Top > code geass-seed_02話
HTML convert time to 0.006 sec.


code geass-seed_02話

Last-modified: 2009-01-23 (金) 22:44:22

第2話 ギアス~悪魔の果実~

 

 ラクスは、自分の行なったことが良い方向になることを信じて疑わなかった。
 庭園から部屋に戻ったラクスは、気分良くハロを撫でながらベットに腰をつける。
 そんなとき、ノック音ともに部屋にはいってくるスザク。

 

「スザク?」

 

 その表情は焦りと、緊急を要しているものだとすぐにわかった。
 ラクスはそれが何を察しているのかわからないでいた。

 

「すぐに、ここから逃げてください!」
「え?」

 

 ラクスは何がなんだか、わからないでいた。
 スザクはラクスの手を引き、ロイドとセシルが待つ、外待たせてある玄関に置かれた車まで走っていく。
 ラクスは訳がわからないまま、腕にしっかりとハロを持ったまま、車に乗り込む。

 

「ロイドさん、急いで」
「わかったよ。どこまで行けばいいのかな?」
「とりあえず、格納庫へ…」

 

 セシルの言葉に従い、格納庫にと向かう車…
 まだ何も分かっていないラクスのために、ロイドは助手席でラジオのスイッチをいれる。

 

『…クライン派は、フリーダム強奪事件に関して、手引きしたことが証明された。
 これは誠に残念なことだ。だが、動揺してはいけない。我々は今こそ一致団結し、この事件に対処しなければならない!』

 

 これは…アスランのお父様である、パトリック・ザラ?
 それにクライン派とは一体?
 困惑するラクス、話は続いていく。

 

『連合軍と内通していたことがわかったシーゲル・クライン、そして彼の娘であるラクス・クライン、
 それに従うものたちは既に指名手配をかけている。潜伏しているものたちに告げよう。大人しく出てきなさい。
 釈明の機会、裁判の機会も与えよう。だが、我々の極秘で開発されていたものが。
 こうして奪取という最悪な形で行なわれたことは決して許されることではない。
 それに関しては、強く抗議する』

 

 奪取?
 そしてお父様と私の名前…。
 まさか…。

 

 そこでラクスは自分が起こしたことが、どういったことなのかがわかった。
 勿論、いけないことだとはわかった。だけど、こんなに大きいことになるなって知らなかった。
 お父様が、なんとかしてくださるって……。
 だって、いつも……。
 私が物を壊しても、お父様は笑って許してくださった。
 なんで?なぜこんなことに……。

 
 

「ラクス、君はやはり…」

 

 スザクは隣の席でラクスを見ずに言う。ラクスは身体を震わしうつむきながら

 

「私……、だって、知らなかったんです。
 こんなことになるなんて…私は、良かれと思って…戦争を、争いを止めたくて」
「……ラクスの考えには賛同できる。だけど、それを受け止められない人も大勢いるんだ。
 残念ながら…人間は正しいことを受け止めるのが難しい」
「格納庫にまではいけるけど、僕らもきっと指名手配犯だよねぇ~~、どうやって機体を確保できるかな…」

 

 ロイドの言葉どおり、道では既に検問が始まっている。
 ロイドの隣、セシルは眉間に皺をよせて、エンジンを強く踏む。

 

「みんな、捕まっていて!」
「え?えぇえええ!!ちょ、ちょっと!!」

 

 車内にロイドの悲鳴が轟く中、セシルは車を走らせ、路肩に車体をだしながら、検問を通り抜ける。
 すぐに後方からサイレンの音が鳴り響く。

 

「せ、セシル君、ちょ、ちょっと!ぼ、僕はまだ死にたくないんだからねぇ!?」
「何を言っているんですか?捕まってでもしたら、それこそ死んでしまいます。ここはなんとか逃げ切らないと」
「だからって、わ、わぁあああああああ!!」

 

 ロイドは死にたくない、死にたくないと泣きながら懇願する。
 ラクスはスザクに身をよせながら、自分の父親が無事であることを強く願っていた。

 

 車は警備を突破し、格納庫にと到着する。
 まだ機体の完全な封鎖までには至っていないようだ。
 車から降りると、スザクはラクスをつれて後部座席から降りる。

 

「さぁ、ここから脱出しよう」
「できませんわ」
「どうして!」

 

 スザクはラクスの手をひきながら、問いかける。
 ラクスは首を横に振りながら、涙を零しスザクを見上げる。

 

「私が、いけないから……。このままスザク達に迷惑をかけられない。」
「そんなこと今更、僕は…」
「いいの、行って!お願い……私は、やっぱり何も出来ないわ。

 

 何かをすればこうしてみんなに迷惑をかける」
 ラクスは顔をうつむけ、己のしたことを思い返し反省する。
 自分は自分のやるべきことをやったはずだった。
 だけど、結局それは、他の人に迷惑をかけることにしかならなかった。
 スザクたちまでもを巻き込むわけには行かない。
 そうすれば、本当に自分が許せなくなってしまう。

 

「スザク君、あなたの命は、あなただけのものじゃないわ!」

 

 セシルがスザクの肩を掴み叫ぶ。
 スザクは、息を呑む。
 自分にはやらなくてはいけないことがある……それはルルーシュとの約束。
 こうして自分が別の世界に飛ばされている間、ゼロはいない。
 もしもの場合、用意はしてはいるが、だけど…それでも。

 

「……ラクス!!」

 

 ロイドとセシルに引っ張られるようにしてランスロット・トラファルガーに引っ張られていくスザク。
 ラクスはスザクを最後まで見ながら、彼が無事、生き残ってくれることだけを強く願った。

 

 ラクスの正面に、兵士達が集結する。
 その筆頭に立つのは、アンドリュー・バルドフェルドである。
 彼は北アフリカでストライクと戦闘し、敗北。
 だが、その命は辛うじて助かった。
 本国での治療後、公安部に回され今回の件と遭遇した。
 兵士達に銃を向けられたラクスは、ただ震えることしか出来ないでいた。

 

「……お姫様、残念だったな?あなたのやったことは、国家に対する叛乱だ。
 悪いが命令どおり、ここで死んでもらう、あなたの父親と同じように」

 

 ラクスは涙を流す顔をあげてバルドフェルドを見る。

 

「い、今……なんておっしゃいましたか?」
「…あなたの父親、シーゲル・クラインは国家反逆罪で拘束後、反抗したためやむなく射殺したという話になっている。
 結論は変わらないが、そのほうが国民も納得するだろう」
「お……お父様」

 

 ラクスは絶望の中にいた。
 自業自得……その通りだろう。
 だけど、そんなに自分はいけなういことをしたのだろうか。
 戦いが終わって欲しいという願いは、そこまでいけないことなのだろうか。
 ラクスは、向けられる銃を見ながら、何も考えられなくなっていた。

 自分は無力、自分は用無し……。

 

「私は……」

 

『力が欲しい?』

 

 振り返るラクス。そこに立つのは黒きシスターの姿…。
 その女性はラクスに向かって歩いてくる。

 

「止まれ!止まらなければ撃つぞ!」

 

 バルドフェルドの声も聞こえないのか、シスターはただラクスだけを見ている。
 ラクスもまたシスターを見ながら、呆然とした表情をしている。

 

『人間の摂理を超え、この終わり無き争い、終わりなき理不尽を終わらすことができる力をあなたは望む?』

 

 ラクスに囁く、その声はあまりにも気持ちが良いものであった。
 力が欲しい
 ずっと願っていたことだ。
 それが今、手にはいろうとしている……。
 籠の中の鳥として過ごし、求められるのはアイドルとしての存在だけ。
 自分がいなくなれば新たなものがとって代わるだけ。

 
 

『……過ぎたる力は、己の身を滅ぼします』

 

 スザクに言われた言葉が頭を過ぎる。力を求めるものは力に溺れる。
 それはわかっている。
 わかっているけど……このまま、死ぬ?
 スザク……。
 私は、スザクともっと話がしたい。
 スザクからいろいろ学びたい!私は……。

 

「……私は、力が欲しい…ですわ」

 

 ラクスは手を伸ばし、シスターを求める。
 悪魔のささやきなのかもしれない。
 かつてアダムとイブは悪魔にそそのかされ、知恵の実をかじったことで、エデンから追放された。
 自分は今、その知恵の実を食べようとしているのかもしれない。

 

『ならば、契約しましょう。人としての理を捨て、あなたは人とは違う場所で生きることとなる』

 

 シスターの手が伸び、ラクスの差し伸ばした指に触れる。
 ラクスの目の前が広がる。
 それは白き世界……。

 

 様々な人間が苦痛でもがき、様々な人間が歓喜に満ちている。
 戦争と平和……その永遠ともいえる連鎖。
 それを断ち切る力。

 

 私は、それが欲しい……。

 

 立ち上がるラクス。
 銃口を向けるバルドフェルドは、ラクスの雰囲気が変わったことを感じた。
 ラクスはピンクの長い髪の毛を、払いながらそこにいる兵士たちを見つめる。

 

「なんだ?何があった!」

 

 バルドフェルドはラクスに問いかける。
 立ち上がったラクスは、片目を擦りながらそこにいるものたちに静かに語りだす。

 

「みなさんは、戦争をいつまで繰り返すつもりなのですか?」
「……戦争は、相手が撃ち、こちらが撃ち返す。
 やがてそれはどちらが最初に撃ったのかわからなくなり、そして…相手を滅ぼすまで戦争は続いていくものだ」
「相手が滅ぶまで?」
「そう、あなたのような現実を知らないお姫様にはわからないかもしれませんな。現実の戦場という場所が…」

 

 ラクスはこくりと頷く。

 

「あなたのおっしゃるとおりです。私は、なにもしりません。
 ですから、これからは世界を見たいと思います。
 私の力で、この復讐の連鎖を止め、戦争を終わらせます」

 

 バルドフェルドはそのラクスの言葉に思わず笑ってしまう。

 

「フフフ…失礼。残念だが、あなたの夢は、死んだ後、その父上としてもらおう」
「いいえ……。私の夢は、今ここから始まりますわ」

 

 ラクスは片目から手を離し、バルドフェルド率いる兵士たちを見る。

 

「ラクス・クラインが命じます。私のことを好きになりなさい!」

 

 ラクスから放たれたギアスが兵士達の脳にと送られる。
 兵士達は、銃口を下ろし、ラクスの前で整列する。

 

「わかりました、姫様」

 

 赤くギアスの印を受けた兵士達は敬礼をして、ラクスに対して忠誠を誓う。
 その光景を見つめるラクスは、己の得た驚くべき力に言葉が出ない。

 

 だけど…私は力を得た。
 人が持つことは出来ない戦争を終わらせる力を。
 これをもってすれば、戦いを終わらすことができる。
 私の夢は今、ここから始まる。
 もう誰にも力を持っていないとは言わせない。
 守ってもらうだけの存在じゃ…もうない。

 

 私は……。

 
 

 【前】 【戻る】 【次】