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Zion-Seed_515_第05話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:11:32

 世界樹にて艦隊編成を行っていたハルバートン准将は、プラントの艦隊発進の報を聞くと舌打ちでもってそれに答えた。

「あと一月、いや2週間でもいいから待てなかったのかあの男は! よもや名前を変えれば、中身も変わるとでも思っている
のではあるまいな……」
「て、提督……それは、流石に無いでしょう」
「そうだといいのだがな」

 ハルバートン指揮下の艦隊は、メネラオスを旗艦とする主力艦60隻からなる艦隊である。
 数そのものはザフト艦隊を上回るが、その内実は目を覆うばかりであった。
 60のうち20隻はぎりぎりで修理が終わった艦艇で、乗組員は4週間戦争の生き残りである為、錬度、戦意ともに不足はなかったが、
残る40隻は戦中戦後に就役したばかりの新造艦で、そのうち半分が未だに艤装中という有様である。

 また、壊滅したMA隊も補充が成され数だけは揃えられていたが、その殆どが訓練の終わったばかりの新兵であった。
 僅かばかりの4週間戦争の生き残りのベテランが、どこまでフォローできるか次第で彼らの命運は決まるだろう。

「くはぁ~、やっとジオンとの戦争が終わったと思ったら、今度はプラントと開戦かよ。もう呪われてるとしか思えんな」
「ええ、まったくです。ほんと、何を考えているのやら?」

「しかし、エース部隊と謳われた栄光のメビウス・ゼロ隊も、もう俺とお前の2人だけか~。なんとも悲しいね~」
「ええ、本当に……」

「フラガ隊長! メビウス・ゼロ終わりました!」

「おっしゃ! 俺が先に出る、ひよっこどものお守りは任せたぞ!」
「了解、御武運を」

「任せろよ! なんつっても俺は不可能を可能にする男だぜ!」

 戦いは終始ザフトが優勢に進めるが、連合艦隊も意外な奮戦を見せる事になる。
 大規模な戦闘を経験していないザフトは、ハルバートンの老練な指揮に少なく無い被害を出していた。

 艦の速度を最大限利用し、乱戦状態に持ち込んでのMS投入も、戦況に劇的な変化を及ぼすには至らなかった
 ザフトのMSはジオンと異なり、小隊単位の連携すら行わず個々のパイロットが独自に行動するスタイルである。
 このため小隊規模での戦闘を徹底していた、連合のメビウス相手に苦戦を強いられる事となったのだ。

 エンディミオンの鷹こと、ムウ・ラ・フラガ中尉はこの戦闘において、ジン5機を撃墜する活躍を見せている。

 だが、その均衡もメビウス隊の総指揮をとっていた、アガメムノン級宇宙母艦リーの撃沈により崩れる事になる。
 22日23時15分、リー撃沈の報を受けたハルバートンは、メビウス隊の混乱を見て即座に撤退を決意。
 残存艦隊を三分させ、それぞれの方向に撤退させる、といったサザーラント大佐の指揮と同じだが、違うのは指揮官が
最後まで戦場に踏みとどまった事であろう。

 連合の撤退を察知したザフトは直ちに追撃に移るが、ここで指揮権の曖昧さが問題になる。
 各部隊長がそれぞれの判断で、三方向にほぼ均等にバラバラで追撃を開始したのである。
 これが連合艦隊にとって幸いし、どの方向も追撃は中途半端なものに終わり、撤退後に受けた被害は僅かなものであった。

 それでも連合は再建途中の艦隊の50%以上を失い、またMA隊もその7割弱が未帰還機となった。
 『世界樹』はこの戦いで完全に崩壊、地球連合はその制宙権をほぼ喪失する事になる。

「…………」
「大尉、おつかれです」

「ま~た、生き残っちまった、か?」
「はい、他の隊も似たようなものですね。ベテランが生き残って、新入りが帰ってきませんでした……」

「連携が無い分、相手にしやすかったが……」
「はい、動きが違いましたね。さすがはコーディネーター、伊達ではありません」

「ジオンにもザフトにもやられっぱなしかい、俺たちは?……悔しいねぇ」
「はい、……悔しいです」

 対するザフトも戦術目的は達成したものの、その被害は上層部の予想を大きく超える事になった。
 ローレシア級2隻撃沈、5隻中破。ナスカ級3隻撃沈、3隻中破。
 MSの運搬に使用した補助艦艇も、ザフトのMSの特性上後方に待機するわけにもいかず、前線に同行した為その半数近くを
喪失している。
 また、300機のMSのうち50機が未帰還機となり、その三分の一が追撃戦時に失われたものであった。

 この戦いにおいてザフトは、ニュートロンジャマーを試験的に運用。
 これが序盤の連合艦隊からの長距離ミサイルを無効化している。さもなければ艦隊への被害はもう一回り大きかったであろう。

 ザフトの組織としての曖昧さが最悪の形で露呈する事になったが、上層部はこれを何故かこれを放置。
 世界樹での勝利を大々的に報道させ、損害については意図的に伏せられていた。
 実質的な征宙権を得たザフトは、本命の地上侵攻作戦を行うために戦力の再編に勤しむ事になる。

 世界樹での敗北は地球連合軍上層部でも予測されたものであったが、とある人物にとってはそうではなかった。

「なんで、なけなしの艦を送ったのに負けるんです! なにが知将ハルバートンですか! 良く戦いましたが負けました。じゃ、
しょうがないんですよ!」

 ブルーコスモス盟主、ムルタ・アズラエルその人である。
 一枚の報告書をきつく握り締め、ギリギリと歯軋りをする。

「こんなことなら、多少無茶でもサザーラント君を昇進させておけば……」

 こんな事をいっているが、流石のサザーラント大佐でも結果は変わらなかったであろう。

「ああっ、これじゃあ、あの空の化け物どもが地球に降りてきてしまうじゃないですかぁー!」
「盟主、定例会議のお時間です。役員はすでにそろっています」
「ッ!、わかりました。すぐに行きます」

 ノックの音とともに秘書が声をかける。
 するとそれまでの狂乱がうそのように落ち着きを取り戻すと、落ち着いた足取りで会議室に歩いていく。
 悩めるブルーコスモスの盟主は、実に多忙であった。

 世界樹での敗北によって地上での戦闘を余儀なくされた地球連合は、未だに中立を保ち立場を明確にしない赤道連合、
汎イスラム会議、スカンジナビア王国に対し、2月25日に最後通牒を突きつけるが、三国ともにこれを拒否している。
 この返答に対し、地球連合はかつて南アメリカ合衆国にしたように、武力で持って答える事になる。

 2月26日未明、航空機のエアカバーを受けた、東アジア共和国戦車部隊を主力とする地球連合軍は赤道連合の国境を突破。

「楽勝アル! 所詮赤道連合なんぞ、我が東アジア共和国にとっては敵でも無いアル!」
「楽勝ニダ! 楽勝ニダ!」
「いや、楽勝も何も敵がいねえよ……」

「ニオン区民は心配性アル。そんなんだから北海道を獲られるアル」
「そうニダ! そうニダ!」
「うるせえ……」

「そろそろ敵基地が近いアル。警戒するアルヨ!」
「警戒ニダ! 警戒ニダ!」
「了解、……? 通信妨害か?」

「どうしたアル?」
「ニダ?」
「!! とんでもなく強力なジャミングだ! 空軍とどころか本部、僚機からの通信もカットされてやがる!」

「いったい何事アル? 外を見てみるアル」
「ニダ」
「すっげー、やな予感……」

「……アル~~~~」
「ニダ?」
「機長?」

 国境を突破した地球連合軍は、強力な電子障害を受けるとともに驚くべきものと遭遇する。

 地上に降り立った18mの巨人。夜明けの薄暗さがモノアイの光をよけい不気味に写し、尋常では無い威圧感を醸し出していた。

 ジオン公国義勇地球派遣軍。
 プラント地球連合間の戦争の長期化を目論んだジオンが放った、地球連合にとって最悪の一手であった。

 宇宙でプラント理事国を散々に叩きのめしたジオンのMSが、今度は地上でその牙を剥いたのである。