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seed-destiny第01話

Last-modified: 2008-12-22 (月) 22:33:08

第1話 遭遇…黒い機体

 

 宇宙での最終決戦、メサイア攻防戦…。
 幾多の兵士が己の未来をかけて戦闘を続ける中で、メサイアにて息絶えた歌姫。
 その歌姫の血液を採取する1人の男。
 既に、ジェネシスの自爆シークエンスが発動している。
 男はその採取した血液をとると、急いでジェネシスから脱出する。
 次々と基地施設内から爆発が起こり始める様子を眺める男。

 

 「間に合った、必要な遺伝子はそろえた。これで…我が計画も最終段階に移行する」
 男は笑いながら戦闘機を操りその戦闘空域から離脱していく。

 
 

 2ヵ月後…

 

 多くの人間が戦い、真実が葬られたメサイア攻防戦はこうして幕を閉じた。
 新たに歌姫となったミーア・キャンベルはラクス・クラインという名の下に、世界は統一されていく。
 大戦終結後、プラント・連合は停戦条約を締結。
 軍は再編されミネルバにも治安維持の下、地球圏の残党勢力、組織の鎮圧が命令されていた。
 前大戦を生き延びたシン・アスカ、レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク、ステラ・ルーシェらはミネルバに、そのまま編入されることになる。
 ステラ・ルーシェの待遇については、メサイア戦直後のやりとりから、連合軍の戦犯ではなくなっている。
 ミネルバの強力な力も、そのまま残されることになったが、その力は強力な残党組織に対して使用されることになり、今回も、とある不可解な事件から、総司令部からの命を受けて欧州、旧スイス領に向かっていた。

 

「しかし、随分と僕たちもこき使われていますね」

 

 アーサーは、夕日の中、ようやっと見えてきた陸地を見ながら溜息をつく。
 戦争終結から、二ヶ月が経過し、これだ。
 休む暇も無い。戦後処理に一ヶ月がかかった後は、機体の改修や、
 プラント議会が新たに召集されそこにおける新体制の発表ともあり、ずっとごたごたしていたのである。

 

「ずっと、閉じこもっているわけにも行かないでしょう。私達が軍人である以上は、働かないとお金は出ないわ」
「しかし、納得できませんね。前大戦の功労者は僕らなのに、功労賞が別だなんて、どうにもですね~」
「アーサー、そういうのは思っても口には出さないものよ」
「はい、艦長…」

 

 アーサーはタリアの言葉に大きく息をついて頷く。
 アーサーの気持ちも分からなくはないが、現在のプラントは、表面上はラクス・クラインによる勝利国家であり、何事も無かったとはいえ、彼女が政治に介入することになり、議会はクライン派が牛耳るようになったのは事実であり、かつてのデュランダルに従っていたものは、左遷、またはこういったように苦しい任務につかれるようなものが多くなった。
 自分たちはその中でもましなほうだ。

 
 

「艦長、旧スイス国境内にはいります」

 

 オペレーターのメイリンの言葉にタリアは受話器をとり、艦内に伝達する。

 

「本艦は基地にて補給をとる。整備班は搬入の準備をするように…」

 

 ミネルバが到着した基地施設は、小さな基地であり…
 前回の大戦後、急遽建造された場所であった。
 ミネルバそこに着艦し補給を受けながら、明朝に目標場所に向かうことになっていた。
 タリアは今回の命令書を見る。
 今回の任務…通信が途絶した基地施設は山の内部につくられた場所になっており、思った以上に大きい施設であることだけは司令部から伝えられていた。
 だが、どういった施設であったかまではわかっていない。
 タリア・グラティスはなんとなくきな臭さの残る任務ではあると感じていた。

 

「メイリン、おかしなことがあったらすぐに情報を頂戴」
「わかりました」
「こう暗いと、レーダー頼りになってしまいますね」

 

 アーサーは、陽が沈んでしまった今の状態を見て驚く。
 光もなく真っ暗となっていく画面…これでは敵が来ても視界で確認するのは難しい。
 基地の光だけが唯一のものだ。

 

「星明りしか頼るものが無いとはね」

 

 スイスは、旧世紀における永世中立国とされ、大西洋連邦加入の際も、多くの人間が反対を表明し、旧EUではもっとも加入が遅かった場所である。
 そのため、大西洋連邦はスイスの情勢に配慮し、基地をほぼつくることはしなかった。
 さらには町の改修も行なわなかったため、その町のほとんどが手付かずであり、旧世紀の町並みを残していた。

 

「レイは、降りないのか?」

 

 シン・アスカは、食堂にて第二次待機命令を受けていないはずのレイを見て聞く。
 ここまでの長旅だ。暫くぶりに地上に足をつけてみようとは思わないのだろうか。

 

「降りたところで特に用はないからな…」

 

 レイは、大戦後からいろいろと考えているようだった。
 前の大戦デュランダル議長は、己の命をかけて、未来を示そうとしていた。
 議長は議長なりの戦争解決を図ろうとしていたことは知っている。
 だけどそれは否定した。運命は誰かが決めるものじゃない。
 事実、レイも自分の運命に購うことを決めた。
 ラウ・ル・クルーゼという亡霊に取り付かれること無く、レイ・ザ・バレルとしての道を歩むことにしたのだ。

 
 

「…後悔しているのか?」
「なにをだ?」
「…い、いや…」

 

 レイの言葉にシンはどういったらいいのかわからない。
 一番最初にデュランダル議長を裏切った自分ではなかなか言いづらいものだ。

 

「俺は俺なりに考えて、決めたことだ。今更、後悔はしない。ただ…あの技術について考えていた」
「技術?」

 

 レイはシンの前のイスに座る。

 

「前大戦後、結局…俺達は、最後まで議長がラウ・ル・クルーゼから俺を作った複製技術における場所を見つけ出すことが出来なかった。
 極秘だったのはわかるが、誰からの口からもそれが漏れることはなかっただろう?それが不思議だった」
「もう既に放棄されてしまったんじゃないか?」
「あぁ、それも考えたんだが…、不思議なのは、それを知る人間がいないということだ」

 

 シンにはレイの言いたいことが見えてこない。

 

「…おそらく、複製技術を知りえる人間が、まだこの世界に存在しているということになる」
「だけど、そんな事を知っていても、場所がなくちゃつくれないんじゃないのか?それに、お金だって、いろいろ他にも必要なものがあるわけだし」
「シン、科学者というのは自分の持っている技術を使うことに抵抗が無い。例え、それが戦争に使用されようとも…だ。
 ニュートロンジャマーキャンセラー、ジャネシス、レクエイム…もっと厳密に言えば、俺達が乗るMS、全てが元々戦争のためにつくられたものではないはずだ。
 だが結果的にはそれが戦争の道具となっている。
 科学者は探究心がある限り、世界が滅ぶような兵器も作るだろう」

 

 レイの言っていることに、シンは鳥肌が立つ。
 科学者というものは、世界によきこともすれば、虐殺する兵器もつくるということか。
 結局は使う人間次第ということになる。

 

「…レイは、その科学者が複製技術を使うって思っているのか?」
「そこまではわからないが…。世界の権力者は自分の複製を用いて不老不死などということを言いかねない奴がいることも事実だ。
 需要と供給が成り立っている以上、可能性はゼロではない」

 

 レイは深刻な表情で告げると、顔を上げて、シンを見る。

 

「あくまで俺の中での考えだ。お前がそこまで気にすることじゃない」
「だけど…」

 

 シンはレイの考えに半ば、賛同する部分もあったのでなんともいえない気持ちになる。
 科学の暴走…それは生命倫理も何も関係が無いものとなる。
 戦争がそうであるように。

 
 

急遽建造された国境基地なだけに、設備等も、そこまで立派なものではない。
ルナマリアとステラは、思ったものが見当たらなく渋々、艦に戻ろうとしていた。

 

「ステラ、トイレ…」
「はいはい、待っていてあげるから早く行ってきなさい」

 

 ステラは笑顔でトイレのほうに向かっていく。
 最初は生活になれていなかったステラもメイリンとルナマリアの指導の下だいぶマシになってきた。
 最初は男の前でも堂々と下着姿を晒すようなことも多々あったが…。
 これが、ガンダム強奪を行なった人間とはとても思えない。
 これも強化人間だったことからか。

 

「…」

 

 ふとルナマリアの前を横切る、ステラ。

 

「ちょ、ちょっと!ステラ、待ちなさいよ?」

 

 そういってルナマリアは呼び止めるが、そのステラは、先ほどとは服装が異なっている。
 呼び止められたステラは不思議そうにこちらを見る。

 

「あ、あれ?あなた…ステラよね?」
「誰だ?お前は…」

 

 先ほどより強い言葉でいい放つステラ…。
 ルナマリアには、なにがなんだかわからない。
 他人の空似?にしてはそっくりだ…。
 そのとき、緊急の警告音が鳴り響く。

 

『未確認機体が、防衛ラインを突破し接近しています。第一次戦闘配置命令…』

 

 ルナマリアは、ステラとともに艦に戻ろうとしたが、そこに既にステラはいない。

 

「ルナ?どうしたの?」
「どうしたの?…じゃないわよ!さっきの態度はなんなの?待っててあげたのに」
「ステラ…今きたところ」
「え?」

 

 確かに、服装はさっきと同じだ。どういうことだ?と、とりあえず今は敵襲に備えなくては。
 ルナマリアは不思議そうな顔をするステラを引っ張ってミネルバに戻る。

 
 

「やはり、ここら辺には、何かがあるようだ。艦長、敵の総数は?」

 

 レイはレジェンド操り、シンとともに既に出撃していた。

 

『今のところは一機だけです』
「一機?一機でこの基地を攻め落とす気なのか…または、偵察目的なのか」
「どっちにしろ、敵に代わりが無いなら落すまでだ!」

 

 シンはサーベルを握り、かまえる。暗闇の中、その姿はまだ見えない。

 

『きます!!』

 

 レーダーにうつる機体が、基地施設内にまではいってくる。
 連射されるライフルをレジェンドとディスティニーが回避する。
 基地内の照明に命中し、光が消える。

 

「しまった!視界を奪うつもりか!」

 

 黒き機体…短い二丁銃を持つ、その機体…MSストライクノワール。

 

「こいつぅうぅぅぅ!!」

 

 シンのディスティニーが、巨大なサーベルを握り締めノワールを狙う。
 ノワールは、そのサーベルを回避し、上に飛ぶと、回りながら短いライフルを撃ち込む。

 

「うわあああ!!」
「シン!」

 

 シンを守るためにレジェンドはライフルを撃ちこみ、敵をシンから離す。
 ノワールは、ディスティニーから離れると、肩から、強力なエネルギーを放ち、レジェンドを牽制する。
 そんな攻防をしている間に基地のMSザク・ウォーリアがでてきて、援護攻撃を行なう。
 敵機は、そんなMSに対しても容赦せず、攻撃をかける。
 通り過ぎるようにMSの間を知りぬけるノワール。
 すると、MSのクビや手足がバラバラに取れていく。
 そのまま、バランスを失ったMSはその場に倒れていく。

 

「バカな!あの戦い方は…」
「嘘だろ!あれは…」

 

 レイとシンは感じ取った、その戦い方を…。
 そう、2人は知っている、あんな戦い方をするパイロットを。
 シンとレイがそのノワールに乗るパイロットが誰なのか分かり始めた頃、基地で爆発が起きる。
 次々と爆発が起き、一気に基地を燃え広がらせる。

 

「艦長!基地指令からの通信が途絶」
「…このままミネルバを出港させます、アーサー」
「りょ、リョウカイです!!」

 

 ミネルバは基地の爆発に巻き込まれないよう出撃する。
 ノワールは、それを見計らったように。
 レジェンドとディスティニーを抜け、ミネルバの艦橋にライフルの標準を定める。

 

「しまった!!」
「ミネルバが!」

 

 驚きの表情を浮かべるシンとレイ。
 MSに乗るパイロットが口元に笑みを浮かべる。

 
 

『…その船は落としてはいけません。我々の実験体における、テスト相手ですから』

「…了解」

 

 ノワールはミネルバから離脱し、そのまま再び闇の中に姿を消す。

 

「一体…あれは」

 

 タリアが自分の命を失ったと思った矢先の撤退。その謎の存在に誰もが疑問符をつける。
 シンとレイは気がついていた。
 あの戦い方…コクピットだけを外し、
 そして手足を切り落として操縦を不能にすることだけを目的とした戦い方…あれは!!

 

「キラ・ヤマト…」

 

 シンは操縦桿を握り締め搾り出すように答えを出す。