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Zion-Seed_515_第14話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:13:05

 ジオン公国でのクーデター失敗は、各国各方面に多大な影響を与える事となった。

 表向き、権益の喪失を恐れた突撃機動軍上層部と旧ダイクン派の残党が手を結び、キシリア・ザビ少将を御輿に
担ぎあげて、クーデターを行ったと発表された。
 実際にはキシリア本人が主導して行ったものである。
 ギレンがこんな嘘八百並べたのは、別に妹可愛さではなく、純粋に家族間への説明が面倒臭かっただけである。
 父デギンは薄々真実に気付いていたが、ドズルやガルマは可愛い(?)妹、敬愛する姉を利用したダイクン派の
卑劣さ、突撃機動軍上層部の軽挙を憤っていた。

 この結果、旧ダイクン派は完全に民衆からの信望を失い、地球に派遣されていたマ・クベ中佐ら少数を除き、
キシリア派の軍人は将官に留まらず、佐官クラス(キリング、トワニング、バロムら)まで更迭される事になる。

 ジオンではかねてより進んでいた軍の再編が、突撃機動軍の上級将校が軒並み更迭された事から更に加速、
年明けを待たず終わることになる。

 また、フラナガン機関を率いるフラナガン博士は非常に風向きを見るに長けた人物のようで、今回のクーデター
において優良な素質を持つニュータイプ被験者を温存、クーデター失敗時の機関維持のための切り札にしていた。
 ギレン自身はニュータイプ史観はともかく、ニュータイプを兵器として利用する考えは持っていなかったが、
連合から入手した量子通信システム研究のため、フラナガン機関を続行させる事になる。

 フラナガン機関はサイコミュだけでなく、量子通信の研究までおこなうことになり多忙を極める事になるが、
フラナガン博士はキシリア派上層部の人間でありながら、唯一地位を維持するのに成功していた。

 地上の義勇派遣軍も再編のため、順次、本国へと帰還していく。
 こうして、最大でMS900機、兵員150万人を数えたジオン義勇派遣軍は次々と宇宙へと上がり、最終的に
ジオンの地上戦力はMS100機、兵員10万人まで縮小されることとなった。

 このとき地上に配備されていたMS-06Jは赤道連合ら3ヶ国に売却された。
 その数、実に800機。
 すでに配備されている旧式のMS-05らを加えると、なんと3国あわせて1000機を超える数になる。
 性能はともかく、ザフトの総MS配備量の2倍近くに相当する数であった。

 これに慌てたのが地球連合である。
(ザフトは数には驚いたものの、質が大幅に劣るため大して問題視していない)
 既にライセンス生産により、一部でMSの配備が行われているユーラシア連邦や、着々とG計画が進んでいる
大西洋連邦はともかく、東アジア共和国にとっては列強から転がり落ちかねない事態であった。

 ■ 極東トリオ 政治家編 ■

「アイヤー、これは拙いアルヨ!」
「拙いニダ! 拙いニダ!」
「ともかく、なんとかして赤道連合との関係を取り持たねば!」

「でもそれだけでは不足アル。対MS戦用の何かを持たねば赤道連合はおろか、汎イスラムやスカンジナビアの
下風に立たねばならないアル!」
「そんなのは嫌ニダ~」
「だが、我が国のみでの開発は正直厳しいぞ? ジオンはユーラシアに先を越されている。売ってはくれるだろう
が、絶対にユーラシアの連中が首を突っ込んでくるぞ」

「……プラントしかないアルネ」
「プラントはけちニダ!」
「ある程度の軍事技術は供与してはくれているが、主力のMSまでは難しくないか?」

「……クフフフフ、いいことを思いついたアル」
「ニダ~?」
「ほう?」

「カオシュンを餌に、ザフトを徹底解析するアル!」
「ニダ!」
「なるほど、カーペンタリアと同じくカオシュンを提供してザフトを駐留させるか。表向き、連合へも占領されたと言えば、
角も立つまい。悪くない、ついでに赤道連合への牽制にもなる」

「ついでにジャンク屋どもを使って、ジオンとザフトのMSを入手するアル」
「MSニダ~」
「まあ、コピー、改造は我らのお家芸だしな。連中のを元にMSの海賊版と洒落込むとしよう♪」

 人類史の古い方から数えた方が早い民族たちだけあって、陰謀・策略はお手の物であった。
 ただ、『策士、策に溺れる』に、ならなければの話だが。

 12月となり、公国軍の再編が終了する。

 公国軍最高司令官を兼任していたギレン・ザビ総帥は、新たに父デギンの側近であるマハラジャ・カーン中将を
大将に昇進させ、これに任命する。
 さらにその下に統合参謀本部を設立、総参謀長にキリング・J・ダニガン中将、副参謀長にエギーユ・デラーズ准将
を就任させる。
 宇宙攻撃軍と突撃機動軍が統合され宇宙軍となり、その初代総司令官にはユーリー・ハスラー中将が任命された。

 ドズル・ザビ中将は宇宙要塞ソロモンの司令官となり、指揮下に2個艦隊が与えられ、L4コロニー郡の防衛を
任されることとなる。
 また、地上軍は義勇派遣軍司令官のユーリ・ケラーネ少将が、そのまま地上軍総司令官に就任している。

 ある意味で今回の再編の最大の目玉となったのが、新設された戦略諜報部の人事であろう。
 戦略諜報部の初代長官に就任したのはダグラス・ローデン准将。
 今回のクーデターを早期に察知、クーデター部隊の阻止に尽力した事が評価されてのことであった。
 ただ、本人はその事を言われると苦笑するばかりであったと言う。

 ■ バカ兄 ■

「兄貴! ガルマが地上に降りると言うのは本当かァ!」
 ドバァーーーーン!!(←ドアが砕ける音)
「……ガルマ、ドズルが来たぞ?」
「わかっています」

「ガルマよ、なぜ統合参謀本部幕僚を蹴って前線などに?」
「……」
「ドズル兄さん、私とてザビ家の男です。親の七光りだけでない事を証明して見せます!」

「親の権威など頼らずとも、お前には将の器がある! 前線で戦うだけが将の仕事ではないのだぞ?」
「……」
「ですが、後方でふんぞり返るだけの男に兵の信頼が得られるでしょうか? ドズル兄さんもよくお分かりでしょう?」

「ぅぐむ……だが、しかしだなぁ」
「……ドズルよ、ここまで言うのだ、ガルマとて覚悟があろう。快く送り出すのも兄としての勤めだぞ?」
「ギレン兄さん……」

「うーーーーむ、わかった! そこまでの覚悟があるなら兄として無碍にはせん!」
「……だ、そうだ」
「ありごとうございます! ドズル兄さん!」

「だが! 護衛の部隊は俺に選ばせてもらうぞ! まずはラルにマツナガ、ガトーあたりが妥当だな……そうだ!
シャアのやつもつけよう。ガルマ、お前の同期であったしな!」
「……ドズル」
「兄さん……」

 それにしてもこのドズル、過保護すぎである。

 ■ ジオン公国軍 C.E.70年12月時の戦力 ■

 グワジン級戦艦       : 8隻
 チベ級重巡洋艦      :12隻
 ザンジバル級機動巡洋艦:20隻
 ムサイ級巡洋艦      :40隻
 ムサイ級巡洋艦後期型  :40隻
 その他保持艦艇      :60隻
(ドロス級大型輸送空母   : 2隻建造中)

 ガウ級攻撃機空母     : 8機
 ファット・アンクル輸送機 :12機
 ドップ戦闘機         :60機
 ルッグン偵察機       :20機

 MS-06F2    :1400機 … 現在の公国軍主力MS
 MS-06FZ    : 100機 … 次の対外輸出用MS、ユーラシア連邦のライセンス生産もこの機体
 MS-06R-1A  :  56機 … コーディネイターも扱えない高機動MS、エース専用
 MS-06R-2   :   4機 … 更に進化した高機動MS、もはや人の乗るものではない
 MS-06M     :  12機 … 水陸両用MS試験機
 MS-07B-3   :  60機 … 局地戦用MS、地上軍に配備
 MS-08/TX    :   8機 … 局地戦試験運用機
 MS-09      :  16機 … 地上用MS先行生産機
 MS-09D     :   4機 … MS-09を砂漠用に改修したもの
 MS-09R     :  20機 … MS-09を宇宙用に改修したもの、種本編開始時に赤い人が乗っている
 MS-09F/TROP:  10機 … 地上用MS制式採用機、量産開始直前
 MS-09RⅡ    :   6機 … 宇宙用MS次期主力機、量産開始直前
 
 ジオンは戦後の好景気の影響もあり、一年足らずで開戦前をわずかに上回るほどまでに戦力を回復させていた。
 無論、MSの性能は格段に進化している。
 特に次期主力機となるMS-09シリーズは、ザフトすべてのMSを凌駕しているのである。

「もはや、ジオンに敵はいない!」

 これこそ、当時の公国軍上層部から末端までのほぼ共通した認識であったであろう。
 だが、この増長こそがジオン公国を現在の地球プラント間戦争に引きずり込み、ヘリオポリスでのG兵器の登場が
公国首脳陣に大きな衝撃を与えるのである。