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_LP ◆sgE4vlyyqE氏_「因縁の終わり」03

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:43:39

会議室―――と呼ぶには少々狭い場所ではあったが、
体制に反抗する勢力の台所事情から考えれば、この部屋を2人だけの人間が使用するのは
十分に贅沢な話だった。

「では、説明します。ZGMF-X425AEXデスティニーセカンド。
言うまでも無く判るとは思いますが、貴方が前大戦後期に搭乗していた、
ZGMF-X425デスティニーの改良機です。―――人によっては改悪機とも感じるかも知れませんが」

外観は殆ど変わっていない。真赤に染まった色と、追加、もしくはオミットされた武器が
ある程度だ。

「最新式の核エンジンを搭載していますので、出力等に関しては問題有りません」

核 という言葉に少々顔を顰めるが、その程度を気にしているようでは
勝てない という事だろうとは感じるので聞き流す事にした。

「この機体のコンセプトは超高機動戦仕様という事になっています。
ですので、コンセプトに合致しない武装等は完全にオミットしました。
M2000GX高エネルギー長射程ビーム砲、MMI-714アロンダイト、
MMI-X340パルマフィオキーナ、ミラージュコロイド、
これらがその対象となった兵装です」

「待って下さいよ、武装に関しては判るけど、ミラージュコロイドを
オミットした理由は何です?」

「では、私から聞きます。アレは役に立ちましたか?」

「え?」

ミラージュコロイドから発生する立体映像、それは確かに無意味では
無かったかも知れないのだが……

「……ここ一番ではあんまり」

一般兵の相手にならそれなりには幻惑作用はあったかも知れない。
だが、フリーダムやジャスティスを相手にした時は気休め程度の
効果も無かったような気がする。

「言わずとも理由は判りましたね?では、続けます。
そのまま残されているのはMX2351ソリドゥス・フルゴールだけですね。
MSの防御機能に関しては前大戦の時点でほぼ頭打ちになっていますので、
特に変える必要が無かったというのも有りますが」

確かに、前大戦時にあの盾で防ぎきれなかった武装は特に無かった。
MS搭載の物であれば という条件は入るが。防御機能の向上が
余り無いという事は、武装に関しても大して変化が無いという事を意味しているのだろう。

「腕部にはM186SGゴルゴーン3連装ビームマシンガンが一門ずつです。
グフのドラウプニールは覚えていますか?あれと似たような物と考えていただければOKです。
弾速は多少早くなってます。1門減って総合火力は落ちたかも知れませんが」

へえ とシンは頷いた。思えばデスティニーはこういう小回りの効く武装に
欠けていた気がする。慰み程度にCIWSはあったが……

「それと、ビームライフルに関しては特に述べる事はありません。
現在我々のMSで制式採用されている量産型の物が装備されているだけなので」

はい次 と言わんばかりの投げ槍な態度にシンは苦笑する。

「RQM63RSマスカレイド。フラッシュエッジ2を改良した物です。
基本的な仕様はそれほど変わっていませんが、両肩では無く腰部に装備させました」

「取り易くするためですか?」

「それも有りますが……肩だと危険でしょう。他の武装全てと左腕部が完全に破壊された時に
残った武装が右腕部のフラッシュエッジだけだったらどうなりますか?」

「………不味いですね、割と」

武器を取ろうとしても上手く取れずにその間に殺された では笑い話にもならない。

この辺は、GAT-X105ストライクから続いた悪習と言っても良いだろう。

腰部であれば、右腕で左の物を取るのも、その逆も楽に行える。つまりはそういう事だった。

「さて、シン。ここまでの説明でこの機体をどう思いました?忌憚無く述べて下さい」

それじゃ、遠慮なく と前置きしてからシンは言った。

「火力不足、つまり、核搭載にしちゃ武器が地味過ぎませんかって事です
後はミラージュコロイドを排除したにも関わらず残ってるデカイ翼、この辺ですかね。気になった点って言うと」

期待通りの回答だった。

「何故火力が必要なんです?」

「そりゃ、戦艦とか大型MA落とすには火力あった方がいいからですよ」

「そうですか?戦闘艦なんてブリッジに一発叩き込めば終わりですよ?
MAなんて物は取り付いてコックピットを潰せば終わりでしょう?」

確かに、言ってる事は一理はあるが戦艦の砲火を潜り抜ける事の難易度を
どう考えてるんだこの人は、と思う。大型MA辺りは陽電子リフレクター装備が
標準なので、余程の乱戦にでもならない限りは接近戦でどうにかするしか無い。

「いや、そいつは言うは易しって奴でしょ」

エースとして戦場を駆け抜けたシンではあったが、戦闘行為が楽だったと本気で思った事は一度も無い。
できる事はやったが、それらが全て簡単である筈も無い。

「では、翼について説明します」

無視かよ と言いたくなったが、研究者の目つきがやばくなっているのを感じて
シンは黙って話を聞く事にした。

「これはバランサーです。まあ、そんな物が必要な程不安定な物だと思ってもらっても構いません」

構うに決まってんだろオイ!! 心は絶叫するが、声は出ない。

「シン、エルメスについてはどのぐらい知っていますか?」

「馬鹿みたいな出力のブーストだってぐらいです」

戦場から離れていてもそれだけ知ってれば十分 と言わんばかりに

「論より証拠です。この画像をご覧下さい」

MS視点で敵を見ている画像だった。見る限り、相対しているのはグフだ。
『キラ様が来たぞ!!』という歓声が聞こえた瞬間、グフは消えた。

「は?」

「これは一切の加工などを行っていない画像です」
くるりと、グフが転回して背部のブーストが火を吹いたと思った瞬間には消えたのだ。

「………なんすかこれ」

「凄い初速でしょう?」

そんな次元の話じゃなかった。

「待ってくれ。あんた達、これを本気で戦闘機動に使えると思ってんのか?」

限界だった。もはやシンに余裕なんぞ無い。馬鹿なコンセプトで作られてるとは先に聞いた。
しかし、ここまで馬鹿な事をやらかすとは誰に想像ができただろうか。

「この機動をモノにさえすれば近寄れない相手なんて存在しないと。
つまりはそういう事なんですよ」

だから最低限の火力しか要らない。所詮MS戦なぞビーム刃か撃たれたビームが1発良い所に当たっただけで
終わる。なら敵が対処できないような無茶苦茶な機動をすればいい。
それが、目の前にいる大事なネジが殆ど飛んだであろう女の考えだった。

「アホかああああああああ!!」

何抜かしてんのこの人 と今度こそ絶叫した。

「別に私はずっとエルメスのフルブーストを維持しろなんて言ってませんよ?
少し吹かして少し止まって相手が認識する前に1発入れてもう一度吹かせ と。
要求はその程度です。それだけでも相手からはショートレンジの瞬間移動でも
やっているようにしか見えませんよ」

最も、視界に捉えられればですけど とまで抜かしやがる。

Gを想像するだけで気が狂いそうになってきた。

「そもそもですね、ミラージュコロイドもデスティニーの装備も全て高機動戦なんかに
向いてないんですよ。少し距離を開けて5~6体の分身が出るとか、そのぐらいでなければ
旧式の姿を隠すだけの物の方が使い勝手良いじゃないですか。それに、最も許せないのは
当時最高クラスの推力を持ったまるで悪魔のように美しいあの機体にあんなデカデカとした
獲物ばかり持たせた事です!!一々立ち止まらないといけないような武装ばかりでどうやって
あの機動力を生かせって言うんですか!?」

何だか更にヤバイ方向にまくし立てる研究者の迫力に、シンはもう押し黙るしか無かった。

「つまり!!極論すれば相手に捕捉されないスピードと、ビーム刃、ビームライフルかそれに
相当する射撃武器、無論どちらも動きを妨げない程度の武装です。それと、陽電子リフレクターや
光波防壁を機体ごと切り裂ける武装さえあれば負ける筈が無いんです!!」

ぜーぜーと、肩で息をする研究者を見てシンは少しだけここに来た事を後悔した。

「そして、最も重要な事は―――貴方ならこの機体を乗りこなせる。その事実だけです」

もっとも、それでもキラ・ヤマトに勝てるかどうかは保障しかねますが。と付け加えながら。

先ほどまでの狂気にも似た熱気は失せ、真っ直ぐに自分を見つめる女性は、
ただ一言を自分に求めている。

シンはその言葉と視線を受け、ようやく自分の願いを思い出した。

正気の沙汰じゃないだと?それがどうした。
正気だったらまずアイツラに楯突こうなんて考えやしない。どれだけの努力も、
積み重ねてきた物も、ほんの少しの気紛れで徹底的に破壊するような、
運命全てを支配しているとまで錯覚させられるような、そんな力を持った
奴らを相手にどうやったらまともにやって勝てると言うのだ。

ああ、良いだろうとも。やってやる。
連中に刃向かう代償がこの身1つというなら喜んで代価を払おう。だからアンタは―――

「俺に………力をくれ」

シンは右手を差し出した。研究者はその掌を掴む。

「では、貴方の力を私に下さい」

ここに、契約は為った。

願うは復讐。仇全てを殺し尽くすだけの、血に塗れた道。

願うは最強。この世全ての力を蹂躙する、血に塗れた称号。

血に穢し尽されるであろう未来を願う2人の利害は、今ここに重なった。

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