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Zion-Seed_515_第11話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:12:30

 ジオンのL4コロニー郡で建造されているエネルギープラントの存在は、地上のエネルギー問題の解決以上の事態を
各国政府に与えていた。

 特に地球連合、プラント理事国らにとっては戦争の理由の喪失と言ってすら良かった。

 ブルーコスモスの跳躍が激しい大西洋連邦ではムルタ・アズラエルを中心に、反コーディネイター運動を活発化させ、
この戦争の終結をプラントの完全消滅に軸を合わせつつあった。
 ロゴスがプラントの利権からほぼ手を引き、ジオン公国経済へと食い込む事に腐心しているため、アズラエルらを掣肘
しうるものは、もはや軍の反ブルーコスモス系軍人だけである。
 G計画にその母艦となる新造艦の建造、さらには宇宙艦隊再建計画など、エネルギー不足によりそのスピードは
ゆっくりとしたものではあったが、まさしくそれは地球圏最大の国力を見せ付けるものであった。

 また、戦争終結の兆しによりユーラシア連邦はプラント利権を実質的に放棄、戦後の大西洋連邦との主導権争いに
焦点を移すことになる。
 ユーラシア連邦政府は自国単独によるMS開発を完全に断念し、ジオン製MSのライセンス生産によるMS生産を
行うことを決定。
 この背景には、大西洋連邦と異なりプラントに自国を侵食されており、現在の戦車、航空機に回しているラインを
そう簡単にMS生産に回す事ができないため、MS開発に国力、時間をかけている暇が無いという理由がある。
 また、現有兵器の有視界対応機の開発を優先したのは、MS以外の陸上、航空兵器の開発がコロニー国家と言う
特性上、不得手なジオンにMSのライセンス生産と引き換えに高く売りつける為でもあった。

 そして東アジア共和国は秘密裏にプラントに接触、プラントの自治独立を保障することで彼らの技術力を自国に投下
させようと、プラント評議員と交渉を進めていた。
 もちろん東アジア共和国はこの独立保障によって、プラントに味方して大西洋連邦と対決するつもりなどまったく無い。
 この独立保障によってプラントが大西洋連邦に滅亡させられるまでの間に、いかにプラントの高い技術を自国に
流出させるかというものである。
 東アジア共和国にとって、この程度の横紙破りなど日常茶飯事である。

 プラントでは狂いに狂いまくるマスドライバー占拠計画に、評議員たちが頭を抱えていた。

 ザフトが開戦から11月までに失ったMSはすでに300機を越える。
 これは開戦前に400機のMSがザフトの保有総数であったから、損傷機を含むと最早無傷の機体は存在しない事になる。
 もちろん、開戦から製造ラインがフル稼働でMSを生産している為、そのような事にはならない。
 しかし損失機を埋める為の生産になるため、主力機のジンからシグーへの転換は遅々として進まなかった。

 また、MSの損失以上にパイロットの戦死はプラントへの痛撃となっていた。
 今はまだ目に見えた問題になっていないが、ザフトのMSの性能がコーディネイターの高い技能により真価を発揮する以上、
パイロットの質の低下はそのままMSの性能低下につながる問題であった。

 プラント市民の間でも、ようやくこの先の見え無い戦争に対し、厭戦気分が広がりつつあった。
 この動きに、プラント評議会はオペレーション・ウロボロスの見直しとともに、穏健派と強硬派が激しい舌戦を繰り広げ、この戦争の
落しどころを議論していた。

 穏健派、所謂クライン議長を中心にするクライン派は、最終的にプラント理事国との交渉を持ってプラントの独立を達成する
ことを目的としている。
 対する強硬派、所謂ザラ国防委員長を中心とするザラ派は、プラント理事国らの降伏を持ってプラントの独立を達成する事を
目的としていた。

 穏健派にとって強硬派の目的は無謀でしかなく、強硬派にとって穏健派の掲げる目的は絵に描いた餅でしかなかった。
 実際には、穏健派は何を持って交渉材料とするのか、強硬派はどうやって降伏まで追い込むのかといった具体的な案は、
どちらにもある時期までは存在しなかった。

 その交渉材料であり決戦兵器こそが、超巨大ガンマ線レーザー砲『ジェネシス』であった。

 この惑星間航行用宇宙船加速装置の兵器転用により、プラントにもようやく終戦への道筋ができる事になる。

 軍縮条約の失効により、ジオンでも新造艦の竣工が順次行われることになる。

 ムサイ級の建造も後期型に移行し、初期型では死角であった後方と下方部へメガ粒子砲が追加され、防御面での強化が
なされている。
 他にも、ブリッジ下方に存在したMS発進口を前方へと移送し、カタパルト式による4機一斉発進を可能にしている。

 新造艦としては大気圏突入可能で地球上での飛行が可能となる新型巡洋艦、ザンジバル級機動巡洋艦の建造が始まっている。
 
 MS開発も試行錯誤を繰り返しながら宇宙用次期主力機の開発が進められていた。
 主力機がほぼ完全にF2型に移行するさなか、F型を完全に空間戦闘用に特化させたRシリーズのテストが行われている。

 このRシリーズ開発計画の陣頭に立って指揮したのが、公国軍人コーディネイターで最も有名な、かのエリオット・レム中佐である。
 技術士官でありながら変態的操縦技能を持つ彼は、新型MSの試作機ができると試験機と言っては朱色に塗装し、限界性能まで
乗り回すのである。
 今回も、MS-06Rが完成するとともに朱色に塗装、MS-06RPの型番をつけるとともに宇宙に繰り出したと言われている。

 このレム中佐の無茶な運用により、推進剤の搭載量不足や整備、補給面での問題点が続出、すぐさま脈部タンクのカートリッジ化など
の対策が取られ、R-1A型への改修が行われた。
 シグーを完全に凌駕する性能を得たザクR-1Aであったが、機体のあまりの高性能化にジオンのコーディネイター・パイロットにも
操縦が困難なものとなってしまい、最終的に56機が生産されたに止まっている。
 さらに発展型のR-2型に至っては僅か4機が製造されたのみである。

 次期主力機としては失敗に終わったRシリーズではあったが、機体はジオンのトップエースらに与えられ、彼らの高い技量もあり、
後のザフト戦において大いに戦果をあげる事になる。

 ■ 蜉蝣&外人 ■
 
「なんだい、こりゃ? ジオンの吹き溜まりの会合かい?」
「遅かったなガラハウ少佐。この間はえらい災難だったようだが?」

「よしとくれ、正直思い出したくも無い」
「ハハハ、二ヶ月もすればいい思い出だ」

「で、ホントに何の会合だい? なんとなく想像はつくけどさ」
「まあ、少佐の予想通りと思うがな。海兵隊に外人部隊。予想するだに恐ろしい」

 などと二人で喋っていると、扉が開きギレン総帥が親衛隊長のデラーズ大佐と本国防空隊長のマンスフィールド大佐を
引き連れ入室してくる。
 あわてて敬礼するシーマとダグラス。

「ふむ、揃っているようだな。デラーズ」
「はっ」

 ギレンは二人を確認すると、デラーズを促す。
 その言葉にうなずき、デラーズは手元の書類を読み上げる。

「海兵隊及び、MS特務遊撃隊」

 一旦言葉を切り、書類から視線を二人に移して続ける。

「諸君らの部隊は、来月中旬に行われるであろうクーデター、その鎮圧に参加してもらう事になる」

 思わず顔を見合わせる二人。

「クーデターだって!?」
「クーデターですと!!」