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Zion-Seed_515_第21話

Last-modified: 2007-11-12 (月) 18:14:26

Zion-Seed 第21話 PHASE-03『崩壊の大地』

 ■ 赤い彗星 ■

 年明けとともに次々とラインから吐き出されるリックドムⅡは順次、各部隊に配備されていた。
 特に独立機動部隊に優先して回されており、ここ“赤い”ザンジバルにも2機のリックドムⅡが配備されている。

 先行して20機ほどが作られたリックドムは、ザクR型の授与に漏れたエースパイロットに授与され、彼らの特性に
あったチェーンアップがなされており、ノーマルのリックドムⅡより高性能だったりする。
 シャアの駆る赤いリックドムもその例に漏れず、その機動性はザクR-2型に匹敵するほどに強化されていた。

 だが、このザンジバルに搭載されているMSはその3機のみである。
 最大12機のMSを搭載できるザンジバル級にしては少なすぎる数であるがそれには理由があった。
 なんと2機のMAが搭載されているのである。
 さすがにMAN-03ブラウ・ブロほどのスペースはとらないが、MAN-08エルメスとてそれなりの大きさである。
 MS3機、MA2機、さらに単艦行動の為の物資や機材で格納スパースはいっぱいいっぱいであった。

「ですが、よろしかったのですか? 後々、問題になりそうですけれど」
「しかしララァ、もはや言ってもどうにもなるまい? あの娘を降ろすにもソロモンまで戻らねばならん、そういうわけにも
いかんだろう?」

「ええ、それは承知していますわ。私が言いたいのは、な・ぜ! あの娘に艦内行動を自由にさせたのかを、聞いています」
「あ~、まあ、いや、それはだなぁ……」

 ブリッジでは赤い彗星がヒラヒラ服の褐色美少女に詰め寄られていた。

「……」
「おや、どうしました? マリオン少尉」

「あ、アンディ中尉……」
「ああ、あれですか。いつもの事ですよ、少尉。犬も食わない夫婦喧嘩ってやつです」

「夫婦……喧嘩……ですか? アレ」
「そういえば少尉の任官は先週でしたか。これからよく見る事になりますよ」

「はぁ……」

 そんな2人のやり取りを、空色の髪の少女とアポリーな中尉が見守っている。

「シャア少佐!」

 そんな絶妙な雰囲気のなかに桃色の髪の美少女が乱入した。
 その後ろには案内役を任されたロベルトな中尉がついてくる。

「これはこれはハマーン様。せまいブリッジではありますが、ごゆっくりしていってください」
「ごめんなさい、シャア少佐。なんだか我儘を言ってしまったみたいで……」
「少佐、そろそろ戦闘宙域です。民間人の方はブリッジからさがっていただかないと……」

 赤い彗星をはさんで2人の少女の視線がぶつかりあう。
 バチッ!!
 ビリビリとブリッジ内の空気が帯電していくかの様であった。

「……所謂、修羅場ってやつでしょうか?」
「そうですねぇ、怖いですねぇ」
「ドレン大尉、申し訳ない。我々は転進します。ご武運をー!」

 パイロット3人は逃げ出した。残されたのは美少女2人に挟まれた赤い彗星に、ブリッジクルー。
 自業自得な赤い彗星はともかく、ブリッジクルーはひたすらに災難であった。

 ■ ■

「新型艦、しとめ損ねたか……」
「戦艦? コロニーの中にか……」
「大きい……」

 クルーゼはとりあえず戦闘力のほとんどを失った2機のメビウス・ゼロを放置、アークエンジェルへと攻撃を仕掛ける。

「回避、面舵ー!!」

 ナタルの指示にアークエンジェルを操舵するノイマン。
 400mオーバーの巨艦が軽やかにシグーの攻撃を避ける。浮沈艦伝説の幕開けである。

「……ここでしとめさせてもらう!」

 かなりありえない回避行動をしたAAをクルーゼはとりあえず放置、今度はX-105に攻撃を敢行する。

「ビーム兵器?」

 間一髪で換装が間に合ったキラはランチャーパックの武装に驚きつつも、PS装甲の電源を入れる。
 再びトリコロールカラーとなるX-105、シグーの攻撃を全く受け付けない。

「フェイズシフト……これはどうだ」

 強化APSV弾に換装し再度攻撃するシグー、しかしX-105は攻撃を受け付けない。
 装甲の頑丈さにいらだつクルーゼ、そこにAAから放たれたレーザー誘導ミサイルが襲い掛かる。

「遅い」

 しかし、ミサイルは軽やかに回避され、ナタルが当てるなよ! と言ったメインシャフトに命中する。

「っぁ、冗談じゃない!」

 刻一刻と状況の悪化するヘリオポリスに、キラが原因のザフトのMSをどうにかするため、ランチャーパックの主砲
320mm超高インパルス砲『アグニ』を構える。
 ちょ、まっ、と叫ぶマリュー。しかしその声は届かない。放たれる『アグニ』、その高エネルギー粒子はシグーの
右腕を貫き、そのままコロニーの外壁に直撃、見事破壊する。

「!?」

 その威力に恐れおののくキラ。
 そして、右腕を破壊されたクルーゼはその威力に驚きながら、コロニーに開いた穴から離脱した。

 ■ 大天使 ■

 なんとか戦闘を切り抜け、無事AAに乗艦したX-105とマリュー、そしておまけのヘリオポリスの民間人。
 そこにAAの主だった士官・下士官が駆けつけ、再会の挨拶を交わす。
 
「へー、こいつは驚いたな」

 キラがX-105から降りた事でAAクルーにざわめきが広がる。そこに陽気な声とともに紫と白のパイロットスーツの
男が同色のパイロットスーツを着た女性を伴い歩いてきた。

「地球軍第七艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく。で、こいつは俺の副官だ」
「同じく地球軍第七艦隊所属です。中尉とお呼びください」

 そう言って敬礼を交わす2人。AAクルーも敬礼を交わし、マリューとナタルの2人が一同を代表して名乗る。
 そしてムウが着艦許可を求めた事で、マリューも今ここにいるクルー以外がほぼ戦死していることを知るのであった。

 着艦許可を得たムウはX-105、それを操縦していたらしいキラに視点を移す。
 マリューがキラが機体に関るようになったわけを簡単に説明する。その際のジン1機を撃墜との言葉に反応する
AAクルー、だがムウはあまり気にならなかったようで同行したはずのテストパイロットの行方を尋ねる。
 残念ながらナタルの返答は芳しいものではなかった。
 そうか、と表情を暗くして答えるムウ。そして再びキラに視線を移し、今度は彼に近づいていく。それに続くマリュー
とAAクルー、なんで?

 なんですか? と訝しげに尋ねるキラに一言、

「君、コーディネイターだろ?」

 ムウのその言葉に緊迫する一同、

「……はい」

 キラのその返答に保安員が銃を構える。その動きにいきり立ったトールが前に進み出たその瞬間、

「ぷげぁっ!!」

 挨拶の後、一言も発していなかった中尉がムウを蹴り倒した。
 
「な、何を!?」
「フラガ大尉、空気読みましょう? ここは地球連合軍。し・か・も、ブルーコスモスのメッカ、大西洋連邦ですよ?
大尉みたいにコーディネイターに寛容な人間なんて、そうそう、い・な・い・ん・で・す・よ!」

 ゲシゲシと倒れたムウを踏みつけながら、壮絶な笑顔で微笑む中尉。呆気に取られる一同。
 さすがにブルーコスモス扱いは嫌だったらしく、保安員は銃を降ろした。

「ごめんなさいね。大尉は昔から空気が読めない人で……」

 ムウを足蹴にしながら中尉がキラに申し訳なさそうに謝る。その異様な雰囲気に圧されキラは、いや、あまり気に
してないっすよ。とブンブン首を振った。
 そんな中尉に、大西洋連邦軍人らしくナタルが食いかかるがマリューが割って入る。

「そう驚くこともないでしょう? ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの」

 そう言って、貴方は戦争を避けてここに移住したのでしょう? と確認を取る。キラはそれに頷くと自分が一世代目の
コーディネイターであることを明かした。
 ざわめく一同。
 そんな中、さっき、中立も何もないわ! と言っていた人の言葉とは思えないわね。とセイラが苦笑し、それを耳にした
サイも同じように同意した。

「皆、すまんね。ここに来るまでの道中、コレに乗るはずだった連中の動かすのにも四苦八苦してた様子を知ってるだけにな。
つい、聞きたくなっちまってね。イテッ」

 起き上がったフラガがX-105を見上げるように呟く。ならこんな場所で聞くなと言わんばかりに、中尉のローがフラガの
脹脛を撃った。

「大尉、どちらへ?」
「どちらって、俺ら被弾して降りたんだし、外にいるのはクルーゼ隊だぜ? あいつらしつこいぞ~。こんな所でのんびり
している暇はないと思うがね」

 そう言ってムウはこの場を後にする。だからもう少し言い方に気を使え、と中尉がムウの頭を叩いた。
 歴戦の2人の言葉に立ち尽くすAAクルー。スタッフの大半が戦死、残った人員での初戦がクルーゼ隊。絶望的であった。

 ■ 作戦会議ザフト編 ■

「ミゲルがこれを持ち帰って帰ってくれて助かったよ。でなければ、いくら言い訳したところで地球軍のMS相手に
機体を損ねた私は大笑いされていたかもしれん」

「オリジナルのOSについては、君らもすでに知っての通りだ。なのに何故、この機体だけがこんなに動けるかは
分からん」

 うなずくアスラン。クルーゼが帰還するまでの間、X-303のOS書き換えに勤しんだだけにその出来がとても実戦に
堪えぬものとは思えなかった。

「だが我々がこんなものをこのまま残し、放っておくことにはいかんという事ははっきりしている。捕獲できぬとなれば
今ここで破壊する。戦果ものだ。侮らずにかかれよ」
「「「「ハッ!」」」」

 クルーゼの言葉に敬礼するアスラン、ミゲルら4人。

「ミゲル、オロールは直ちに出撃準備、D装備の許可が出ている。今度こそ完全に息の根を止めてやれ!」
「「ハイ!」」

 アデスの指示に2人が出口へと向かう。ミゲルが任せておけといわんばかりに、アスランの肩を叩いていった。
 それを不安に感じたアスランがアデスに出撃許可を求めるが、クルーゼからまだ手柄が欲しいのか? と呆れたように
言われ、アデスからも今回は彼らに譲るよう窘められる。
 流石に幼馴染が地球軍のMSに乗っているかもしれないから確かめたいんです! とは言えないアスランであった。

 ■ ■

 ローラシア級戦闘艦ガモフでは出撃に備え、整備班が慌しく動いていた。

「D装備だって」
「要塞攻略でもやるつもりかね、クルーゼ隊長は?」
「でも、そんなことをして、ヘリオポリスは……」

「しょうがないんじゃない?」
「自業自得です。中立とか言っといてさ」
「……」

 無事、任務を成功させた3人のザフト・レッドがそれぞれの思いを胸に、その様子を眺めていた。

 ヴェサリウス内でも慌しく整備員が動き回る。コンテナ内からD装備を取り出し、出撃予定のジンに取り付けていく。
 その様子をX-303のコクピット内でその様子を眺めつつ、アスランは機をうかがっていた。

「ハッチ閉鎖ー!!」

 ミゲル機が出撃し、整備員の上げた声に反応するかのようにX-303が動き出す。
 驚きを隠せず機体を見送る整備員達、その報告を受けたアデスは声を荒げ、呼び戻すように指示を出そうとする。

「行かせてやれ」
「はっ!?」

「データの吸出しは終わっている。かえって面白いかもしれん。地球軍のMS同士の戦いというもの」

 しかし、クルーゼがにやりと笑ってそれを止める。アデスは不承不承頷いた。

 ■ 作戦会議AA編 ■

 ヘリオポリスの学生達が友人のコーディネイターについて話しているころ、AAは無事だった物資の積み込みと、警報レベルが
上がったがためシェルターへ避難しそこねたヘリオポリス住民を収容していた。

 艦橋では4人の士官が今後についての対応を協議していた。
 ナタルはマリューが今後もキラに協力してもらう事に不満を漏らすが、じゃあ、どうするの? と聞かれ、パイロット2人を見る。

「今度はお2人のうちどちらかが乗られれば?」
「おい、無茶言うなよ。あんなもんが俺に扱えるわけないだろ」
「同じくです。彼の書き換えたOSは完全にコーディネイター用に調整されています」

 では元に戻して……と言うナタルに、

「そんで、のろくさ出て行って、的になれっての?」
「正直、メビウス・ゼロで対応したほうがまだましです」

 パイロット2人の返答は芳しいものではなかった。
 結局、ナタルもキラからの協力を得る事に同意せざるをえなかったのである。

 そうしてマリューがキラの説得に向かった直後に、Nジャマーの反応が増大する。

「なんだと?」
「ちっ、やっぱこっちが出て行くまで待つ気はないかー。あんの野郎!」
「……しつこい」

 不安そうにナタルがムウにヘリオポリス内での戦闘を懸念する。
 だがムウは皮肉げな笑みを浮かべ、相手がそんな事を気にする連中ではないと告げる。
 再びヘリオポリス内での戦闘が始まろうとしていた。

 ■ ■

「お断りします!」

 開口一番、戦闘への協力を求めるマリューにキラは拒絶で答える。
 戦争が嫌でオーブを選んだだけあって、キラの戦闘に対する拒否感は相当なものであった。
 どう説得したものか? とマリューが考えようとした時、艦橋からの通信が入る。

「どうしたの?」
『MSが来ます。直ちに艦橋へとあがってフラガ大尉の補佐をお願いします』
『ん? 今なんて?』

 中尉の通信に驚きの声を上げるムウ。てっきりマリューが艦長をすると思い込んでいたのだ。
 しかし、中尉は技術士官に命を預ける気は毛頭なかった。

「補佐を?」
『はい。艦長不在につき、フラガ大尉が艦長代行を行います。ですがこの艦についてはラミアス大尉、貴方の方が
詳しい』
『ちょっと待て、俺は艦長なんてガラじゃ、フゴッ!』

 通信の向こうから聞こえる打撃音、思わずマリューも引きつった笑みを浮かべる。
 あの中尉もたいした女傑だ。あそこまで上官に手を上げる士官などマリューもはじめて見る。
 しかし、フラガ大尉もよく許すものだ。軍に入る前からの知り合いだろうか?

「……わかりました。すぐに向かいます」
『お待ちしています。……大尉、指示を。私はMAで出ます』
『ーったよ。んじゃ、アークエンジェル発進準備、総員第一戦闘配備ー!』

 ムウの言葉が終わると同時に通信が閉じる。
 溜息とともに、マリューは後ろを振り返る。聞いての通りよ、とヘリオポリスの学生達に告げる。
 戦闘が始まるという事を彼らに話しながら、ここにあのセイラ・マスをいう少女がいなくてよかったとマリューは
思った。セイラさんは今、食堂にて避難民の治療の補佐をしている。
 キラの説得ではなく、彼の友人達を追い込む事で自発的にキラに協力させようという魂胆であった。

「卑怯だ、貴方達は!」

 マリューの意図が読めたキラが声を荒げる。
 しかし、不安げに自分を見つめる友人達を見捨てる事などキラにはできなかった。

「……そして、この艦にはMSはアレしかなくて、今扱えるのは僕だけだって言うんでしょう!」

 ■ 作戦会議ジオン編 ■

「Nジャマー反応増大!」
「少佐」
「うむ、どうやら戦闘が再開したようだな」

 オペレーターの報告を聞き、ドレン大尉がシャアを見る。
 シャアはドレンの言葉に頷きながら、作戦モニターを見る。“赤い”ザンジバルはザフト艦の索敵範囲ギリギリの
位置でデフリにまぎれて停止していた。

 本来戦闘宙域に到着次第、戦闘に介入する予定であったが、部隊長のシャアがララァとハマーンの2人をなだめるのに
時間が掛かってしまいタイミングを逃していたのだ。
 現在、2人を引き離す事で、艦橋はとりあえずの落ち着きを取り戻していた。
 ララァ・スン中尉は心底申し訳なさそうにアンディ、リカルドとともに機体の調整をおこなっており、ハマーン・カーン
にはマリオン・ウェルチ少尉がつき、会話の相手をしていた。

「さて、ドレン。私とアポリー、ロベルトが先行する。エルメスの投入タイミングは君に任した」
「了解です、シャア少佐」

 そう言ってシャアはブリッジを後にする。

 シャア・アズナブル、赤い彗星の出撃である。

 ■ ■

 AAが浮上し、カタパルトではX-105がソード・ストライカーへの換装を急いでいた。

「ソード・ストライカー、剣か。今度はあんなことないよな」

 先の戦闘で主砲の火力を見誤り、コロニーの外壁を破壊してしまったキラは不安をはらうようにPS装甲のスイッチを
入れる。
 そこに敵機襲来を告げる通信が入る。

『なんてこったい! 拠点攻撃用の重爆撃装備だぞ! あんなもんをここで使う気か?』

 さらに2機のジンが追加で現れる。それを受けてナタルがメビウス・ゼロとX-105に出撃を命じた。

『メビウス・ゼロ、先行します』

 中尉のメビウス・ゼロが出撃し、続いてキラの駆るX-105も出撃する。
 その直後にX-303の反応を確認、ザフトは早速鹵獲機体を戦闘に投入してきた。

「もう投入してきたと言うの!?」
「おいおい、もうOS書き換えたのかぁ? これだからコーディネイターってやつはー」
「しかし、逆に考えればザフトにも戦闘可能なMSがもう無いということでは?」

『はい、大尉と私がシグーが出る前に4機のジンを損傷させています。ヘリオポリス内でX-105がジン1機を撃破、シグーを
損傷させました。おそらくザフトのMSはこのジン3機で打ち止めでしょう』

 マリューが驚愕し、ムウの愚痴にナタルが希望的観測を口にする。中尉もそれを肯定した。

「だったら、逃げ切れるかもしれん! ラミアス大尉、CICは任せましたぜ!」
「分かりました。ナタル、PS装甲に実体弾は効かないわ。主砲の用意を!」
「了解!」

 AAの主砲、225cm2連装高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMk.71」がせり上がり、迫り来るザフトのMSに向かって
放たれた。

 しかし、それを軽々とかわすMS4機。
 ミゲルが僚機に向かって指示を出す。対艦ミサイルを装備したジン2機にAAを狙わせ、ビーム兵器を装備した自機とアスランの
奪取機体でX-105を相手にしようというものであった。
 二手に分かれたザフトのMS隊が行動を開始しようとしたその瞬間、突如オロールのジンが爆散した。

 ■ シャアが来る ■

「新たな熱源を確認、数は3機。反応は……ジオンです!!」
「何ぃ!」

(BGM:例のアレ)

「オロール!!」

 何もできないまま散った僚友に悲痛な叫びを上げるミゲル。怒りの赴くまま見上げると、そこには彼も良く知るジオンのMSが
バズーカを構えていた。

「赤い機体、シャア・アズナブル! 赤い彗星か!!」

 ソロモン戦において2桁のMS、5隻の戦艦を血祭りに上げたシャア(実際の戦績の5分の3は真紅の稲妻のもの)はザフトで
最も有名なジオンのMSパイロットである。
 これが地球連合であれば遭遇しただけで戦意を喪失するものだが、ザフトにそんな軟弱者はいなかった。

「アスラン、新型はお前が抑えろ! 赤い彗星は俺が相手をする!!」

 ミゲルが雄たけびとともにビームを放つ。赤い機体は両翼の2機に指示を出すと、ビームをかわしながらミゲルのジンに接近、
ヒート・サーベルを引き抜くとそれを一閃した。

「ぬおぁ!?」

 胴体を真っ二つに割かれ、ミゲルのジンは爆散した。

「赤い機体……シャアか!」
「赤い彗星! なぜこんな辺境に?」

 AA艦橋でもジオンの戦闘介入に慌てふためいていた。

『アークエンジェル、この機に脱出を!』
「っと、機関最大。さっさと逃げるぞー!」

 真っ先に我に返った中尉の通信を受け、ムウが指示を出す。
 AAを狙うジンはメビウス・ゼロの攻撃とAAからの迎撃を避けるのに手間取っているところを、2機のジオンMSに撃破される。

「これで、後はX-105を回収すれば……」

 マリューがそう安堵の息をついた瞬間であった。艦橋にアラームが鳴り響く。

「なんだ!?」
「敵MSにロックされました!」

 AA前方で2機のジオンMSがバズーカをこちらに向けていた。

「なんで、ジオンが!?」
「んなこと言ってる場合か、回避ー!!」

 ムウの絶叫にノイマンの操舵が冴え渡る。相対距離100で放たれたバズーカの砲弾を見事回避するのであった。

 ■ ■

 時間は少し遡る。
 オロールのジンを撃破したシャアに、追いついた2機のリックドムⅡから通信が入る。

『少佐、いかがします?』
「そうだな、2人はあの艦に取り付いたMSを狙え。撃破した後はあの艦を落として構わん」

 左翼のアンディの通信に、軽く考え込んでシャアは二人に指示を出す。

『しかし、あれは連合艦と思われますが?』
「おそらくな。だが、このヘリオポリスの惨状の要因と思われる所属不明艦、みのがす訳にはいくまい?」

 右翼のリカルドの通信に、シャアは不敵な笑みで答える。

『『了解!』』

 部隊長の意図を理解した2人も不敵な笑みを浮かべ答える。
 両翼のリックドムⅡがAAに向かうと同時に、ビーム兵器を装備したジンが突貫してくる。

「フッ、悪くない動きだ。しかし、単調すぎる。それではなっ!!」

 すれ違いざまにヒート・サーベルでジンを一閃した。

 ■ またまた超人類(笑) ■

 近づいてきた奪取機体X-303との戦闘を開始した直後に、相手機体からの通信が入る。

『キラ、キラ・ヤマト』
「っ!?」

『やはりキラ、キラなのか?』
「アスラン、アスラン・ザラ!」

 思わぬ幼馴染との再会に動きの止まるX-105、そしてX-303。
 しかし、その僅かな時間で3機のジンは全滅、かわりに今AAへ攻撃しているのはジオンのMSである。

 メビウス・ゼロはシャアのリックドムに取り付かれ逃げ回るのに必死であり、2機のリックドムⅡはザフトに比べ
遥かにえげつない位置取りでAAへ波状攻撃を仕掛けていた。
 AAの必死の迎撃はことごとく回避され、次々とヘリオポリスへと命中する。

「なぜ、なぜ君が」
『お前こそ、何故そんなものに乗っている!』

 そんな会話をしている間に、ついにメインシャフトが瓦解、支えを失ったヘリオポリスは崩壊していく。
 同時にコロニーからシェルターが救命艇として射出される。

「うわぁー!!」
『キラー!』

 2機のGはヘリオポリスの崩壊とともに真空空間へと放り出された。

 ■ 赤い彗星 ■

「ちぃ、私ともあろうものがコロニーの崩壊を許すとは……功を焦ったか」

 崩壊するヘリオポリスを目の当たりにし、シャアはそう呟く。
 部下の2人もコロニーの崩壊とともに外に放りだされたため、帰還を命じている。

 相手にしていた連合のMAを見失い、連合の新造艦と思われる所属不明艦もデフリに紛れ、位置を見失っていた。

「しかも仕留めきれずに逃すとはな」

 シャアは仮面をいじりつつ思考をめぐらせる。

「さて、ザフトと所属不明艦……どちらを追う? シャア・アズナブル……」