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sin-kira_シンinキラ_第08話

Last-modified: 2011-12-10 (土) 21:55:38

俺がストライクから降りると、凱旋将軍を迎える様な騒ぎだった。
前にもあったな。こんな事。俺は久しぶりにガルナハンを思い出した。あの女の子――コニールは、元気でやっているだろうか?

 

「やれやれ。坊主、整備しといてよかったなぁ。若いもんの言う事も聞くもんだと思ったよ」
「ははは。躾は両親ですよ」
「違えねえ。ははは。なんにしろ、よくやった。バーナードは殺られちまったが、そいつはもう来た時にはやられる寸前だったからなぁ」
「よく先遣隊を救ってくれた。シン・アスカ」
「ナタルさん」
「叙勲を申請しておいた。早晩届くだろう」
「民間人でも叙勲なんてあるんですか」

 

そう言うと、ナタルさんはすまなそうな顔をしてぽん、と俺の肩に手を置いた。

 

「実は、民間人に地球軍の兵器を扱わせるのはさすがに問題があってな。今まで言ってなかったが、君らは暫定的に志願兵と言う事になっている」
「な、なんだってぇぇーー!?」
「と、言う訳で、君はストライクのパイロットだから暫定任官でシン・アスカ少尉と言う事になっている。正式には将官の誰かに認めてもらわなくてはならないがな」
「はぁ……なんと言うか」
「まぁ、第8艦隊と合流するまでだ。そうしたら、除隊する手続きになってる」
「除隊ですか。すんなり出来ますかね」
「うん?」
「奴らですよ。このまま、何もしないとは思えない」
「そうだな。私もそう思う。警戒を厳にしよう」

 

 

「シン」
「ん? ああ、フレイか。どうした?」
「ごめんなさい。いきなり護衛艦がやられるし、てっきり負けているものばかりだと思って……私……」
「ああ、もしかしたら、ジンにやられなくても、相手の艦砲が先遣隊の艦を沈めていたかも知れん。気にするな」
「ありがとう……」

 

ラクスを人質に取った通信はフレイだった。フレイは艦長達にもみっちり絞られたらしいな。まぁ、気持ちはわかるからな。しょうがねえよ。
さて、ここが最後の機会だ。いつラクスを逃がす……?

 

「ぁぁ! ラクス…ぁぁ!何やってんだ? こんなところで……」
「お散歩をしてましたら、こちらからお声が聞こえたものですから」
「駄目だろ、勝手に出歩いちゃぁ……スパイだと思われるぞ?」
「あら! でも、このピンクちゃんは……お散歩が好きで…というか、鍵がかかってると、必ず開けて出てしまいますの」
「こいつのせいだったのか!? とにかく、戻らないと。…さぁ…」
「戦いは終わりましたのね」
「まぁ、とりあえずはな」
「……なのに、深刻そうなお顔をしてらっしゃるわ」
「……」

 

今夜、決行しよう!

 

 

「マイド、マイド!」
「しーっ、ハロ。やっぱり鍵開いてたか」
「…ん…ん…な~に、ハロ?」
「テヤンデイ!」
「あら~!シン様!…どうなさいましたの?」
「…黙って、一緒に来いよ。…静かにな……」
「…ぁ…」

 

 

「ぁ!」
「あ…? シン?」
「……え?」
「…ぁはは……」
「マイド!」
「げっ」
「マイド!」
「あぁ!」
「えぇ?」
「シン、何やってんだ? お前」
「彼女を、どうするつもり? ……まさか!」
「……黙って行かせてくれよ。カガリ達を巻き込みたくない。…俺は嫌なんだ! こんなの!」
「まぁ…女の子を人質に取るなんて、本来、悪役のやるこったしな」
「…手伝うよ」
「私も手伝ってやるよ」
「カガリ、サイ、ミリアリア……サンキュ」

 

「これ着て。その上からで…は無理か」

 

――! ラクスは思い切り良くふわふわスカートを脱ぎだした!

 

「ありがとう」
「……いえ」
「またお会いしましょう」
「……それはどうかな? シン、お前は帰って来るよな?」
「ああ、もちろんだ!」
「おい! 何している!?」
「お前はちゃんと帰ってくるよな!? 俺達んところに!」
「…必ずだ! ……約束する」
「きっとだぞ! 約束だぞ! シン!」
「ああ! カガリ! ハッチ開放する。退避して下さい!」
「きっとだぞ!シン! 私はお前を信じてる!」

 

 

「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のモビルスーツ、ストライク! ラクス・クラインを同行、引き渡す! ただし!ナスカ級は艦を停止! ラウ・ル・クルーゼが、単独で来ることが条件だ。この条件が破られた場合、彼女の命は……保証しない!」

 

しばらくの後、シグーが来た。一機だ。

 

「ラウ・ル・クルーゼか……?」
「……そうだ」
「(この声……?)コックピットを開け! ラクス、なんか話せ」
「え?」
「顔が見えないだろ? ほんとにお前だって事、分からせないと」
「あ~。そういうことですの。こんにちは、クルーゼ隊長。お久しぶりですわ」
「お久しぶりです。お元気そうで安心しました。」

 

仮面だ……やっぱり伝説どおり、変な人だ!

 

「彼女を連れて行け! さぁ…」
「……あっ! 色々とありがとう。シン」
「隊長の私を受け取り人に指名するとは、なかなか考えたな。これではうかつなことも出来ない」

 

なるほど、そういう考え方も出来るのか。俺はアスランに会うのも嫌だし、ネヴュラ勲章受賞の英雄に会ってみたかっただけなんだけど。
でもそんな事は顔には出さない。

 

「へっ。わざわざ歌姫さんを返してやるのに余計な事はされたくないからねぇ」
「用事はこれだけかな? 若いパイロット君」
「ああ……いや、一つ聞きたい」
「何かね?」
「レイ・ザ・バレルと言う男を知っているか?」
「――何!?」

 

初めて、ラウ・ル・クルーゼに動揺が走った。

 

「知っているのか! お前はレイのなんだ? まさかオリジナルじゃあるまいな!?」

 

俺の声に、怒気が混じってしまう。それを感じたのかラウ・ル・クルーゼは哄笑した。

 

「くっ、ははは! 私が!? 馬鹿な! 君はレイを詳しく知っているようだからこう言えばわかるだろう。私はレイと同じ者だ。兄と言ってもいいかも知れん」
「そうか……ならもう一つ。ギルバード・デュランダルはお前の知り人か?」
「……驚かせてくれるな、君は。ギルバートは友人だ。で、何故レイを知っているのか教えてくれるのかね? 君は?」
「すまんな。秘密だ。元気でやれと言っておいてくれ」
「ああ、伝えよう。……もし、君が真実を知りたければ、アル・ダ・フラガと言う男を調べろ!」

 

そう言うと、シグーは飛び去った。

 

フラガ? フラガ大尉と関係あるのか? 俺は考え込みながらアークエンジェルに帰還した。

 
 

◇◇◇

 
 

「……ん?」
「ハロ、ハロ、アスラーン」

 

あら、アスランが来たようですわ。あの唐変木。まぁ、ピンクハロの機能は役に立ちますけど。

 

「…おっ…ハァ…ラクス…」
「ハロがはしゃいでいますわ。久しぶりに貴方に会えて嬉しいみたい」
「ハロには、そんな感情のようなものはありませんよ。貴方は客人ですが、ヴェサリウスは戦艦です。あまり、部屋の外をウロウロなさらないで下さい」
「あぁ……どこに行ってもそう言われるので、つまりませんの」
「仕方ありません。そういう立場なんですから」
「…っー………何か?アスラン?」
「あっいえぇ…あ…ご気分はいかがかと思いまして……その、人質にされたりと、いろいろありましたから……」
「えっへ。私は元気ですわ。あちらの船では、貴方のお友達に殴られましたけど」
「……な、なんだって!?」
「キラ様は仰っていましたわ。『俺のアスランを女に取られたと思ったら腹が立った』と」
「そ、そんな、いや、あいつなら……そうか! 裏切り者って台詞もそう考えれば……しかし、いや……」

 

何を、頬を赤らめたり恥らっているんだ、こいつは。
私はそれは、BLは好みますけどリアルなガチホモは嫌いですわ。ああ、こんなのが婚約者なんて……
キラ様の方が男らしくて素敵でしたわ……

 
 

◇◇◇

 
 

「では、失礼します」

 

「シン、大丈夫か?」
「何て言われたの?」

 

俺が艦長室から出ると、心配そうにアイとミリアリアが声をかけて来た。

 

「お前も、トイレ掃除一週間とか?」
「おーそれいいねー。やってもらおうかなぁ」

 

フラガ大尉とナタルさんも部屋を出てきて、通り過ぎていった。

 

「はは、本当なら銃殺だって、散々脅されたよ」
「そっか。ってことは……俺達だけか」
「ん」
「え?」
「私達、マードック軍曹に凄く怒られたの。お前達は危険て言葉すら知っちゃいねぇのかぁ! って」
「あぅ……ごめん。手伝うよ」
「いいよ。もうすぐ第8艦隊と合流だし、大したことない」
「そういや、先遣隊から補給あったんだよな? どんなだ?」
「メビウスが2機、スカイグラスパーが3機運び込まれていたなぁ。それから、バスターダガーにデュエルダガーってのが1機づつ。月基地では量産機を開発していたんだってさ。そうそう、ストライカーの予備も運びこまれてたな」
「そうか! とうとう来たか! パイロットは? もう会ったか?」
「それがなー。パイロットの方はバーナードに乗ってたらしくて。整備の人やCICの人員はそれなりに補充されたけど、パイロットはメビウスのパイロットが2人だけ」
「そうか、しかしスカイグラスパー? 地球に降りるのか?」
「ああ、どうやらそうらしい」

 
 

「シーンっ! 心配したんだぞっ」

 

サイ達と別れるとカガリが飛びついてきた。

 

「ああ、悪い。心配掛けたな」
「新しく来たモビルスーツ見たか? ってまだだよな。奪われたのよりちょこちょこ改造されてるみたいだぞ。こっそり見せてもらった。私にも乗れないかなぁ」
「おいおい、気をつけろよ。お前さんが乗ってザフトと戦えば、下手すればオーブがザフトに宣戦布告したとも取られかねんぞ。それに、お前さんは安全な場所で指揮を取らなきゃ。くれぐれも前線に出るなんて考えるなよ、お姫さん」
「うう、わかったよぅ。でもいざって時のためには乗れた方がいいよな?」

 

俺は天を仰いだ。

 

「君か! 先遣隊を救ってくれたのは!」

 

――! この声!

 

「もしかして、アル・ダ・フラガさんですか?」
「いや。私はジョージ・アルスターだ。アル・ダ・フラガ氏はとうの昔に亡くなっているよ。ほら、この艦のムウ・ラ・フラガ大尉のお父上だ」
「そうだったんですか。変な事を聞いてすみません」
「いや。私はとにかく君にお礼を言いたくてね。今までよくこの艦を、娘を守ってくれた。そして先遣隊を守ってくれた。まことに有難う。君のおかげで無事に娘と再会できたよ。一時は死も覚悟したが」
「ああ、フレイのお父さんの……」
「そうだ。フレイの父だよ。娘も君に感謝していたよ。機会があれば、この礼は必ずさせてもらうよ。何か困った事があれば言ってきなさい。私の力の及ぶ限りで助けになろう」
「いや、そんな、俺も守るのに精一杯やっただけで……」
「ふふふ。若いな。少年」
「ナタルさん!」

 

いきなり、ナタルさんが現れた。

 

「事務次官殿がこうまで仰られているのだ。素直に受けて置きたまえ。もし、困る事がなかったならば、それはそれで幸せな事だ」
「……はい。では、困った時は、お世話になります」

 

俺はぺこりと頭を下げた。

 
 

◇◇◇

 
 

「館長」
「バジルール少尉、なにか?」
「醍8艦隊に送ったヘリオポリスの民間人名簿の返事が届いたのですが……」
「なにか問題でも?……これは! シン・アスカなる人物はヘリオポリスに滞在記録無し!?……少しお願いね」
「 艦長!」

 

ブリッジを飛び出した私を、ナタルは追って来た。なに?

 

「ストライクのこと、どうされるおつもりですか?」
「…どうって…どういうこと?」
「あの性能だからこそ、彼が乗ったからこそ、我々はここまで来れたのだということは、この艦の誰もが分かっていることです」
「……」
「……彼も降ろすのですか?」
「……」
「艦長!」
「貴方の言いたいことは分かるわ…ナタル。でも、シン君は軍の人間ではないわ」
「ですが、彼の力は貴重です!それをみすみす…!」
「力があろうと、私達には志願を強制することはできないでしょ?」
「……強制でなければ良いのですね」
「ちょっと、ナタル!」

 

彼女は何を考えているの? 変な事をしなければいいけど……
不安になりながらも私はシン・アスカを呼び出した。

 
 

◇◇◇

 
 

もうすぐ第8艦隊に合流すると言う時、俺はマリューさんに呼び出された。

 

「失礼しまーす」

 

マリューさんは少し厳しい顔をしていた。なんだ?

 

「第8艦隊に、ヘリオポリスの民間人名簿を送ったのよ。その結果が来たのだけれどね。率直に言うわ。シン君、あなたは誰なの!?」

 

あちゃー。そんな事してたのかよ! このままシン・アスカで行こうかと思ってたのに!
しかたがないから正直に言う。

 

「本名キラ・ヤマト。偽名使っていたのは用心のためですよ。なんてったってコーディネイターですからね」
「……そう」

 

仇の名前を口に出すのは口惜しい。でも、今の俺はどうしようもなくキラ・ヤマトなんだよな……
マルーさんはため息をついた。

 

「キラ君。と呼ぶべきでしょうね。確かに最初が最初だし、用心してた訳もわかるけど」
「どうも、すんません」
「いいわよ。キラ・ヤマトの事を確認する手間が増えるだけだから。ご両親はヘリオポリスに?」
「ええ。無事だといいんですけど」
「最初から言っておいてくれれば、第8艦隊と合流すればそう言う事もすぐわかるのに」
「いや、お手間をおかけしまして」

 

俺はへこへこと謝るしかなかった。

 
 

マリューさんから解放されると、待っていたかのようにナタルさんが俺をひっつかんで隣りの士官室に入れた。

 

「な、なんですか」
「やはりいい身体をしているな。毎日トレーニングしているからかな」

 

ナタルさん、いつもより色っぽい!? ――胸元のボタンが一つ外れてる!
俺の耳に口を寄せられ、吐息を感じる! 俺のハートはどっきどきだ!
ナタルさんは囁く。

 

「……君の力を、地球軍で生かさないか?」
「ナ、ナタルさん……」
「軍は君を優遇するぞ」

 

もう、ナタルさんの唇が耳に触れるかのように感じられる!

 

「か、考えてみます」
「よろしい!」

 

そう言うとナタルさんは俺との距離を取る。俺は甘美な責め苦から開放されたが。ちょっと残念に思ったのは秘密だ。

 

「……期待しているぞ、少年……」

 

――! ナタルさんはもう一度俺の耳に唇を近づけ囁いた。やられた! 見事なフェイント! 時間差攻撃!
俺はへろりんことなって部屋を出た。
許してくれ、マユ…… 俺は罪滅ぼしにマユの「お兄ちゃん」と言う声を100回リピートした。脳内で。

 

「何してるんだ? シン」
「うわぁ! なんだ、カガリか……」
「一人でぶつぶつ呟かれてたら、不気味だぞ」
「うう……あ、そうだ。俺、今日からキラ・ヤマトだから」
「はぁ?」
「いやぁ。シン・アスカってのは偽名だったんだよ。それが偽名使ってたのがオーブだかに問い合わせされてばれちゃってね…って、お前は大丈夫なのか? カガリ・ユラで」
「んー。それは私がお忍びの時に使う名前だからな。ちゃんと正規の市民番号も割り振られているぞ」
「なぁんだ」
「しかしひどいじゃないかっ! 本当の事を教えてくれていたってよかったじゃないか!」
「だってカガリってすぐ顔に出そうだもん」
「くっ」

 

――! ぽか!

 

「やれやれ、今度は手が先に出たか」

 
 

◇◇◇

 
 

「あなたがあの名高い地球軍の『黒い悪魔』ですか心強い。よろしく!」
「こちらこそあなたのような英雄、『エンデュミオンの鷹』に会えて光栄です。フラガ大尉」

 

俺の目の前の男はエーリッヒ・ハルトマン大尉。愛機のメビウスのノーズアートに黒いチューリップを描いている事から、ザフトから『黒い悪魔』と恐れられている。
俺より若いが、その戦い方は、空間認識能力とガンバレルと言ったいささかトリッキーな物に頼る俺とは違う。一撃離脱を身上とし、自分の部隊にもそれを徹底させ戦果を上げて来た正統派のエースだ!

 

「お二人のような英雄に出会えて、まことに光栄であります!」
「はは、そう固くなるな、チャック・イェーガー少尉」

 

もう一人、先遣隊から送られてきたパイロット。こちらは、まだひよっ子だ。だが、磨けば光るものを持っていそうだ。……もし生き残れればな。

 

「こちらは、我が艦唯一のモビルスーツパイロット、キラ・ヤマト少尉だ」
「よろしくお願いします」

 

坊主はいささか緊張しているようだった。艦の中に新しい人員も増えたからなぁ。中には、コーディネイターである坊主に険のある視線を送る奴がいないでもない。

 

「ああ、よろしく。初出撃から、すごい戦果だそうじゃないか。僕の初出撃の時なんか、僚機を敵機と思ってしまってね。さんざんだったよ」
「いえ、そんな」
「ははは、坊主、謙遜も時には嫌味だぞ。誇れよ。お前さんはそれだけの事をしたんだ。」
「はぁ。いやあ、まぁ、なんとか」

 

そういや、先日坊主に変な事を聞かれたなぁ。まず、親父の事を聞かれた。
傲慢、横暴、疑り深い奴だったよと話してやったが、もっと別の事を聞きたい様だった。親父になんの用があるんだ? いきなり、「ネオ・ロアノーク」を知っているかとも聞かれたな。もちろん知らないんでそう答えたが、なんだったんだ、ありゃ? くそ親父がまた碌でもない事でもしてたのか?

 
 

◇◇◇

 
 
 

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