
《カガリ……》
 
突然の事に固まってしまうカガリ。そんなカガリの緊張を察したのか、ウズミの方が先に口を開いた。
 
《私は、お前に謝らなければならぬ…すまなかった……》
「な、何故謝るのです!?謝るのは私の方です!」
《いや、分かっている。私がお前の重荷になってしまっている事は、お前を見ていて苦しいほど分かる……》
「そんな事ありません!私はオーブの為に!」
《もう良い。今まで頑張ってきたのだ、誰もお前を責めたりなどしない……だから、お前はお前らしく生きて行きなさい……》
《僕達を気にする事はない…君は君らしく、向日葵の様に笑っていてごらん。そうすれば、君はもっと魅力的な人間になれる…オーブだって導いていける……》
「ユウナ…お父様!」
 
二人の姿が遠くなっていく。
 
《しばしのお別れさ。また会える日を楽しみにしているよ、ハニー……》
《さらばだ、我が娘…カガリ……》
 
何かに導かれるように空に向かっていく二人。そして、見えなくなっていった。
 
「うぅっ…うぅ……!」
 
バルコニーの床に膝をついて崩れ落ちるカガリ。床が冷え切っていて膝小僧が冷たかった。
自分は許されたのだ。少なくとも、ウズミとユウナはそうだった。
不甲斐無い自分を認識されはしたが、それでもカガリは嬉しかった。これから自分が辿る事になるであろう道を、二人は認めてくれたのだ。
それは、カガリを更なる成長へ導く事になる出来事だった……

「タリア艦長……」
《アーサー、お願いがあるの》
 
ランチの窓からアーサーの目に飛び込んできたのはタリアの姿。彼女がミネルバを去った後、どうなったのかは知りようもない事実だが、何故かアーサーはタリアが既にこの世の人物ではない事を納得できた。
理解できないが、頭の中の感覚がそう伝えている。
 
《あなたに私の子供の事を頼みたいの》
「艦長のお子さんですか……?」
《そう、この人に頼んだんだけど、彼もこっちへ来てしまったんですもの……》
《君に負担を掛ける事になってしまった、申し訳ない》
「デュ、デュランダル議長……」
 
浮かび上がるようにデュランダルがタリアの側に寄り添っている。
 
「し、しかし私では……」
《アーサー、貴方に足りなかったのは自信よ。大丈夫、私は貴方を高く評価してるって言ったでしょ?だから、私は貴方になら子供を任せられるって思ったの》
「本当でしょうか……」
《貴方はもの凄い事をやってのけたのよ?この激しい混乱の中、最後までミネルバを動かし、そしてクルーと共に脱出した…貴方は自信を持っていいのよ》
「しかし、帰らぬ人も出しました……」
《マッドは恨んでいないわ。寧ろ彼を待っていた方が怒っていたわ》
《そういうことだぜ、アーサー艦長!あんたは俺の最後の願いを叶えてくれたんだ、もっと胸張っていいんだぜ!》
「マッド主任……」
《だからよ、タリア艦長のお願いを聞いてやってくれ》
《アーサー……》
「……分かりました。艦長のお子さんは、私が必ず立派に育てて見せます!」
《ありがとう、アーサー……》
《タリア、そろそろ……》
《そうね……》
 
タリアとデュランダルが遠くなる。
 
《それじゃあ、マッド主任、お先にね》
《また後で会おう》
《ええ》
《よろしく、アーサー。他の皆も……》
「はい!お任せ下さい!」
 
消え行くタリアとデュランダルに対して敬礼するアーサーを、マッドが歯を見せて笑っている。
 
「「を…親方ぁ!」」
《おう、ヴィーノとヨウランか?》
 
後ろから飛び出してきた二人が窓に詰め寄る。

《なんつーか、あれだな?さっきお別れしたばっかだってのは気恥ずかしいもんだな?》
「そんな事より、俺達、絶対にすっげぇメカニックマンになって見せますから!」
「この煙草も大切にしますから、見ててくださいよ!」
《分かってるって!皆まで言うな、半人前が!》
「面倒臭いからって目を逸らさないで下さいよ!」
「駄目な所があったら言って下さいよ!」
《馬鹿やろ!俺は死んでんだぞ、んな事できっか!》
「親方より凄くなって見せますから!」
「誰にも負けない凄腕になって見せますから!」
《おい、お前等……》
「ずっと忘れませんから!」
「ずっと語り継いでいきますから!」
 
叫びながら二人はいつの間にか泣いていた。こうして何度も語りかけているのは、少しでも長くマッドと対面して居たいからだった。
そして、ランチの操縦席では、ルナマリアがハイネと会っていた。
 
「ハ、ハイネ…ごめんなさい…私のせいで…私のせいでハイネは……」
《ルナマリア、そんなに自分を責めるな。俺は大丈夫さ》
「でも……」
《お前、運命って信じるか?》
「え?」
 
唐突なハイネの言葉にルナマリアが言葉を詰まらす。
 
《俺は信じるぜ。こうなってしまったって事は、これが俺の運命だったって事なんだ。だから、俺は死んでしまっても全然悔しいだなんて思っていない》
「慰めてくれてるの……?」
《違う、これは俺の実感さ。運命は最初から決まっている。俺が死んだのも、お前が生きているのも、全ては最初から決まっていたことなんだ》
「駄目よハイネ…そんなんじゃ、誰も人生に希望を持てないわ……」
《運命が分かるんならな?しかしな、運命ってのは絶対に人間には分からない事なんだ。だから、先の運命が分からないからこそ、人生ってのは楽しいのさ。この先何が起こるんだろうって期待感と共にな》
「唯の楽観論よ……」
《それ位楽に生きろって命令だぜ、ルナマリア》
「ハイネ……」
 
ハイネの思いやりがルナマリアには暖かかった。こんな事になってしまったのにも関わらず、最後まで自分を心配してくれるハイネこそ真の隊長だと思った。
ふと、マッドがハイネの側にやって来た。
 
《ハイネ、呼んでるぜ?》
《ん…そうか、アイツが……それじゃあな、ルナマリア。お前はメイリンを守ってやれよ?》
「え…ちょ、ちょっと待って!」
《隊長命令は絶対だぜ!》
 
何処かへと流されていく二人。それを見送った後、通路に居るメイリンの顔を確認した。姉の突然の行動に、メイリンは呆気に取られていた。
 
「どうしたの、お姉ちゃん?」
(そっか…あたし、この子の為に頑張らなくちゃいけないんだ……)
 
何かを思い出したかのような妙な納得。考察から理解の過程を飛ばして結論に辿り着いたような感覚。しかし、それが自分の最も正しい生き方なんだろうとルナマリアは思う。
そうして、未だに光を放出し続けているΖガンダムを見つめた。