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Zion-Seed_51_第05話

Last-modified: 2007-12-12 (水) 20:21:00

「大尉ー!」


 MSのコックピットから呼びかけられ、マリュー・ラミアスは振り返る。テストパイロットである友人が長い髪をなびかせ怒鳴っている。


「X303のOSチェック行ないますー!」
「お願いね!」


 周囲が騒がしいのでマリューも怒鳴った。
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 ここは“ヘリオポリス”。地球の衛星軌道上、L3宙域にあるスペースコロニーである。ヘリオポリスは
オーブ首長国に属している。この国は連合、プラント、ジオンの三つ巴の戦争に一切関わらないと中立宣言を
行なった国家だ。


「X105の方はどうしますー!」
「時間がないから搬出後にやるわー!」


 このヘリオポリスでは連合が極秘裏に行なっている“G”計画が実行されていた。この計画は相次ぐ敗戦に
危機感を持ったハルバートン提督が責任者となったもので、その内容はジオンおよびザフトのMSに対抗できるMSとそれを運用する新造艦の開発、製造であった。この新型兵器は“G”と呼ばれ、これからの戦局において重要な価値を持つものである。
 “G”が完成し、搬出も目の前という段階でマリューは安堵していた。しかし彼女はそれがまだ早すぎることを知らなかった。
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――――第5話
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「状況は?」
「強力な電波干渉がザフト艦から発信されています」


 パオロ・カシアス中佐はその報告に眉をひそめた。その言葉を意味するのは戦闘であることが明らかな為だ。


「中立コロニーに攻め込むとはな……」
「外には護衛の巡洋艦がいます。そう簡単には入れないでしょう」


 重苦しい空気の中ナタル・バジルール少尉が言葉を発するがそれは単なる気休めにすぎない。


「アークエンジェルの発進準備に取り掛かれ! “G”の搬入を急がせろ!!」
「了解しました!」
「それから、逃げ遅れた住民がいれば収容するように」
「それはオーブ側がすべきでは?」


 パオロの命令にナタルが疑問を投げかける。通常、コロニーには退避シェルターがある。何かあった場合は
住民はそこに避難するはずだからだ。


「それにこの艦は軍の機密……」
「民間人を見殺しにするわけにはいかん」
「……」
「あくまで事情が許すかぎりだよ」


 その直後、爆発が起きその爆風によりナタルは吹き飛ばされてしまう。


「少尉ーっ!!」


 パオロの叫び声を最後にナタルは意識を失った。
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 工場区では激しい戦闘が繰り広げられていた。連合軍は応戦しているがザフトのジンによって潰されていく。
この間にザフトはある部隊を潜入させていた。搬出口に近づくと三台のトレーラーが止まっている。荷台には
それぞれ1体ずつ、MSとわかる機体が積まれている。


「運べない部品と工場施設は全て破壊だ! 報告では5機あるはずだが、あとの2機はまだ中か?」
「俺とラスティの班で行く。イザーク達はそっちの3機を先に!」


 潜入部隊のひとりアスラン・ザラが叫び、ラスティ達に合図する。


「任せよう。各自搭乗したら、すぐに自爆装置を解除!」


 イザーク達は、それぞれコックピットに入る。アスランはそれを確認すると工場の搬出口を目指した。
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 同じ時間、ヘリオポリスの住人キラ・ヤマトは金髪の少女と共に格納庫のような空間にたどり着いた。
 階下では銃撃戦を繰り広げているようだが、二人はそれよりも目の前にあるものに気をとられていた。


「これ……って……」


 巨大な人型のロボット。一目でそれがMSであると分かった。しかしそのMSはジオンやザフトのMSとは
明らかに違う形状である。


「やっぱり地球軍の新型機動兵器……お父様の裏切り者ー!」


 隣で少女がなにやら叫んでいたが、キラは退避シェルターを探すことに意識を向けていた。
 なんとかシェルターの入り口にたどり着く。


<まだ誰かいるのか?>
「はい。僕と友達もお願いします。開けて下さい」
<二人!?>
「はい」
<もうここはいっぱいなんだ! 左ブロックに37シェルターがあるからそこまでは行けんか?>


 キラは左ブロックを見る。そこは銃撃戦の真っ只中であった。しかし考えているヒマはない。


「なら一人だけでもお願いします、女の子なんです」
<分かった。すまん>
「なにを!? 私は!」
「いいから入れ! 僕は向こうへ行く。大丈夫だから。早く!」


 キラは少女を無理やりシェルターに入れると扉を閉めた。
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「クリス! X303を起動させて!」


 キラはその声を聞き階下に目をやると、MSの陰に身を隠しながらライフルを撃つ女性に気づく。そして
ザフト兵が彼女を背後から狙っていることも――


「あ!? 危ない後ろ!」


 その声に反応して彼女――マリューは敵兵を撃ち殺す。彼女はキラを見ると目を見開き怒鳴った。


「来い!」
「左ブロックのシェルターに行きます! おかまいなく!」
「あそこはもうドアしかない!」


 その言葉に足を止めると、キラはキャットウォークから飛び降りてマリューに駆け寄った。キラの行動に
驚く彼女の背後で連合の兵士がザフト兵を打ち倒す。


「ラスティー! うおおおお!!」


 もう一人のザフト兵は叫ぶと、仲間を撃った兵士を撃つ。


「ハマナ!」


 マリューがその名を叫んだ瞬間、ザフト兵は振り向きざまに彼女を撃つ。銃弾が彼女の肩に当たった。
ザフト兵はさらに撃とうとするが弾詰まりを起こす。仕方なくナイフを抜き彼女に駆け寄ったその時――


「キラ?」


 ザフト兵は思わず声を上げた。キラは驚いてその顔を見る。


「……アスラン?」


 それはかつて月で別れた親友のアスラン・ザラであった。
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『――父はたぶん、深刻に考えすぎなんだと思う』


『プラントと地球で、戦争になんてならないよ』


『でも、避難しろと言われたら、行かないわけにはいかないし』


『キラもそのうちプラントに来るんだろ?』
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 きっとまた会える。そう信じて分かれた二人は思ってもみなかった形で再会した。
 言葉もなく立ちつくす二人の隙を突いて、マリューが銃を構える。それに気づいたアスランは飛びのき、
間一髪のところで弾丸を避けた。驚いて振り向いたキラはマリューに体当たりされ、MSのコックピットに
転げ落ちる。


「シートの後ろに!」


 言うとシステムを立ち上げる。


「私にだって、動かすぐらい」


 キラの意識は外にいるアスランに向けられていた。


(アスラン……いや、そんなまさか)


 呆然とするキラを尻目に、マリューはシステムを起動させた。目の前のモニターには文字列が浮かび上がる。


――General
――Unilateral
――Neuro-Link
――Dispersive
――Autonomic
――Maneuver


 とっさにキラはその頭文字を拾い上げていた。


「ガ……ン・ダ・ム……?」
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 シャフトの中でナタルは意識を取り戻した。あたりには血まみれの死体が浮んでいる。ナタルは何とか冷静
さを取り戻すと周囲に注意を払うと自分の後ろに誰かいることに気がつく。振り向くと彼女の目に写ったのは
パオロ艦長であった。


「艦長!」


 腕を取り脈を計る。何とか生きているようだが全身を強打しているようだ。


「私を庇ったのか……くっ!!」


 パオロを抱きかかえるとナタルは辺りを見回す。


「艦はどうなったんだ……アークエンジェルは!?」


 散らばる瓦礫の中に兵士や士官の死体が見える。


「バジルール少尉!?」


 ふいに声が上がりナタルは振り向くと数人の兵士がブースを覗き込んでいた。


「ノイマン曹長! 無事だったか!!」
「はい……艦長!!」
「まだ生きている。誰か衛生兵を呼べ。それから艦内に生き残っている者を探し出すんだ」


 とにかく今は人手が必要だ。テキパキと兵に指示を出し始めるとパオロが目を開ける。


「艦長!」
「少尉……無事だったか」
「何故……」


 私を庇ったのか、ナタルは不思議に思っていた。この艦に配属されて始めて会ったというのに。


「君に何かあったらお父上に申し訳が立たんからな……」
「父が!?」


 亡き父のことをパオロが口にしナタルは驚いた。


「それより、艦はどうなった?」


 ノイマンの方を振り向くと、彼はスクリーンが起動するのを確認する。


「さすがアークエンジェルだ。これしきのことでは沈まんか」
「しかし港口側の隔壁周辺には瓦礫が密集しています」


 完全に閉じ込められた状況にナタルは暗然たる気分になった。
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 アスランは混乱していた。月で別れた幼なじみが目の前にいたのだ。


(キラ・ヤマト……)


 そんなはずはない――首を振りその可能性を振り払おうとした。まさか彼が連合の新型兵器に関わっている
筈がない。


 アスランはX303と呼ばれた機体に走り出そうとするが味方のジンから通信が入る。


<アスラン無事か!?>
「ああ、これから機体を奪取する」
<いや、作戦は中止だ!!>
「なんだって!?」


 そしてアスランは次の言葉に耳を疑った。


<ザクだ! ジオンのザクが現れたんだ!!>
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 工場区ではジンとは別のMSがマシンガンを至るところに乱射していた。それはジオン公国の次期主力機で
あるMS-06FZ、通称“ザク改”である。


「ジーン退がれ! 強行偵察の限度だ!! これ以上損耗するわけにはいかん!」


 そのザク改のパイロットであるデニム曹長は焦っていた。部下のジーン兵長が功を焦り暴走したのだ。


「シャア少佐だって戦場で手柄をたてて出世したんだ!」
「貴様、命令を無視するのか!!」
「敵を叩くには早いほどいいってね!」


 言ってジンに銃口を向け発砲する。


「ザフトが何だってんだ!! 手柄立ててやる! あの女を見下してやる!!」
「おい! 少尉に対してその言いようは何だ!」
「なにが少尉だ! 大方少佐に取り入ったんだろうよ!」
「貴様なんてことを……」


 やり取りの間もジーンのザク改はジン目掛けて撃ちつづける。しかしどんなに撃っても90mmの弾丸はその
ジンを捕らえることができない。


「畜生! 何で当たらねえ!!」


 このジンのパイロットこそ“黄昏の魔弾”の名で知られるミゲル・アイマンであるのをジーンは知らなかった。


「ちっ! 新兵か!?」


 ミゲルはそのザク改のパイロットは戦いなれていないことに気づいていた。ミゲルにとってその戦い方は
不愉快であり早々に片をつけたかったが、アスランが脱出する時間を稼がなくてはならない。


「こいつは問題ないが向こうにいるもう一機は厄介だな」


 デニムの乗る機体は無駄弾を撃たずに狙いを定めて撃ってきている。ナチュラルではあるが熟練兵である
のは一目瞭然だ。
 そもそもザクとジンでは機体性能に大きな差がある。Nジャマーのおかげでザクの出力はジンと同レベルに
まで落ちたが火力と装甲においてはザクのほうが幾分か上だ。ジンにはコーディネイターが乗ることで性能差は埋められているのが現状である。その為、ザクのパイロットがコーディネイターだったり、熟練兵になると
厄介な相手になってしまう。
 ミゲルはザクとの距離を取ってアスランへ呼びかけた。


「まだかアスラン!」
<もう少し……よし! 工場を出た>
「待たせやがって……それじゃあ遠慮はいらんな!!」


 ミゲルは重斬刀を抜くと、スロットルを全開にして不愉快なザク改に接近する。ジーンは敵機がいきなり
攻勢に回ったことに動揺した。


「うわあ!」


 闇雲にマシンガンを発砲するがそれが当たるはずもなく、ザク改は頭部を重斬刀で斬られてしまう。
 メインカメラをやられパニックを起こしたジーンは恥も外聞もなくデニムに助けを求めていた。


「曹長殿! 曹長殿ぉ!!」
「目障りだ!」


 重斬刀を引き抜き、ミゲルはそのままザクの胴体を横に斬った。パイロットを失ったザクは動きを止め
そのまま地面に倒れこみ二度と動くことは無かった。


「よくもジーンを!!」


 部下の死に激昂したデニムは今にもジンに飛び掛ろうとするその時、そのMSは現れた。