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Last-modified: 2009-02-05 (木) 23:29:11

   
第11話 魅了する歌姫

  
 放たれた巨大なジェネシスの輝きは、
 射線上にある連合軍増援艦隊を飲み込み、
 連合軍基地であるプトレマイオスクレーターに突き刺さる。

  
 その巨大な光の柱は、ヤキン・ドゥーエからもしっかりと見ることが出来た。
 おそるべき攻撃に、ラクスは、とうとうこのような攻撃の応酬が始まってしまったのかと、
 目を閉じて考える。
 
『一度放たれた、銃弾は元には戻らないわ。誰もあなたの言葉を聞こうとはしない。
 ならば、その言葉を聞くように仕向けなくてはいけないでしょ?』
 
 耳元に囁きかける、黒き自分の姿。
 
「……もう、それしかないのですね」
 
『そう、あなたにならできるわ。魅了させましょう。
 あの狂気の中心に向かえば、すぐにでもできるわ。時間もないですわ。
 いつ…あれが地球に向けられるか…』
 
「……わかっています」
 
 ラクスは、囁き続ける自分の幻を振り払うように立ち上がる。
 
「目標、ジェネシスに……あの兵器を破壊します。
 アークエンジェルはドミニオンを押さえている間に決着をつけますわ」
 
 バルドフェルドがそれに従う。復讐の連鎖、暴力の応酬はここで終わらせる。
 終わらせなくてはいけない。
 そのために私のギアス、力は受け取ったのだから。

  
「……なんだ、なんなんだよ!あれはぁ!!何がナチュラルの野蛮な核だ。
 あんなとんでもない兵器のほうが遥に野蛮じゃないか!!」

 
 
 ドミニオンに搭乗するアズラエルはその破壊力に席から立ち上がり怒鳴り散らす
 ドミニオンに次々と被害報告が出される。
 
「生き残った部隊は、被害を受けた艦隊の救助に当たれ」
 
「ダメだ!!」
 
 アズラエルは、ナタルに向かって叫ぶ。
 ナタルはその既に正気を失っているのではないかというアズラエルの形相に、身を引く。
 
「あんな!あんな恐ろしい武器が、地球に撃たれない可能性がどこにある!?
 今すぐにでも、破壊しなくてはいけない。生存部隊は戦力を集中させて、核攻撃を続行する」
 
「見捨てろというのですか!?」
 
「あぁ、そうさ。今やらなくてはいけないことは、あの兵器を壊すことだけだ!!」
 
「……」
 
 ナタルは、アズラエルの言葉に従い、席に着く。
 おそらくは、この男とはどれだけ時間をかけて話をしたところで分かり合うことは出来ないだろう。
 そして、このような状況下では、士気にも大きく関わる。
 
 ラミアス艦長、あなたの道が正しいとは、はっきりとはいえません。
 ですが……少なくともその気持ちはわかります。
 あなたが約束を守るというのなら、私もそれに答えなくてはいけないのでしょう。

 
 宇宙では既に戦闘が後半にはいっていた。
 ジェネシスの攻撃により、連合軍はほぼ壊滅したが、
 それでもピースメーカー隊、そしてナタルの発した総攻撃により、
 連合軍攻撃部隊の全部隊が発進させられることなった。
 その中を駆けるスザク。
 
『私達は、ジェネシスを掌握します。
 アスランとカガリさんを護衛として、スザク…あなたもきていただけますか?』
 
「イエス・ユア・マジェスティ」
 
 スザクはその大質量兵器フレイヤを遥に凌ぐ強力な兵器の登場に、
 この世界の科学力とそして、世界は違っても、戦争は同じであるということを痛感していた。
 人間とは、こうやって戦争を繰り返しているのか。
 そして…それこそが、ラウ・ル・クルーゼという人間の策略なのか。
 スザクは核攻撃部隊を、キラ達に任せ、自分はジェネシスにと向かう。
 
『アスランとカガリさんは、ジェネシスの破壊を……
 私達は、内部からジェネシスのコントロールルームを抑えます』
 
 エターナルは、アスランとカガリの護衛の中、ジェネシスに接近する。
 スザクもまた、機動力で敵を撃墜していく。

「はぁああああ!!滅殺!」
 
「ラクスの道の邪魔はさせない!」
 
 アスランの目はラクスによる忠誠に輝き、その力も相まってブーステッドマンを撃墜する。
 ミーティアによる強力な攻撃力もあるだろう。
 巨大なサーベルがレイダーを切り裂く。
 それと同じように、他のブーステッドマンの操る機体もプラントを守ろうとするイザークと、
 立場は違えど、志は同じなディアッカの2人のコンビネーションで撃墜する。
 
「道は開けたぜ、ラクス様」
 
 ディアッカの言葉をあえて聞き流し、ラクスの艦を見逃すイザーク。
 2人はそのまま他の連合軍部隊に攻撃に向かう。
 
 ラクスは、自分の行いが正しいことを感じ始めていた。
 
 分かり合える…そう、復讐の連鎖は止めることができる。
 自分の力で…私は無力だった。
 だけど、それは変わろうとしている。
 ギアスを授かったときから……。
 
 ラクスはエターナルがジェネシスに接近、接岸したとき、アークエンジェルに回線を開いた。
 
「…ラミアス艦長、私達は今からジェンシスを止めてまいります。
 あなたには、ぜひ、親友を……助け出して欲しいです。
 きっとそれはあなたにしか出来ないことなのですから」
 
『…わかっています。ラクスさんも、どうかご無事で』
 
「はい」
 
 回線を切るラクス。
 ラクスはバルドフェルド、そしてロイドとセシルに後を任せて、
 ノーマルスーツに着替え、ジェネシスにと向かう。
 
 戦いを終わらせるために…平和を求めるために。

 
 一進一退の攻防が続いていく中で、アークエンジェルもまた、ドミニオンを追い詰めていた。
 ディアッカ、イザークがザフト軍の体勢を立て直し、ピースメーカー部隊を迎撃。
 さらにはアスランがブーステッドマンを撃墜したことが、
 大きく敵の攻撃力を削ぐ形となった。
 
「悪いな、イザーク…手伝ってもらって」
 
『……勘違いするな、俺はお前達と手を組んだわけじゃない。
 今倒すべき敵は、連合であるだけの話だ』
 
「はいはい…、わかってるよ」
 
 ディアッカはイザークの背後に迫るストライクダガーを撃つ。
 それと同時にイザークもまたディアッカの背後に迫ったピースメーカーのメビウスを撃墜する。
 二人の息のあったコンビネーションは健在だ。
 連合軍の旗艦ドミニオンは、窮地にと陥っていた。
 正面には迫るアークエンジェルにナタルは唇を噛む。

 
 ラミアス艦長との約束、軍規。どうすればいい…
 どうすれば、私は、一体どうしたらいい。

 
 ナタルが苦悶の表情を浮かべる中、フレイが立ち上がる。
 
「もうやめて!これ以上、アークエンジェルを!」
 
「うるさぁい!!」
 
 いらついたアズラエルは、拳銃を抜き取りフレイに向ける。
 フレイはその向けられたものに、はっと息を呑んでその場に座り込む。
 
「そんなものを持ち出して、どうするおつもりですか?
 この艦を乗っ取るとでもいうのですか?」
 
「あぁ!?うるさいんだよ、あんたは。どうして僕の言うことが聞けないんだ!?
 わかっているのか?あれが!あんなとんでもない兵器が地球に向けられてからじゃ遅いんだ。
 早く、一刻も早くあれを潰さないといけないんだ。
 こんなところで、あんな反逆の船に時間をとられている暇はないんだよ!!」
 
 ナタルは目を閉じる。
 ここで、この男を釘付けにし、アークエンジェルに討たれる。
 それも悪くはないか。この混沌とした状況、
 自分の道すらしっかりと決めることも出来ない私には…それがいいのかもしれない。

 
 ラクスは、スザクとともにジェネシス内部、中央司令室に潜入する。
 スザクのその格闘能力は、潜入工作には持って来いという所だろう。
 次々と拳で相手の気を失わせていく。
 さすがに殺害するのは、ラクスのいる前ではスザクは出来ない。
 中央司令室では、パトリック・ザラが画面を見ながら、ジェネシスの第二射の準備を行なっていた。
 彼は勝利が目前と迫った今、徹底的な打撃を与え勝利を収めようと考えていた。
 その狂気に、周りの部下も驚きと恐怖を感じている。
 
「フ、ふふふ……我が軍は圧倒的じゃないか。
 このまま決着をつけてやる。ボアズや、アラスカなどの復讐を今ここで果たしてくれる」
 
「お待ちなさい!」
 
 振り返る一同。
 そこにはラクスとスザクが立っていた。
 パトリック・ザラはその突如現れた、予想外の人間に一瞬、言葉を失う。
 すぐにパトリック・ザラの隣の護衛が銃を抜き取ろうとするが、それをスザクは銃を向けて相手をいなす。

「…ラクス・クライン!?どうやって……」

 
「私は、貴方がたに戦争を、これ以上戦火の拡大を防ぐために参りました」
 
 ラクスは敵前の中、臆することなく堂々と告げる。
 
「バカな、奴らは今もなおこちらに攻撃を仕掛けて来ている。
 それをなぜやめなくてはいけない!撃たれる前に撃つのだ!」
 
 パトリック・ザラは、ラクスに対して身振り手振りで説明する。
 
「そういった考え方が戦火を拡大しているとなぜ気がつかないのですか!」
 
「議長、これ以上の戦争継続おやめになってください。お願いします」
 
 ラクスは強くパトリック・ザラに告げるが、パトリック・ザラは首を横に振りそれを拒否する。
 
「私は、誰がなんと言おうとも、ナチュラルを殲滅する。そのためのジェネシスだ!」
 
 パトリック・ザラは振り返ると、発射のスイッチボタンに手をかける。
 
「やめてください!」
 
 スザクが銃をかまえてパトリック・ザラを見る。
 パトリック・ザラは振り返りスザクを見る。
 
「撃ちたいのなら撃ちたまえ。私は自分の信念を持っている。
 そのためになら命など惜しくはない!!」
 
 その強い信念…それとも、こちらが本当に彼を撃つ気はないということを知っているのか。
 スザクはどうするべきか悩む。
 ここで再びジェネシスが放たれるわけには行かない。
 だからといってラクスの前で人を殺めることは……。
 
 そのとき、その制御室に銃声が轟く。
 スザクは自分の銃を見る。
 放たれた形跡はない。
 そこに立つのは1人の兵士である。
 兵士は銃を握りながら大きく息を吐き、震えている。
 
「う、撃たなくてはいけない……そうだ、アスラン、そうだろう。私達がこの世界を変えなくては……」
 
 パトリック・ザラは、そう最後までナチュラルに対する憎悪を口にして、意識を失う。
 スザクは、そんなパトリック・ザラを前に、ただ何もすることが出来なかった自分が悔しかった。
 他に手立てがなかったというのか。
 そんなことは…。
 
「皆さん、お願いがあります。手を貸してください。
 これ以上、悲劇を繰り返してはいけません。
 今ある命を助けるために……この無益な争いを止めるために!」
 
 ラクスは、スザクを元気付けるため、さらには周りの者達に訴えかけるように告げる。
 その声を聞いた者たちは、次々と動き始める。
 この戦いを終わらすために……そう、戦争は何も生み出さないのだ。
 
「……スザク、ここは私にお任せください。あなたは連合軍と、そして倒さなくてはいけない敵の下へ」
 
「…ラクス、君も気をつけて。そして…君は本当に勇気のある人だ。僕の知る人にそっくりだよ」

 
 スザクはラクスにそう微笑みかけてその場を後にする。
 
 スザクの告げた人は…ユーフェミアである。
 
 平和のために己の身を呈して奮闘する彼女、スザクはそんな彼女に惹かれた。
 
 そして、今も……。
 ラクスの力は、この世界を変える。
 きっと…。
 そして、そのためには…倒さなくてはいけない。
 彼を…。

 
「……」

 
 ラクスは、スザクを見送った後、息をつく。
 
『さすがに、彼の前でギアスを使ったのは覚悟が必要だったわね』
 
「……スザクには、私がこのような力を使っているなんて、思われたくないですもの」
 
 ラクスは、周りの赤きギアスの光を受けた兵士たちを見ながら、小さな弱々しい声でつぶやく。
 もはや止めることはできない。
 こうしなければ、パトリック・ザラを止めることはできなかっただろう。
 
『後は、連合軍に呼びかけるのね。そして、この戦争は終わるわ。
 あなたが平和の姫として、この世界の平和を構築するのよ』
 
「……えぇ」
 
 黒き己の影の言葉にラクスはただ頷くことしかできない。
 こうしなければダメだった。
 仕方が無かったのだ…。
 ラクスは言い訳を続けながら、それでもなお自責の念に駆られ続ける。
 
『…安心して。あなたには私がいるわ。あなたは1人になんかならない。
 スザクだってきっとわかってくれるわ。あなたのことを信用しきっているもの。
 ギアスなんか使わなくてもいいくらい』
 
「スザクには、ギアスは使いません!絶対に…」
 
 ラクスは、そこだけははっきりと拒否の視線を、黒き自分に言い放つ。
 
『フフ……そうですわね、あなたの大切な人ですものね』
 
 黒いラクスは、ラクスを眺めながら微笑む。
 
 大切な人であるスザク……。
 
 だけれども、それを伝え、そして自分が幸せになる権利は自分にはない。
 こうして幾多の人間を利用してしまっている、自分には……。
 ただ罪と罰だけが残るだけでいい。
 幾多の人間が犠牲になるよりかは
 自分だけが犠牲となればそれでいい。
 ラクスは、回線を開き、戦場に戦う全て者に、声をかけ始めようとした。
 
「ラクス様!大変です、ジェネシスは生きています」
 
「!?」
 
 ラクスは、前の画面を見る。
 そこにはジェネシスが自動で時間が来ると自爆とともに発射するよう仕向けられている。
 誰かが意図的に既に発射を行なおうとしていたということになる。
 誰が……。
 
『…戦いを繰り返そうとする方でしょうね』
 
「……」
 
 それはたった一人しかいない。
 
 スザクは、ランスロット・トラファルガーで戦場にと戻ろうとした。
 だが、その前に現れる黒き機体。
 
「ここで、終わりにさせよう…」
 
 ギャラハッドが正面に現れる。
 どうやら待ち伏せをしていたようだ。
 スザクはもはや語るべきことはないと感じてアーサーの剣を向ける。
 
「はぁああああ!!」
 
 ビスマルクとスザクの最後の戦いの火蓋が切っておとされるなか、
 静かに破滅に向かう時計は進んでいく。

 
「……そう、戦いは終わってはいけない、復讐の連鎖は永遠と続いていくのだ。
 人間は人間の醜さをだしあい、自滅するのだよ…」

 
 プロヴィデンス・インビジブルに乗り、宇宙にと駆けるラウ・ル・クルーゼは微笑む。