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sin-kira_SEED_in_Sin_第01話

Last-modified: 2008-05-12 (月) 03:23:08

「……大丈夫か……っかりしろ…おい……」
誰かの声がする。

――ルナ?

「う、ぁ」
ぼやけた視界に少女の面影。金色の髪。
「ステラ……?」
「おい、しっかりしろ」
視界にとらえた金髪の少女、守ると誓った娘。
愛しさ、悲しみ、後悔、様々感情が胸の内を巡る。
頬をぺちぺちと叩かれる。
その感覚にようやく意識が覚醒し、視界がはっきりとする。
「……ぁ、アスハ!?」
しかし、その貌が自分の忌むべき敵の一つ、アスハだと認識したとき、強烈な憎悪と怒りにかられる。
ガバリッと上半身を起こす。
「うわぁっ」
ゴツッ
「ってぇー」
「くっ」
お互いの額がぶつかりその場で頭を抱えてうずくまる。
「急に起きあがるな! 危ないだろう!」
「っ! アンタがなんでここにいる! カガリ・ユラ・アスハ」
「居ちゃいけないか!?」
自分は、最後の戦場で敗れた。
月面に不時着し、メサイアが陥落する様を目撃したのだ。
敗北に打ちのめされ、悲しみのうちに意識を失った。
そして目を開けば目の前にアスハがいる。
「俺は捕まったのか……」

 

――だとしたら、ここはオーブ宇宙艦隊の艦のどれかか……
――ルナマリアは、ミネルバの皆なはどうなったんだ!?

 

「おい、戦いはどうなった!? ミネルバは!?」
カガリの襟を掴み揺さぶるようにして問い詰める。
「っぅくっ、何を、分けの、わからない、っ」
息がつまりまともに返答もできないカガリが少年を突き飛ばす。
「っかはぁ、はぁはぁ、いきなり何をするんだ! 助けてやったのに!」
「! 俺は捕虜にされたのか!?」
「さっきから分けのわからないことを、それより先に言うことがあるんじゃないのか?」
そう言いながら、再び襟首を占められるのを警戒して少年から距離を置くカガリ。
「伸びてたお前を介抱してやったのは、私なんだぞ!」
「……頼んじゃいない。それよりミネルバは、ザフトはどうなった!?」
「だから、何を言っているのか分からないと言っているだろう!?
 私はただ、そこの通路に倒れていたお前を……」
そこでようやくカガリの言葉の端が頭に引っかかった。
「おい、ここは何処だ!?」
「? ヘリオポリスだ」
「ヘリオポリス?」
「そうだ、オーブの中立コロニーだ」

 

――ヘリオポリスだって? 確か3年前にザフトの襲撃の際、連合のMSストライクの
――砲撃で崩壊したっていう、あの中立コロニーのヘリオポリス?

 

「再建されたっていう話は聞いてなけど……」
「再建?」
「アレから何日たった? 停戦……いや……」
メサイアが陥落した以上、停戦ですまないだろう。
「終戦、したのか?」
悔しさと無念に顔を歪めながら、はき出すように声を紡ぐ。
「さっきから、分けのわからないことばかり言ってるな、お前。
 何度も言ってるけど、私は通路で伸びてたお前を介抱してただけだ!」
「通路?」
「あ、ああ」
「月面じゃないのか?」
「おい、お前、大丈夫か?」
「もう一度聞く、ここは何処なんだよ?」
「ヘリオポリスだって言ったろう、頭でも打ったのか?」
心配そうな顔でこちらを窺うカガリ。
そんなカガリを余所に考え込む少年。
嫌な胸騒ぎがする。
「アレから何日、いや……今日は何日だ?」
「お前、本当に大丈夫か?」
「いいから、今日は何日なんだ?」
「わかった、わかった」
そういうと、カガリはポケットから携帯電話を取り出すと広げて見せる。
「ほら、これでいいか」
「あ、あぁ」
意外に親切なヤツだなと毒気を抜かれた気分で携帯の画面をのぞく。
「ほら、コズミックイラ、71年、1月25日、午後12時54分42秒。これで満足か?」
嫌がらせのつもりか、わざわざ年号から区切り区切りに言ってくる。

 

――やっぱ、嫌なヤツだな。

 

「って、71年!?」
「そうだ。それより、お前、何でこんな所で伸びてたんだ? それにその格好」
「71年……っ、ヘリオポリス!?」
「お前、ここの人間だろ?」
無視されて頬を膨らませるカガリ。そんなカガリを見つめていて、ふと気がつく。
幼い。全体に印象が幼い。いや、元々大人びても見えなかったが、
記憶にあるカガリ・ユラ・アスハよりも、もっとずっと幼い。
「あんた、カガリ・ユラ・アスハだよな」
「さっきから無礼なヤツだな、人の名前を何度もフルネームで呼び捨てるな。大体、
 人に名前を尋ねるなら自分から名乗るのが礼儀だって、親に教わらなかったのか?」
「……!」

 

――俺の両親が死んだ原因の一つはアンタだろうが!

 

一瞬、頭が沸騰しそうになったが、さっきから頭によぎりはじめた嫌な予感にかき消される。
それを確かめるために、名を告げる。
「俺は、シン・アスカ、だ」
意味ありげに名を強調する。
「シンか、良い名前だな」
カガリはさっきまでの不機嫌は何処へやら、名乗ったとたんに機嫌を直している。

 

――やっぱ、反応無しか。
――どういう事だ? まさか時間を遡った? 馬鹿な、SFじゃあるまいし……

 

「それで? なんで倒れてたんだ?」
「……よく解らない」
「ヘルメットかぶってたから、頭とか大丈夫だとは思うけど」
「ほら、それ」と脇に置いてあるヘルメットを指さすカガリ。
「一応、病院で検査した方がいいじゃないか?」
言われて、自身の身体をかえりみる。
パイロットスーツに損傷は見られない。身体の何処にも異常はない。
「いや、何処にも怪我はない、大丈夫だ」

 

――アスラン・ザラ……手加減していたのか……クソッ!!

 

「お、おい」
急に険しい顔になったシンに心配げに声をかけるカガリ。
「なんだよ」
「本当に大丈夫なのか?」
「あぁ」

 

――とにかく、今がいつでここが何処か確かめる必要はあるな。
――コイツの携帯だけで確信するにはまだ早い。
――どこかに端末でも……

 

「なぁ、お前のその格好、お前パイロットなのか?」
先ほどから気になっていたらしい。カガリがシンの真紅のパイロットスーツを指摘する。
「えっ、いや……」
下手なことは言わない方が良い、そう判断しどう言いつくろおうか迷い、黙り込む。
「やっぱり……だとしたら、お前ここのMSのテストパイロットだな!?」
答えあぐねていたシンにカガリが掴みかかってくる。
「やはりここで兵器の開発をっ、今すぐ博士に会わせろ! でないとっ」
瞬間、大きな揺れがコロニー全体を襲った。
「きゃぁ」
「っ……この振動…隕石じゃない……内部の爆発か!?」
「お、おい爆発って、どういうことだ」
更に続く振動。
と、そこに集団で移動する職員達が通りかかる。
「おい、あんた達、どうなってるんだ!?」
「ザフトに攻撃されてる!」
「コロニーにMSが入ってきて暴れてる、君たちも早く避難するんだ!」
「ザフトが!?」

 

――なんでザフトがコロニーを攻撃するんだ?

 

考え込んだ瞬間、カガリが走り出す。
「非常口はっ」
「この先にある非常階段から外壁の救命ポッドへの直通エレベーターに行ける」
カガリの行った方向と反対側だ。
「アイツの行った先は?」
「あっちは軍の施設で我々は立ち入りを制限されてる、機密区画なんだ」
「ここは中立のヘリオポリスなんじゃないのか、なんで軍の施設なんか」
「知らんよ、オーブ首長のアスハに聞いてくれ! それより早く逃げるんだ」
「さっきの女の子を連れ戻してきます、先に行ってください」
「あ、おい君!」
シンは言うが早いか、足下に転がっていた愛用のヘルメットを拾い上げると走り出した。
「おい、何してる。そっちは非常口じゃないんだぞ!」
「何で着いてくる、そっちこそ早く逃げろ」
「そうもいかない」
さすがに見捨てて死なれたとあっては夢見が悪い。
言い争う間もなく、爆発によるモノと思われる突風が二人が来た方向から叩きつけられる。
「うぅっ、いいから、お前だけ行け。私には確かめなければならんことがある」
「あのな、シェルターへの通路が潰れたんだ、戻れる分けないだろ。来い!」
空気の流れから隔壁の損傷を読んだシンは反対方向へと避難するため、
有無を言わさずカガリの手を取り走り出す。
「離せ、このバカ!」
「死にたいのか!?」
「……こんな事になるなんて……私は……」
「ちっ」

 

――クソッ、なんでこんなことになるんだよ!

 

「大丈夫だ、俺が守って……守ってやるから……だから、今は着いてこい」

 

――この先は軍の施設だって言ってたな……なら、非常用のシェルターぐらいあるはずだ
――でもなんでコイツは軍の施設なんかに向かったんだ……?

 

カガリの行動に疑問を持ちつつも、結局カガリが目指した方向へと進まざるを得なくなっている。

 

――クソ、それにしてもコイツ、足が遅いな、やっぱお姫様だからか?

 

タタタッ タタタッ タタタッ

 

――クソッ、クソッ! 今度は銃声! この先から聞こえてくる

 

ドカッ

 

――手榴弾の爆音か? クソ、どっちにしてもこの先で戦闘になってる……
――後ろには戻れない、行く先は戦闘の真っ最中、そんで足手まといのアスハかよ

 

悪態をつきつつ走りきった先、ようやく通路が終わり巨大なホールへとでる。
「これは……」
吹き抜けのホールの下の階には、見覚えのある灰色の物体が横たわっていた。

 

――モビルスーツ!
――さっきからのこの戦闘、このMSを狙って……!?

 

シンの見下ろす先では黄色のつなぎを来た整備員たちがライフルを手にアストロスーツ姿の兵士達と銃撃戦を行っている。
「うっぅぅぅ……やっぱり、連合軍の新型機動兵器……」
泣きながら崩れるようにその場に跪くカガリ。
「お父様の裏切り者っ!!」
「ばっ! 声が大きいって!!」
カガリが突然絶叫して、その声に釣られたかのように銃撃が止む。
「……」
銃撃戦を繰り広げていた整備員、アストロスーツ姿の兵士達の視線が一斉にシンとカガリへと向いた。
ふり向いた女性整備員が銃口をこっちに向けたのを見てシンは慌ててカガリの手を掴むと引きずるようにして走り出す。
「泣くな! いいから走れアスハ!」

 

――冗談じゃないぞ、こんな分けの分からない状況で戦闘に巻き込まれるなんて
――どっちが味方だかわかったもんじゃないが……

 

だが、どう見てもアストロスーツの方はザフト軍正式の戦闘用宇宙服だ。
そして、自分の着ているパイロットスーツもまたザフト軍正式のものだ。
明らかにアストロスーツの兵士達からの銃撃はない。撃ってきているのは整備員達の方だ。

 

――ならアッチに保護してもらうか?

 

そう思った瞬間、横合いで爆発が起きる。
「きゃぁぁっ」
「ぐぁ」
とっさにカガリの頭をかばい抱え込むが、そのまま下の階へたたき落とされてしまう。
「がぁっ」
カガリを抱えたまま受け身を取ったシンは、背中をMSの装甲にたきつけられ、さらに抱えたカガリの身体に、胸部を圧迫されて呼吸困難に陥る。
低重力区画でなければ確実に骨折、下手をすれば死んでいる所だ。
一瞬、身動きとれずにいたところに先ほどの女性整備員が駆け寄る。

 

――まずいっ……

 

そこに銃撃。撃ったのは自分と同じザフトレッドのパイロットスーツの少年だった。
「ぐはっ」
女性整備員が肩を打たれ片膝をつく。
と、同時にパイロットスーツの少年の持つ銃がジャムる。
少年は銃を捨てて胸ベルトのコンバットナイフを引き抜くと、とどめを刺すためMSの上に飛び上がる。
起きあがりながらその少年の顔を見るシン。

 

――……!!!?

 

「ア、アスラン・ザラ!」
「えっ?」
至近で起こる爆発、このMSの影になっていなければ吹き飛ばされている。
あたりはすでに大規模な火災が発生している状況だ。

 

――コイツさえ……コイツさえ、あの時裏切らなければ……

 

「き、貴様ぁーーーーっ、アンタさえ、アンタさえ、いなければぁーーーっ」
気を失ったカガリを放りだしてアスランに掴みかかるシン。
「お、おい」
アスランは突然、助けた味方が掴みかかってきて困惑する。
「仲間割れ?」
女性整備員が銃を二人に向ける。
「クッ」
アスランはそれを見て取り、シンを突き飛ばし射線から逃すとともに
自身もその反動で飛びずさり、そのまま後退する。
「うっ」
突き飛ばされたシンはそのままMSのコクピットへと落下してしまう。
「しまった!」
女性整備員は気を失ったままのカガリを開いたままのハッチからコクピット内に
落とすと自身も飛び込んだ。
「この機体は渡さない! 動けば撃つ!」
「な、なんだ!?」
狭いコクピットの中、一番下で押しつぶされたシンは銃を突きつけられるまでもなく
身動きが取れない。
「アンタは一体、なんなんだ!?」
「そっちこそ、ザフトがっ!」
「い、いや、俺は……」
「?……とにかく、降りろ」
「冗談じゃない! こんな火の海の中に出ていけるか」
二人が言い争っている間に、あたりは爆発と引火でとっくに火の海だ。
MSの中でなければ丸焼きになっている。
「ちっ、じゃあ、あなたは捕虜よ。まずは武装解除」
「武器なんて持ってっ……」
そう言おうとして、戦闘時のパイロット装備として腰に差していた拳銃に思い至る。
軍の官給品だ。

 

――まずいな、素直に差し出すか?

 

「腰に拳銃がある、外してくれ」
身動きが取れないなりに、両手をあげて降伏の意を示しながら言う。
「ずいぶんと素直ね」
「事情がある、戦いには関わりたくない」
「ふん、脱走兵ってこと?」
「……まぁ、そんなところだ」
「信用できないわね」
気を失ったカガリをシンに押しつけ盾にしながらシンの武装解除を行う女。
「アンタは?」
「地球連合軍大西洋連邦所属、マリュー・ラミアス大尉。貴様は?」
細かい所属は省略したのか誤魔化したのか、明かせないのかはわからないがどうでもいい。
自身の所属が問題だ。誤魔化そうにも自分の着ているパイロットスーツが動かぬ証拠だった。
「ザフト軍特務部隊戦術統合即応本部FAITH所属、シン・アスカ」
バカ正直に答えることしかできない自分に頭を抱えたくなる。
「フェイス? そんな部隊聞いたこともない……けど、特務ならありえるか……」
考え込んだマリューが急に顔を上げ問い詰めてくる。
「この襲撃を手引きしたのは貴様か?」
「偶然居合わせただけだ」
「その娘は?」
銃口をカガリに向けて顎をしゃくってみせるマリュー・ラミアス。
いつの間にか目を覚ましていたカガリが銃口に脅えてシンにくっついてくる。
「戦闘に巻き込まれそうになっていたのを保護しただけだ、俺とは何の関係もない」
「そう? ずいぶん仲良さそうじゃない」
ガガガガッ ドッドドオォドン
MSによる銃撃か、砲弾があたりに突き刺さる。
大きく揺れるコクピット。
「うっぅ」
「きゃぁぁぁっ」
「顔、近いぞ!」
赤くなりながらカガリから顔を背けるシン。
狭いコクピットの底で必死にしがみついてくるカガリに動揺しながら状況を読むシン。

 

――さっきの兵がMSを呼んだか?
――アスランは何処だ? クソ、モニターは無理か……

 

無意識にコンソールに目をやっているが、ザフトのMSとコクピットレイアウトが違うため瞬時にはスイッチ類の配置が把握できない。
「貴様はシートの後ろへ下がれ」
銃を突きつけたまま命令するマリュー・ラミアス。
「っうぅ」
完全にパニックになってしがみつて震えるカガリを抱え、身をよじりながら下がるシン。
身体のこちらやあちらにカガリの未発達な膨らみやら太股やらが押しつけられる。
パイロットスーツ越しじゃなかったら色々と困ったかもしれない。
「妙なマネをすれば撃つ」
「あ、あぁ」
素直にうなずくシン。こっちはそれどころじゃない。
カガリの両腕両足が絡みついているような状態だ、身動きが取れない。

 

――それにしてもなんて馬鹿力だ、こんなに細っこいのにな
――火事場の何とやらか?

 

「この機体だけでも……動かすだけなら私にだって……」
コクピットに灯が入りモニター、各計器が作動をはじめる。
しがみつくカガリをあやしながら、その頭越しにメインコンソールのモニターに映し出されたOS起動画面を見入るシン。
「G、U、N、D、A、M、ガンダム……!?」
インパルスやデステニーのOSと同様の頭文字。
以前聞いたヨウラン・ケント(正確にはマッド・エイブス)の話しでは連合のMS、ストライクらGATシリーズの未熟なOSを皮肉ってザフト版GシリーズのOSに同様の頭文字を使ったらしい。

 

――こいつは、連合のGか!!

 

完全に起動した機体が上半身を起きあがらせる。
その揺れにカガリが再び悲鳴を上げる。
「こ、こら、大丈夫だ、守ってやるから……だから、大人しくしてくれ!」
首っ玉にしがみつかれ、いや絞められて、息も絶え絶えに叫ぶシン。
「耳元で騒ぐな、死にたいか!」
「いやぁぁ」
マリュー・ラミアスの脅しの声にカガリが更に脅える。

 

――イメージと全然違うぞコイツ、こんなビビリの……ただの子供じゃないか

 

普段のカガリは男勝りでもっと勝ち気な性格なのだが、戦闘のパニックと爆発のショックですっかり幼児退行しているのだ、しかし、シンにはそんなことは分かるはずもない。
「……オートバランサー、ON、脚部動力伝達」
マリュー・ラミアス大尉がメインコンソールのスイッチを押す。
立ち上がるGの揺れがましになるがヨタヨタと鈍い動き。
モニターに2機のMSが映し出されていた。
一機はセイバーに酷似した頭部を持つ赤を基調としたG、そしてもう一機は、
「ジン? こんな旧式……何処の部隊だ?」

 

――テロリストか? しかし、アスラン・ザラは……?
――状況がさっぱり分からん、どうなってるんだ?

 

目の前のジンがMA-M3 重斬刀を振り上げ突っこんでくる。
「くぅっ」
マリュー・ラミアスがメインコンソールのレーダーモニター脇のスイッチを押すと、インフォメーションゲージに『PHASE SHIFT』の表示がされる。
同時にジンの重斬刀が振り下ろされる。
それを両腕をクロスさせて防ぐG。
「うぁっぁ」
操縦桿の操作が肩の銃傷に響くのか呻くマリュー・ラミアス。
「このMS……」

 

――こいつオートでPS装甲を展開しないのか……

 

普段からVPS装甲の機体に乗り慣れていたシンはこの機体の危うい設計に冷や汗を流す。
だが、目の前のジンも動揺してるらしい。こちらから一旦距離を置くジン。
と、セイバーに似たGがスラスターを点火し離脱していく。

 

――なんだ? あっちは地球軍じゃないのか?

 

「くっ、イージスまで奪われるなんて!」
「おい、またくるぞ」
「言われなくても!」
ジンが再び重斬刀を振り上げ突っこんでくる。
Gの頭部CIWSが稼働するモーター音に遅れて轟音と共に砲弾が前方にはき出される。
それを難なくかわすジン。

 

――射線軸がずれている上に、砲の自動追尾が作動してない?

 

「おい」
「話しかけないで、気が散る」
一刀目を機体を後退させてかわす。しかし背後にビル。
二刀目が胸部装甲を薙ぐ。
「きゃぁぁぁ」
「ぐぅ」
「かわせないのか!」
三刀目を右肩に振り下ろされたGは衝撃に仰向けに倒れこむ。
背後のビルを崩しながらどうにか踏みとどまる。

 

――なんて操縦だ、この女

 

慌てて左右のモニターを見て状況を確認。
足下に避難中だったと思われる人だかり。
背格好、服装からして学生、女子供ばかりだ。
「って! 民間人!?」
目の前のジンが突きを放ってくる。
それを左に回り込んでかわす。

 

――何考えてんだこの女、そっちに行ったら民間人を巻き込むだろうが!

 

このまま直撃をくらえば再び転倒、背後の民間人を押しつぶすことになる。
「くそっ」
とっさにカガリごと乗り出すシン。
「な、撃つぞ!」
マリューの制止も無視してメインコンソールのスイッチに手をのばす。

 

――脚部の動力を切れれば……

 

シンが脚部への動力をカットしたことによりGがその場に片膝をついて座り込む。
ジンの重斬刀による突きがGの頭部上ギリギリを掠めていく。
「くっ」
再び脚部動力を復帰させ、左の推力レバーを引くと左右の操縦桿を前に押しだす。
背後の民間人にスラスターの噴射炎を浴びせるわけにはいかない。
機体の重量と脚力だけの体当たりだ。
不格好に前方に倒れこんだGがジンを突き飛ばす。
「貴様!」
「足元を見ろ、民間人だぞ! もっと回りをよく見ろ!」
シンは完全にシートに乗り出すとメインコンソールをいじり設定を見る。
「しょうがないでしょ、私はパイロットじゃないのよ。機体の調整も完全じゃないし」
「この機体、調整がなって無いどころか、未完成じゃないのか?」
「ぐっ」
言葉に詰まるマリュー・ラミアス。
「代われ、俺が操縦する」
「出来る分けないでしょ、ザフトに我が軍の……」
「うるさい! これ以上、力のない人が巻き込まれるのを黙って見てられるか!!」
そう言うとシンはマリュー・ラミアスを押しのけ強引にシートを奪い取る。
それに対し銃を抜き抵抗するマリュー・ラミアス。
「撃ちたければ撃ってもらってかまいませんけどね、そしたら、確実にこの機体はザフトに奪われるし、アンタは殺される」
「くっ……この機体をコロニーから持ち出そうとすれば撃つわ」
「俺だって死にたくはない。終わったらこの機体は返すさ」
マリューからシートを譲られ、四つん這いのGを立ち上がらせるシン。
モニターには早くも立ち上がり体勢を整えたジンが突っこんでくる映像。
「きゃぁあぁ」
いつの間にかシンの膝の上に居たカガリが悲鳴を発する。
「こらまとわりつくな、操縦できないだろ!」
左の操縦桿上部のスティックを親指で操作し、HUD上のレティクルを動かしトリガーを引く。
頭部CIWSが火を噴くが射軸がずれている。

 

――連動してないか

 

トリガーを引いたまま今度は右の操縦桿を引き、機体を右に傾けていく。
曳光弾の軌跡が徐々にジンへと収束するが、命中弾が出ているにも関わらずジンは止まらない。

 

――クソッ、テスト用の模擬弾!?

 

ジンがライフルを横薙ぎに一連射。

 

――まずい

 

機体を射線軸上に傾ける。
PS装甲に着弾。
しかし、散布射撃された弾が外れ後方に着弾。
爆発に巻き込まれる民間人。
それを目撃するシン。
「な、こんな状況で……ザフトのやることかぁっ!!」
シンの身体の奥深く何かがはじけ飛ぶ。
途端にクリアになっる思考。
五感から飛び込む膨大な情報。
それらを瞬時に処理して周囲の状況を理解する。
機体を左前に前進させジンの突撃をかわす。
ジンの銃口がこちらを向くがまだぶれている。
当たらないが、その先も民間人達が居る。
再び機体を射線軸に乗せ盾にする。
直撃。
PS装甲が十分に性能を発揮。
衝撃で揺れる。
カガリが脅えてしがみついてくる。
「すぐに終わらせてやるから、しばらく我慢していろ」
直下には人は居ない。
推力レバーを上げて、ペダルON。
スラスターによりジャンプ。
ジンがこちらに銃身を向けながら同様にスラスターでジャンプ。
軸線に乗っている。
右に旋回。
同時にジンが発砲。
砲弾が掠めていく。
「何か武器はないのか」
「……」
マリューは銃口をシンに向けたまま押し黙っている。
「俺と一緒に死ぬ気か?」
「……本機の両腰にアーマーシュナイダーが装備されているわ」
そう言って、右操縦桿のスイッチを押し武装選択を行ってみせる。
サブモニターに表示された武装をみてあきれるシン。
「ナイフだけか」
「しょうがないでしょ、実戦装備なんてまだずっと先の話しだったもの」

 

――未完成のOSに……兵装がナイフだけ……
――この機体で格闘なんて器用なマネはできない……やれるのか?

 

自問するシン。
眼下には逃げまどう人々。
過去の光景が脳裏に蘇る。

 

――いや、やってみせる

 

腰部アーマーシュナイダーを両マニュピレーターに装備。
「二人とも身体を固定しろ、振り回すぞ」
カガリがシンの腰に腕を回してしがみついてくる。
かまわずに操縦に集中するシン。
ジンが着地と同時にライフルを点射。
急降下でかわす。
着地と同時にオートバランサーOFF。
両腕を広げたまま、前のめりに転倒するG。
地面に接触する瞬間に、胸部スラスター噴射。
腹這いのまま脚部スラスターを噴射し、下半身で地面をえぐりながら強引に前進。
ジンがライフルを連射。
着弾がGを追いかけてくる。
ジグザグに這い進むG。
まるで地面をのたうつ餓鬼ような動き。
ジンはその動きに戸惑いを見せている。
すれ違いざま、右腕のアーマーシュナイダーを地面に突き立て、それを軸に旋回する。
左腕のアーマーシュナイダーがジンの右膝裏の関節に突き刺さる。
その勢いのままジンの左足を抱えてスラスター全開。
転倒し頭部から地面に落下するジン。
そのジンに這いつくばったまま這い寄りのしかかるG。

 

――まずは、動きを止める

 

右腕のアーマーシュナイダーでジンの四肢関節を分断していく。
その矢先、ジンのコクピットハッチが爆発ボルトにより強制排除されパイロットが脱出する。
「しまった、自爆か」
思った瞬間に、ジンが爆発。

 

――やられた!

 

爆風が吹き荒れた。

 
 

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