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Zion-Seed_515_第07話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:11:51

 C.E.44年、トレノフ・Y・ミノフスキーの提唱したミノフスキー理論に基づいて、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉が
設計され、実際に核融合を起こす事に成功した。
 だが、ミノフスキー理論そのものはコーディネーターによって否定され、L2に渡ったミノフスキー博士が自身の理論を完成させ、
C.E.61年にミノフスキー粒子が観測されるまで長らく仮設とされていた。

 さて、44年に核融合発電を手にした人類であったが、これによって地球のエネルギー事情が一挙に解決したわけではない。
 燃料であるヘリウム3は、地球上で天然に採取する事はほとんど不可能で、これを採取するには月面に蓄積した物や、木星などの
ヘリウム型惑星で採取するしか方法は無い。
 であるからこそ、最初の核融合発電は月でおこなわれたのである。

 その後、国連理事国が中心となり、マイクロ送信による地上へのエネルギー供給体制が取られ、L5の新型コロニー完成と同時に
大規模な発電所と送信施設が設営されてゆく。
 大規模生産基地としての意味から、「プラント」と呼称されるコロニー郡の第一陣であった。

 プラントからのエネルギー供給により、地球上のエネルギー事情は解決したかに見えたが、プラント理事国とプラントとの関係悪化に
伴い、C.E.65年にはエネルギー供給が削減される。
 これにより人類は再び、旧態依然とした原子力発電に頼らざるを得なくなるのである。

 C.E.70年、4月1日。

 オペレーション・ウロボロスの発動に伴い、ザフトは合計120基のニュートロンジャマーを地球上に投下。
 最大半径1000kmの核反応を抑制するといわれるニュートロンジャマーは、地上を隙間なく覆いすべての核反応を抑制、
ミノフスキー粒子の散布に匹敵する深刻な電子障害を起こした。

 作戦上、中立国への投下は機能を停止して行われるはずであったが、一部の兵士が暴走し、投下された全てのニュートロンジャマーが
最大出力で展開されてしまう。
 これは暴走を知りつつ見て見ぬ振りをした部隊長や、暴走を煽った何者かの存在があり、またしてもザフトの管理体制の甘さが
露呈する事になったが、これもまた上層部によって隠匿される事になる。

 唯一、これを阻止しえたジオン公国軍であったが、ニュートロンジャマーをミノフスキー粒子と同じようなものと誤認していたため、
この作戦を察知していたが阻止行動を起こさなかった。
 この日、周回軌道を警戒していたジオン軍パトロール艦隊は、偶然この惨劇を目撃。地上から光が消えていく様をリアルタイムで
ジオン本国に伝えている。

 後に人類史上最大の殺戮劇といわれる、エイプリルフール・クライシスという名の惨劇の幕開けであった。

 地球の電力の6割以上を供給していた原子炉の停止は、人類を未曾有のエネルギー危機に陥れようとしていた。
 また、一次災害ともいえるニュートロンジャマー降下時における、大規模な電子障害による被害だけでも数千万人の死傷者を
出していた。
 そして、これから起こるエネルギー不足による二次災害が、どれだけの被害を及ぼすのか想像もつかなかった。

「おい、シンちゃん。真っ暗だぜ?」
「ああ、見えるのはザクのモノアイだけだな」

「通信もほとんど駄目だな。接触回線しかまともに聞こえねえ」
「ああ。ところでジョニー、照明弾はザクの装備の中にあったかな?」

「いや、ねえな。……信号弾で、代用するか」
「そうだな。こちらも用意した。撃つぞ、そら!」

 パス、パス、と二発の信号弾が上がる。一応、非常事態を示す色を使っている。
 この動きに、他のパイロットも同じように信号弾を上げる。
 なんとか状況が確認できる程度の光源が確保でき、次第にあたりの混乱が治まっていく。

「で、シンちゃん。なんだったんだ?」
「どうやらザフトが何かしでかしたらしい。ここら一体というか、どうも全世界的に通信障害がかかっている様だ」

「そらすげー。ってことはこの停電も連中の仕業か?」
「おそらくな。そろそろか……」

「何が? って、司令部に明かりが点いたな。どうやったんだ?」
「ザクを何機か発電機代わりにした。と言っても、急場しのぎにしかならんがな」

 ジオン義勇軍の駐屯する基地も例外ではなく、各基地は混乱を収拾するのが精一杯であった。

 翌4月2日、エイプリルフール・クライシスの混乱に乗じ、ザフトはカーペンタリア制圧作戦を発動する。

 作戦上は制圧作戦と呼称されているが、実際には大洋州連合側から無償で土地が提供されており、軌道上から分割降下させた
基地施設を48時間で組み立て、基地の基礎を建設し終わった時点で作戦は終結している。

 俗にカーペンタリア基地と呼ばれる、この基地でザフトはオペレーション・ウロボロスの完遂を目指し、着々と準備を進めていく。

 ジオン公国は、ザフトのニュートロンジャマーの無差別投下を痛烈に批判。

 交戦中の地球連合構成国へのニュートロンジャマーの投下だけであれば、少しは態度が違ったであろうが、ザフトが中立国をも
巻き込んだために、ジオンの義勇軍にまで被害が及び、幸いにして死者こそ出なかったものの多数の負傷者を出している。

「我らジオン国民は、このプラントの非道なる行いを、決して認める事は無いであろう!」

 ギレン・ザビ総帥が4月4日の演説において、そう述べたようにジオン国民のプラントへの感情は急速に悪化していた。
 また、ジオン国籍のコーディネーターもこのプラントの行いに眉をひそめ、同胞扱いされる事を大変嫌がったという。

 さらにギレンは困窮する地上に対し、速やかなる支援を約束。翌5日には支援物資を満載したHLV船団が、護衛艦隊とともに
ジオン本国を出航。途中、ソロモンから進発した宇宙攻撃軍主力艦隊と合流し、降下ポイントに向かっている。
 ジオンがこれだけの戦力を集結させたのは、この地上支援を地球連合、中立国分け隔てなく行うと明言したため、ザフトからの
横槍が入ると予想されたからである。

 実際、ジオン輸送船団が軌道上降下ポイントにたどり着いたときには、ザフト艦隊が展開していた。

 この時点では、まだ両国ともに交戦の意思はなく、ジオン側からの攻撃は完全に禁止されており、ザフトにおいても正直なところ、
嫌がらせの艦隊展開以外の何ものでもなかった。
 HLVの降下が開始され、結局、最後の一機が降下するまでどちらも睨み合いに終始し、暴発する事はなかった。

 このジオンの支援は分け隔てなく行うとは言われたものの、やはり親ジオンの姿勢を見せる中立国に優先して配布され、特に第一陣の
支援物資の半数以上はジオン義勇軍の駐屯基地周辺に、優先的に回されていた。

 ギレン本人が音頭を取り推進したこれらの支援行為は、見え見えの人気取りであったが、それだけに困窮した地上の人間には
効果的であった。
 この結果、ジオンとてプラント同様、コロニー落しにて大量殺戮を行っているのだが、このエイプリルフール・クライシスを
契機に多くのナチュラルが親ジオンに傾倒していく事になる。

 ジオンとの交戦を回避したザフトは、軌道上から次々とカーペンタリアに地上侵攻作戦に必要な兵器、物資を送り込む。

 ボズゴロフ級潜水艦、レセップス級陸上戦艦、ピートリー級陸上戦艦などは衛星軌道上で建造され、そのままカーペンタリア基地に
持ち込まれている。
 軌道エレベーターも無しに、どうやって持ち込んだのは不明であるが、おそらくコーディネーター脅威の科学力が発揮されたものと
思われる(もっとも可能性の高いものは、片道用のHLVのようなものと思われる)。

 これらの兵器は、初めからニュートロンジャマー下での運用を前提に建造されている。

 また、オペレーション・ウロボロスに合わせて開発された地上用MS、AMF-101ディン、UMF-4Aグーンが次々にロールアウト。

 ジン、シグーは汎用MSであり、それこそ戦場を選ばない機体であったが、プラントもコロニー国家の例に漏れず、宇宙軍以外の
軍は地上部隊しか所持していない。
 そして、空戦の要として開発されたのが、制空用MSディンであり、海洋補給線の寸断と沿岸基地への攻撃を目的に開発されたのが
水中用MSグーンである。

 これはジオンが2月より始まった統合整備計画により新型MSの開発が遅れ、いまだにザクⅡF、そして地上用に改修されたJ型の生
産のみに終始していただけに、恐るべき開発速度と言えよう。

 これらに加え、TFA-2ザウートが次々とカーペンタリア基地に降下され、5月後半に行われたアフリカ侵攻作戦直前には、実に300機もの
MSがこの基地に配備されていた。

 コーディネーターのみで構成されるだけあって、MSの機種転換も迅速に行われ、潜水艦隊、地上部隊の編成が進んでゆく。
 兵員100万人のザフトが、ここカーペンタリアに10万人の兵力を配置、最終的には地上軍50万人に達している。
 このことから数に劣るプラントが、いかにオペレーション・ウロボロスに命運をかけていた事が伺えるだろう。